自衛隊用語辞典



隊員さんにお話を伺ったり書籍などで知った知識を、辞典形式にまとめてみました。
具体的な数値や客観的な視点を敢えて無視している場合があり、中には
自衛隊とは関係の無い項目も混じっていますが、まあ気にしないでください(笑)。
用語の記載に当たってできるだけ調べてはいますが、「ここ間違ってるよ!」という箇所があれば、
お手数ではありますがトップページの『ご意見ご感想』よりお気軽にご指摘の程、よろしくお願いします。
当方にて再度確認の上、加筆訂正させて頂きます。

最新の更新
19/12/27 27項目追加&加筆訂正しました♪
『アクティブ・ソナー』 『アンカー』 『員数』 『員数外』 『エト袋』 『円匙』 『小樽愛の寿司』
『舵取機室』
『神棚』 『基本七部署』 『ぎまん装置』 『強化米』 『自衛隊式腕立て伏せ』 『潮気』
『士官室』 『識別帽』 『実習中につき・・・』 『女性名詞』 『潜水艦乗員待機所』 『ドルフィン機動』
『中編上安全靴』 『にーてんやーまる』 『年次修理』 『マムシ』 『右側通行』 『双眼鏡』 『ヨーソロー』




 

    【アーマー】 あーまー  
        銃弾や砲弾から身を守るための防護服、防弾装甲板を意味するが、旧海軍では食パンのミミの部分を指し
       てこう呼んだ。
        脚気予防の観点から、白米よりもビタミンB群が豊富に含まれるパン食が導入されたが、当時の製パン技
       術は現代に比べてお粗末なシロモノで、堅くて不味い耳の部分を避け、真ん中の柔らかい所だけを食べよう
       とした水兵が続出。そのたびに調理員達は
        「コラッ!貴様らアーマーも食え!」

        と怒鳴っていたそうな。
        ただ、年季の入ったベテラン下士官だけは黙認されたとか。



     【アーレイ・バーク】 あーれい・ばーく   
        アメリカ海軍のアーレイバーク級イージス艦の一番艦。タイコンデロガ級の後継として建造され、海自の
       こんごう型イージス艦のモデルにもなった。
設計段階からイージスシステムを搭載する事が念頭に置かれ、
       タイコンデロガ級では2セットだったフェイズドアレイレーダーを4セット装備している。
        この艦名は、太平洋戦争で数多くの武勲をたてたアーレイバーク提督の名前に由来している。このアーレ
       イ・バーク提督、当時は敵国である日本を人一倍憎んでいたが、海上自衛隊創設にあたり旧日本海軍の将官
       達と交流する内に大の親日家となり、海上自衛隊が一日も早く軍事的な体勢を整える事が出来るように尽力
       した。
        その功績を称えられ、後年日本政府から勲一等旭日大綬章を授与された事を、本人は生涯最高の名誉と感
       じていたそうである。
        戦中戦後を通じて数え切れないほどの勲章を授与された提督であったが、亡くなった時はそれらの勲章で
       はなく、日本から授与された旭日大綬章ただ一つを棺の中に一緒に収める様言い残したという。黙祷。



    【赤レンガ】 あか・れんが  
        広島県江田島にある、海上自衛隊幹部候補生学校の象徴とも言うべき学生舎の別名。その全長は戦艦大和
       とほぼ同じであり、きっちりと東西に合わせて建っている。明治時代に建築された際に、イギリスで買い付
       けた大量の赤レンガを一つずつ油紙で包装して輸入したと言う逸話がある。
        ちなみに学生舎玄関ホールの床板は、帝国海軍の軍艦であった初代『金剛』の甲板のチーク材を使ってい
       て、よく見ると所々にビス止めの穴があいている。
        そのほか敷地内には電柱が一本も無く、ポストは古風な円筒形。まるで時代を遡った様な雰囲気に満ちて
       いて、ウブな新入生を帝国海軍魂で燻製にしてしまう。歩いている隊員さん達のシャキシャキ度が、他の海
       自施設と比べて明らかに高い
のも特徴か。



 new!!【アクティブ・ソナー】 あくてぃぶ・そなー 
        水上艦もしくは潜水艦が海域に潜む目標潜水艦に対して自ら探針音(音波)を放ち、反射して戻ってくる
       音波の方向や時間差から、目標潜水艦の正確な位置を算出する装置。原理的には魚群探知機とほぼ同じよう
       なものである。
        ただ、探針音の発生源であるこちらの位置も知られてしまうので、潜水艦の場合はそうそう使う事はない
       昔と違って現在ではパッシブソナーでも目標潜水艦のおおよその位置は特定でき、魚雷の誘導技術も進化し
       ているし。
        あえて使うとすれば、それこそ絶対安全な状況を確保した上で敵潜水艦に対して魚雷を発射する直前のみ
       であろう。



     【脚】 あし  
        航空機や車輛の航続距離をさす。燃料搭載量が多かったり燃費がよく航続距離が長い機種を、
        「この機体は脚が長いな」
        と肯定的に表現する。
        艦艇ではあまり使わない表現だが、外洋型の護衛艦の場合、燃料満載で出港するとハワイ程度なら楽々往
       復出来る
上、燃料よりもむしろ食料などのその他消耗品の方を先に補給する必要があるせいか。



     【厚木マーカス】 あつぎ・まーかす  
        海自厚木航空基地隊員によるサッカーチーム。自衛隊サッカー選手権12連覇という大記録を誇り、社会
       人アマチュアサッカーでは全国屈指の強豪である。何故か元Jリーガーがいたりいなかったり。



     【嵐】 あらし  
        水上艦にとってはこの上なく迷惑であるにもかかわらず、潜水艦にとっては非常に有り難い気象状態。
       れている海域に水上艦は近寄らないし、哨戒ヘリや固定翼機も来ないので、発見される可能性は低くなる。
       
ここぞとばかりに潜望鏡深度まで浮上して、サニタリータンクをブローしたりシュノーケルを上げて換気
       たりバッテリーをフル充電したりのやりたい放題。全くもって嵐さまさまである。



     【アルバロ・デ・バザン】 あるばろ・で・ばざん  
        スペイン海軍が保有するイージス艦一番艦。満載排水量6250tと、海自のこんごう型に比べるとふた回り
       近く小型だが、名前がミョーに強そうと評判。
        ちなみに管理人が最も脱力した名前のイージス艦は、アメリカ海軍の『オカーン』。残念ながら『オトー
       ン』
は無かった。



 new!!【アンカー】 あんかー  
        艦艇を海上の一点に固定するために、海底に降ろすの事。水深の10〜20倍近い長さの錨鎖も海底に
       這わせる為、実際には錨そのものよりも鎖の重量と摩擦抵抗の方が効果を発揮している。
        水上艦では艦首付近に見られるお馴染みの装備品だが、潜水艦の艦底部にもマッシュルーム型の錨がつい
       ている。
        また、熟年離婚がいよいよ笑い話ではなくなってきた隊員の退職金を指す時もある。切ない。



     【アレスティング・フック】 あれすてぃんぐ・ふっく   
        航空機の尾翼下部に取り付けられている、金属製の棒状のフック。これを空母の甲板に展張させたワイヤ
       ーに引っかけて着艦(タッチダウン)する。
        機体トラブルで着陸後の急制動が不可能になった機体を、地上基地の滑走路で減速させる時にも使用する
       ので、空母での運用を行わない空自の戦闘機にもついている。
        また史村翔原作・新谷かおる作画の『ファントム無頼』では、米海軍のファントムが落下してくる人工衛
       星をこれで引っかけて回収
しようとする場面があったが、物凄い発想力である。
        ちなみに米海軍航空部隊のパーティーでは、シャンパンを流しかけた長大なテーブルを飛行甲板に見立て、
       助走をつけて頭からテーブルに滑り込み、テーブル端までの距離を競い合う“タッチダウン”という定番ゲー
       ムがある。
        うつ伏せになって両手を広げ、航空機になった気分でテーブル上に着艦するわけだが、この場合のアレス
       ティングフックって・・・。



    【アンチローリングタンク】 あんち・ろーりんぐ・たんく  
        艦の左右両舷にまたぐ形で水を入れたU字型のタンクを取り付け、その上部をパイプで繋いだもの。タン
       ク内の水が海面と同調して揺れと反対方向に移動する原理
を利用して、異なる位相の別の揺れを発生させ
       の横れ(ローリング)を防止
する。
        正しくは減揺装置と言い、高層建築物の耐震装置にも同じ原理のものが使われている。
        海上自衛隊では、ひうち型多用途支援艦の4番艦AMS4304げんかいから採用され、外洋における居
       住性や運用性が向上
している。が、タンクそのものの容積が大きく、艦内スペースが犠牲になっている側面
       もある。
        また、水タンクの位置が高ければ高いほど減揺効果が向上するが、重心が上がって逆に艦そのものの復元
       力を低下
させてしまうという欠点もある。
        その一方で、設置コストが低くメンテナンスも簡単機関を停止している時でも一定の効果が見込める
       いう利点もある。



     【アンパンマンのマーチ】 あんぱんまん・の・まーち  
        心肺蘇生法で行われる胸骨圧迫のペースは100回/分であり、これを体に覚えさせるために最適なのが
       この曲である。陸上自衛隊では教育隊や海外派遣前の訓練など、様々な場面でこれを訓練するが、部隊によ
       っては戦闘服姿の隊員さん達が手拍子を打ちつつ大真面目に輪唱する様子が見られ、なかなか味わい深い。



    【言う事聞かん銃】 いう・こと・きかん・じゅう  
        62式7.62o機関銃の別称、もとい蔑称。1962年より制式採用された戦後初の国産機関銃だが、デザ
       インは完全に戦時中の趣を引きずっていて、見ようによっては89式小銃や対人狙撃銃がオモチャに見える
       
ほどのカッコよさを持つ。
        しかし現場の隊員からの評判は最悪に近く、「クソ重い」「すぐ壊れる」「引き鉄を放しても連射が止ま
       らない」
等と散々なものである。現在では後継のMINIMI(すごく優秀)にとってかわられ、殆ど使用
       される事は無くなっている。が、廃棄処分するにもそれなりの手続き予算が必要なので、半ば塩漬け状態
       
にされている。
        その一方で、10sを超す重量と標準装備された2脚のお陰で意外なほどの命中精度を誇るが、信頼性の
       低さというデメリット
を覆すまでは至らなかった。
        また、ごく少数ながら「うちの分隊の62は故障知らずでしたけど・・・」という声もあるが、同一規格
       で作られた工業製品ではありながら、かなりの個体差がある様だ。
        結局管理人が何を言いたいのかというと、エロDVDでハズレを引いても気にするな、と言う事である。   



    【医官】 いかん  
        防衛医科大学校を卒業した、医師の国家資格を持つ自衛官。陸海空の各自衛隊が運営している病院や基地
       駐屯地、艦艇等において、隊員やその家族の診療、健康管理指導、環境衛生を行っている。
        防大の学生同様に入学した時点で防衛省職員という扱いになるので、学費免除の上在学中も手当がつくが、
       卒業後9年間は自衛隊の医師として勤務する義務がある。しかし基本的に自衛官は頑丈で体力があり、訓練
       中の安全管理もうるさい
ため、現場での臨床経験に偏りが生じやすい。その為、今後の医師としてのスキル
       アップに不安を憶え、9年の任期を満了せずして退職し、独立行政法人等の病院へ移る医師も多い。
        その際は、残りの任期に応じた経費を国庫に償還しないといけないが、最近は段階的ながらも一般外来診
       療
を拡大しつつあり、様々な症例に応じた経験を積むことが出来るようになっている。
        自衛官なので当然階級があるが、やはりお医者の先生なので一尉の医官が一佐に敬語を使われる事も珍し
       くなく、なんだかちょっと変な光景。また、公募試験を経て民間から採用される場合もあるが、その際は入
       隊前の実務経験や年数に応じた階級が与えられる。



     【市ヶ谷警備隊】 いちがや・けいびたい  
        市ヶ谷にある防衛省がまだ庁だった時代に、庁舎の警備を行っていた部隊。全国の陸自各部隊が持ち回り
       
で担当していた一ヶ月ほどの本庁への出張だが、仕事は楽だし当直後や非番の日は自由なので、地方の隊員
       にとっては憧れのお仕事。
        上官や家族の目の届かない都会でここぞとばかりに遊びまくる訳だが、羽目を外し過ぎて消費者金融のお
       世話になってしまう隊員もいたとか。その所為か、ある程度貯金を持っている真面目な隊員でないとお鉢が
       回ってこなかったという噂も。
        ただ現在では、防衛省の警備は競争入札を経て民間警備会社に委託され、地方部隊のささやかなお楽しみ
       は無くなってしまった。



     【一日三百歩】 いちにち・さんびゃっぽ  
        陸海空三自衛隊の中で最も運動不足を誇る潜水艦の某乗組員が、万歩計をつけて一日計測してみたデータ
       らしいが、マジ?
        と言う訳で、現役の潜水艦乗りに実際に聞いてみたところ、
        「んん〜、どんなもんですかねえ。私の場合、起きて食堂でメシ食って、トイレに行って、持ち場につい
       て、また食堂でメシ食って、ベッドに戻って、一日は終了ですけど」

        ちなみに、ベッドから食堂までは?
        「10歩ぐらいです」
        との事であった。



     【今津駐屯地】 いまづ・ちゅうとんち  
        滋賀県高島市に所在。第3・第10戦車大隊と2つの師団の戦車大隊を擁しており、中部方面隊最大規模
       のあいば野演習場に隣接している関西・中部地方の戦車どころである。
        また、近隣駐屯地の創立記念行事に屋台を出店してはどさくさにまぎれて演習地で採れたたけのこを販売
       し、ささやかなお小遣い稼ぎをしている事でも知られている。
        この件に関しては、ごく一部から「演習地のたけのことは言え、国有財産の一部ではないのか?」という
       無粋極まりない意見が上がったが、何だかとてもカワイイので問題ない。
        海自も見習って、体験航海等で鮮魚の朝市を開いてはどうかと思うが、カニやアサリの密猟が主任務にな
       っている某国海軍みたいなので止めた方が良さそうだ。



     【威力偵察】 いりょく・ていさつ  
        偵察行動中の部隊が敵陣地を発見した際に、ちょっとだけ攻撃してみて返ってきた反撃の強さ、早さ、使
       用した火器の種類等から、敵陣地の大まかな戦力を探る事

        戦力のわからない相手を小突いてみるという極めて危険な行動であり、これを担当する各師団旅団の偵察
       隊
や各部隊の情報小隊は、冷静な判断力豪胆さを持ち合わせた精鋭ぞろいである。
        また、上官の機嫌の良し悪しを探るため、あえてちょっとだけ話しかけてみることをも指す。ニコニコ顔
       の返事
が返ってくる時もあれば、ヤブヘビになってしまう事も。こちらはもっぱら部隊で最も立場の弱い隊
       員
に押しつけられる事が多いとか・・・。



 new!!【員数】 いんずう  
        装備品や物品ごとに割り当てられた既定の数量、また訓練に参加する隊員の頭数を指す。必ずしも必要に
       応じた数が用意されるとは限らないのが苦しいところ。
        使用例:「フネばかり作っても、肝心の員数が追いつかないから仕事が増えるばっかりですわ」



 new!!【員数外】 いんずう・がい  
        既定の員数に含まれていない、イレギュラーな余剰品の事。本来あってはならないものだが、物品等を紛
       失してどうしても見つからなかった場合、点検前にどこからともなく速やかに調達される事もある。
        使用例:「班長、いくら探しても空薬莢が一つ足りません(泣)」
            「仕方ねーなー(ポケットをごそごそ)、員数外だが、ホレ」



     【インポ】 いんぽ  
        航空管制用語。航空機の滑走路内への進入許可及び滑走路エンドでの待機を指す、『Taxi into
      
position and hold』の略である。航空自衛隊だけでなく民間の空港でも通じる。
        新人のまだ初々しい女性管制官が、うつむいて顔を赤らめつつ
        
「い、入れて(滑走路に)…インポ…」
        などと指示しているのを想像すると実に微笑ましい気持ちになるが、田○陽○様似の管制官が
        「はいはい、インポインポ!」
        
とのたまっているのを想像すると、どうにもこうにも頂けない・・・。
        ただ、現在は『line up and wait』という言い方に変わっているので、そんな心配は無
       用である。



    【ヴァイタルパート】 うぁいたる・ぱーと  
        Vital Part、いわゆる艦艇の急所、弱点の事。弾薬庫機関室燃料庫等の戦闘や航行に関す
       る特に重要な区画を指し、強度の高い構造材を使ったり隔壁の厚さを増したりと、区画の装甲が特に強化
       れている。
        しかし現代の海上戦はノーガードで大砲をぼかすか撃ちあう時代ではなく、誘導技術や電子戦能力、ステ
       ルス性、エンジンの瞬発力が飛躍的に向上しているので、いくら重要区画の防御力が高かろうが一発食らえ
       ば戦闘継続は困難
火砲の威力と装甲の防御性を比べると圧倒的に前者が有利であり、装甲そのものの重要
       性は以前に比べてもさほど高いとは言えない。もはやひと昔以上前の概念となっている。



     【ウィスキー・オン・ザ・ロック】 うぃすきー・おん・ざ・ろっく  
        1982年、旧ソ連のW(ウィスキー)級原子力潜水艦がお粗末極まりない航法ミスを起こし、予定のコ
       ースから18qも外れた
上にスウェーデン領海に迷い込み、よりによってカルルスクルネ海軍基地の目の前
       で座礁。西側諸国を爆笑の渦に巻き込んだ。その当時のある新聞の見出しが、
        『ウィスキー(W級原子力潜水艦が)・オン・ザ・ロック(座礁しました)』



    【ウィンナー缶】 うぃんなー・かん  
        戦闘糧食T型の乾パンとセットになって出て来る缶詰。缶のリム部に沿って小型缶切りがはめ込まれてい
       るが、その表面には『10円玉で外して下さい』と書いてある。
        前線で小銭の持ち合わせが無く、掩体の中で呆然と立ち尽くす隊員さんの姿が目に浮かぶが、実際は10
       円玉を使わなくても指で簡単に外れる
ので安心してほしい。
        ほぼ同内容の缶詰が明治屋ノザキから出ていてスーパーでも購入出来るが、味は変わらないのに何故か
       戦闘糧食の方が美味しく感じられる
のは不思議。



     【ウェルデッキ】 うぇる・でっき  
        おおすみ型輸送艦の艦尾にある、LCACを2隻搭載できる格納庫の事。護衛艦ではなかなか見られない
       広大なスペースだが、これでもでかいLCACギリギリの幅しかなく、格納時の左右の余裕はわずか50p。
        よくもまあこんな狭い所に上手に入れるものだと感心するが、よく見ると壁面に貼りつけられた保護パネ
       ルには、無数のこすった跡が壁画の如く描かれているのであった。



    【ウォータージェット推進】 うぉーたー・じぇっと・すいしん  
        船底のダクトから船内に引き込んだ海水中でタービンポンプを回転させ、船尾より高圧のジェット水流
       して吹き出させる推進方式。海上自衛隊でははやぶさ型ミサイル艇に採用しており、40ノットを越える超
       高速
を誇る。
        船底にスクリューがむき出しになっている従来の艦艇に比べると、キャビテーション(泡)による推進力
       のロスが少なく、スラストリバーサーを使用した逆進も容易。
        短所としては、構造が複雑建造費が高くつく。さらに船内容積を食う上に燃費もかかる。また、低中速
       域
ではダクト内での海水の摩擦抵抗が発生するので、推進力のロスが大きくなる。
        また、ダクトから海面の漂流物を吸い込むとタービンポンプが破損してしまうので、陸地に近い海域
       風の後
等は、特に厳重な警戒が必要になる。
        とは言え、高速で逃げ回る某国の不審船対策としてはこの上なく効果的であり、攻撃的なミサイル艇の性
       格にも最適
。その韋駄天ぶりは展示訓練等でも非常にインパクトがある為、はやぶさ型ミサイル艇の人気は
       高い。



     【右舷】 うげん  
        艦橋から艦首に向かって、艦の右半分の事。体験航海等では乗艦者にも分かりやすい様に「みぎげん」と
       言い換える隊員さんもいるが、正しくは「うげん」である。同様に、「ひだりげん」でなく「さげん」が正
       しい。



    【ウソッパチ】 うそっぱち  
        66式鉄帽(通称テッパチ)のニセモノ。プラスチック製(本物は合金製)なので強度的に極めて劣るが、
       軽くてラクチンなのでこっそり入れ替えて使う隊員がチラホラいた。迷彩カバーを被せるとパッと見ではま
       ずバレなかったため、長距離行軍等では便利なシロモノであった。
        しかしその軽さ故、強風が吹いた時にウソッパチだけが飛ばされてインチキがバレたというトホホな事件
       が続発。顎紐をきちんと締めるという基本を怠ると、こういう事になる。

        現在ではフリッツタイプの88式戦闘帽に切り替わっており、こちらは最初から強化プラスチック製。そ
       の分、正規品ではないコピー品の方をウソッパチと呼んで区別している。



     梅津三郎】 うめづ・さぶろう  
        護衛艦みらい艦長、一等海佐。穏やかで冷静沈着。懐も深く、多くの海上自衛隊隊員にとっての理想的な
       艦長像
であろう。
        かわぐちかいじ著『ジパング』には、その他数多くの幹部自衛官達の姿が描かれており、海上自衛隊幹部
       候補生学校でも
        「メガネの君はヨネクラ型かな〜?」
        「違わい!クールで知的なキクチ型だい!」

        等と、その人物評価や理想像の物差しになっているとか。
        ちなみに管理人はウメヅ型だが、ウメヅはウメヅでも楳図かずおのウメヅなので、艦長どころか幹部自衛
       官としての適性も怪しいものである・・・サバラ!



