謡曲史跡

 今なら聖地巡礼と言うのだろうか。50年程前に謡曲を始めて直ぐに謡曲史跡を廻った事があった。京都で野宮神社東北院を尋ねた。野宮神社はとても寂しい雰囲気で趣があった。その後再び、近年尋ねた時の雰囲気の変わりようには落胆した。東北院には謡曲を奉納した看板が幾つか掛かっていたが閉まっていた。今はどんな雰囲気だろうか。

 先日葛城古道を歩いて一言主神社を訪れた時、謡曲土蜘蛛の史跡を表す駒札があった。謡曲史跡保存会が建てたようだ。そんな団体があったのかと驚いた。調べてみると既に2018年末に解散したようだ。全国に141基の駒札を建てて、40年に渡って活動してきたが会員の高齢化などで活動に幕を閉じたと言う。

 書籍も残していて、「謡曲と史跡」、京都のみを集約した「謡曲と京都」、「謡曲史跡駒札写真百番集」等があるようだ。
 興味津々で、古本屋で手に入れた。中には贈呈品で著者中村京三氏の署名入りのものもある。駒札を建てるに当たっては周囲との折衝や費用などで苦労されたようだ。そして解説には只尋ねたという事だけでなく、他の古文書を引用したりして、深く掘り下げて取材されている。先輩方の熱意の賜物だったのだろう。

 今更百箇所以上にも及ぶ史跡全てを巡るわけにはいかないが、謡曲理解の一助としつつ、気になるところは巡ってみたい。  (2023/8/15)


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