毎週Web句会掲載一覧

袴田朱夏言の葉の床

二〇一八年

飲んで詠まれる句の身にもなれよ俺

丸投げの仕事丸めて投げ返す

歳時記に吸われ真冬が死んでゆく

初恋のおかげで狂ってもリズム

秒針を西日が滑り落ちて夜

白線をジャージの本体にしない

ラスボスもサンタも概念になった

ちぎったらちぎった分を頬にせよ

二〇一九年

メンバーズカードを切った修行僧

想っても体温計は嘘をつく

真っ白なフラペチーノは嘘のあと

ハラペーニョ脱力できぬ舌の罠

偽物の窓に映ってしまう霊

乱切りの胡瓜頂点から着地

ひところの茄子のかたちで昼寝する

展示前学芸員の椅子沈む

ランキング外の地元の村八分

信じ方講座から始まる教義

パレードの空にも波は映らない

にゅう麺で豆腐を縛るような嘘

具体例なくても飯は食えました

突き詰めてみれば生え際だけの人

ミッキーをミケランジェロと呼び直す

題「交わる」二句

交わりを断った罅から曼殊沙華

鬼紅し短詩の径が交わりぬ

パワハラも逃げて最後の焼け野原 -->

ゴミ箱が動いてそれが父だった

たのしみにされない人の視る画面

てんてんがてんてんてんになる時刻

全員がただのじいさんの外側

二〇二〇年

独りだと思うときの海でいてね

隠語ごとちゃぶ台返しして大人

死ぬときは透き通らない翅がいい

会見にトイレも含まれています

訊かれても俺は遅さの専門家

靴音であなたとわかるダメな耳

カギかっこだけで都市計画を練る

面白くないほうばかり薔薇がつく

締切の向こうにペンを投げている

東京のいいところだけ舐めてきた

自粛ボケした学生に急かされる

題「羨む」

三男のうらやみ方を手本とす

月曜日だけはきれいな更衣室

最適化されても渦は渦でいる

居酒屋で冗談禁止キャンペーン

積ん読の指定席から青い水

やわらかくなったばかりの首都に行く

くぐられていないのれんがなびく春

幸福論昨日の妻が今日も妻

木曜に金曜感がある家路

悲しいと決めつけられた国境

マウントを取るなら俺はエベレスト

題「蓋」

嘲りがイオンチャネルに蓋をする

笑うまで時間がかかる夜でした

いつまでも革命前夜のテーブル

全天をミュートとなりの雪トトロ

青春の反対側で光ります

デバイスをデバと略して試すこと

つぶやきのはるか下方に人気者

やりすぎたフリルみたいな比喩ですね

映えちゃったパンケーキにもちょっと罪

思い出に順位付けする解脱前

あの子ならあの子の恋を飛んでるよ

ワッシャーの穴の重さのぶん浮いた

題「再生」

もう一度生かされている堀辰雄

クレヨンの寿司で解消する悩み

才能が詩人を通り過ぎて滝

父親としての自覚で踏むムカデ

失敗を繰り返しても大きい手

傾いた地軸のせいで好きになる

教科書を見ない若さの使い道

擬人化を赤字路線のバスが待つ

二〇二一年

新しい桟橋にふさわしく恋

禁断の実は必ず食べる

陰謀をキスで消せないオンライン

回転の自由で抜ける祝賀会

以降、ツイッター上での「毎週web句会のいいね」による選句

石鹸でできたロボットだけ通る

最密になれずクロワッサン食べる