    【梅干し】 うめ・ぼし 
        海上自衛隊幹部候補生の遠洋航海には欠く事のできない主要装備品。日本各地を回る内地巡航の段階では
       殆ど見向きもされないが、約半年かけて世界各国を巡る遠洋航海に出て一か月もたつと、日本恋しさから
       費量が急増
。その価値が大きく見直される事となる。隊員さん曰く、『司令を忘れても梅干しは忘れるな!』



     【衛生煮】 えいせい・に  
        旧海軍時代の海軍経理学校から伝わる煮物料理。様々な肉や野菜を甘辛く味付けし、当時は貴重品だった
       卵
でとじたシロモノである。昔は栄養衛生の区別がはっきりしておらず、おかげでこんな消毒液臭そう料
       理名
になってしまった。あんまり美味しそうに思えない。



 new!!【エト袋】 えと・ふくろ  
        船に弱い人にとっては航海中に手放せなくなるビニール袋。俗に言う『エチケット袋』の略。
        海自隊員でも艦艇に乗り込んで間もない期間は、ポケットにビニール袋が入っているのが常だが、お世話
       になるのはしばらくの間だけで、そのうち時間とともに体の方が適応してしまう
        おおすみ型輸送艦に搭載されるLCACは、船に慣れない陸自隊員を乗せる事が多いため、市販の固める
       タイプのエト袋
が座席の隙間に押し込まれている。もっともLCACの場合は、船酔いの原因は揺れという
       よりも強烈な振動と爆音の所為と思われるが。



     【X舵】 えっくす・かじ  
        潜水艦の舵の形状。従来の上下左右方向の十文字ではなく、それぞれを45°傾斜させた、真後ろから見る
       とX状に見える舵
の事である。海自ではそうりゅう型から採用された。その利点としては
          @:舵が2枚まで損傷しても、残りの舵で三次元的な水中運動が可能
          A:海底に着底したり埠頭に横付けした際に、舵の尖端を損傷しにくくなる
          B:低速時の旋回性能が向上
          C:浮上航行時はネコミミみたいでちょっとカワイイ



     【F作業】 えふ・さぎょう  
        海上自衛隊の艦艇で釣りをする事。航行中の余暇としてたまに行われ、この時ばかりは数十億円とも言わ
       れる水中ソナーもただの魚群探知機に(?)
        シイラやヨコワ、カツオ等を釣った隊員は艦長から直々にお褒めのお言葉を頂戴したりするが(一番美味
       しいところは艦長に回されるため?)、間違っても釣ってはいけないのはイカ。甲板や作業服がスミだらけ
       になって、ブーイングを浴びる羽目に。
        ただ、潜水艦に限っては大した問題ではなく、
        「哨戒長!甲板がイカのスミで汚れてしまいました!」
        「おっしゃ、潜航用ー意!」←実話

        それ以外にも艦内では、まれに刺身が出たりすることはあるが、やっぱり冷凍モノなので今いち美味しく
       ないらしい。
        ちなみに、P作業はパチンコ、G作業はゴルフの意。



     【FTG】 えふ・てぃー・じー  
        leet Training Group(海上訓練指導隊)の略称。新造艦や長期間のドック入りを
       終えた艦が部隊配置に就く前に行われる練成訓練を、厳しく厳しく厳しく指導・評価する。
        短くて2週間、長いと2ヶ月以上に及ぶが、構成されるメンバーはいずれも艦長や分隊長、先任海曹を歴
       任した屈強のベテラン揃い
で、艦内のありとあらゆるアラ探しを得意とする。細かなミスも絶対に見逃して
       くれない、恐怖の存在と言える。
        この人達が艦に乗り込むと、どこに行ってもピリピリした空気になって大変。



     【LCAC】 えるきゃっく  
        anding raft ir ushion。おおすみ型輸送艦に2隻搭載されている、ホバ
       ークラフト型揚陸艇。

        従来の平底船底型輸送艦に比べて格段に輸送効率が高く、空荷の時は時速50ノット(約93q/h)で航
       行可能。最大75トンもの物資や人員を搭載し、高さ1m程度の障害物なら難なく乗り越えて上陸できるス
       グレモノで、スピンターンも楽々こなす。人員輸送用モジュールを搭載すれば、最大180名の兵員を上陸
       させる事が出来る。
        その反面、でかい図体が故に横風に流されやすく、操縦は極めてデリケート。ただ、初期に関わった隊員
       に言わせれば、約1年の教育はアメリカで行われた為、操縦そのものよりも英語での教育訓練の方が遥かに
       大変だった
とか。ちなみに現在は、乗組員の教育は呉で行われており、マニュアル類も全て日本語に訳され
       たものである。
        当初は個々の輸送艦の搭載艇扱いであったが、現在はエアクッション艇隊として独立し、柔軟で効率的な
       運用が図られている。が、未だに『エアクッション艇1号』『エアクッション艇2号』呼ばわりなのはちょ
       っと味気ない。早く名前をつけてあげて欲しいものである。個人的は『あじさし』とか『みさご』はどうだ
       ろう。



     【遠泳訓練】 えんえい・くんれん  
        海上自衛隊幹部候補生学校名物の、15q遠泳。スピードを競う訳ではないので、朝から夕方まで時間を
       かけて全員で泳ぎきる。毎年何人か全くのカナヅチのまま入校してくる一般大学出身者がいるが、事前に行
       われる一ヶ月の特訓で、そんな学生も何だかんだで泳ぎ切ってしまうのだから凄いものである。
        雨天・荒天の場合は校内の室内プールを使ってひたすら泳ぐ事になるが、あまりに単調過ぎてある意味こ
       っちの方が地獄の体験
と言える。
        ちなみに昼食は、監視に当たっている伝馬船にしがみついて食べるとの事。メニューは大体決まっていて、
       焼きおにぎりや漬物、バナナ、ちくわ等。
泳いでいると時折前の方から洗面器が回って来るが、中には栄養
       補給の氷砂糖が入っている。
        また、乾パンがばらまかれる事もあるが、独特の甘味に海水の塩味が加わって意外と美味しいらしい。そ
       のおこぼれを狙って水鳥が学生の後をついて飛んでくるのがカワイイが、泳いでいる学生からすると群れか
       らの脱落者をつけ狙うハイエナ
のように見えて結構怖いとか。
        ちなみに、○○○は泳ぎながらするとの事。



     【塩素ガス】 えんそ・がす  
        海水と蓄電池の電解液が混ざった際に発生する、極めて有毒なガス。これを吸入すると酔っぱらった状態
       になり、場合によっては簡単に死に至る事も。潜水艦乗りにとっては、酸素切れよりもこっちの方が現実的
       に遥かに怖い



     【掩体】 えんたい  
        遮蔽物の少ない戦場で、兵士や車両、火砲等を敵から隠すために地面を掘り返して作る穴ぼこ。及びその
       穴ぼこ同士を連結する通路
の事。別名タコツボ。
        戦車や火砲、作戦司令部などの大規模なものは重機を使ってがーっと掘ってしまうが、数が足りないので
       小規模なものは
人力と円匙(えんぴ、スコップの意)でひたすら掘り進む。
        崩れにくく隠れやすい掩体を素早く作るには経験体力が必要で、訓練された普通科隊員は、重機慣れし
       たそこらの土木作業員の兄ちゃんよりも遥かにいい仕事をする。
        ただ、演習地で苦労して作り上げた立派な掩体も、撤収の際には再び埋め戻さないといけない。ボロボロ
       に疲れ切った体で、
        「何の拷問なんだよう・・・」
        とこぼす隊員も。
        また空自では、敵の巡航ミサイルによる攻撃から戦闘機を守るため、大量の土塁で囲まれたり地下に造ら
       れた格納庫
の事を指す。
        冷戦時代の最前線となった空自千歳基地には当時この掩体が一つも無く、視察に訪れた米空軍将官が
        「素晴らしい!空自は掩体を完璧に隠している!どこにあるのか見当もつかない!」
        と真顔で驚いたので、空自幹部は返答に窮したとか。



    【援農部隊】 えんのう・ぶたい  
        『右向け左!』の山口三曹曰く、人手不足の農家のためにほとんどいつも畑を耕しているという部隊。教
       育隊21班を徹底的にイジメ抜いた外園士長が坂田二士達の逆襲にあい、北海道の○×分屯地のこの部隊へ
       と左遷された。
        しかしこんな部隊は現実には存在せず、原作者一流の創作である。確かに過去には陸自の一部の部隊が農
       作業のお手伝いを行った事はあるが、これは子供を陸自に入隊させたお陰で人手が足りなくなった農家に対
       し、繁農期に限定して
お礼の意味で行われた、あくまでボランティアの一環であった。それぐらいやらない
       と隊員が集まらなかった昔のお話である。



 new!!【円匙】 えんぴ  
        故人携帯可能なホームベース型の折り畳みシャベルの事。主な用途としては、野外演習時に焚火をおこし、
       鉄板焼きをする際に使用する。本当はえんしが正しい読み方だが、自衛隊ではえんぴと発音する。
        変わった使い方としては、演習時の塹壕掘りや土砂の除去、匍匐時に地面を掘って顔を突っ込んだりする。



     【遠洋航海】 えんよう・こうかい  
        江田島の海上自衛隊幹部候補生学校を卒業した後に行われる、半年間で世界をほぼ一周する実習航海。
       界各地に寄港して、各国海軍との交流を通じて一流のシーマンたる素養を身につける事を目的とした、帝国
       海軍時代から続いているハードで長期にわたる世界規模の修学旅行である。
        まだ艦艇勤務経験のない名ばかりの幹部とは言え、海外では一人前のネイビーオフィサーとして敬意を持
       って遇される
ので、その立ち居振る舞いに一本芯が入るとともに、帰国後の不遇に立ち向かう決意を新たに
       させられる。
        ちなみに部隊内では略して『遠航』と称される事が多いが、外でうかつに言うと極めて不名誉な誤解を招
       きかねないので要注意。
        「今度のエンコー楽しみだねー」
        「ねー」



     【オート】 おーと  
        陸自用語で、偵察用バイクを指す。バイクの事をこう呼んでしまう人がいたら、かなりの確率で陸自隊員。
       もしくはギャンブラー(しかもかなりおっさん)
である。



 new!!【小樽愛の寿司】 おたる・あい・の・すし  
        イラク人道復興支援で派遣された隊員に、現地で振舞われた冷凍パックの握り寿司。甘エビ、サーモン、
       ホタテ、イカ、白身、サバ、タコ、マグロとなかなかのラインナップであった。
        冷凍ながらも驚くほど美味しかったらしく、大皿にずらりと盛られたその様子は壮観で、隊員から非常に
       人気を博した

        ちなみにこの寿司は、輸送艦おおすみの−28℃の冷凍庫に保管され、日本からはるばる8000kmの
       航海
を経て宿営地に運び込まれた。



    【小月航空基地】 おづき・こうくうきち  
        海上自衛隊の航空機搭乗員の基礎教育を行う第201教育航空隊および小月教育航空隊を擁する山口県
       下関市にある海の人の航空基地
        隊員食堂でふぐが出るのは全国でも恐らくここだけで、そのご当地グルメっぷりは他の部隊から羨望の的。
       高価なトラフグではなく激安のシロサバフグなのはご愛敬だが、たっぷりの地もの野菜豆腐と一緒に煮込
       まれた『ふく鍋風煮込み』は、小月基地伝統の人気メニュー。
        ちなみに古参の隊員によると、肝心のフグは鍋の底の方に沈んでいるので、食堂が開いてすぐよりも少し
       経ってから喫食レーンに並んだ方がフグを沢山食べる事が出来る
との事。急がば回れ。日露戦争で獅子奮迅
       の働きをした秋山好古・真之兄弟を育てた秋山久敬の教えは、今もこうして海上自衛隊に脈々と受け継がれ
       ていると言えよう。
        ちなみにフグの本場山口県では、フグ『不遇』に通じるため、『福』フクと呼んでいるとの事。



    【男塾】 おとこ・じゅく  
        男性自衛官を対象とした婚活パーティー前に行われる、“いかに女性の心を掴むか”という内容の特殊訓練。
       参加女性が駐屯地や艦艇、航空基地を見学している間の約1時間で集中的に実施され、この日の為に部隊が
       外部から招聘したイケメンモテ男講師が、その貴重なノウハウを隊員達に惜しげなく叩き込む。
        しかし参加女性陣もノコノコやってくる訳ではなく、基地駐屯地見学の合間に『階級章と年齢から読み取
       る平均年収推察法』
等のエグい近接戦闘技術を習得している為、なかなか一筋縄ではいかない模様。
        ちなみにこの男塾のモットーは『専守防衛は忘れろ!』



     【男の修行】 おとこ・の・しゅぎょう  
        太平洋戦争で連合艦隊司令長官を務めた、山本五十六の有名な言葉。
        『苦しい事もあるだろう、言いたい事もあるだろう、不満な事もあるだろう、腹立つ事もあるだろう、泣
       きたい事もあるだろう。これらをじっと堪えて行くのが男の修行である』

        この言葉は諸外国の海軍でも高く評価され、アメリカ海軍士官学校アナポリスでも英訳で紹介されている。
       ただ、『Men’s Training』という英訳は、お洒落系エクササイズ雑誌みたいでどうにも違和感
       がぬぐえない。



     【お湯炊き】 おゆ・だき  
        水から炊き始める通常の炊飯とは違い、最初にお湯を沸騰させ、そこに洗った米を入れて炊飯する方法。
       一度に大量のお米を美味しく炊き上げるにはこちらの方が向いているので、基地駐屯地や演習場での炊飯は
       お湯炊きである。
        ただ、水加減の調整が一発勝負になるので、調理員の腕次第で出来上がりが大きく左右されてしまう。



     【音楽隊】 おんがく・たい  
        自衛隊には各方面隊や師団・総監部毎に本格的な音楽隊があり、さまざまな行事コンサート中高音楽
       部への出張指導
などで演奏を行っている。キツイ演習や訓練とは無縁と誤解されがちだが、体力検定や小銃
       射撃訓練を当たり前に行うし、演習時は戦闘指揮所周囲の警備や交通整理を担当。それでなくとも音楽演奏
       の基本は肺活量!
とばかりに、毎日地味で過酷な体力錬成を積み重ねている。
        年間80〜100回にものぼるイベントのたびに重くて高価な機材を自力でトラックに積み込み、長距離
       移動の後は真夏の炎天下だろうが何だろうが延々ぶっ通しで演奏する事も。ものすごい体力が要求される仕
       事
だが、安定した収入を得ながら民間の音楽団では望むべくもない半端ではない場数を踏めるという魅力が
       あり、数少ない募集枠に音大卒の人達が殺到する超人気職種だったりする。



     【音響測定艦】 おんきょう・そくてい・かん  
        海上自衛隊の艦艇には珍しい双胴船。各種ソナー、センサー類の塊の様な艦で、任務は秘密のベールに包
       まれている。
その艦の性質上、恐らく海底地形や海水温分布、塩分濃度、潮流等のデータを確認したり、日
       本近海に潜む某国潜水艦の音響データ等を採集している模様。
        正確な音響データを取るために、静粛性を重視して主機はディーゼルエンジンなのにスクリューは電動推
       進
を採用しており、現在海上自衛隊では『ひびき』『はりま』の二隻を運用している。
        一度出港すると長期航海になる事が殆どで、何故かアメリカ海軍士官も乗艦しているという噂も。非常に
       怪しい艦である。






    【海演】 かいえん  
        毎年秋に行われる、海上自衛隊演習の事。図上演習実動演習に分けられ、全国の自衛艦隊や地方隊から
       艦艇80隻、航空機160機近くが集結
し、約一週間にわたる最大規模の海上演習を繰り広げる。観艦式や
       展示訓練とは異なり、一般には非公開で行われる純粋な訓練で、各部隊の指揮官の情勢判断、部隊運用の錬
       度
を向上させる事を目的としている。
        海域の気象条件や敵味方の規模、任務内容等が知らされ、その中で任務達成のための情報収集、分析、判
       断、作戦立案、命令伝達、実行、振り返り
が行われ、双方の消耗具合と状況に即した的確な判断が求められ
       る。



    【海上自衛隊アワー】 かいじょう・じえいたい・あわー  
         大湊地方総監部が所在する青森県むつ市のローカルFM局『FMアジュール』にて、1999年から続い
       ている海上自衛隊制作のラジオ番組。毎週月〜金の0700〜0730放送。
        企画、構成、出演交渉、取材、収録、編集、放送のほぼすべて女性海上自衛官のパーソナリティが一人
       で担当していて、ものすごく大変だがそれ以上にやり甲斐があるらしく、一度やるとやめられなくなるとか。
        2016年2月現在は、13代目となる堀井士長が担当している。



    【海上自衛隊レシピ】 かいじょう・じえいたい・れしぴ  
        海上自衛隊公式HPにたくさん紹介されている、各部隊ご自慢の名物メニューレシピ集。メインの一品か
       らご飯もの、汁物、サラダ、プラス一品のお惣菜、さらにはおやつまで幅広く網羅され、通常数十〜数百人
       分のところをちゃんと4人分のレシピに換算してくれているので、とても使いやすい。
        材料は簡単に手に入るものばかりなので、日々の献立に悩むお母さんにとって力強い味方になるが、お腹
       の減った深夜に見るととてもつらい目にあうので要注意。海自HPトップページスペシャル海上自衛隊
       レシピ
、でご覧頂きたい。
        献立のバリエーションが豊富で、和洋中の他にカレーが独立しているのが実に海自らしいと言えよう。し
       かし管理人的に一番の笑いどころは、『韓国風サラダ』や『豚キムチ丼』が、中華のカテゴリーに入れられ
       ている点(笑)

        直球でイヤミなのか単に大ざっぱなのか、何も考えていないのか10年先を見越しているのか・・・それ
       はきっと後の歴史が証明してくれるであろう。



    【海曹給養課程】 かいそう・きゅうよう・かてい  
        海士給養課程及び初級海曹過程を修了後、艦艇で一定期間の経験を積んだ三曹以上の給養員が入校する。
       それまでの艦艇勤務で一通りの調理技術は身につけているので、ここでは理想的な献立の組み立て和洋中
       の盛りつけ
器の選び方、美しく見える弁当の盛り込み方などの技術を叩きこまれる。
        日常の艦内調理で頻繁に役に立つ内容ではないが、艦にエライサンを招いた時や海外寄港地での来賓相手
       の会食
等の際には、そこらの板前やシェフも顔負けのフルコースを作る事が出来る。この課程を修了した者
       としていない者とでは、同じ材料で同じ料理を作っても出来上がりの見た目が全然違ってくるとか。



    【海門事件】 かいもん・じけん  
        明治23年に、旧日本海軍の海防艦海門で発生したストライキ事件
        当時の海軍は乗組員の間で頻発する脚気に悩まされており、予防策としてビタミンB1が豊富な小麦粉を
       原料としたパン
を艦内食堂で提供していた。しかし海軍に入れば毎日銀シャリを腹いっぱい食える!と信じ
       ていた水平達からの評価は最悪で、「なんでこんな不味いものを・・・」と怨嗟の対象となっていた。
        その我慢が限界に達したある日。総員起こしのラッパが鳴り響いたにもかかわらず、誰も甲板に出てこな
       い
事を不審に思った当直士官が居住区に降りて行くと、誰一人として寝床から出ようとせず、白米を食わせ
       ろの大合唱。
       
 報告を受けてブチ切れた海門副長坂本大尉が、居住区に乗り込んで鬼の形相で日本刀を振り回したところ、
       乗組員達は蜘蛛の子を散らしたように逃げまどい、ストライキはあっという間に終息してしまった。
        当時の製パン技術は現在ほど発達しておらず、使用した国産小麦粉がパンに全く向いていなかった事もあ
       り、出来たパンはかなり質が悪かった。が、戦後になって製パン技術が飛躍的に向上し、庶民の食卓の憧れ
       的な存在になると、今度はパンを食べたさに海上自衛隊に入隊しようとする若者が出始めたと言うのは何と
       も皮肉な話である。
        乗組員の食事に対する不満が爆発した例としては、ボルシチの肉が原因となったロシア海軍の戦艦ポチョ
       ムキン事件
が有名であるが、あちらが1905年に発生しているのに対し、海門事件は1890年に発生。
       こちらの方が15年も先を行っていたのである!
・・・等と威張れる話ではないのは言うまでも無い。



    【海里】 かいり  
        海上での距離単位で、一海里=1.852km。これは地球(赤道)周囲約40000kmを360度(緯度)で割り、
       さらに60(分)で割った数字である。
           40000km÷360(緯度)÷60(分)=1.852km
        ちなみに1ノットは、一時間で1海里進むスピード。時速1.852q。
        q/hへの換算がややこしいが、おおざっぱに言うとノット数を2倍して1割引したものが時速キロメート
       ル
になる。ひゅうが型護衛艦の全速力30ノットを例にすれば、30×260、これを1割引きすると54。全速
       力で約54q/h。



     【カウボーイと忍者】 かうぼーい・と・にんじゃ  
        アメリカ海兵隊と陸上自衛隊が、建物内のゲリラ掃討の共同訓練を行った際に浮き彫りになった、両者の
       行動スタイル。
        大声を上げて相互確認をしながら敵を威圧・圧倒して突入する海兵隊に比べ、陸自は全員足音一つ立てず
       
無声無音で家屋内に突入していった。
        海兵隊指揮官はその様子を見て「まるでニンジャだ!」と驚嘆し、陸自指揮官は「牛を柵の中に追い込ん
       で行くカウボーイの様だった」
と評した。相互のスタイルから文化の違いが垣間見え、ちょっと面白い。



     【課外活動】 かがい・かつどう  
        学生でありながら防衛省職員でもある防大生だが、学校らしく放課後はちゃんとクラブ活動(校友会活動)
       がある。1715〜1830までの75分間が割り当てられ、体育会系への入部は必須。希望すれば文化系
       同好会
との掛持ちも認められる。
        空手、柔道、剣道、少林寺拳法、合気道、サッカー、ラグビーなどはいいとして、詩吟同好会まであるの
       はびっくり。武人の嗜みとは言え、渋すぎる。
        また、応援団が一番威張っているところなんかは、普通の大学と変わりはない模様。



     【化学防護衣】 かがく・ぼうご・い  
        陸自の各師団旅団に配備されている、特殊武器防護隊および化学防護隊で使用される防護服。生物兵器や
       化学兵器が使用された際に着用
され、特殊ゴム製でかなりの重量がある。
        化学科職種という事で、白衣を着て実験室で試験管を持つようなイメージで括られる事が多いが、実際は
       重い防護服、呼吸しづらい防護マスク
、その上重い除染剤タンクを背負い、時には小銃まで持たないといけ
       ない為、肉体派でないと務まらないキツイ仕事である。
        真夏の炎天下での訓練では、あっという間にブーツの中が汗でタプタプに。



     【学生長】 がくせい・ちょう  
        防衛大学及び陸海空の幹部候補生学校に入校した幹部自衛官のタマゴの中で、入校時の成績が最も良かっ
       た生徒
が拝命する役職。一番出来のいい人間が生徒会長に選ばれるようなものである。当然学年を代表する
       優秀な人材であり、栄達への第一歩とも言える。
        在校時どころか卒業後も教官や同期、後輩から「学生長」と呼ばれる事が普通なので、実はなかなか本名
       を覚えてもらえない
という悩みを抱える事になる。
        「あ、もしもし、久しぶり、○○だけど」
        「・・・誰?」
        「俺だよ!学生長だよ(怒)!!」

