理学と工学の融合

 本学では2008年度の入学生から理工学部が再編成される。従来、機械工学科、電気電子工学科、化学科、物理学科そして数学科の5学科と生命科学研究所だったのが、集約されて物質生命理工学科、機能創造理工学科そして情報理工学科の3学科となる。

 わずか3学科で理工学部と名乗るわけだから、従来のように、ある比率で工学系と理学系の学科が存在するというのではない。理学工学は融合して、各々の学科に内在している。
そして各々の学科で、サイエンスマインドを持ったエンジニアを目指すのか、エンジニアリングマインドを持ったサイエンティストを目指すかは、用意された教育プログラムから学生自身が教科を選択する必要がありそうだ。
 ちなみにすでに理学と工学が融合している本学の化学科では、卒業時に学士(理学)になるか学士(工学)になるかは、取得する理学系の単位と工学系の単位の数で決まる。そして多くの学生が、両方の単位数を満たす事になって、本人の希望で選択するそうだ。

 総枠は決まっているのだから、従来必修とされていたものから外れる教科が出てくる。設計製図講義もその一部が該当するようだ。致仕方ない事と思う。代わりに他の有益な教科を学ぶのだから。
 設計を学ばない学生が増えるとなれば、学内での研究機材の設計者として私の必要性が増してくる事になるだろう。又必要が生じた時点で、個々に学生をフォローアップできればと思っている。

 多分これは設計製図講義が縮小される将来を、先取りする出来事だったのだろう。先日ある学科で、先生方の要望に応じて単品レベルの図面を作成する仕事もこなしていた職員が退職する事になった。図面の代書屋の様な業務だが、この部分は私が引継ぐ事になった。
 作る方からは図面が無ければ作らないと言われ、図面の代わりにポンチ絵でも可と言うのが負担になり、しかも私は設計しかしないと理解されたようで、「誰も図面を描いくれない。」と一時先生方の間に困惑が広がった。しかし直接話をする事で理解し合う事ができた。
 ポンチ絵というのは曖昧な言葉で、同意語でマンガという事もある。製造図面でそんな言葉は使わない方がよい。

 理工系は求人倍率が高い。但し、ひとくくりに理工系といっても、求人は工学系の方が断然多い。
 以前の勤め先(機械製造業)では人材の優秀さで採用されたのだろうが、出身の自然科学とはほど遠い分野で仕事している人が何人もいた。又同様に、需要が多い機械や電気電子、以外の工学出身者も、専門外の仕事をする事が多かった。
しかし、長い人生でこの事が不利になるとは思わない。電気工学科を卒業してノーベル化学賞を受賞した方もいるのだから。
 就職のし易さでなく、もっと純粋に、好きな分野の勉強をしたいと思って進学する高校生も多いはずだ。一方、大抵の親の気持ちからすれば、我が子が1人で食べていけるようにする事、つまり自立が教育の最終目標だろう。
 理学と工学の融合によって、エンジニアリングマインドを持ったサイエンティストも、求人に恵まれるようになればと思う。誤解のない様に書いておくが、これは理学と工学をそれぞれ勉強した2人の子を持つ親としての気持ちである。 (2007/5/7)


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