クイックターン

 スポーツクラブへ行った時は、プールで2000m以上泳ぐことにしている。まずは25mプール1往復1分で、連続で30分泳ぐ。ちなみに1500mの日本記録はその半分だ。
 最近その30分の間に泳ぎながら考えるのが、クイックターンをする時に壁の上を蹴った方がいいか、下を蹴った方がいいかという事だ。
昔、水の怪物フェルプスを取材した番組を見た時、彼は壁の下を蹴ると上昇する力が推進力になると言っていた。怪物が言うのだからそんなものかと思っていた。ところが最近、海外から名コーチを招いてジュニアを教える番組では壁の上を蹴るように指導している。下を蹴ると上昇時に抵抗になるという。まるで反対の話だ。だから力学的にどうなのだろうかと漫然と考えながら泳ぐのだ。すると30分はあっという間だ。

 最近考えがやっと纏まってきた。ターンの時水平に蹴るのと斜め上に蹴るのでは、後者は力が分散されるので不利だ。体の浮力以外で上向きの力は不要だろう。だから、フェルプスも水平に蹴るとして、ターンの後、体が水面と並行ならば水深は関係なく何の問題もないだろう。しかし、上昇するためにわずかでも斜め上向きになって、体の角度と同方向に進むならよいが、角度と進行方向がズレると投影面積が増えて水平方向に対して抵抗が増える。
 バタフライならば、最初の息継ぎで顔を出す時に浮力が強ければ助けになる。しかし、フェルプスの腕力ならば泳力にさほど寄与するとは思えないし、リスキーだ。
 結局、造波抵抗を避けて水面下ギリギリを水平に泳ぐのがいいのだろう。
そうすると、クイックターンもコンパクトに高速で回り、強く蹴る技術が必要だ。

 50年以上前の東京オリンピックの時のことを覚えている。当時から競泳にクイックターンが用いられていた。自由形の短距離でもやる人とやらない人(1:18:00)がいて、ターン後に頭一つほど差が出来たと覚えている。男子1500m自由形では全員やっていなかった。決勝レースで2位の選手が最後のターンで力をふり絞ってクイックターンをしたのを、アナウンサーが驚いていた。
 当時は自由形(フリースタイル)なのにターンする時に、先に手でタッチしなければならない(1:12:30)とか変なルールがあった。背泳ぎでは海老反りになって(1:13:51)クイックターンをしていた。その後の大会ではルール改正もあってかクイックターンが常識になった。当時は呼吸の乱れ等を考えるとしない方が有利という考え方もあったかもしれない。

 私は十数年前に見様見真似でやっていたが、それをやった日はくしゃみが止まらず止めてしまった。今なら鼻栓を使うから問題ないが、54年前と同様でしなくても差がないという判断で、蹴る高さも関係ない。 (2018/10/15)


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