        また、曹士も昇進や配置換え等で各部隊の学校に入校する事が多く、そこでも学生長が決められるが、そ
       の際は階級が一番上で先任の者、または最年長者が拝命する。



 new!!【舵取機室】 かじとりき・しつ  
        艦艇の艦尾最下層に位置する区画。船底部の舵に直結する太いシャフトがあり、艦橋や機関室での操舵が
       不可能になった場合、ここで直接舵を操作する事ができる。
        レバーがついた油圧ポンプをえっちらおっちら手動で操作せねばならず、かなりの腕力勝負。しかしそん
       なもので2万d近いいずも型護衛艦の操舵も出来るのだから、なんだか不思議な話である。



     【ガスタービンエンジン】 がすたーびん・えんじん  
        現代における自衛艦のエンジンの主流であり、基本的には航空機のジェットエンジンと同じ。エンジンの
       排気ガスの圧力
を使ってタービンを回転させ、推進力にする形式。航行中に煙突や吸気口の近くにいると、
       船なのにキーンと航空機みたいな音がしてなんか変。

        長所は、従来の蒸気タービン方式に比べると加速性能が段違いで、機関の立ち上げも容易メンテナンス
       にかかる時間も手間も少なくて済む。
排気煙も殆ど出ないので、目視で発見されにくくなる。エンジン自体
       も小型軽量で、複数の種類の燃料にも対応する事が出来る。
        短所としては、耐熱性のある素材が必要で価格が高く、燃費も悪い。また細かな出力調整がむずかしいが、
       これに関しては高速用、巡航用の2種類のタービンを搭載し、可変ピッチプロペラ等を併用して出力の調整
       を行っている。



     【ガス体験実習】 がす・たいけん・じっしゅう  
        陸自の教育期間中に行われる、催涙ガスを一度自分でくらってみよう企画。いきなり大きな業務用テント
       を設営させられ、中に入った所で班長から
        「お前たちは毎日よく頑張ってるから、今日は内緒でご褒美をやろう。遠慮せず食え!」
        と、缶詰を渡される。何だろうとワクワクしながら缶を開けると中から催涙ガスが噴出し、涙と鼻水まみ
       れ
になってテントの外に転がり出ると、班長がその様子を見てゲラゲラ笑っていた・・・という流れ。
        素人には催涙ガスが一体どのようなものなのか想像もつかないが、某隊員さん曰く、
        「鼻と目に、チューブ入り生わさびを突っ込んだ感じです」
        との事。恐ろしい話である。



     【霞ヶ浦駐屯地の怪談】 かすみがうら・ちゅうとんち・の・かいだん  
        茨城県土浦市に所在する霞ヶ浦駐屯地に伝わる怪談で、昭和39年にはちょっとした騒ぎになり地元新聞
       の記事にもなった。

        当時あったBOQ(独身幹部宿舎)1階10号室に入居した隊員が、夜中にすすり泣く女性の声を聞いた
       事が発端で、その隊員は翌朝早々に10号室を引き払った。
        次にその部屋に入った2尉も、深夜に全身の硬直とともにすすり泣きと足音をはっきりと聞き、翌日逃げ
       る様にして10号室から退去。
        噂を聞きつけて宿泊を名乗り出たもの好きな1尉も同様に深夜の怪現象を体験し、最後は3佐がその部屋
       に一泊。
翌日真っ青な表情で部屋から出て来た。
        事ここに及んでは笑い話で済ませる訳にも行かず、駐屯地司令の号令のもと、10号室の天井裏から床下
       まで隊員総がかりでの調査を行ったが原因らしきものは見つからず、最後は僧侶の読経まで行ったが効果は
       なかった。
        その後10号室は開かずの間となり、BOQ自体も別の場所に新築されたため、使われなくなったまま
       期間放置される事となった。

        その旧BOQだが、昭和43年に失火により焼失。もとより普段から火の気のない場所であり、出火の原
       因もはっきりしないまま現場検証は終了。全ては灰と化した今も、伝説だけが語り継がれている
        ちなみにそのBOQは戦前の旧軍時代からの建物で、戦後いったん民間に払い下げられた時期には自殺者
       も出ており、当時から幽霊騒ぎが確認されていた。



    【割愛制度 かつあい・せいど  
        空自のパイロットが、民間の航空会社に転職する際の制度。様々な理由で戦闘機乗り生活が終わりに近づ
       く三十路半ばのパイロットが、より長く空を飛び続けたいと申し出る事が多かった。
        国民の税金で育てたパイロットを引き抜かれる上に部隊の戦力低下にも繋がるので、部隊にとっては歓迎
       されざる制度
だったが、部隊長によっては
        「飛行機乗りとして気持ちはわかる。頑張ってチャレンジして来い!」
        と、背中を押される事も。
        ただ現在は、航空各社の業績が厳しく募集が激減し、申し出るパイロットも殆どなく、事実上機能してい
       ない制度
である。
        ユダヤ教の例の習慣と語感が似ている気がするが、多分関係ない。



     【脚気】 かっけ  
        ビタミンB1不足で発症する、昔の船乗りの職業病。現代では野菜の冷凍冷蔵技術が発達し、特別にビタ
       ミン類を添加した強化米、あと定期的に出される麦飯等のお陰でほぼ絶滅した。それでも長期航海や潜水艦
       勤務だと限度があるが、乗組員はしっかりと自前でサプリメント類を用意して“自衛”に務めている。
        ちなみに小麦を原料とするパンは、白米よりも多くのビタミンB1を含んでいるので、旧海軍では早いう
       ちからパン食が導入された。そのせいで、一時期の旧海軍兵学校の朝食は、食パン半斤と白砂糖、味噌汁
       
いう珍妙な献立になってしまった。



    【要】 かなめ  
        海自を代表する海上自衛隊東京音楽隊御用達のトンカツ屋さん。出張演奏の仕出し弁当は、ここが担当し
       ている。味も一級品だがそれ以上にボリュームが凄まじく、初めて食べる人は一様に唖然とする。
        相当なカロリーがある筈だが、音楽隊の皆さんはスリム揃い。むしろこれ位食べないと体がもたないのだ
       ろう。一見華やかに見える音楽隊の、見えない部分でのハードさの表れと言える。
        メニューが多い事も要の魅力の一つだそうだが、一番人気はヒレカツ・エビフライ・コロッケがはみ出さ
       んばかりになった、屋号と同じ名前の『要』弁当。ちなみにこの要、近隣にあるテレビ番組製作会社のロケ
       弁
としても大人気だとか。



    【可変ピッチプロペラ】 かへん・ぴっち・ぷろぺら  
        航空機のプロペラや艦艇のスクリューブレード部分の取り付け角度を、任意に変更させる機構。飛行速
       度に応じた最適なピッチ角を選択する事により、推進効率を上げて燃費を向上させる。
        艦艇のスクリューでは、エンジン回転数を変えることなく速度を増減させる事が出来る為、融通の効かな
       いガスタービンエンジンでも微妙な速度調整が可能になる。また、前進→全速後進への切り替えも容易なの
       で、緊急回避のための停船距離を短くする事が出来る。



 new!!【神棚】 かみ・だな  
        最新テクノロジーの塊である護衛艦に限らず、自衛艦の中を探すと必ずある。初めて見た人は一様に驚く
       が、進水式では神主さんに祝詞をあげてもらうので、特に不自然な話ではない。入れる人がいるのかどうか
       知らないが、ちゃんと賽銭箱もある。
        潜水艦内にももちろんあるが、艦内スペースの都合上『プチ神棚』なのはご愛敬。
        ちなみにお神酒としてワンカップの日本酒が供えられている事もあるが、こっそり中身を飲んであとは
       を入れておけばバレないのでは・・・と思ったが、実は最初から水だそうだ。



     【歓迎自衛隊御一行様】 かんげい・じえいたい・ごいっこうさま  
        護衛艦が地方の港に入港した際に、最寄りの繁華街にはためく幟。単艦で入港しても約百人、隊や群単位
       なら数百人の食いまくり飲みまくりの猛者達が押し寄せる為、慢性的な不況にあえぐ僻地や離島の繁華街に
       とっては滅多にない稼ぎ時となる。近隣市町村への経済効果もバカにならないので、左巻きの市長もこの時
       ばかりは
村山富市ばりのほっかむりを決め込む事となる。
        北海道各地のドライブインにも同様の看板を掲げる所が多いが、これは演習等で移動中の部隊をブリの定
       置網の如く狙っている模様。



     【官舎】 かんしゃ  
        既婚者と幹部のみ入居できる官営集合住宅。基地駐屯地のすぐそばに地味で殺風景な団地があれば、ほぼ
       間違いなくそれである。
        家賃は相場に比べると格安だが、建物の状態次第でピンキリの差が激しく、新築間もない広い物件はそれ
       りりのお値段だが、築40年を超えるような物件だと数千円で済む場合も。
        入居している全員が隊の関係者であり、内部に自治会的側面もあるので必然的にプライバシーが保ちにく
       く、場所によっては旦那の階級が主婦の序列になってしまっている所もある反面、気軽に子供を預けあえた
       り旦那の長期不在時の互助的役割も果たしているので、見知らぬ土地で心細い思いをする事が少ないという
       利点もある。
        また最近は、民間のアパートを丸ごと借り上げた物件も増えていて、一昔前に比べると居住性が大幅に向
       上している所も多い。



    【艦内飲酒】 かんない・いんしゅ  
        旧海軍時代イギリス海軍を模範としていたので艦内飲酒は認められていたが、戦後発足した海自はアメ
       リカ海軍様式
を取入れた為、艦内でのアルコールはご法度である。
        ただ、艦内に酒が全くないかというとそうでもなく、実は調理室に調味料としての日本酒やワインがある。
       しかし鍵付きのロッカーに保管されるなど管理は極めて厳重で、定期的に残量チェックも入るのでちょろま
       かす事は不可能。
        また、神棚に置いてあるお神酒も、実は中身はに入れ替えられている。
        ちなみに退役したアメリカ海軍のとある提督が、海上自衛隊についてこういう言葉を残している。
        「海上自衛隊は米軍方式を見事に吸収し、僅かな期間でよくぞここまで成長したと正直驚いています。し
       かし、ただひとつの過ちについて述べるとすれば、艦内飲酒禁止という悪しき伝統まで受け継いでしまった
       事であり、極めて遺憾に思います」



    【艦内旅行】 かんない・りょこう  
        艦内の構造や各部署の役割を説明する為に、新米海士を連れて艦内を一通り歩く事。旧海軍時代からの伝
       統行事で、大きくても5千トン程度の現代の汎用護衛艦ならあっという間だが、戦艦大和のような6万トン
       を超す巨艦
では文字通りまる一日がかりの旅行となり、実際に昼食の弁当と水筒を持って歩き回った。
        当時は艦内旅行競技なるものが行われ、定められた時間内に艦内各所に設置されたチェックポストを順番
       通りに回って帰ってくる、という内容であった。艦内地図を片手に乗組員に質問しながら歩き回るが、中に
       は面白半分でわざと嘘を教える乗組員もいて、全部真に受けていると迷子になって途方に暮れる羽目に。
        また、艦内旅行から戻って来れずそのまま行方不明になり、もう何年も前から夜な夜な泣きながら艦内を
       歩き回っている奴がいる・・・
という艦内伝説もあったとか(笑)。テクノロジーは格段に進歩しても、船
       乗りの考える事は今も昔も大して変わらないようである。



    【甲板流し】 かんぱん・ながし  
        海自艦艇の入港前に行われる、艦内外の大掛かりな清掃作業の事。日常的な甲板清掃に加えて艦橋構造物
       や煙突回りまで真水で念入りに洗い流す等、真水の残量に気を遣わなくていい入港直前しかできない清掃作
       業
が集中して行われる。
        多くの艦艇は週末に絡めて入港する為、金曜カレーと合わせて上陸前の楽しいルーチンワークと言えるが、
       強風に煽られ頭から真水を被る事になる冬場の甲板流しは本当に大変。



    【幹部名簿】 かんぶ・めいぼ  
        洋上ですれ違う艦艇同士で敬礼を行う場合は、艦長の階級が低い側の艦から先にラッパ吹奏で敬礼を行い、
       それに対して階級が高い側が返礼する流れになっている。双方の艦長の階級が同じ場合は、その階級に先に
       昇進した先任順が上位にあたる。
        そのため相手艦が確認できた時点で、この名簿を使って先方の艦長の階級、先任順を確認する訳だが、要
       は海上自衛隊内での艦長の序列がもろに反映された名簿であるため、
        「あー、うちの親分って、この辺なのか・・・」
        と、確認する隊員はそのたびに誇らしくなったり切なくなったり。シビアなのか人間臭いのか、よくわか
       らない名簿である。



     【機械、舵よろし】 きかい・かじ・よろし  
        入港、舫い作業の後、艦の主機(エンジン)を停止する時の号令。その後は当直員を残して待ちに待った
       上陸なので、心の底からホッとする瞬間である。



    【機関科料理】 きかんか・りょうり  
        旧海軍時代、機関室でひそかに作られていた料理。こっそり持ち込んだ鉄鍋でスキヤキを作ったり、スコ
       ップで焼肉をしたり、ヤカンで銀シャリと炊いたり・・・という機関科兵員の役得であった。
        烹炊所で使用する高圧蒸気真水の製造は機関科の管理下にあり、主計科が日々艦内でスムーズに仕事を
       進めるには、機関科と持ちつ持たれつの良好な関係が必須であった為、食材等の融通がたびたび行われてい
       た様である。
        機関室で使用するボロボロのスコップの中に、油光りするピカピカのスコップが必ず一本混じっているの
       がどの艦でも常であったが、アンタッチャブルな話題であった。



    【気球】 ききゅう  
        人類初の航空兵器。日本では古くは西南戦争の時代から偵察及び通信用に開発が進められたが、当時の気
       球は紙製の袋にゴム糊を塗った程度の粗末なシロモノであった為、有用性は低かった。
        その後日露戦争においては陸軍通信大隊の中に気球隊が創設され、旅順港内に逃げ込んだロシア艦隊の数
       や艦種、配置
をこっそりデバガメした。空前絶後の大被害を出した旅順の戦いだが、こんな呑気な一幕もあ
       ったようだ。
        ちなみに現代の自衛隊でも気球は大活躍しており、火力戦闘部隊の射撃や航空部隊の気象観測で、ラジオ
       ゾンデ
を取りつけた観測気球を使用している。    



     【菊政克巳】 きくまさ・かつみ  
        『亡国のイージス』では回収中の訓練魚雷に頭を潰され、『終戦のローレライ』では戦闘中に転がってき
       た魚雷の下敷きになってこれまた死亡。サウスパークにおけるケニー・マコーミック的な存在と言える。
        折笠「大変だ!菊政が殺された!」
        パウラ「ケダモノ!」



     【基準排水量】 きじゅん・はいすい・りょう  
        艦艇に兵装弾薬消耗品その他一通りの搭載物を乗せ、そこから燃料と真水を抜き取った状態での重
       量。人間でいえば、朝食を抜いた出勤直前のサラリーマンみたいな状態。



    【儀仗隊】 ぎじょう・たい  
        天皇陛下や皇族、政府高官、海外の国家元首やVIPが訪問した際に、真っ白な制服礼砲にてお出迎え
       するホスト部隊。陸上自衛隊の各方面隊に1つずつ、全国で5つの儀仗隊が配置されているが、もっとも
       出度が高い
(エロい意味に非ず)のは、羽田空港においてVIPを特別儀仗で迎える第302保安中隊(芝
       浦駐屯地)。
        自衛隊、ひいては日本という国をも代表する立場である為、長身でスラッとした極めつけのイケメン隊員
       だけが選抜
され(管理人ここで華々しく脱落)、隊内では女性自衛官にモテまくる
        とは言え、その容姿を維持する為の自己管理は徹底的で、週イチペースの美容院代もバカにならない。真
       夏の炎天下に長時間立ちっ放しでも汗一滴かくことすら許されず、途中でちょっとトイレなどもってのほか。
       体力仕事なのに飲み食いすら日常的に厳しく制限される上、一回の靴磨きにかかる時間はなんと4時間!
        「儀仗隊だからモテるのではない!モテるに値する努力を積み重ねているから儀仗隊なのだよ!」
        それ位は言わせてあげてもいい気がする。



     【KP】 きっちん・ぽりす  
        各部隊から供出される、食堂お手伝い要員の事。基地駐屯地の食堂での調理作業は給養員だけでは手が足
       りず、それ以外の部隊から当番制で数名が差しだされて野菜の皮むきカット等の下ごしらえ、盛り付け
       後片付け
などを支援する。
        場合によっては簡単な調理作業も任される事もあるので、これをきっかけに料理の楽しさに目覚める隊員
       も多い。
        その他、教育隊では掃除洗濯どころかアイロン簡単な裁縫等まで全て叩き込まれるので、隊員さんと結
       婚するとその辺は楽である。とは言え、実際の所は
        「出来る筈なのにしてくれない」
        「出来るだけに細かいところまでうるさい」

        という意見もちらほら・・・。



     【汽笛】 きてき  
        船舶のボイラーに取り付けられた、蒸気の噴出を利用した笛。合図や警告、注意喚起などに使われる。海
       自艦艇にも当然取り付けられており、舞鶴湾の様な狭い航路に小島が複雑に入り組んでいる場合に、しばし
       ば使用される。
        福井晴敏著『亡国のイージス』のラストシーンでは、非常に絵画的な使われ方をした。



    【希望任地】 きぼう・にんち  
        幹部候補生学校を卒業後に行われる遠洋航海から帰国した新米三等海尉の皆さんは、すぐに幹部のタマゴ
       として全国各地の任地に飛ばされる。一応前もって希望任地のアンケートが行われるが、なぜか第一希望の
       任地に行けない事がほとんど。

        こうなると何のためにやっているアンケートなのかよく分からないが、中には第一・第三希望を逆に書い
       て提出
し、早くも組織内遊泳術を発揮している隊員も。
        ちなみに米国海軍の士官学校であるアナポリスでは、卒業時の成績順で最初に赴任する艦を選べるとの事。
       いかにもアメリカらしい、合理的な制度であると言えよう。



 new!!【基本七部署】 きほん・なな・ぶしょ  
        自衛艦内で発令される、防水・防火・霧中航行・応急操舵・溺者救助・入港・出港の七つの訓練。
        入港と出港は日常のそれ自体が訓練であり実戦だが、ほかの五部署については航海中に何度も何度も繰り
       返して訓練
を行う。



 new!!【ぎまん装置】 ぎまん・そうち  
        潜水艦に搭載されている防御兵器。外殻の発射口から海中に放出されたぎまん剤海水と化学反応を起こ
       し、大量の泡を発生させて敵艦のソナーにゴーストを作り出す。発泡性の入浴剤みたいなやつである。
        たびたびデコイと混同されるが、自艦の音響データを発しながら自力で走行して敵ソナーを騙すデコイと
       違い、ぎまん剤はただ泡を発生させるだけの化学物質である。



    【キャビテーションノイズ】 きゃびてーしょん・のいず  
        スクリューが高速回転する際に発生する水中雑音。スクリューが水中で高速回転すると、スクリュー表面
       に圧力の極端に低い部分が生まれ、海水が沸騰して(キャビテーション)を発生させる。この泡同士がぶ
       つかって一気に弾ける際に生じるのがキャビテーションノイズである。
        このキャビテーションが発生するとスクリューが空回りに近い状態になるので、エネルギー効率が大幅に
       低下
。さらに泡が金属面を侵食してスクリューそのものの寿命も縮めてしまうので、雑音以外にも悪い事だ
       らけ。
        いかにこのキャビテーションを出しにくい形状にするかがスクリュー設計上の大きなポイントになるので、
       各国海軍の潜水艦のスクリュー設計はトップクラスの機密扱いとなる。



    【急殺車】 きゅうさつしゃ  
        昔陸自で使用されていた救急車(アンビ)の愛称。サスペンションが固い板バネだったため乗り心地が極
       めて悪く
、演習中に発生した負傷者を収容して不整地をぶっ飛ばして救護所まで戻ってきたら骨折箇所が増
       えていた・・・
という真偽不明な伝説から、
        「急殺車に乗りたくなければ怪我には注意しろ」
        と呼ばれて親しまれた。



     【救命生存訓練】 きゅうめい・せいぞん・くんれん  
        陸海空のそれぞれの航空要員を対象に、夏と冬の年2回行われるサバイバル訓練。航空機が洋上や雪山に
       不時着、遭難したという想定で、さまざまな生き残りノウハウを体に叩き込む。
        夏期は洋上での救命ボートの取り扱い真水の作り方、漂流中の体力の温存方法脱水症や熱中症の対策
       など。冬期は雪山での野営移動方法凍傷の予防や手当などを習得する。
        航空集団単位の部隊講習や、航空学校でパイロットの卵である学生相手に行われる場合は、実際に丸一日
       近くボートで漂流
させて、その辛さ心細さまで体験させたりする。近年ではその様子を、基地の近隣や担
       当警備区の離島の住民に公開して、活動の一端を知ってもらうきっかけにする事も。
        また航空自衛隊千歳基地のように、パイロットを凍結した川に放り込む(一応ドライスーツ着用)という
       荒業をやっている所もある。



    【給糧艦間宮】 きゅうりょうかん・まみや  
        大正13年(1924)に竣工した、旧日本海軍の給養専用艦。基準排水量15800トン。
        乗組員約300名のうち半分以上が主計科(現在の補給科)で、残りのうち100名以上が民間から雇い
       入れた菓子・豆腐・パン職人
であり、さらにはクリーニング業者理髪師まで乗り込んでいた。
        艦内には巨大な厨房レストラン料亭の他、スーパー銭湯と見間違えんばかりの広大な入浴施設各種
       宴会場
が完備されていて、女っ気こそなかったものの、まさに海に浮かぶ竜宮城の如き飲めや歌えの大騒ぎ
       を楽しむ事が出来た。
        望遠鏡の彼方に間宮の姿を確認した艦隊は、上は艦隊司令から下は水兵までもう手を組んでスキップした
       くなるようなウキウキワクワクで、広い風呂と美味い酒、豪華な食事が脳裏にチラついて仕事が手につかな
       い状態であった。
        合流した間宮は艦隊の奥座敷と言われる中央部にどうぞどうぞと招き入れられ、錨を投げ入れる前から
       艦から出撃した内火艇が殺到。激しい順番争いが展開されるのが常であり、間宮に乗艦した各艦の主計長以
       下主計科乗組員達
は、間宮が用意したお目当ての食品類奪い合いになった。
        その中でも特に人気が高かったのが、腕利き和菓子職人達が丹精込めて作り上げた間宮羊羹。冗談抜きで
       ほっぺたが落ちるほどの美味だったらしいが、戦艦クラスとなると2〜3000人は乗艦しているため、
       っ端の水兵まではなかなか回ってこなかった。
        
