ざるそば・ぶり塩焼き
2017.07.22
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7月も半ばを過ぎていよいよ夏らしくなってきた中、やってきました日本海食堂。今日はメニュー看板には
ないざるそばを注文すると、最初から決めての来店です。あとショーケースのおかず群からもう一品欲しいと
ころですが、酢の物はさっぱり過ぎるし、煮物では汁気が重なるなあ・・・よしこれ、ぶり塩焼きいっときま
しょう。旬は完全に外していますが、この季節のさっぱりしたブリもそれはそれで美味しいですからね。ポッ
トの冷水を入れて、いつもの席に着きます。
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座敷席の巨大なクーラーがヴヴヴヴヴと唸りをあげ、天井では扇風機がゆったりと空気をかき回しています。
その羽が遮るたびに蛍光灯がまたたいて、なんだかノイズの多い古い8mm映像を見ているみたい。ああ、こ
れもたまらなく日本海食堂らしい雰囲気・・・。
しばらくして、ざるそば&ぶり塩焼きがやってきました。プラスチック製のせいろにこんもりと盛られた薄
灰色のそばは、刻み海苔のトッピングが実にトラディショナルな見た目。大き目のそば猪口には透明感のある
ツユが注がれ、添えられた薬味は刻んだ青ネギと練りワサビ。私は生卵が苦手なのでうずら玉子がついてきた
らどうしよう・・・と心配でしたが、ほっとしました。
そばが伸びないうちに手早く撮影を済ませ、まずはどっぷりとつゆに浸したそばをひとすすり。おお、この
細めの蕎麦のきりっと立ち上がった角が、なんとも涼しさを感じさせます。関西人の私としては夏は冷やしう
どんの方が馴染みがあるので、素朴なのに洗練されたそば独特の風雅な印象がとても新鮮。そばつゆは辛さほ
どほどで、むしろ甘みが勝った味わい。青ネギの清涼感と練りワサビの刺激をいい塩梅に緩衝しています。
それにしても、そばを語る際にしばしば問題になるのが一口分のそばに対するつゆの比率ですが、この場合
はどうするのが正解なんだろう。試しに一口分の蕎麦をつゆにちょっとだけつけて食べてみましたが、うーん、
よく分からん・・・。この甘味が立ったそばつゆが気に入った私としては、どっぷり浸して食べるのが美味し
い気がします。
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それにしても青ネギと練りワサビ、そしてそばが力を合わせてそばつゆの旨味を引き立てている様なこの感
じ・・・そばについて色々語れるほどの教養人ではない私としては、ざるそばと銘打ちながらも実はそばつゆ
の方が主役なんじゃないだろうか?という気がします。
ちゃんとしたそば専門店で食べれば違う印象になるのかもしれませんが、うーん、そばの美味さって何なん
だろう。美味しいものを美味しいと知らないまま人生を終えるのは損だと思っているので、一度きちんとした
そば屋さんで勉強してみたいものです。
おっと、冷めないうちにぶりの塩焼きも。表面をきれいに焙られたぶりの切り身は、とても美味しそうなき
つね色。背中の身を箸で突き崩して、まずは一口頂いてみましょう。
ほほう、脂が軽いのはこの時期当然ですが、このみっしりと詰まった筋肉質な味わい・・・。サバの身をぐ
っと上品にして臭みを抜き、そこに爽やかな旨味を載せた様な、いかにも夏のぶりらしいこの個性。冬場の脂
じっとりのぶりも最高ですが、このさっぱりした味わいも捨てがたいものがあります。
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それでも腹身のあたりにはぶりらしい脂の乗った味わいがありますし、カリカリに焼けた皮の香ばしさ、そ
してこの野性味に溢れた血合いのコク・・・。冬場のぶりがむちむちうっふんな色っぽい味わいだとすれば、
夏のぶりは太い二の腕の力こぶを誇っている様な、男性的な味わい。これが同じ魚なのかと驚かされる、正反
対の個性です。これは冷えたごはんに冷たい番茶をかけて、キュウリの糠漬けといっしょにさらさら頂きたい
一品ですね。
ふと周囲を見渡すと、なんとなくいつもの日本海食堂とは雰囲気が違う事に気がつきました。上手くは言え
ませんが、ちりぢりばらばらに座っている人達の中に一種の連帯感というか、共通項みたいなものが感じられ
る気がします。
なんだろうこの、馴染みのない会社の社員食堂にいる様な感覚・・・あ、もしかしてこの人達は、隣のリッ
チェルの工場の人達かな?ワイシャツにネクタイ姿という、日本海食堂ではあまり見ない服装の人も混じって
いますし。
きっと納期の関係で事務仕事的な休日出勤を余儀なくされたものの、今日は土曜日なので社員食堂はお休み。
じゃあたまには隣にある風変わりな食堂に行ってくるか・・・そんなホワイトカラーの人達なのかもしれませ
ん。
正直気乗りのしない休日出勤ですが、いつもと違う人気の少ない社屋やしんと静まり返った構内通路は、な
んだか新鮮な気分。拘束されてるのに不思議と感じられる開放的な気分のまま、たまには外で食べるのも悪く
はないな・・・そんな仕事スタイルなのに緩やかな雰囲気を漂わせた人が多いのが、違和感の原因でしょう。
普段は道路工事や農作業、建築作業や配送の途中でお昼に立ち寄る人が多く、どこか飯場チックな空気が漂
うお昼の日本海食堂ですが、こんな表情を見せる日もあるんですね。
ざるそば600円、ぶり塩焼き400円。日本海食堂に通い始めて2度目の夏、またひとつこの食堂の新た
な一面を垣間見る事が出来た・・・そんな満足感に浸りながら、車に乗り込みました。
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