ただ、同期の知人がいたり個人的な貸しがあったりで、間宮主計科に顔が効く主計長がいる艦にはやはり
       多めに割り当てられる事が多かった
らしく、普段は『兵科に非ず』と不当な扱いを受けていた主計科も、こ
       の時ばかりは艦中からちやほやされたとか。
        また海軍は給料の払いもよく、物資の統制された民間では手に入らない高級食材を使って腕をふるう事が
       出来る間宮乗組は、職人にとっても大きなステイタスだったため、募集枠には多数の応募が殺到した。
        海軍内でもかなり特殊な存在であった給糧艦間宮だが、昭和19年12月21日、フィリピンのマニラ北
       方の海域
にて、米海軍潜水艦の攻撃により撃沈。辛く厳しい艦隊勤務を支え続けた沢山の乗組員、そして職
       人達の魂
とともに、現在も海底深くにて眠っている。黙祷



 new!!【強化米】 きょうか・まい  
        自衛艦に納入されるお米の一つ。おそらく航海中に不足しがちなビタミンやミネラルなどを添加した無洗
       米
と思われるが、妙にカッコイイ名前である。



     【旭道山】 きょくどうざん  その他
        大相撲元小結。角界引退後は衆議院議員に転身した異色の力士であるが、現役時代の化粧回しが自衛隊旗
       と同じ旭日旗
という事で、海上自衛隊とも縁が深い。
        本人もかなりの自衛隊マニアで、厚木や鹿屋、硫黄島の航空基地を表敬訪問したり、教育隊の修了式に
       賓
として招待されたり、さらにはイージス艦きりしまの艤装作業が行われていた三菱重工業長崎造船所を訪
       れ、隊員達を激励したりしている。
        また、恐らく現役力士として唯一潜水艦に乗り込んだ人でもある。もっとも、小兵の旭道山(とは言え、
       183cm・106kgの巨漢である)でないと、潜水艦のハッチには入れなかっただろうが。



     【黄レンジャー】 き・れんじゃー  
        昔取得したレンジャー徽章が燦然と胸元に輝いてはいるものの、寄る年波には勝てずすっかりアンコ型に
       なってしまった陸自隊員の事。
残念ながら最近の若者には通じない事が多い。
        また、自衛隊員でもないのにカレーをパクついているとそう呼ばれて笑われる人もチラホラいるが、極め
       て残虐非道な話である。全くカレーぐらい静かに食わせろっつーの(あっ、管理人も?)。



    【銀シャリ】 ぎん・しゃり  
        旧海軍創設当時は栄養学がまだ発達しておらず、艦艇乗組員は敵の海軍よりも先に脚気と闘う羽目になっ
       た。脚気の原因がビタミンB1の不足と判明してからは、ビタミン豊富な麦飯や固焼きパンが出される様に
      
 なったが、海軍さんになれば毎日銀シャリが食えると信じて海兵団に入ったピュアな若者達からは、話が違
       うと毎日ブーイングの嵐が巻き起こった。
        とは言えそのお陰で、船乗り病と忌み嫌われた脚気に罹患する水兵は激減したが、艦内調理を担当する
       計科
の乗組員だけは依然として脚気にかかり続けるという謎の事態が発生。実は自分達だけ、こっそり銀シ
       ャリを食べ続けていた
事がバレるというマヌケな結末となった。



     【銀蠅】 ぎんばい  
        食糧や日用品を調理室や倉庫からくすねてきたり、納入の際にこっそり頂く事。旧海軍時代からの隠語で、
       美味しいものに銀蠅がたかること
からこう名付けられた。
        たまにこのギンバイが天才的に上手い水兵がいて、前職を疑われつつも若くしてギンバイ長の称号を授け
       られたそうな。



     【金曜カレー】 きんよう・かれー  
        艦艇や陸上施設を問わず、海上自衛隊で金曜日の昼食に出される定番メニュー。各艦艇の看板メニューと
       して給養員それぞれに強いこだわりがあり、母港の土地柄とも密接な関係がある。呉が母港の某艦ではオタ
       フクソースが隠し味
だったり、大湊が母港の某艦では青森産リンゴのチャツネを自作したりしている。
        他にも福神漬の汁フルーツ缶のシロップを入れる等、食材の無駄が無い様に工夫を凝らしているところ
       が海上自衛隊ならでは。
        基本的にどの艦も生野菜牛乳、果物、揚げもの、茹で卵などを合わせて満足度と栄養バランスに気を使
       っており、艦によってはわざわざ甘口辛口の二種類を用意して乗組員の好みに合わせている。
        また、4〜6名の給養員が週替わりで担当し、それぞれの味を競わせる艦も。ただ、納入される食材は
       者の競争入札
で決まるので、その時々によってカレー粉やルーの種類が変わる。そんな中で自分の味を維持
       する為に、給養員はあの手この手と腕を磨いていく。
        一日が18時間単位という変則的なシフト勤務が続く艦内なので、曜日の感覚を保つために週一でカレー
       が出るとの事だが、なにゆえ金曜日になったのかは諸説ある。

        @月曜日に出港して週末に戻って来る通常の訓練スケジュールの場合、ジャガイモやニンジン、タマネギ
         等の 常温長期保存が可能な食材が多いカレーは、必然的に後廻しになった、という説。
        A入港を控えて補給品や食材の整理や棚卸、給養室の衛生作業等で非常に忙しくなるので、鍋一つで簡単
          かつ大量に作る事が出来、後始末も簡単なカレーが重宝され
た、という説。

         しかし乗組員のカレーに対する期待は非常に大きく、どの艦もカレーに関しては特に力を入れて作るので、
       今となっては他のメニューよりもよっぽど時間も手間もかかっている。
        ちなみに旧陸軍では、敵性用語排除の観点から『辛味入り汁かけ飯』という珍妙な名前で呼ばれていた。
       一方旧海軍はその辺はリベラルな気風があり、普通にカレーと呼んでいたそうだ。
        また、金曜カレーは旧海軍時代からの伝統と思われているが、カレーを金曜日に食べ始めたのはここ最近
       の話
で、週休二日がまだ一般的ではなかった20年以上前は、土曜日の昼食がカレーであった。
        幹部候補生学校各術科学校でも金曜カレーは人気があり、この日はいつもよりも多めに炊飯するが、や
       はり人気が高いせいか残飯は殆ど出ないとの事。その代り、午後からの課業では教官も学生も睡魔と闘う羽
       目になるのが悩みどころとか。



     【勤労感謝の日】 きんろう・かんしゃ・の・ひ   
        防衛大学校内の清掃は通常1学年が行い、2学年はそれをチェック。3学年は2学年の指導ぶりをさらに
       チェックする仕組みになっているが、この日だけは立場が大逆転し、上級生の清掃ぶりを下級生がチェック
       する。なんだか言葉の意味を微妙に取り違えている気がするが。
        なお、毎年ここで調子に乗ってしまう1学年生が一人はいるそうだが、ほぼ例外なく後で恐ろしい目にあ
       う
ので、止めておいた方が無難であろう。



     【クズなら貸します】 くず・なら・かします  
        海自が正式に発足した当初、数の不足から米軍の古いお下がり艦を貸与されていたが、貰った1450d
       クラスのタコマ級哨戒フリゲートに、『くす』『なら』『かし』『まつ』と名付けた。一応他にも『さくら』
       『きり』
等、全18隻に
       樹木の名前をつけたので偶然だと思うが、もしわざとやったならかなりいいセンスをしていると言えよう。



    【組長】 くみちょう  
        大阪兵庫広島北九州(ここまで管理人の偏見)、あと陸自にいっぱいいる役職。
        普通科を例にとると、小隊の中に複数の班があり、その班の中には小銃組機関銃組無反動砲組などが
       存在する。おおざっぱに言えば、連隊>群・大隊>中隊>小隊>分隊・班>組・・・という感じ。
        自衛隊と言えばれっきとした階級組織なので、2名集まれば階級順先任順の上下関係が発生し、例え部下
       が一名しかいなくとも、押しも押されもしない立派な“組長”様である。
        ただ我々一般人的には、組長といえばやはり背中でよい子ぬり絵展覧会をしている人達が思い浮かぶので、
        「高校を出て自衛隊に入った筈の同級生の○○君が、今は何故か組長になっているらしい」
        という微妙に誤解ではない誤解を受けることも稀にある。



     【CLEAN SWEEP】 くりーん・すうぃーぷ  
        海上自衛隊初のイージス艦として就役後、ハワイ沖にて厳しい訓練・試験に明け暮れていた護衛艦こんご
       う
が、派米訓練最終段階で行われる装備認定試験で対空・水上・水中全ての標的に対する攻撃を100%成
       功
させた際に、米海軍から授与された称号。
        “全ての標的を完全に撃破した”を意味し、それまで30隻以上のイージス艦を保有し、海自を教える立場
       にあった米海軍ですら一度も達成した事のない快挙であった。記念品として“ほうき”が贈られたが、こんご
       
うとしては晴れがましい様なちょっと気まずい様な、複雑な心境であった。



    【げーっ】 げーっ  
        艦艇および基地駐屯地で、自衛隊旗国旗を掲揚する際の号令。「揚げーっ」が縮まったものと思われる。
        余談だが、管理人が初めて聞いた時はまことちゃんを思い出してしまった。我ながら加齢臭のする感想で
       ある。



    【警備犬】 けいび・けん  
        海上自衛隊基地の生きた備品。人間の数万倍とも言われる鋭敏な嗅覚を武器に、取扱員とともに基地内外
       をパトロールしている。周辺の不審物を探したり、「襲え!」の号令一つで不審者に噛みついたり。従順で
       大人しく知能の高いシェパードを採用している。
        おおむね体力の衰えが出る9〜12歳頃には現役を退くが、最後まで基地で面倒を見て貰え、慰霊碑
       霊祭
まできちんと用意されている。
        基地祭等のイベントでは訓練展示でその働きぶりを見る事が出来るが、いつもとは違ったあまりの混雑ぶ
       り
に興奮してしまい、度々ポカをやらかしては見守る観客に失笑される事も
        「普段はすごく優秀な奴なんですけど・・・」
        と、当犬よりも取扱員の方が悔しそう。
        ちなみに空自にも同様のお犬様がいらっしゃるが、あちらでは歩哨犬と呼ばれている。2等空曹というれ
       っきとした階級
が与えられているが、取扱員の士長に思いっきり命令されていた所を目撃したとのタレコミ
       が、当HP閲覧者の方から寄せられた。2階級も下なんですけど・・・(泣)。まあ、社会に出ると色々あ
       る
よなあ、犬だって。



     【撃沈命令】 げきちん・めいれい  
        海自で過去に一度だけ出された事がある。
        1974年11月9日、LPGタンカー第十雄洋丸が東京湾で衝突事故を起こし爆発炎上。乗組員が退避
       し漂流を始めたタンカーに対し、消火は不可能と判断した海上保安庁は海自に撃沈を要請。横須賀基地から
       は潜水艦1隻と護衛艦4隻が出動した。
        しかしタンカーそのものが異様に頑丈な構造で、護衛艦による艦砲射撃航空機による爆撃40時間
       く耐え抜き、最後は潜水艦なるしおによる魚雷攻撃でようやく撃沈した。
        しかし当時は潜水艦による魚雷発射訓練は満足に行われておらず、一発目は至近距離からの発射だったに
       もかかわらず見事に艦底部を通過。
その後発射した5発が命中しようやく撃沈の運びとなったが、この一件
       をきっかけに訓練魚雷による発射訓練が行われるようになった事は、今振り返れば怪我の功名と言えよう。
        「軍隊に怪我の功名なんぞあってはならんのだ!」
        と、菊池砲雷長は言っていたが。



    【撃まん】 げき・まん  
        自衛隊饅頭(笑)。以前は知る人ぞ知るお土産であったが、テレビ番組などで取り上げられて以来すっか
       りメジャーな存在
になってしまった。初期のものは饅頭ひとつひとつに戦闘機や戦車の焼印があったが、そ
       の後印刷したフィルムで包むだけと簡略化されてしまったのが残念。
        同シリーズには『撃せんべい』『撃カレー』があり、『爆ゴーフレット』なる珍品も売りだされている模
       様。
        極めて余談だが、昔ワニマガジン社から似たような名前のエロ本が出版されていた気がする。隊員さん達
       にはこちらの方が人気だった・・・かもしれない。



     【月月火水木金金】 げつ・げつ・か・すい・もく・きん・きん  
        旧海軍時代の猛訓練ぶりを表す言葉。海の上では土日なしの連日訓練!という解釈が一般的であるが、実
       際は曜日に関係なく訓練をしていたという意味で、平日に休養日を入れるなどして長い洋上勤務にメリハリ
       をつけていた。
        また、カラオケで高齢者に気に入られようと思った時の定番軍歌のタイトルでもある。声さえ大きければ、
       管理人の様な音痴が歌っても
不思議と様になるのが不思議。
        「たいへーいよーのー、なみなーみなーみーいにー」



     【元帥】 げんすい   
        旧軍時代まであった称号。華々しい功績をあげた大将に特別に送られた上級大将的な意味があり、厳密な
       意味での階級ではなかった。
        東郷元帥の場合は階級こそ海軍大将であったが、他の大将とは一線を画す存在であったと言える。
        ちなみに現在の自衛隊には、元帥に相当する称号は無い。



     【航海科】 こうかい・か  
        艦艇内で操舵や見張り、通信、気象分析などの仕事を行う部署。基本的に大きな成果を上げる事の出来る
       仕事内容ではなく、とにかく安全第一なので上手くできて当たり前。少しでもミスがあると怒られる・・・
       という今ひとつ報われない部署である。また立ちっぱなしの仕事が多く、通常の4直体制だとまだマシだ
       が、戦闘配置が長引くと本当につらい。
        その為「航海科に行くと後悔する」とベタな陰口を叩かれたりもするが、深夜の見張りでは満天の星空
       海面を漂う夜光虫の幻想的な光景
を眺める事が出来、地上勤務では望むべくもない壮大な朝やけ海に落ち
       る夕陽
、そして航海科の特権とも言うべきどこまでも広がる青空と水平線を見る事が出来る。艦内生活のス
       トレスどころか地上生活でのストレスまでも発散できるという、実に船乗りらしい仕事と言える。
        他の部署では、出港してから入港するまで一度も艦の外に出る事がない精神的に堪える仕事も多いので、
       そういう意味では非常に羨ましがられる仕事でもある。



     【航海計画】 こうかい・けいかく  
        艦艇が出港する際に必ず提出される計画書。航海長が作成し、艦長が承認して出来あがる。
        日出没時間や出港地の潮汐状況海域の潮流月齢等を考慮して平均速度航路を算出するが、前回と同
       じコースでもその時々によって細かい修正を加えねばならず、原案を担当する若手幹部はヒーヒー言いなが
       ら何度も何度も航海長に駄目出しを食らう。
        最新の海図に変更点は無いか、海上保安庁の最新水路情報は反映されているか、予定航路に作業船は無い
       か、近隣の漁協の漁網位置は把握しているか、民間フェリーの運航ダイヤは改正されていないか、漁船や釣
       り船の季節操業状況
は把握しているか・・・等々。



     【航空加給食】 こうくう・かきゅうしょく  
        航空機に搭乗する隊員にのみ、通常の食事に加えて与えられるおまけメニュー。おおむね果物ヨーグル
       ト
カップゼリーの類が多く、カロリーよりもビタミンやミネラルの補強を目的としている。
        緊張度やストレスの度合いを考慮して、ヘリパイよりもジェット機のパイロットの方がいいものを貰える
       が、ヘリパイだって大変なんですけど・・・。



     【剛健ピース】 ごうけん・ぴーす  
        陸上自衛隊幹部候補生学校名物の80km行軍で使用される、一個4kgのコンクリートブロック。
        8月の酷暑の中、30kgに及ぶ完全装備での2夜3日(断じて2泊3日ではない)行軍の際に、幹部自衛
       官根性
を養う目的で志願してこれを背嚢に入れる。
        正直なところ100g、いや10gでも軽くしたいのが本音であるが、部隊長の
        「根性のあるものはおらんか!?」
       の一声に、思わず
        「ハイッ!」

        かつてこの剛健ピース2つにそれぞれ妻と娘の名前を書き込み、背嚢に詰め込んで最後まで歩き通した鬼
       教官がいた事は未だに語り草。男としか言いようがない



     【更生したい暴走族】 こうせい・したい・ぼうそうぞく  
        『天才たけしの元気が出るテレビ!』で陸自が協力した、現役暴走族11名を板妻駐屯地第34普通科連
       隊に放り込み、28q行軍を体験させて更生させる・・・というキ○ガイ企画。

        シャレにならないレベルの現役ヤンキーを集めたが、34普連はそれに輪をかけた様な人物を教官として
    
   迎撃した為、収録現場には終始凄まじい緊張感が漂った。が、
        「俺が空を飛べと言ったら、お前たちは飛ばなきゃならねぇんだよ!」
        と教官が一喝したところ、
        「鳥じゃあるめえしよぉ」
        とヤンキーが至極もっともな突っ込みを入れてしまい、教官が思わず吹き出してしまう一幕もあった。
       常の訓練で部下から突っ込みを喰らう事などありえなかったので、慣れない的確な突っ込みについ笑わされ
       てしまった
様であった。



     【高張力鋼】 こう・ちょうりょく・こう  
        一般的な鋼板に比べて合金元素(マンガン・ニッケル・モリブデン・バナジウム等)の含有率が高く、
       殊な熱処理
を施されて製造された鋼材。引張強度が極めて高いため、水圧に耐えて深海を潜航する潜水艦
       構造材として使用されている。
        その特殊な製造技術ゆえコストもかかり、さらに溶接時には非常に高度な職人技が必要なので、自前で潜
       水艦を作れる国は世界でもごく僅か。ちなみに日本は、この分野では世界トップレベルである。



    【国有財産】 こくゆう・ざいさん  その他
        自衛隊イラク派遣の第一次復興業務支援隊長を務めた、佐藤正久参議院議員のヒゲの事。無事イラクから
       帰った佐藤隊長は、その後たくわえたヒゲを剃ろうとしたが、
        「お前のヒゲは国有財産だから、不用決定が出るまで剃るな(笑)!」
        と、当時の陸幕監部装備長が一喝した。
        また、イラクでは海千山千の現地の部族長達と互角以上に渡り合った佐藤隊長らしく、未だに現地の友人
       達
から
        「今でもヒゲはあるのか?」
        とのメールが来るそうな。



     【五点接地】 ごてん・せっち  
        陸上自衛隊習志野駐屯地に所在する第一狂ってる団・・・もとい第一空挺団での基本降下教育課程で叩き
       こまれる、パラシュート降下時の着地方法。総重量60kgにも及ぶ装備を抱えて着地する為、その際にか
       かる衝撃を全身の関節を使って分散吸収させる特殊技術である。
        垂直方向の着地ショックを、両足裏で40%、スネ外側で15%、大腿外側で15%、臀部で15%、最
       後は肩甲骨で15%減衰させて、回転運動に変えるのが特徴。
        が、実際の着地の様子は強烈で、すごいスピードで地面に叩きつけられたとしか思えない隊員が、次の瞬
       間には何事も無かったかのように素早く起き上がり、パラシュートをまとめて走って行ったのには心底驚か
       された。
        またその空挺団での逸話だが、寝坊してしまい起床後のグラウンド整列に間に合いそうになかった隊員が、
       部屋の三階の窓から飛び降りて完璧な五点接地を決めてみせ、涼しい顔で列に並んだ事があった。流石に小
       隊長も怒鳴っていいのか褒めていいのか分からなかったそうな。



     【五分間講話】 ごふんかん・こうわ  
        海上自衛隊幹部候補生学校で行われる、学生による5分間スピーチ。テーマを決められる事もあるが、概
       ね学生が自由に選んで話す事が多い。分かりやすさ、説得力、幅広い知識と上品なユーモアが必須とされ、
       話しベタな学生は毎回冷や汗をかく事となる。しかし、将来部下を率いる立場になった時のコミュニケーシ
       ョン能力
は非常に大事なので、話術を鍛え自分の中の引き出しを整理する意味で、毎日しっかりと行われる。
        時にはいきなり英語でやれと言われる時もあり、その講話に対する他の学生からの感想や批評、質問も英
       語で行わなければならない。幹部になるのは本当に大変である。



    【五分前】 ごふん・まえ  
        日課に取り掛かる5分前から、あらかじめ準備心構えを済ませておく海自独特の習慣。『目先が利いて
       几帳面』を標榜した日本海軍の伝統を受け継ぎ、『五分前精神』と言われている。
        使用例:「起床、五分前」 「艦内巡検、五分前」
        明治時代に海軍兵学校の講師として来日した、英国海軍のダグラス少佐が持ち込んだイギリス流の兵学校
       規則
がその原点である。そう言えば小学生の頃、一時限目と昼休みの後の五時限目前に五分前の予鈴があっ
       た。管理人が通っていた小学校も御多分にもれず変な考え方の先生が多かったが、何も文句は言わなかった
       んだろうか。
        また、昇進や昇任を確実にした隊員を、『一等海佐五分前』 『艦長五分前』などと冷やかす際にもしば
       しば使用されている。



    【五分前精神委員会】 ごふんまえ・せいしん・いいんかい  
        海上自衛隊幹部候補生学校で骨の髄まで叩きこまれるのが『五分前精神』だが、在学中にこの五分前精神
       を守れなかったり、幹部候補生としてのあるべき姿から逸脱した学生に対し、厳しい厳しい指導を行うのが
       この五分前精神委員会。幹部候補生達はこの委員会の陰に怯えながら、一年間の修行の日々を過ごす事にな
       る。
        五分前精神委員会のプレッシャーは幹部候補生学校の日常のあらゆる場面に浸透しているが、中でも特に
       キツいのが、起床から課業開始までの間に強制的に割り込んでくる委員会による整列。僅か40分の間に
       替え、ベッドメイク、洗顔、歯磨き、朝食、教務の準備等
を済ませねばならない幹部候補生達にとって、こ
       こで委員会に消費される十数分は絶望的な時間のロス。この辺りの反復した学生の追い込み方は、どこの国
       の海軍士官学校も同じ様な事をやっている様である。
        こういった様々な試練とプレッシャーを乗り越えて選ばれた者だけが、幹部の階級章をつける事ができる。



    【こめタリバン】 こめ・たりばん  
        艦に持ち込んだ生米に湧いたコクゾウムシの事。平成13年より始まった海自インド洋派遣時、出港して
       2ヶ月目あたりから米の中に大量のコクゾウムシが湧き始め、各艦とも人員をかき集めては甲板に生米を広
       げ、炎天下汗だくになりながらコクゾウムシを一匹一匹つまみ出すのが新たな任務となった。
        現地に展開する米陸軍さながら、しらみ潰しの人海戦術による掃討作戦を行う羽目になった事からこう呼
       ばれ、乗組員から忌み嫌われ恐れられる様になった。



     【米番長】 こめ・ばんちょう  
        護衛艦せとゆきにて確認。アメリカ合衆国の事ではなく、恐らく給養員長の事と思われる。
        『箸が減っています。返して下さい。 米番長』
        という、番長にあるまじき低姿勢な掲示物が科員食堂に貼ってあった。頑張れ米番長。





     【サイドパイプ】 さいど・ぱいぷ  
        艦長が艦艇の舷門を出入りする際に、当直の曹士が「ホヒーホーヒー」と噴いている笛。それ以外にも、
       艦内巡検時等で日常的に使われている。ラッパと違って呼吸法だけで音程を調節するので、思い通りに鳴ら
       すにはかなりの熟練が必要。

        元々は大航海時代の海賊船の習慣で、酔っぱらって帰って来た親分がラッタルから海に落ちない様に、笛
       を聞かせてしゃんとさせた事に由来している。
        ちなみに正式名は“号笛(甲)”。一般にはボースンパイプという名前の方が通りがいい。



     【佐久間一】 さくま・まこと  
        校内での飲酒が発覚し、栄えある戒告処分第一号となった防衛大学校一期生。
        しかし後年はペルシャ湾掃海部隊派遣の総責任者となり、派遣部隊の調整やマスコミ対応等の難しい任務
       を完璧にやり遂げ、最後は統合幕僚長にまで上り詰めた大人物である。ちょっとぐらいはみ出した所のある
       人物の方が、大きな仕事をやり遂げる事が出来るのであろう。
        だから、管理人の速度超過の一発免停ごときで会社はあれこれ言ってはいけなかったのである。



     【捧げ銃】 ささげ・つつ  
        総理大臣や各国VIPを迎える際に、小銃を胸の前で垂直に構える姿勢。最高の儀礼を表している。
        一見して簡単そうに見えるが、右手は添えるだけで実際は左手一本のみで小銃を保持しているので、慣れ
       ないうちは筋力的にかなりツライ。
        まれに、○○○の勃起状態を表して使われる事もある。
        「いやー、今朝は捧げ銃だったわ」
        「朝っぱらから(オッサンのクセに)元気っスね・・・」



     【サニタリータンク】 さにたりー・たんく  
        潜水艦内で発生した生活排水(トイレやシャワー等の汚水)は一旦サニタリータンクに貯めて生物処理
       行い、その後まとめて海中にブロー(噴出廃棄)される。このブローは潜望鏡深度(概ね18〜25m)
       行うが、当然ながら水圧よりも高い圧力でブローする必要がある為、どうしても空になったタンクには3気
       圧前後の内圧
がかかった状態になる。
        その状態トイレを流すと逆流して恐ろしい事になるので、やむなくタンク内に溜まった圧縮空気は艦内に
       排出される・・・。
        
かくしてブロー後の艦内は、下水管の様なアロマに包まれる事となる。



     【錆打ち】 さび・うち  
        定期検査や年次修理等で艦艇をドックに入れた際に行われる、ペンキの塗り直しのために古い塗装を剥が
       す作業
の事。ノミやカナヅチ、グラインダー等を使用してガリガリと削っていく。
        慣れると結構面白い作業らしいが、不自然な姿勢で長時間作業する事が多く、日頃の運動不足も祟ってそ
       の後の筋肉痛急性腰痛に悩まされる隊員が続出する。
        新しい艦は大型化にもかかわらず少人数で運用できるが、こういう作業はとにもかくにも頭数が必要なの
       で逆に大変
との事。



    【山走狂】 さんそうきょう  
        静岡県板妻駐屯地に駐屯する、第3陸曹教育隊(3曹教)の別名。東部方面隊の基幹要員となる陸曹の教
       育を行う。体力練成に関しては事のほか厳しい事でも有名で、山の中を気が狂うまで走り回らされる事から、
       こう呼ばれて恐れられる様になった。



    【サンダーバード】 さんだー・ばーど  
        2000年から行われている西太平洋潜水艦救難訓練を立ち上げた際、参加各国の会議で日本が提案した
       作戦名称。
担当者がファンだったのか、イギリス国営テレビの人気番組であった国際救難組織『サンダーバ
       ード』
にあやかってこの案を提唱したが、参加したアメリカ・シンガポール・オーストラリア・韓国のどの
       代表も番組の事を知らず、あっと言う間に却下
されてしまった。
        結局作戦名は、“太平洋諸国で手を取り合って”という意味のパシフィックリーチで落ち着いた。



    【サンドパワー】 さんどぱわー  
        自衛艦内で使用されている無電池通信機。内蔵された永久磁石により発声時の振動を利用した発電を行い、
       音声を信号化して通信を行っている。艦内の通信機器や電源が全てダウンした状態でも交信が可能



     【三陸沖】 さんりく・おき  
        潜水艦にとっての難所。北からの寒流(親潮)と南からの暖流(黒潮)がぶつかり、海水温が安定しない
       海域
が実に400km以上も続いており、ここに差しかかるとソナーも効かなければトリムも安定しない。
        暖水塊に入った途端に艦の深度が下がり、寒水塊に入った途端にいきなり浮上し始めたりという状態が何
       日も続くので、当直員は全く気が抜けない。ただ、同じ理由で航空機や水上艦からも発見されにくくなる
       で、ある意味当直士官の腕の見せ所とも言える海域である。



    【CIC】 しー・あい・しー  
        海自艦艇内の戦闘指揮所ombat nformation enter)の略称。高度にコン
       ピューター化された現代の戦闘指揮は、艦橋ではなくここで行われる。機密事項に抵触する事が沢山あるの
       で、一般人はおろか部隊でもごく限られた隊員しか出入りできない
        船務科と砲雷科の隊員が、真っ暗な部屋の中で電子機器を冷やす為のキツイ冷房(年中23℃設定)にひ
       たすら耐えながら座りっぱなし。慢性的な疲労感、血行不良、肩こり、冷え症、腰痛、眼精疲労、痔に悩ま
       される隊員が多く、快適そうに見えてその実非常に不健康な部署のひとつ。



     【GNN】 じー・えぬ・えぬ  
        イラク第一次復興支援群の群長を務めた、番匠幸一郎一等陸佐(当時)のモットー。(義理)・(人
       情)・(浪花節)を意味し、そのスピリットはオランダ軍のセレモニー鯉のぼりプロジェクト、サマー
       ワ市内の小学校訪問等で遺憾無く発揮された。



     【GNN隊】 じー・えぬ・えぬ・たい  
        イラク第一次復興支援群が編成した、臨時音楽隊。毎日の課業終了後にどこからともなく現われては、隊
       員のリクエストした日本のポップス懐メロを演奏して、過酷な一日の労をねぎらった。これを見た近隣に
       駐留する諸外国の部隊は、
        「あいつら遊びに来てるのか?」
        と、当初は冷ややかな目線を投げかけていた。
        しかし隣接するオランダ軍駐留地の兵士がテロにより死亡した際、セレモニーで葬送の曲を流したいが、
       CDではあんまりなのでラッパ吹きを一人貸して貰えないだろうか、との依頼があり、群長である番匠幸一
       郎一等陸佐
はこれを快諾。
        急遽送りこまれたサックス担当の陸曹は、オランダ語も分からず楽譜も無い中、渡された一枚のCDから
       譜面
を書き起こし、セレモニー本番では見事な葬送曲を吹奏してみせた。
        この一件に非常に感激したオランダ軍は、その後事あるごとに初参加である陸自を気にかけ、協力を惜し
       まなかったらしい。
ちなみにオランダ軍は、この陸曹とサックス一つを迎える為に、敬意を表してわざわざ
       ヘリコプターを用意した。まさしく国境を越えたGNN魂と言えよう。



    【CIWS】 しうす  
        losed nner epon istem(近接防御武器システム)の略称。RAMやゴー
       ルキーパーが有名だが、海自艦艇で最も多く採用されいているのは、米国レイセオン社製の高性能20mm
       機関砲ファランクス
。あさぎり型護衛艦までは艦橋の左右に配置されていたが、むらさめ型以降は艦橋の前
       後を挟む形で、より効率的に配置されている。
        対空ミサイルをかいくぐって接近して来た敵の戦闘機や誘導ミサイルに対し、最終的な迎撃手段として期
       待されているが、最新型のBlock‐1Bからは俯角も取れるので、不審船等の小型水上目標に対しても有
       効。
        対空目標の捜索・探知・識別・評価・追尾から発射までの一連の流れを完全自動で行えるが、この場合
       効射程内で動くものは全て見境なしに攻撃してしまう
ので、通常はマニュアル設定で運用されている。バカ
       ボンの本官さん並みに危ない奴
と言えよう。
        また、冷却用の真水電源、あと設置の為の甲板強度が確保できれば、ボルトオンでどこにでも取りつけ
       る事が可能。使い勝手の良さが評価され、世界各国の海軍で採用されている。いかにもメカらしくがっしょ
       んがっしょん動き、チェーンソーの様な音を立てて銃身を回転させる様子は、体験航海等で見る事が出来る。
        なお1996年に行われたリムパック96において、護衛艦ゆうぎりのファランクスが米軍の攻撃機A−
       6Eイントルーダー
標的と誤って撃墜してしまった事があった。幸いパイロットは無事であったが、現場
       は大変な騒ぎだったとか。
        ちなみに米海軍では、親しみをこめてR2D2と呼ばれている。確かに似てる。



     【自衛太鼓】 じえい・たいこ  
        自衛隊では意外と和太鼓の人気が高く、全国の基地駐屯地に100を越えるチームがある。毎年各地で行
       われる音楽祭や駐屯地創立記念行事以外にも、地域の催し物などで披露する機会も多く、太鼓専門誌からも
       頻繁に取材が来るほどレベルが高い。
        中には熱中するあまりマイ太鼓をいくつも買い揃える隊員や、オーバーワークで疲労骨折までしてしまう
       太鼓バカ一代
も。
        しかし自衛太鼓というのはどうにも語呂が悪い。どうせなら国防太鼓にしては・・・いや、あまり変わら
       んか。それより太鼓専門誌というものがあった事が、個人的には一番驚きである。  



 new!!【自衛隊式腕立て伏せ】 じえいたい・しき・うでたてふせ  
        「よーし!罰として腕立て伏せ50回だ!よーい、てっ!1、2、3・・・・・・45、46、おい○○、
       今何時だ?そーか11時か!
12、13、14・・・」
        「勘弁してくださーい(泣)」



      【自衛隊阪神病院】 じえいたい・はんしん・びょういん   
        兵庫県伊丹市の川西駐屯地に所在する、自衛隊が運営するれっきとした病院である。当初は防衛省職員と
       その家族だけが利用していたが、現在では段階的に一般外来の診療も行われている。
        その土地柄故か、阪神ファンが高じて日常生活に支障が出るようになった隊員のリハビリ並びに社会復帰
       支援
を行っているという噂がまことしやかに流れているが、多分半分ぐらいは冗談だと思われる。



    【JP5】 じぇい・ぴー・ふぁいぶ  
        艦載ヘリ専用の航空燃料。通常使用されるJP4に比べると発火点が高いので、閉鎖された艦内で取り扱
       う上で安全性が高い。その分、JP5よりも燃焼効率が若干低くなる



 new!!【潮気】 しお・け  
        艦艇乗組員独特の雰囲気やクセ、躾、職業病的な言動行動を指す。退職してすっかり一般社会に馴染んだ
       元隊員に対して
        「もうすっかり潮気が抜けたね」
        艦を降りても未だに乗組員時代の癖が抜けない隊員には
        「全然潮気が抜けてないな」
        という具合に使う。



 new!!【士官室】 しかんしつ  
        准海尉以上の幹部自衛官が揃って食事や会議を行う場所。4000dを超える水上艦だと結構な面積があ
       り、大きなソファや絵画が飾られてあって立派だが、潜水艦ではかなり狭い・・・というより通路の一部が
       広くなっているだけ
で、扉もないので普通に曹士がすぐ横を通ったりする。
        艦によっては万が一の際には手術室として使える設計になっており、天井には無影灯が。この照明の下で
       日常の食事をするというのは、なんだか変な感じである。



     【士官室係】 しかんしつ・かかり  
        任期制隊員が交代で担当する、士官室のお世話係。食事の準備や後片付け、コーヒーの提供、士官室内の
       清掃等を担当している。
        楽しいか楽しくないかで言えば全然楽しくない仕事らしいが、外部からのゲストに出した高級お茶菓子の
       残りをそっとポケットに入れる程度の役得
はあるとか。艦に招待されたゲストの皆さんは、気を効かせてお
       菓子を一つ二つ残しておいてあげて下さい。



     【士官食器室】 しかん・しょっき・しつ  
        士官室に隣接した、配膳の準備や洗いもの等を行う区画。食器類やコーヒー、お茶、流し台、清掃のため
       の雑巾や掃除機等が押し込められていて、ここに万年床を敷けば昭和の貧乏下宿さながらの風景になる。恐
       らく艦内で最も生活臭い空間。
        ちなみに先任海曹室にも同様の食器室があり、幹部同様上げ全据え膳の待遇となる。



     【士官寝室 しかん・しんしつ  
        幹部自衛官用の艦内の居室。だいたい2〜3名で一つのコンパートメントを使用し、2段ベッドとライテ
       ィングビューロー式のデスク、簡素なロッカーがある。
航行中の艦は24時間体制で運用されており、相部
       屋とは言え同室者と顔を合わせる事はあまり無い為、半ば個室状態になっている。
        若手士官にとっては分隊長や艦長の目から逃れられるオアシスでもあるが、
        「士官室から逃げるな!」
        と寝室での仕事を禁止される事も。
        映像資料ではこざっぱりとした士官寝室の様子が公開されているが、実際は洗濯物のパンツや靴下が吊る
       してあったりで、
結構生活臭い。



 new!!【識別帽】 しきべつ・ぼう  
        隊員さんが被るキャップ型の帽子。部隊所在地のシンボル艦名艦のイメージキャラクターをデザイン
       している。陸や空は結構カラフルだが、海自の場合は殆どが黒か紺が基調になっている。
        部隊内での団結や一体感を高めるために作られるが、正式な官給品ではない為、イベント等で一般への販
       売も行われている。
        ちなみに護衛艦ちくまドラゴンをデザインしているが、これは初代艦長が熱烈な中日ファンだったため
       強権を発動してこうなった・・・と聞いた事があるが本当だろうか。



     【指向性大音響発生装置】 しこうせい・だいおんきょう・はっせいそうち  
        ソマリア沖での海賊船対策に乗り出した海自艦艇が装備した、非殺傷性の音響兵器。直径80p程のパラ
       ボラアンテナ状のスピーカーから発生させる“生理的にとてつもなく不愉快な音”(黒板を爪でひっかいたみ
       たいな音?)
を一点に集中させて、海賊船にぶち当てる。
        これを食らうと、どれだけ体を鍛えていようがのたうちまわるほど苦しい為、その海域から逃げ出すほか
       は無いらしい。別名ジャイアン。
        一方海賊側も黙ってはおらず、対抗兵器としてカーチャンを開発中というウソ臭い噂が流れているが、真
       偽の程は定かではない。そういえば、米海軍にはオカーンという名のイージス艦があった。



     【時刻整合】 じこく・せいごう  
        出港や演習、作戦前に行われる、艦内の時計を一斉に合わせる作業。
        「時刻整合15秒前・・・10秒前・・・よーい、テッ!・・・時刻0900、整合終わり」



    施設うどんマルナナ風】 しせつ・うどん・まる・なな・ふう  
        陸上自衛隊施設学校が所在する、茨城県勝田駐屯地隊員食堂の名物メニュー。どんぶりの両端にはみ出す
       サイズの巨大なアナゴ天が乗っていて、うどんをに、アナゴ天をそこに架け渡した07式機動支援橋に見
       立てている。
        従来の81式自走架柱橋6両分という長大な橋桁を架ける事が可能な07式機動支援橋だが、その教育が
       勝田駐屯地で行われた
事を記念して、この名前がついた。



     【実習幹部】 じっしゅう・かんぶ  
        江田島幹部候補生学校遠洋航海を経て幹部の卵はようやく艦艇勤務に入る訳だが、事実上の実務経験は
       まだゼロに等しく、最初に配属された艦では実習幹部と言う名の幹部見習い期間を過ごす。約一年かけて各
       科を一通り経験して理解を深める・・・と言う意味では、医学生のインターン制度みたいなものである。
        別名「新品三尉」。



 new!!【実習中につき・・・】 じっしゅう・ちゅう・に・つき・・・  
        艦艇乗組みの幹部自衛官は、普段艦内で作業服を着ているが、食事の際にはいちいち制服に着替える規則
       がある
。純白の制服にカレーのシミでもついた日には大変ブルーな気分になるが、海自隊員のシミ抜き技術
       は一般人の比ではなく、翌日にはあとかたもなくなっている。
        例外として、新人の実習幹部だけは作業服のまま席に着く事が許されているが、これは楽をさせてもらっ
       ている訳ではなく、いちいち制服に着替える暇があるなら一つでも仕事を覚えろ!という意味。なお着席前
       には
        「実習中につき、作業服まま失礼します!」
        と一言断る決まりになっている。



    【SHIBATA君】 しばた・くん  
        埠頭への接岸時に、艦艇が傷まないよう岸壁との間に挟み込む俵型のゴム製クッションの事。いわゆる
       舷物
である。
        このゴムクッション本体には、恐らくメーカー名と思われる“SHIBATA”という文字が印刷されてお
       り、隊員達は親しみをこめてシバタ君と呼んでいる。また、転じて風船の如く太ってしまった隊員の事をも
       指す。
        ちなみにこの防舷物は複数のメーカーが納入しており、他にも横浜ゴム製のものが確認されているが、こ
       ちらは何と呼ばれているのか不明。



    【ジャー戦】 じゃー・せん  
        上が戦闘服で下がジャージ、という陸自駐屯地の隊員宿舎のスタンダードファッション。戦闘服のすその
       部分をジャージに突っ込むのがポイントである。楽でいいのは確からしいが、一般社会から入ってきたばか
       りの新米隊員はその微妙なダサさが気になる・・・。
        このセンスに違和感を覚えなくなると、シャバっ気が抜けて一人前の隊員。



    【ジャコップ】 じゃこっぷ  
        艦の舷側から下ろす縄梯子の事。日本海軍創設期にお手本とした大英帝国海軍から伝わった用語で、旧約
       聖書の創世記第24章に出て来る天から降りてきた縄梯子、『Jacob´s Ladder』が語源。概
       ね甲板の目立たない場所に、くるくる丸めて収納してある事が多い。
        日常的な内火艇や交通艇への乗り込みは舷梯をクレーンで下ろして行われるので、このジャコップが使用
       される事はあまりない。せいぜい入港前にパイロット(水先案内人)や税関職員が乗り込む時や、停泊中の
       船体への塗装作業
の時ぐらいである。



    【シャンパン】 しゃんぱん  
        艦艇の進水式にはつきもの。支綱切断と同時にシャンパンの瓶が艦首に叩きつけられ、割れたくす玉から
       大量の紙吹雪と紙テープを舞い散らせつつ、産声をあげたばかりの船は初めての海に滑り込む。
        昔は海の神様に対して航海安全を祈願する為に、生贄として奴隷や動物の血を捧げていたが、さすがに今
       はそんな真似をしている造船所は無いようだ。
        まあ神様としても、グロい上に感染症の原因になりかねない生き血よりも、酒の方がよっぽど嬉しいに違
       いない。造船所によっては、シャンパンの代わりに日本酒の一升瓶を使う事もあるそうだが、管理人が神様
       ならメーカーズマークを所望じゃ
(←神様風の語尾にしてみました)。       



    【銃剣道】 じゅうけん・どう  
        明治初期にフランスから伝わった西洋式銃剣術に、宝蔵院流・佐分利流・疋田流・貫流等の日本古流の槍
       術
をミックスさせて作られた武道。木銃を使用し、胴・小手・喉・肩を突き合う。
        自衛隊員しかしていないと誤解されがちだが、国体の正式種目である。
        隊内ではしばしば銃剣道の競技会が開かれ、特に陸自ではこれが重要視されるので、銃剣道が強いと結構
       チヤホヤされる。
上官の覚えもめでたく勤務評定でもプラスになるが、競技会前になると連日課業終了後の
       自主練習に駆り出される
ので、正直痛し痒し。
        明治初期はまだサムライの精神が残っており、武家の出ではなくとも槍の心得がある人間が多かった。こ
       れが日露戦争において、体格ではるかに劣る日本兵が白兵戦でロシア兵と渡り合えた理由の一つとも言われ
       ている。



     【集合訓練】 しゅうごう・くんれん  
        秋の海演とは別に毎年春に行われる、護衛艦隊の大規模な訓練。舞鶴や佐世保など、その年によって様々
       な海域で行われる。
        全国から二十隻を超える護衛艦が参加し、その他にも輸送艦補給艦、訓練支援艦などが押し寄せるため、
       埠頭はかなりの壮観になる。
        また地元商店街や歓楽街にとっては、数千人規模の乗組員が街に繰り出して飲み食いしてくれる為、かな
       りおいしい稼ぎ時
となる。ついでに反対運動の暇な人達も何人かやって来るようであるが、そっちの方々の
       経済効果
はどんなもんだろうか。お土産のひとつも買ってくれるんだろうか。管理人的には、レトルトの海
       軍カレー
がお勧めである。



     【住所】 じゅうしょ  
        艦艇乗組員の住民票の住所は、その艦である。護衛艦みょうこうの例をあげると、
        『京都府舞鶴市余部1190 舞鶴地方総監部 護衛艦みょうこう』
        さらに郵便物に至っては、『舞鶴地方総監部 みょうこう』だけで普通に届いてしまうのが驚き。もちろ
       ん停泊中に限っての話ではあるが。



    【出港時刻】 しゅっこう・じこく  
        艦艇を埠頭に固定している舫綱のうち、最後の一本が放たれた時刻を指す。



     【女王陛下のキス】 じょうおうへいか・の・きす  
        2000年7月4日、 ニューヨーク港にて21世紀最後のアメリカ独立記念式典が行われた。それに参
       加した英国の豪華客船クイーンエリザベスUが入港する際、ハドソン川の急流と潮流にあおられてしまい、
       停泊中の海上自衛隊練習艦かしまの艦首に接触
するという事故が発生した。
        船長の詫び状を携えたクイーンエリザベスUの機関長と一等航海士が慌てて練習艦かしまに駆け付けたが、
       応対した艦長上田勝恵一等海佐(当時)は、
        「幸い損傷程度はごく僅かで航行に支障は無く、気にしておりません。それよりも、女王陛下直々のキス
       を頂き、大変光栄に思っております」

        と、笑顔で対応した。 
        このエピソードは式典に参加した各国船乗りの間で評判となり、地元各紙は上田艦長の余裕とユーモアを
       手放しで賞賛した。



     【場外】 じょうがい  
        航空基地を飛び立ったものの、天候不良等で自分の基地の滑走路に降りる事が出来ず、やむなく遠く離れ
       た別の基地に着陸する事。

        青森県にある海自八戸基地は年間を通して霧が発生しやすいので特に場外が多く、その場合は一時間半も
       かけて神奈川県の厚木航空基地まで向かう羽目に。家族と囲む夕食や彼女とのデート、飲み会等の予定が台
       無し
になり、機内には小さなため息が。
        そしてどの部隊にも必ず一人は雨男ならぬ場外男がいて、理不尽にも嫌がられたりしている。



     【状況、ガス】 じょうきょう・がす  
        閉鎖された空間内でやむを得ず放屁した際に、高らかに宣言する号令。周囲が自分と同等か、より下の階
       級の者ばかりの場合は、マイルドな「ゴメンネ?」と受け取って貰えるが、どう考えても自分が最も下っ端
       である場合はなるべく我慢するのが望ましい。
        変わった使用方法としては、生物兵器や化学兵器による攻撃を受けた際にも発令される。この号令がかか
       ると、8秒以内に防護マスクを装着する訓練を隊員さんは積み重ねている。



    【上陸止め】 じょうりく・どめ  
        何らかのヘマをこいた隊員が、ペナルティとして上陸させてもらえず、入港しても艦内にとどまる事を余
       儀なくされる事。
        正式な処分ではなく、お灸をすえる的な意味合いなので個人の記録には残らないが、隊員にとっては下手
       な訓告や減俸
よりも精神的なダメージがでかい。これを取り消してもらえるなら、大抵の事は出来るとか。
        原因としては、艦内での規則違反や帰隊遅延等が多いが、割と洒落にならないのが不正借財、いわゆる
       費者金融等での借金で部隊に迷惑をかけた場合
。給与は強制的に返済に回され、恐ろしい事に上陸止めも無
       期限
になる。人権侵害だ!という人もいるかもしれないが、むしろここまで親身になって面倒を見てくれる
       職場が他にあるのか
と問いたい。
        また昭和30年代までは、『ネズミ上陸』なる制度があった。これは当時艦内を悩ませていたネズミを一
       匹捕獲すれば、上陸を一日貰える
という制度。今の海自艦艇内でネズミを見る機会は殆ど無いが、上陸止め
       をくらった当時の乗組員は、入港まで血眼になって艦内のネズミを追いかけ回していた
そうだ。
        ちなみに陸自と空自では、同様の処分の事をガイキン(外出禁止)と呼ぶ。



    【食卓番、手を洗え】 しょくたく・ばん・てを・あらえ  
        昭和40年代まで艦内で使われていた、科員食堂にて食事の準備が整った時の艦内号令。要はごはんでき
       たよ!

        どういう謂れがあったのかは不明だが、現在は簡略化され、単に『配食用意(食堂前に集合)』『配食始
       め
(食堂に入ってよし)となっている。



 new!!【女性名詞】 じょせい・めいし  
        フランス語の名詞は男性名詞と女性名詞に分けられるが、船は女性名詞に含まれる。大航海時代の優美な
       帆船
を想像すればそれも納得だが、現場の船乗りに言わせれば
        「乗りたがるのが男ばっかりだからだよ」
        との事。当HPの雰囲気にそぐわないエロい内容になってしまった。反省。



    【深々度潜航】 しんしんど・せんこう  
        出港した潜水艦が、本格的な潜航の前に安全確認のために行う作業。十分な深度がとれる海域にさしかか
       ったら、安全潜航深度(数字は内緒)ギリギリの深さまで潜航し、艦内の各区画の漏水や異音の有無を細か
       くチェック。
        終了後はいったん潜望鏡深度まで浮上し、今度はスノーケルを上げて正常に吸気できるかどうかを確認。
       この一連の作業が終了してから、ようやく本来の作戦(警戒)行動に移る事ができる。
        ちなみに、単に深いところを潜る場合も深々度潜航と称するが、意味的には同じである。



     【進水日】 しんすい・び  
        船としての形が完成し、初めて海に浮かんだ日の事。エンジンや航海に必要な機器類は積んでいるものの、
       武装や艦内生活に必要な施設類はまだ完成しておらず、船としての誕生日ではあるが、自衛艦としてはあく
       まで未完成の状態

        大航海時代の帆船は、海に浮かぶ=完成という意味だったので、その伝統を汲んで現在も命名式等の諸行
       事はこの日に行われる。
        しばしば起工日、竣工日と混同されるが、起工日は船を作り始めた第一日目の事であり、竣工日は全ての
       作業が終了して自衛艦としての運用が出来る状態になった日
の事である。そのため順番としては、
        起工日進水日→竣工日
        となる。



     【水上降下訓練】 すいじょう・こうか・くんれん  
        習志野の第一空挺団が毎年8月に実施する、落下傘による海面への着水訓練
        千葉県南房総市の某海岸までCH−47輸送ヘリでやってきて、次々と落下傘降下を開始する。通常の手
       順とは違い着水寸前でパラシュートを切り離すが、切り離しのタイミングが早すぎると着水時に危険だし、
       遅すぎると水中でパラシュートのコードが絡まって更に危険。
        その様子はふわふわと漂うクラゲ昼間の花火の様で、海水浴場から見ている分には地元の夏の風物詩的
       な呑気な光景
だが、やっている方はいつも以上に危険と隣り合わせの命懸けである。



    【スーパーキャビテーション】 すーぱー・きゃびてーしょん  
        水中を航走する物体の先端からキャビテーション(気泡)を発生させ、物体の表面をで包んで水に触れ
       させないようにする事で、水中での抵抗を極端に減らせる技術
        一見して画期的な技術の様に思えるので、ロシアでは魚雷“シュクバル”にて採用されたが、自身が発生さ
       せるキャビテーションの所為でプロペラが使えずロケット推進方式になり、発射後の軌道修正は一切できな
       い
航続距離は極端に短くなるわ、ロケットエンジンのまき散らす凄まじい轟音の所為で発射した途端に探
       知される
わ、どうにも使いものにならなかった。
        通常魚雷が40ノット(約72q/h)そこそこの水中速力なのに対し、シュクバルはなんと200ノット
       (約360q/h)
を記録したとか。



    【スターボード】 すたー・ぼーど  
        艦の右舷の事。商船独特の言い回しで、海自艦艇内で日常的に使用される事はない。しかし海外の港に入
       港
する場合や、公海上で他国船舶とすれ違う時の無線による通信の際は、相手に分かりやすいようにそう言
       う事もある。ちなみに左舷はポートと呼称する。
        大航海時代からの用語であり、当時の帆船は船尾右側舵(Steer Board)があった事に由来
       している。その大事なスターボードを保護する為に、埠頭への接舷は常に左舷側で行っていた。その為左舷
       はポート
(港)と呼ばれる様になった



     【スターリング機関】 すたーりんぐ・きかん  
        AIPir ndependent ropulsion、非大気依存推進)機関の一種で、
       ンジンを動かす際に酸素を必要としないシステム
。海自ではそうりゅう型潜水艦から補助的に採用され、お
       やしお型に比べて連続潜航日数を大幅に増やす事に成功している。
        連結された2つのシリンダーのそれぞれを交互に加熱・冷却し、シリンダー内を移動するガスの膨張収縮
       現象
を利用してピストンを稼働させる。
        稼働時に爆発音が発生しないため極めて静粛性に優れており、小出力だが熱効率が高い。従来のディーゼ
       ルエンジンの延長上にある技術なので、補給やエンジン配置が簡単という利点がある。
        その反面、分子が軽いヘリウムガスを使用するため、製造には高度なシーリング技術が必要でコストもか
       かってしまう。
        また、長期間の連続潜航が可能になった事で一回の航海が長くなり、その分大量の食料品消耗品を搭載
       する事になり、結果的に乗組員の居住スペースが犠牲になっているのは痛し痒し。



     【スティールビーチ・パーティー】 すてぃーるびーち・ぱーてぃー  
        日米共同訓練や国連平和維持活動の海外派遣の最終日に行われる、甲板上でのお疲れ様パーティー男お
       いどん風
に言えば大パーチー。アイアンビーチ・パーティーと呼ばれる場合もある。
        主催する艦の国籍によっていろんなパターンがあるが、海上自衛隊の場合は各国参加部隊の中の最高階級
       者がハッピ姿で樽酒の鏡割り
を行い、その後升酒が振舞われる。甲板にはタコ焼き焼き鳥の屋台が立ち並
       び、現地でのF作業で確保した怪しい色合いの魚の舟盛りに怖々手を伸ばす他国海軍士官の姿も。
        アメリカ海軍の空母が会場になるとさらに規模がでかくなり、広大な甲板上でゴルフ大会まで行われると
       か。



    【スラパイ】 すらぱい  
        艦艇に搭載されている、スライディング・パッドアイの略称。洋上補給時の物資や人員の受け渡しの際に
       使用する、艦の両舷に設置された背の高いタワー状のフレームの事である。
        ちなみにこのスラパイ、もう一つ別の意味がありますよ♪と当HP閲覧者の方(うら若き独身女性・・・
       と書けと言われたのでそのまま書いた
)から教えて頂いた。それは知りませんでした、今度一般公開で隊員
       さんに質問してみます
と返信したところ、管理人が艦上で大恥をかく事を心配してか、女子のおっぱいの間
       に鞄の肩かけを
スラッシュ()状にかけた状態の事ですよと、わざわざ教えて頂いた。
        あやうく赤っ恥をかくどころか、女性自衛官に質問してしまった日にはセクハラの罪状海自イベント出
       入り禁止処分
にもなりかねない所であった。この場にてお礼申し上げます。
        要は安易に人に聞く前にまずググれ!という事である。またひとつおっぱいに、いや自衛隊に大切な事を
       教わった。



     【成人式】 せいじん・しき  
        未成年で入隊した者は、二十歳になった時点で所属している部隊独自の成人式に参加する事となる。各基
       地駐屯地ごとにそれぞれに趣向を凝らした成人式を準備するが、特に強烈なのが陸自の千歳駐屯地。新成人
       が吹雪の中パンツ一丁で整列し、取り囲んだ先輩隊員達が角スコ(雪かき用の四角いスコップ)で雪をかけ
       まくる・・・
という恐ろしいシロモノ。その後はそのままの格好で、90式戦車を相手に綱引きを行う。
        戦車がちょっとバックするだけでパンツ一丁の新成人達は悲鳴を上げながら雪原を引きずりまわされ、
       守る隊員たちは大爆笑。この悲惨なイニシエーションを経験してこそ、一人前の千歳の新成人なのである。



     【生存自活訓練】 せいぞん・じかつ・くんれん  
        陸自のレンジャー教育課程で行われる、行動中に食料が尽きた場合を想定しての訓練。概ね運の悪いヘビ
       (山ウナギと呼ぶらしい)さん
カエルさんが犠牲になる。某隊員さん曰く、
        「シマヘビは結構美味しいです。青大将は不味いですよ。あれは止めといた方がいいと思います。ナイフ
       で頭を落として骨を歯で噛んで、皮をグッと下に引っ張ると簡単にムケますよ〜」

        ちなみに訓練の犠牲になったヘビやカエルのために、最後はきちんと供養も行うとの事。いかにも陸自ら
       しい律義さ
を感じさせる。



     【戦士の輪】 せんし・の・わ  
        陸自駐屯地のPXにて販売されている、ドーナッツ状のクッション。鉄帽と頭の間に挟み込めば、長距離
       行軍でも頸椎や肩への負担が軽減される
と評判のアイデア商品である。
        ただどうしても蒸れやすくなるので、頭髪に危機感を覚えるお年頃の隊員には痛し痒し。
        海自基地の売店では見た事が無いが、どちらかというと痔主の多いCIC詰めの隊員さん(冷房のキツイ
       部屋で座りっぱなし・・・)のクッションとして便利
な様な気がする。
        ちなみにこのネーミング、若い隊員さんには分かって貰えるのかどうか。



 new!!【潜水艦乗員待機所】 せんすいかん・じょういん・たいきしょ  
        横須賀の潜水艦隊司令部にある、上陸したサブマリナーの為に作られた宿泊施設。簡素な国民宿舎と
       いった程度だが、広いフロア高い天井、明るい陽の差し込む大きな窓、目に優しい観葉植物、ゆったりと
       したソファ、シングルながらも余裕のあるベッド、ノリの効いた清潔で真っ白なシーツ、真水の広々とした
       浴槽
、そして何よりも新鮮な空気・・・と、潜水艦生活では望むべくもないものが全て揃っている。
        しかし航海に出ている間は別の隊員が入居する為私物は大して置けず、定期的に部屋チェックも入る。そ
       して横須賀は一人部屋だが呉は二人部屋。それでも部屋代は月数千円で済むし、なにより潜水艦桟橋まで歩
       いて1分以内という超優良立地なので、時間ぎりぎりまで寝ていられるなど利点も多い。
        ちなみに呉の待機所は、窓から潜水艦桟橋が一望出来てちょっとしたリゾート気分だが、隊員さん曰く
       陸した時まで潜水艦を見たくない
そうだ。考えてみればもっともな話である。



     【潜水艦スメル】 せんすいかん・すめる  
        ディーゼルスメルとも呼ばれる、潜水艦内特有のディーゼルエンジン臭。実際はディーゼル臭に加えて
       呂に入れない
乗組員の体臭生活臭サニタリータンクのブロー臭(強烈・・・)、さらに消臭剤臭が入り
       混じり、かなりエグいアロマとなる。乗組員の私物や制服、頭髪に否応なく染みついている。
        しかし最近は空気清浄機の高性能化換気システムの進歩もあり、停泊中や水上航行中の艦内は無臭で水
       上艦と変わりない状態。
某サブマリナー曰く、
        「いや、それでも潜航中は、もう勘弁してくれってニオイになりますよ」



     【潜水艦の洗身室】 せんすいかん・の・せんしんしつ  
        狭い。もの凄く狭い。どれくらい狭いかと言うと、電話ボックスの中でシャワーを浴びている感じと言え
       ば実感頂けるだろうか。
        最新のそうりゅう型からはまだ小奇麗にはなっているが、狭さは相変わらず。それでも海自の潜水艦は、
       通常動力型としては最大級なのでまだマシな方
。他国海軍では水上艦ですら、通路の一部にカランがつき出
       ていて使用時に前後をカーテンで区切るだけだったりする。



    【潜水艦乗りの適性】 せんすいかんのり・の・てきせい  
        自衛隊関連の書籍では、『協調性があり粘り強く、穏やかな性格・・・』等と書かれている事が多いが、
       実際に何人かのサブマリナーに尋ねてみたところ、殆どの隊員さんが『鈍感な人』という答を返して
       くれた。いかにも自衛隊・・・いや日本人らしい選ばれし者のプライドの裏返しだが、中には
        「頭を殴られても、一分たってから気づく位が丁度いいッスよ」
        という答まであった。恐竜じゃあるまいし、流石にそのレベルになると人類としてちょっとどうか



    先任海曹 せんにん・かいそう  
        海上自衛隊の各部隊の海曹の中から、先に曹長(または一等海曹)に昇進した順で数名(部隊規模により
       異なる)が先任海曹に任命され、大部屋の科員居住区を出て先任海曹室の住人となる。いかにも一筋縄では
       いかなさそうな、海の上のベテランオヤジ集団
。別名CPO(Chief Petty Officer)。
        幹部と曹士の橋渡し役となるその職務は複雑多岐にわたり、まだ艦隊勤務に不慣れな若手幹部を支えつつ
       鍛え上げたり、若手海曹や海士の模範となりながら引っ張り上げたり。艦の屋台骨として必要不可欠な存在
       で、責任も重ければ気苦労も非常に多い
        特に入隊したての新米海士にとっては一切の隙を見逃してくれないので、滅多に会話する事のない幹部よ
       りも遥かに恐ろしい存在と言える。
        イメージ的には、鉄拳制裁も辞さない熱血鬼軍曹的な存在というのが分かりやすいが、今はむしろ話を聞
       いていいところを伸ばして育てるタイプ
が主流とか。これも時代の流れというやつですね。



     【船務科】 せんむ・か  
        その字面から会社の総務課の様な印象があるが、実際は集めた情報の分析や評価を元に作戦の立案を行っ
       て艦長に進言する、文字通り艦の頭脳
とでも言うべき働きをしている。
        体を使う仕事ではないので楽チン・・・というのは大間違い。電子機器を冷やすために冷房をガンガンに
       効かせた穴倉の様なCICに籠りっ放し
になるので、腰痛、冷え、痔、眼精疲労などで悩む隊員が多い。
        また、日々進化するコンピューターシステムに関する高度な知識が要求され、米海軍との共同訓練では
       会話のスキル
まで必要になるので、頭がよくないと務まらない。   



    【総員離艦】 そういん・りかん  
        艦に甚大な損害が発生し、沈没が免れない場合に指揮官の判断で発令される。
        訓練で行う時は、停電や火災の煙による無視界状況を想定して、担当部署から艦外へ目隠しをした状態で
       退避する。また、艦内をよく見ると通路のあちこちに七ヶ条からなる総員離艦安全守則を記した金属板があ
       り、その第一条は「あわてるな」。何事につけても基本中の基本なのであろう。



     【操舵手】 そうだ・しゅ  
        艦艇の舵を操作する隊員の事。水上艦の操舵は航海科員が担当するが、潜水艦では何故か水雷科員が担当
       している。
        潜水艦の航海科員は、水上艦なら幹部がしている仕事までこなさなければならず非常に忙しいので、比較
       的人員に余裕のある水雷科の仕事になっている模様。
        ちなみに米海軍では、潜水艦の操舵は水兵の一番下っ端が最初に担当する仕事(何故?)。
        「ウチでは車の免許も取れない奴が、核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を乗り回してるぜ!」
        と、あっちのサブマリナーは笑って言っている。



    【想定戦死】 そうてい・せんし  
        護衛艦での戦闘訓練中の想定の一つで、「○○、想定戦死」と告げられた場合、○○隊員を除いたメンバ
       ーだけでその部署を守り切らねばならない。

        実戦で死傷者が出た際に、残った人員でいかに戦力を低下させず戦闘を続行するかを訓練する訳だが、時
       にはその部署が全滅したという想定で、他の部署の幹部がその作業を引き継ぐ事も。
        極端な例を挙げれば、CICでたった一人で対艦ミサイルを発射させた幹部が、次の瞬間には機関室に駆
       け込んでエンジン出力や舵を操作したと思ったら、今度は無線室に飛び込んで通信を行ったり。
        与えられた部署を極めねばならない曹士の苦労も並大抵ではないが、幹部は艦の全ての業務をこなさなけ
       ればいけない
ので本当に大変なのである。
        正式には、『減員操作訓練』と呼称する。



     【曹友会】 そうゆうかい  
        陸上自衛隊の下士官である陸曹を束ねる全国組織。任期制隊員(陸士)と幹部の間に立って、部隊運用を
       円滑に行う為の様々な情報交換
を行ったり、地域の公園清掃や施設の慰問などのボランティア活動も活発に
       行っている。また近年は、今どきのシャイな独身隊員の婚活支援活動にも力を入れていて、もはやこの世に
       ある仕事でやっていない仕事は一つも無い
という陸自を支える何でも屋さんである。
        ちなみに毎月発行している機関誌の名前は、『SO!YOU!(そう、君が主役だ!)』。



     【ソビエツカヤガヴァニ】 そびえつかやがヴぁに  その他
        ロシア海軍の水上艦。何と艦内でネコを2匹飼っている。2007年に舞鶴港に入港したが、特別公開で
       は
アイドル猫の撮影会みたいになっていた。
        最近では猫を駅長にしている所もあるし、海自も一匹どうだろうか。なんならウチにいる三等猫曹を入隊
       させてもよいのだが。





     【第一狂ってる団】 だいいち・くるってる・だん  
        陸上自衛隊習志野駐屯地に所在する、陸自唯一のパラシュート部隊である第一空挺団の別称。西部方面普
       通科連隊、中央即応連隊と並んで陸自最強と呼ばれる部隊だけあって、一般人の理解を越えるレベルでシゴ
       き倒される。
前の部隊では知力体力胆力技術で誰からも一目置かれた隊員も、ここに配属になるといきなり
       フツーの人
になってしまうのでちょっとショック。漫画家の板垣恵介がここ出身。
        以前は習志野市内に繰り出し、地元のヤクザを狩り出してボコボコにするというヤクザにとっては超迷惑
       な伝統行事
があったらしいが(本当に公務員なのか?)、逆襲されて刺された隊員が出た為、このレジャー
       は禁止されてしまったそうな。
        他にも、2階の窓から飛び降りたら500円やるといわれた隊員が3階の窓から飛び降り、駆け足で帰っ
       てきて平然と「500円くれ」と言った
と等々、豪傑過ぎるエピソードには事欠かない。



    【第101建設隊】 だい・いちまるいち・けんせつたい  
        1960年代まで実際にあった、陸自鉄道部隊。災害時に被害を受けた鉄道の復旧作業を行う為の部隊で
       である。
        当時はまだ現在ほど道路網が整備されておらず、遠隔地への物資や車両、人員の輸送を鉄道網に頼ってい
       たという時代背景があり、旧軍時代の鉄道連隊の名残みたいなものであった。
        が、実際のところは、当時頻繁に行われていた国鉄ストライキ時でも自前で輸送貨物車を運用できる様に
       という意味合いの方が大きく、運転士の他に装備品として蒸気機関車も保有していた。
        その後全国の隅々にまで道路網が整備され、車両や航空機でほぼ全ての物資輸送を行えるようになった
       め、鉄道部隊は廃止されてしまった。       



     【隊員クラブ】 たいいん・くらぶ  
        全国の基地駐屯地の敷地内にある、民間委託の飲み屋。ヘマこいて外出禁止になった隊員も、ここでなら
       飲む事が出来る。とは言え、お客はすべてジャージや戦闘服姿の隊員ばかりで新鮮味に欠け、どこで誰が聞
       いているか分からないので迂闊な話題で盛り上がる事も出来ず、ちょっと窮屈。
        しかし料理に力を入れている所もあり、シャバの居酒屋顔負けの料理をお手軽な価格で楽しめる事も多い。
       ちなみに兵庫県にある阪神基地隊が誇るNAVY CLUB六甲ダチョウステーキ馬刺しなどがメニ
       ューに並び、窓の外には夕焼けに染まる停泊艦艇を望む事が出来る。是非一般にも開放してほしい。



     対番】 たいばん  
        防衛大学に入学したばかりの右も左も分からない1年生に対し、一日も早く防大生活に慣れるように様々
       なルールやマナーを指導をする2年生
がつくが、この先輩後輩コンビを合わせて対番と称する。2年生は
       対番
、1年生は下対番と呼ばれる。
        防大側も新入生と同郷もしくは近隣出身の2年生を選ぶなど気を使っていて、陸海空の配属先が同じにな
       ると、先輩後輩を越えて兄貴と弟分に近い濃密な関係になる事が多い。
        2年生にとっては初めて受け持つかわいい部下であり、自然とその教育にも熱が入るが、その指導ぶりは
       常に3年生がチェック
しているので、上対番は早くも人に教える事の難しさ、自らの居住いを正す事の大切
       さ
を痛感するとの事。教わる方も勉強、教える方も勉強なのである。



    【台風避泊】 たいふう・ひはく  
        台風で海上が荒れている最中に災害派遣防衛出動が発令される場合に備え、予想進路上にある基地や港
       に停泊している艦艇は、台風の接近に合わせて急遽出港。港内の安全な場所にて待機を余儀なくさせられる。
       これが台風避泊
        埠頭に縛りつけられている状態では、他の艦や岸壁にぶつかって艦が破損する恐れがあるからとは言え、
       荒れ狂う海上での揺れは想像を絶するものがあり、少々の揺れなら顔色ひとつ変えない海の男達も、この時
       ばかりは心の底からげんなりするとか。
        上陸取り消しは当然として、下手すると長期休暇がまるごと吹っ飛ばされる事もあるので、家族旅行やレ
       ジャー計画を控えた隊員さん達は天気図を見てはヤキモキさせられる。この時期に隊員さんに約束をドタキ
       ャン
されても、どうか怒ったりしないであげてほしい。つらいのは隊員さんも一緒なのである・・・



     【宝塚音楽学校】 たからづか・おんがく・がっこう  その他
        未来のタカラジェンヌを養成する学校だが、新入生は陸自伊丹駐屯地にて基本動作を叩き込まれる。
        伊丹駐屯地の第304保安中隊のファンシードリルと儀仗を見学した学校長が、非常に感銘を受けた事が
       その経緯であり、毎年数十人の選ばれし乙女達が気をつけ、休め、回れ右等を練習している。初舞台となる
       卒業時のラインダンスに必要な、一糸乱れぬチームワークと団結心を養うには最適だそうである。
        規律の厳しさ、タテ社会、同期の絆、プライバシーのない寮生活から、もともと宝塚は“女の自衛隊”と呼
       ばれる事が多かったが、どこの基地駐屯地にも女性自衛官が普通にいる現代では、むしろ自衛隊を“戦う宝
       塚”
と呼んではどうか?と考えていたら、福知山駐屯地の第7普通科連隊第3中隊がそれをやってしまった。



    【卓費】 たくひ  
        士官室で提供されるコーヒーやお茶等を購入する為、幹部達が毎月お小遣いから出しあうお金の事。艦や
       人員の規模により若干の差はあるが、概ね月数百円程度
        お茶代ぐらい予算から出してやれよ!とは思うが、士官室で日常的に消費されるコーヒーの量を知ると、
       それも仕方ないかというレベルだそうだ。それぐらい何かにつけて出てくる士官室のコーヒーなので、コー
       ヒー好きな幹部にとってはありがたい話・・という事は全くないらしく、
        『なんだよこの不味いコーヒーは!淹れ方を一から指導してやりたいけど、こんな事にまでいちいち五月
       蠅い上官と思われるのもちょっとなあ。自分で入れた方がよっぽどマシだけど、士官室係や若手幹部に変な
       気を使わせてしまいそうだし・・・』

        と、むしろストレスを溜めてしまう事も多いとか。
        ちなみに艦長司令クラスとなると、気持ち多めの卓費を出すのがよろしいとされている。



    【タグボート】 たぐぼーと  
        大型艦の出入港を補佐する小型船の事。曳船(えいせん)、曳き船(ひきぶね)とも呼ばれる。船体の周
       囲に張りつけた衝突防止のためのタイヤがタコの吸盤みたいで、妙にカワイイ奴である。
        狭い港内でも縦横無尽に動き回れるよう小型かつ大出力が要求され、満載排水量で2万トンに近いひゅう
       が型護衛艦の巨体も、僅か3隻で押しまくる。
        360度の方向転換が可能なゼットペラを2基備え、素早い前進後退はおろか、戦車の如きその場回頭
       楽々こなす。万が一の火災の時は韋駄天の如く駆け付けて自慢の放水銃で消火を行い、座礁や機関トラブル
       で動けなくなった艦艇の牽引もお手のもの。
        また船内には簡易ベッドも装備され、泊りがけの航海も可能。ただ調理設備がないので、食事時になると
       あらかじめ依頼した艦艇に横付けして、手渡しでご飯を分けて貰っている。母犬が子犬に授乳しているみた
       いで、なかなか微笑ましい光景と言えよう。
        体験航海などでは文字通り縁の下の力持ち的な役割を果たしているので、見かけた時は是非褒めてあげて
       欲しい。



     【タケオ】たけお  
        カンボジアの一地方だが、1992年に陸上自衛隊が国連平和維持活動(本辞典【PKO】の項目を参照
       ・・・しない方がいいと思います)にて同州に宿営した事で、日本では一躍メジャーに。
        最初にタケオに入って宿営地の基礎を作り上げた第一次先遣隊が、関西の第4施設団(大久保駐屯地)
       った為、第二次以降の派遣隊員達が現地のマーケットに行くと、現地人達がカタコトの関西弁で話しかけて
       来たので
面喰らったそうな。



     【タコ】 たこ  
        Tactical Coordinator、P−3C対潜哨戒機に乗り込む戦術航空士の事である。
       籍不明の潜水艦
が怪しい動きをしていそうな海域上空で哨戒パターンソノブイ敷設パターンを戦術的に組
       み立てて、機内の搭乗員に的確な指示を飛ばしつつ理想的な攻撃ポイントへと潜水艦を追い詰める。その名
       の響きは呑気なイメージだが、執拗につけ狙われる潜水艦にとっては猛毒を持ったヒョウモンダコのごとき
       恐怖の存在である。
        「ねえねえ、パパはじえいたいでどんなしごとをしているの?」
        「タコ」
        「た、たこ!?」

        ちなみにタコになる為の教育訓練は千葉県下総航空基地の第203教育航空隊にて行われ、教官は『親ダ
       コ』
、学生は『子ダコ』と呼ばれている。



    【立検隊】 たちけんたい  
        一般船舶を対象に海上阻止行動を行う際、艦内の乗員から選抜して編成される臨検部隊。正しくは護衛艦
       付き立入検査隊

        既定の体力基準をクリアした独身の三等海曹以上の隊員で構成され、完全武装で検査対象船舶に乗り込み、
       違法な貨物や武器等の捜索を行う。

        専門の教育訓練は呉の第一術科学校で行われるが、日常的な訓練や体力錬成は通常の課業時間外に行われ
       る。いざという時は相当な危険が伴う任務だが、危険手当も出ないので基本的に無償奉仕に近い状態。金を
       払えばいいという話ではないが、一刻も早くちゃんとした体制を整えてあげて欲しいものである・・・。     



     【TACネーム】 たっく・ねーむ  
        戦闘機乗り同士が互いを呼び合う際のニックネーム。同じ飛行隊に同姓がいたり、発音しにくい名前だと
       無線での意思疎通に支障が出やすい
ため、原則3音節以内の固有の名前をつけ、普段も本名よりこのニック
       ネームで呼び合う。

        概ね本名をもじったもの(内田ならウッチー、亀山ならカメ、等)が多いが、タイガー、ウルフ、ベアー、
       コブラ
という気合の入ったものもあったりする。
        基本的に本人の希望が優先されるが、飛行隊長の判断でダメ出しを食らう事も。特に人気のあるマーベリ
       ックなどは、新人には許可されない事が多い。それでもしつこく食い下がると、
        「ええい、しつこい奴だな!お前はキャンキャンうるさいからTACネームはポチだ!!」
        「そ、そんなあ〜(泣)」
        という事になりかねない。



     【タッチアンドゴー】 たっち・あんど・ごー  
        滑走路に進入して着陸した航空機が減速せず滑走し、そのまま離陸する事。パイロットが最も緊張する
       陸
着陸の訓練を、燃料を節約しながら効率よく行う事が出来る。
        また、いわゆる一回きりの大人のお付き合いを指してこういう事もある。という事は、海自では体験航海
       と呼称するのだろうか。じゃあ陸自では体験試乗か?さすがにこちらは生々しすぎて、如何なものだろう。



     【舵輪】 だりん  
        艦の舵をとる丸いハンドル。某宇宙海賊が、宇宙空間でマントをはためかせつつカラカラ回しているアレ
       である。
        海自は未だにこの舵輪を採用しているが、アメリカや欧米諸国の艦艇はトラックボールを使用し、数千d
       の艦を指先で動かしていてちょっと寂しい風景。
やっぱりいつの時代でも、船乗りは舵輪ですよ、だりん。



     【誰にも言わないでくださいね】 だれにも・いわないで・くださいね  
        陸自の某普通科連隊に伝わる怪談。隊舎の同室にいる後輩隊員が、深夜にしばしば部屋から出て行く事に
       気づいた先輩隊員。不審に思ってある夜後輩隊員の跡をつけてみたが、後輩隊員は真っ暗な駐屯地内を歩い
       竹林の中へ入って行き、一心不乱に地面を掘り返している。
        怖くなった先輩隊員は部屋に戻ったが、どうにも寝つけないでいると、いつの間にか部屋に帰って来てい
       た後輩隊員が耳元で、
        「誰にも言わないでくださいね」



    【誕生日食】 たんじょうび・しょく  
        月に一度、その月生まれの隊員だけが貰える特別食の事。基地駐屯地によってやっていたりやってなかっ
       たりだが、出たとしてもせいぜい甘ったるい冷凍モノのケーキ程度である。
        いい年をした隊員がお誕生日に可愛らしいケーキをパクつく様子はちょっとトホホで、周囲にはお祝いと
       言うより冷やかしムードが漂う。



     【着発信管】 ちゃくはつ・しんかん  
        主に陸上や水上の目標に対して使用される砲弾内に内蔵されいている信管。目標にぶつかった衝撃で撃発
       し内蔵弾薬を誘爆させる。

        通常は信管内にストッパーが掛かっていて、蹴ろうが叩こうが発射されるまでは安全。発射された後は、
       回転する砲弾自体が生み出す遠心力でストッパーが解除され、撃発可能になる。



    【チャフ】 ちゃふ  
        敵艦艇のレーダーやミサイルのセンサーを撹乱させ、電子機器による探知を妨害する為に上空にまき散ら
       されるアルミ箔片
サメに襲われたタコが、逃げる為に吐くスミようなものである。海自艦艇だけでなく、
       空自の航空機にも対空ミサイル回避対策として搭載されている。
        転じて、上官をケムに巻く、と言う意味でも使用する。
        使用例:「ちょ、分隊士(幹部)に見つかったらヤバくないですかそれ」
            「お前上手い事チャフまいとけや(笑)」



    【駐屯地】 ちゅうとんち  
        奈良県を除いて全国に150ヶ所以上ある、陸自の隊員さん達が平時に住んでいるところ。米軍風に言え
       ばキャンプ。
        海上自衛隊の艦艇や航空自衛隊の航空機が、それぞれの基地や港湾施設を起点にして行動するのに対し、
       陸自は有事の際は移動した先が行動の拠点となるため、基地ではなくあくまで仮の住まいという意味で駐屯
       地
と呼称されている。



     【腸炎ビブリオ】 ちょうえん・びぶりお  
        好塩性の細菌で海水中に多く存在し、海産物をしっかり水洗いせずに生食した際に、しばしば腹痛・下痢
       ・嘔吐等の中毒症状
を引き起こす。
        海上自衛隊では過去、納入したイカの塩辛からこれが発生し、護衛艦はつゆき・しらね・むらさめ及び第
       2術科学校
で計87人が体調を崩すというバイオテロまがいの被害が発生した。
        ちなみに、上記3艦と術科学校の営業停止処分は無かった。



     【長期潜航手当】 ちょうき・せんこう・てあて  
        「せんせい、かいじのせんすいかんって、どれぐらいもぐっていられるの?」
        「特別防衛秘密につき、お答えできません!だけど、まあ任務によって日帰りの場合もあれば何十日も潜
       りっ放し
の時もあるよ。出来るだけ早く帰れるようにはしているんだけどね」
        「たいいんさんを、だいじにしているんだねー」
        「違うよぼくちゃん、あまり長時間潜航させると長期潜航手当を払わないといけないからなんだよお〜」
        「うわあああああん、おとなはきたないよー!



        

     【超ド級】 ちょう・ど・きゅう  
        既存の概念を遥かに超えて非常に大きいモノや、それ自体の規模を指す。この『ド』は1900年代の
       国海軍のドレッドノート級戦艦
が由来になっている。当時の常識を外れた排水量・兵装規模・出力だったの
       で、その後何かにつけて、けた外れの規模を表現するスタンダードとして“超ド級”という言い方が定着した。



     【チョザ】 ちょざ  
        艦内の貯蔵食材(缶詰や冷凍食品、乾燥品等、日持ちのする食材)の在庫量の事。○○日分、という単位
       で、艦橋後部のステータスボードに表示されている。
        同様に『ミザ』は真水の、『ネザ』は船舶燃料の、『セザ』は生鮮食品の、『ルブザ』はRublica
       tion Oil(エンジンオイル)の残量の事。



     【通信競技】 つうしん・きょうぎ  
        教育隊や幹部候補生学校で行われる、手旗や旗流、モールス信号等の競技会。分隊対抗で行われ、競技会
       が近くなると隊舎のあちこちで自主練習が夜遅くまで行われる。
        その姿勢は素晴らしいが、よく見るととんでもない内容の通信をしている事もあるので、教官は片時も気
       を抜けない。



     【〜であります】 〜であります  
        映画や漫画などで、分かりやすい軍人像を表現する際にしばしば用いられる語尾。記号的に使われるとい
       う点で、コロ助の「〜ナリ」みたいなものだが、自衛隊で実際に使われる事は殆ど無いであります。
        本来は九州地方の方言の一つであり、明治維新後に発足した初期の海軍の枢要部の殆どが薩摩閥で占めら
       れたため、このような方言が軍全体で広く使われるようになったであります。



     【定時定点】 ていじ・ていてん  
        決められた時間に、決められた人員物資を決められた場所に運ぶ事。陸自施設科輸送部隊の大命題であり、
       誇りである。完璧にこなしてもさほど褒められもせず、少しでもミスがあると怒られる。が、やって当たり
       前の事ほど難しい事はないのである。



     【ディスポーザー】 でぃすぽーざー  
        艦内の調理室に置いてある生ごみ破砕機。でかいミキサーみたいのもので、かさばる生ごみをドロドロに
       なるまで擂り潰し、液状にして捨てやすくする
        転じて味音痴、もしくは不味かろうが腐っていようがお構いなしに大喰らいする隊員の事をも指す。



     【伝書鳩部隊】 でんしょばと・ぶたい  その他
        スイス陸軍に少し前まで本当に存在した特殊部隊。国土のほとんどが山岳地帯という特殊な地理的条件か
       ら生まれた点は同国のMTB部隊と同じだが、無線通信手段の発達によりいつの間にか鳩さんの方は消えて
       しまったのが残念。こっちの鳩も消えればいいのに。



    【東京音楽隊】 とうきょう・おんがくたい  
        海上自衛隊には5つの各地方隊ごとに立派な音楽隊があるが、それとは別に編成された防衛大臣直轄の音
       楽隊が
東京音楽隊。日本国内のみならず、海外に招かれての演奏もこなしている。
        東京都世田谷区に本拠地を構えているが、敷地面積が実に3000uと、全国陸海空の自衛隊関連施設の
       中でも最小面積
を誇っている。まともに運動できるスペースも無いので、体力トレーニングは近隣の陸上自
       衛隊用賀駐屯地
の施設を借りて行っている程。
        駒澤大学付属高等学校の隣にあり、グラウンドも無ければ正門には警衛の隊員もおらず、狭い敷地には殺
       風景な4階建ての隊舎があるだけ
なので、時折校舎と間違って迷い込んでしまう人がちらほらいるとか。



     【登舷礼】 とうげん・れい  
        自衛艦の出入港時に、当直以外の隊員が甲板に整列する事。海自は伝統的に見た目を非常に気にするので、
       雨が降ろうが風が吹こうが解散の号令がかかるまでひたすら立ち尽くす。最も辛いのは真夏の炎天下で、
       射日光と甲板からの照り返しで全員フラフラに。
後部の飛行甲板にいる隊員はヤバくなるとこっそり通路に
       逃げ込めるが、前甲板の隊員達は艦橋から丸見えなのでそれもかなわず。
        海自艦艇は等間隔にビシッと並んで身動き一つしないが、米海軍はその辺はてんでバラバラで、中には勝
       手におしゃべりを始める不届き者も。



    【トースト】 とーすと  
        自衛隊の食事は基本的に三食とも米が主食だが、潜水艦部隊の朝食はトーストが伝統である。これは潜水
       艦部隊が創設された40年前はパンはまだ庶民にとっての高嶺の花の高級食材であり、過酷きわまる潜水艦
       勤務に対するせめてものご褒美
、という意味があった。当時は毎日パンが食べられると言うだけで潜水艦を
       志望
したピュアな若者も珍しくなかったらしい。
        ちなみに時の首相吉田茂は、神戸から毎朝焼き立てのパンを夜行列車で伊豆の自宅に届けさせていた。



     【当直士官】 とうちょく・しかん  
        艦のその時間帯(ワッチ)の指揮を取る幹部の事。艦長以外の幹部が持ち回りで担当し、操艦や指揮はそ
       の都度艦長に進言し、許可を得て実施する。全てを『艦長の立場に立って』思考する事を求められる、言わ
       ば将来の指揮官職に向けてのOJTである。
        士官室での食事の際には、艦長を上座として階級順・先任順に着席するが、当直士官はその階級に関係な
       く通路に最も近い席
(概ね末席)につき、片足をイスから外して座るのが決まりである。これはマナー違反
       でも何でもなく、いざという時には半歩でも早く発令所や艦橋、CICにかけつけて状況を把握し、次の手
       を打つため
の姿勢である。



     【どかーん】 どかーん  
        管理人が某護衛艦に乗艦した時のエピソード。若手の3等海曹さんが、年配の乗艦者にCIWSの説明を
       していた。
        「・・・と言う訳で、接近してくる敵の対艦ミサイルは対空ミサイルで迎撃するんですが、それが間にあ
       わなかったり撃ちもらした時は、こちらの機関砲で最終的に撃ち落とします」

        じゃあ、それでも撃ち落とせなかった時はどうするんですか?
        「そりゃあれです、どかーんです」
        どかーんですか・・・
        どかーんです。だははははは
        呑気そうに笑っている三等海曹さんの背後には、乗艦していた隊司令が・・・。にこやかに笑ってはおら
       れたが、目が全然笑ってなかったのが強烈に印象に残っている。他人事とは言え、あの三等海曹さんのその
       後
が気になる。



     【特無潜】 とく・む・せん  
        潜水艦の無音潜航には、状況に応じたいくつかのレベルがあるが、もっとも厳しいのがこの特無潜
        配置についている隊員以外はベッドから出てはならず、トイレで水を流すことすら禁止。艦内でのあらゆ
       る行動が制限され、じっと息をひそめた状態
になる。
        その異様な静寂は、熟睡していた隊員が余りの静けさに驚いて目が覚めてしまった・・・という実話があ
       る位。うるさくて目が覚めたという話は珍しくないが。



     【突入】 とつにゅう  
        浮上航行している潜水艦が急速潜航に入る際、ギリギリまで艦橋上部の指揮所で見張りをしていた隊員が
       艦内に飛びこむ事。

        艦橋の内部を上下に貫いている円筒形の通路には梯子が取り付けられているが、そんな悠長な事をしてい
       ては間に合わないので、取り付けられた手すりに両手両足を引っかけて滑らせながら、数秒で艦内に飛び込
       んでくる
。その様子を文字で表してみると、





        と、こんな具合である。



    【トップヘビー】 とっぷ・へびー  
        甲板上に兵装類を盛り込みすぎて、艦の重心が高く不安定になってしまった状態の事。本来持つべき復元
       力
が減少し、荒天時の揺れが酷くなったり転覆しやすくなるので、望ましい状態とは言えない。予算が乏し
       い国の海軍艦艇で、小さな船に欲張って武器をてんこもりにするとこうなりがち。
        また長期航海や大きな訓練等で、司令や幕僚が大挙して乗り込んできた状態を揶揄してそう呼ぶ事もある。



     【取り舵】 とりかじ  
        左転舵の事。もっと分かりやすく言えば、艦艇が左折する事である。艦橋内では、相撲の呼び出しのごと
       く「とォーりかァーじ」と、旧海軍から引き継いだ独特のイントネーションで発音している。
        なお、右転舵は面舵。「おもォーかァーじ」と発音する。
        ちなみに、転舵後に舵を中立に戻す際は、「かじィーもどォーせー」



 new!!【ドルフィン機動】 どるふぃん・きどう  
        急浮上した潜水艦が海面から飛び出し、艦首を叩きつける様にして浮上する事。水中で加速したイルカ
       勢いよくジャンプして水面に飛び出す様子になぞらえてこう呼ばれ、いかにも潜水艦らしい豪快さが見る人
       をひきつける。
        しかしその反面、水面に叩きつける際に艦首ソナーに大きな負担がかかってしまうので、おやしお型以降
       はこの機動は行われなくなった。





     【中嶋悟】 なかじま・さとる  その他
        元F1パイロットで、現在はレーシングチームを運営する社長兼監督。熱心な自衛隊マニアという一面が
       あり、90式戦車F−15戦闘機、AH−1S対戦車ヘリに搭乗した輝かしくも羨ましい経歴を持つ。
        90式を操縦した時は、初心者には絶対に無理と言われた操作を数分でマスターし、ベテラン車長を仰天
       させた。また空自でF−15DJに体験搭乗した際は、パイロットがシャレで3G旋回をかけたが、普通の
       人ならブラックアウトしてもおかしくないG
にもかかわらずケロッとしていてパイロットを驚かせ、
        「F−15はF1の15倍楽しかったです!」
        という名言を残したかなりのナイスガイである。
        さらに、生まれ変わったらF1パイロットか戦闘機乗りか、どっちがいいですか?とインタビューされ、
        「絶対に戦闘機がいいです!」
        と断言した。もしかして天然?



 new!!【中編上安全靴】 なか・へんじょう・あんぜんか  
        甲板作業時に履く黒い安全靴。重量物を扱う事が多いので、陸自の半長靴と違ってつま先に鉄板が仕込ん
       である。
        ただ、艦内で履く革靴と違って鉄板がある分重いので、万が一海に落ちた時は結構危険



     【75式ドーザ】 なな・ご・しき・どーざ  
        陸自施設科部隊が保有する装甲ブルドーザー。腰高なスタイルの割に妙に素早く、怒り狂った甲殻類の如
       き風貌
が実にカッコいい。
        92式地雷原処理車が吹き飛ばした地雷原に突っ込んで一気に整地し、戦車や装甲車、小銃小隊の突撃経
       路
を確保する。銃弾飛び交うまっただ中につっ込んでの作業になるので、エンジンや操縦席の周囲は防弾装
       甲
が施され、前後の窓にも跳ね上げ式の防弾板がついている。
        最大の特徴は車内の前後に設置された2か所の操縦席で、椅子の背もたれをパタンと倒すだけで前後を入
       れ替える事が出来る。これは最前線にて一気呵成に整地した後は脱兎のごとく後退する為、いちいち方向転
       換や切り返しなんかやってる暇がない
からである。その為操縦手には、表裏のない人格高潔な隊員が選抜さ
       れる・・・という噂がある。
        また、巨大なドーザが付いている方が車両前部に見えるが、実はのっぺらぼうに近いお尻に見える方が車
       両前部
。つまりは、バックで突っ込んで整地作業を行った後は、前進で撤退する事になる。
        表裏がないのかと思いきや、表の顔が裏の顔で裏の顔が表の顔・・・。ある意味、ひと癖もふた癖もある
       荒くれ者が多いと恐れられる施設科に相応しい装備品
と言えよう。



    【七つの海】 ななつ・の・うみ  
        太平洋・大西洋・インド洋・北極海・南極海・紅海・地中海をさす。防衛大学校の制服のボタンが7つ
       のは、これに由来しているという話だが、本当なのだろうか。
        ちなみにこの制服、防衛大学校に程近い横須賀近辺では週末にしばしば見られ、市民も
        「ああ、小原台の学生さんか」
        程度にしか思わない。しかし横浜や東京都内での認知度はまだまだで、時々駅員さんに間違われたりする
       事もあるとか。



    【新潟地本長岡出張所】 にいがた・ちほん・ながおか・しゅっちょうしょ  
        新潟県長岡市に所在し、地域における新隊員の受験や採用、イベントの運営、防災啓発等の活動を行って
       いる。新潟地本HP内に出張所のリンクがあるが、非常にユニークな内容なので県外の方にも是非ご覧頂き
       たい。何故か自衛隊用語辞典ご近所グルメ情報に異様に力を入れていて、当HP管理人としては非常に親
       近感が湧く
ところである。
        特に自衛隊用語辞典が素晴らしく、一般には耳慣れない専門用語を分かりやすく説明している・・・と思
       ったら唐突に自分語りを始めたり、2等陸士出身ゆえの愚痴になったり、ソフトな毒を吐いたり一人突っ込
       みが始まったり
・・・と、色んな意味で目が離せない。
        さらに『弾痕表示』の項目でいきなり「男の根っこ」とか言い出したり、『採点治痕』では「チ・コ・ン
       の順番を間違えてはいけません」
とか言い出したりで、その正規路線からの逸脱ぶりは似た様な事をやって
       いる当HP管理人ですら目を覆うレベル。長岡出張所には管理人のドッペルゲンガーがいるのだろうか。
       いぞもっとやれ俺

        それにしても、新潟地本はこの暴走出張所に何も言わないのか不思議でならないが、当の新潟地本HPか
       らして募集班長のミリタリープラモデルコレクションが延々と続くコーナーがあったりする、超ヤワラカ頭
       なのであった。素敵だ



 new!!【にーてんやーまる】 にー・てん・やー・まる  
        2.80。目標までの距離が2800mある事をこう言う。
        船舶がひしめきあう浦賀水道瀬戸内海に入ると、艦橋やウイングに立つ航海科員は非常に忙しく、測距
       儀
をにらみながら200m刻みで測定した距離を報告する。
        「にーてんやーまる・・・・・・にーてんろくまる・・・・・・にーてんよんまる・・・・・・」



     【肉じゃが】 にく・じゃが  
        日露戦争の日本海海戦を歴史的勝利に導いた東郷平八郎提督が、かつてイギリス留学時に食べたビーフシ
       チュー
にいたく感動し、帰国後海軍食としてアレンジして作らせたのが肉じゃが。栄養バランスに優れてお
       り、ジャガイモに含まれる熱に強いビタミンB1は船乗り病として恐れられた脚気の予防にも有効だった為、
       瞬く間に海軍を通じて日本中に広まった。当時はうま煮(甘煮)という名称だったとの事。
        現在ではその発祥の地を巡って、京都府舞鶴市広島県呉市が穏やかな紛争を繰り広げている。



     【肉じゃがカレー】 にくじゃが・かれー  
        護衛艦やまゆきの名物カレー。材料は、牛肉・馬鈴薯・タマネギ・ニンジン・・・普通のカレーとどう違
       うのかは、防衛機密に抵触するので決して聞いてはいけない。



    【二重反転プロペラ】 にじゅう・はんてん・ぷろぺら  
        前後に重ねて連結した2つのプロペラがお互いに反対方向に回転する事により、前方のプロペラが回転す
       る際に発生する外側へ螺旋状に拡散していく無駄な回転流を、後方のプロペラが回収して垂直方向(後方)
       への推進力
に換える仕組み。海自では魚雷のスクリューにこれを採用している。
        プロペラの軸内にもう一本逆方向に回転するプロペラ軸を内蔵するため、機構が複雑高いシーリング技
       術
が必要になりコストもかかるが、推進効率をあげて燃費を向上させる事が出来る。いわば、燃料を食わな
       いアフターバーナー
みたいなものである



     【日本通運】 にほん・つううん  
        国内大手の流通企業。自衛隊の民間ロジスティック部門は、物品の輸送搬入から隊員の引っ越しまで含め
       て、概ねこの企業が担当している。
        また、退職自衛官の再就職先としても人気があるが、転職したら配属先の上司が昔の部下だった、という
       極めて笑えない事態
があったりなかったり・・・。



     【入港ぜんざい】 にゅうこう・ぜんざい  
        入港前日に艦内で振舞われるぜんざいの事。旧海軍時代からの伝統であり、上陸を前にした景気づけの意
       味があるが、甘いあんこが贅沢品だった当時とは時代背景が異なる為、今では出している艦の方が少数派
       なっている。
スイーツ好きな隊員には嬉しい習慣だとか。



     【尿石】 にょうせき  
        尿の中の難溶性カルシウムが便器に付着したもの。一旦こびりつくと容易には取れず、悪臭を放ったりパ
       イプ詰まりの原因となる。海水中のカルシウムと反応するとさらに固着し易くなる為、海水をトイレの洗浄
       水として使用している海自艦艇では
しっかりとバルブを回して流す事がお約束。古い艦では流しっぱなし
       している事も多い。



    【入港時刻】 にゅうこう・じこく  
        艦艇を埠頭に固定させる舫綱のうち、最初の舫綱(の先端に繋げられたサンドレッド)が甲板から埠頭に
       投げ込まれた時刻
を指す。



    【願います】 ねがいます  
        当直業務を交代する時の定型句。前直者は必要な申し送り事項を手短に次直者に報告し、質問の有無を確
       認した後に「願います」で締める。それに対して次直者は「貰います」と返して当直を引き継ぐ。
        航空機内で機長と副機長で操縦を代わる際は、願います→「You have(control)」に対し
       て貰います→「I have(control)」。これは民間の航空機でも共通である。
        ちなみに少々使い方は異なるが、刑務所内でも似た様な言い回しをするので、あまりシャバで「願います」
       を連呼するとあらぬ誤解を受けかねないので注意。



    【寝返り】 ねがえり  
        寝転がった状態で、体の向きを変えること。2段ベッドなら余裕だが、一部の水上艦や潜水艦に未だに残
       る3段ベッドは高さが人の肩幅よりも狭いので、寝返りを打つにも特殊な身体操作術をマスターする必要が
       ある。
        しかし潜水艦生活が長くなると、睡眠中でも器用に体を捻って、いつの間にか寝返りを打つようになる。
       どうやって体の向きを変えたのか、目を覚ました本人も「?」。



    【ネザ】 ねざ  
        上記の【チョザ】を参照されたし。



 new!!【年次修理】 ねんじ・しゅうり  
        海自艦艇が年に一度ドックに入って行う大修理。1〜3ヶ月かけて、艦内のあらゆる備品や電子機器を取
       り外し、船体そのものの大規模な修理や補強、システムの更新やバージョンアップを行う。
        この間は出港できる状態にないが、なんだかんだで仕事は多く、乗組員はドックに泊まり込みで作業に追
       追われる事になる。
        しかし交代でまとまった休みをとれる貴重な機会でもあり、これを利用して家族旅行に出かけたり結婚式
       を挙げたり、出会いの場を求めて街に繰り出したりする。
        修理が終わった後は練度を取り戻すための地獄の猛訓練が連日連夜続くため、つかの間の骨休みである。



    【燃料を入れると軽くなる】 ねんりょう・を・いれる・と・かるく・なる  
        潜水艦乗りが、一般の人に潜水艦について説明する時の持ちネタのひとつ。水上艦とは違って、潜水艦の
       燃料タンクは燃料が減った分だけ海水で満たされる仕組み
になっているので、燃料で満タンの時よりも、代
       わりの海水が入っている時の方が艦は重くなる(海水より燃料の方が軽いため)。
        なぜ燃料が減った分だけタンクに海水を入れるかというと、燃料タンクは潜水艦の外殻と内殻の間にあり、
       燃料消費によってタンク内に空間が生じてしまうと、艦の中性浮力が変化して姿勢が不安定になり、艦の復
       元性や耐水圧能力も低下してしまう為
である。
        ちなみに船舶燃料は海水と一緒にしても混ざる事はなく、仮に少々混ざったところでディーゼル機関は問
       題なく稼働する
との事。





     【バーバー池田】 ばーばー・いけだ  
        第二次カンボジアPKO派遣時に施設大隊から参加した池田哲夫三等陸佐(当時)が、タケオ宿営地で開
       業した散髪屋。以前から家族の散髪を行うのが趣味であった池田三佐だが、タケオでは派遣隊員のみならず
       国連選挙監視員や現地採用のカンボジア人の散髪
まで手掛け、一躍タケオ宿営地の名物隊員となった。
        あくまで勤務時間外のボランティアだったため、左手に缶ビール(ノンアルコールタイプ)、右手にハサ
       ミという恐るべき散髪屋であったが、腕前は玄人はだしだったので評判は上々であった。
        ただ、最初は一応希望のカット通りに始めるが、気分次第で途中からどんどんアドリブをかます悪癖があ
       り、気がついたらゴルゴ13みたいにされていて半泣きになった隊員もいたとか。



     【ハイライン】 はいらいん  
        航行中の艦艇同士でロープを渡し、給油や給水、物資の受け渡しを行う作業。ヘリコプターを使用できな
       い状況下では、急なけが人を医療施設の整った大型艦に移送させる手段としても使用する。
        一見して簡単な作業の様にも見えるが、2隻の艦艇が接近して並走すると、ヴェルヌーイの定理でお互い
       が引き寄せられて衝突してしまうため、一定間隔を保つには非常にナイーブな操艦が求められる。なんでも
       ない様に見えて、実は艦長の腕の見せ所だったりする。
        ちなみに給油中の艦内は火気厳禁なので、食事時間にかかる場合は前もってお弁当が用意される。



    【ハエ叩き】 はえ・たたき  
        1991年に行われたペルシャ湾掃海部隊派遣時に、艦内で最も重宝された装備品。
        機雷が敷設された海域が比較的陸地に近かった為、季節風に乗った蚊やハエが次々と掃海艇を襲撃。あち
       らのハエは相当タチが悪く、人に噛みつく上に噛み跡は半月近く腫れ上がる。おまけにどんな病原菌を持っ
       ているかわからないので、対処方法としては見つけ次第片っ端から叩きつぶすしかなかった。
        たまらず海幕に
        「ハエ叩きとハエ取り紙を送って!」
        と泣きついたが、事情を知らない海幕は
        「何で海の上でハエ叩きが要るの?」
        と、首をひねったとか。



     【バカ爆弾】 ばか・ばくだん  その他
        太平洋戦争末期に行われた、特攻機“桜花”によるカミカゼ特攻の事。乗員の生命を放棄したあまりにも愚
       かな攻撃を恐れて、米海軍はそう呼んでいた。
        しかし沖縄沖で戦艦ミズーリに体当たりしたパイロットの遺体が奇跡的に回収された際、ミズーリ艦長は
       その決死の覚悟に胸を打たれ、乗組員の大反対をただ一人で押しきって米海軍式の水葬を執り行った。
        その遺体には星条旗と、急遽作られた手製の日の丸が重ねて掛けられた。



     【はつひ】 はつひ  
        創設期の海上自衛隊に米海軍から貸与された、アサートン級駆逐艦。1943年の建造ながら1975年
       まで護衛艦はつひの名で海上防衛の一端を担い、その後は一度米海軍に返還。さらにその後は韓国海軍へと
       渡り、1976年からはフィリピン海軍にてラジャフマボンと名付けられて中国海軍相手に睨みを効かせて
       いたが、2011年3月をもって堂々の退役。68年にわたる激動の歴史に幕を下ろした。護衛艦はつひに
       敬礼。



     【バッフル】 ばっふる  
        潜水艦のスクリュー後方にできる、ソナーの死角。スクリュープロペラの回転時に生じるキャビテーショ
       ン(気泡)
が後方の海水を撹拌してソナーの効力を著しく阻害。ここに敵潜水艦が入り込むと探知不能にな
       ってしまう。
そのため潜航中の潜水艦は、時折左右に艦首を振ってバッフルの後方をチェックする。
        また、要所要所で艦全体をゆっくりと360度回頭させ、全周囲を確認する事を『バッフル・クリアー』
       
と呼ぶ。



     【裸の大将】 はだか・の・たいしょう  その他
        放浪の天才画家、山下清(故人)の愛称。出会った人の社会的地位を把握する為に、いちいち軍人の階級
       に置き換えて覚えていたという逸話からそう呼ばれるようになった。
        「こ、こ、この人は、へへへ、兵隊さんの位で言うと、どど、どの位なのかな?」
        と言う事は、山下清は幕僚長だったのか・・・とりあえず、敬礼。



    【パッシブ・ソナー】 ぱっしぶ・そなー  
        艦の喫水線下各所に配置されたハイドロフォン(水中集音マイク)を使い、潜水艦や水上艦が出すスクリ
       ュー音
エンジン音機械音をとらえる受動的なソナー。お医者さんの聴診器みたいなものである。
        スクリューやエンジンのベアリング音には各艦固有の特徴があり、以前採取した音響データがあれば、そ
       の音紋から艦の特定が可能。
        映画や漫画などでは、ソナーに感があった瞬間に
        「方位○○○!距離○○○!深度○○○!」
        とソナーマンが叫んでいるが、実際の探知直後は方位を特定するのがやっとで、距離や深度、目標の進行
       方向を割り出すのは結構な時間がかかる作業。



     【早メシ】 はやめし  
        自衛官が気づかないうちに身につけている特殊技能。とにかく食べるのが早く、噛まずに飲み込んでいる
       のか
と周囲が訝しがる程。
        これは限られた時間内夕食入浴を済ませねばならず、おまけに食堂の席数も足りない為、回転率を上
       げないと
食いっぱぐれる隊員が出てしまう所為である。
        また、演習中に食事にありつけても、敵の襲撃航空機が接近してきたら食事を捨てて配置につかないと
       いけない
為、食える時は一口でも多く詰め込む習性を植えつけられるのもその一因。ましてや丸一日ぶりの
       僅かな食糧を、いつ教官に台無しにされるかわからないレンジャー訓練経験者
なら、尚更であろう。



     【バルバス・バウ】 ばるばす・ばう  
        球状船首。艦首水面下にある、前方に突出したリーゼント状の構造物の事。艦首喫水線部分で作りだす波
       によって発生する造波抵抗を相殺する為、水面下の球状部分で位相の異なる波を作りだしている。
        旧海軍の戦艦大和が世界に先駆けてこれを採用し、不完全ながらも一定の成果を上げた。また、現代の護
       衛艦ではこの部分が艦首ソナーを兼ねている。
        「先任、要はトイレに芳香剤が置いてある様なもんですか?」
        「うーん、当たらずとも遠からず、だな」



     【ハロンガス】 はろん・がす  
        艦内で発生した火災が、初期消火だけで鎮火できない場合に使用する気体。火災区画の隔壁を閉鎖し、艦
       内に網の目の様に張り巡らされたノズルからこのガスを噴出させて鎮火させる。
        薬剤や粉末を使用しないので機器類の故障を防ぐ事が出来、人体にも全く無害。ただ、発動の際には一応
       区画内を無人化してから噴出させる。
        「ハロン発動用ー意!」
        「ハロン発動!」



     【半減食】 はんげん・しょく  
        主食であるご飯が通常の半分になっている食事、もしくは他メニューに比べて摂取カロリーを低く抑えた
       献立
の事。
        先の大戦中は物資の欠乏からたびたび登場したが、現代では成人病予防の観点から、部隊や隊員個人が自
       主的に行っている。
        また断食道場などでも、段階的に行われているとの事。



     【PX】 ぴー・えっくす 
        ost echange。陸自駐屯地厚生センター内にある売店の事。
        変なものが売ってるコンビニといった雰囲気で、営内生活で必要なものは一通り購入する事が出来る。
       の他食べ盛りの隊員にはスナック類や弁当を、帰省する隊員にはご当地もののお土産を、肉体疲労時の隊員
       
には各種栄養ドリンクを、また、駐屯地創立記念行事では押し寄せる見学者相手にレアなグッズ類を取り揃
       えている。
        ちなみに海と空の基地では、BXase echange)と呼ばれている。



     【PKO】 ぴー・けー・おー  
        大川興業の江頭2:50が撮影のため空自入間基地を訪れた際、何故か体育館に『大川興業講演会』との
       看板がドーンと置いてあった。本人は全然聞いていなかったのだが、広報のたっての願いもありこれを快諾。
        会場を埋めた大勢の隊員達を前にして、エガちゃんは一通り大暴れした後開口一番、
        「三島由紀夫でーす
        会場は大爆笑。ちらりと横を見ると、真っ青になってる広報。エガちゃんはそんな些細な事には構わ
       ず、
        「今話題になってるPKOとは何だ!?ハイ、そこ!」
        「国連平和維持活動、です」
        「ブブー!PKO、それは!○ニス!○リトリス!○○んこ!(5回繰り返す)
        またしても腹を捩って笑い転げる隊員達。ぶるぶると震えだす広報。
        「自衛隊に一言モノ申ーす!自衛隊の弱点は、最新兵器を持ちながら他国に使った経験がない事だ!はっ
       きり言って宝の持ち腐れだよ!
お前ら、ボタンがあったら、すぐ押せ!!」
        そして傍にいた隊員に自らのボタン(右乳首)を押させ、黒タイツの股間に握りこぶしを入れながら
        「テポドーン!!(5回繰り返す)
        大盛り上がりの会場の片隅には、一気に30歳位老けこんだ表情の広報・・・。
        「最後に、日本には非核三原則がある!しかし!俺は今日、を持ち込んだ!その核兵器をお見せし
       ましょう!」

        ここで黒タイツをずるりと下ろし、陰茎を露出させた所で同じく大川興業所属の寺田体育の日が乱入
       し、エガちゃんを担ぎあげて無理矢理退場。江頭2:50によるクーデター扇動はあえなく失敗に終わった。
        広報からは一応、
        「ここは自衛隊だから、くれぐれも危ない事はしない様にお願いします
        と事前の釘差しがあったのだが、これを江頭フィルターに通した場合、
        「絶対に、危ない事を、しろ」
        になってしまうのは当たり前である。この場合は、どう考えてもやらせた広報が一番悪い。
        当日の様子を収めた動画が入間基地広報室にある筈だが、見せてくれないんだろうなあ。見せてほしいな
       あ。



     【ピクルス王子】 ぴくるす・おうじ  
        防衛省のマスコットキャラクター。パプリカ王国の王子であり、可愛らしいパセリ姫を随伴して日本に防
       衛留学中。いわゆるリア充である。ケッ。
        ただ、一国の王子の割には階級が海士(水兵服を着用)だったり、各基地のイベントではお子様に回し蹴
       りを喰らったり
していて、どうも冷遇されている模様。たまに目の焦点が合っていない時もあり、人には言
       えない色んな悩みや苦労もあるようだから、まあ許してやろうと思う。



     【ひげ】 ひげ  
        自衛隊では鼻下のひげは問題ないが、アゴひげについては部隊長の許可が必要となる。陸自の場合は防護
       マスク
を着用する際に隙間が出来てしまう為、アゴひげは×。
        確か大湊地方隊に、見事なアゴひげを蓄えた居合道7段の名物曹長さんがいた筈だが、八戸の航空隊だっ
       たかもしれない。



     【P−3C】 ぴー・すりー・しー  
        海自の誇る対潜哨戒機。通称オライオン。搭載されたソノブイMAD等の高度な各種電子機器で国籍不
       明の潜水艦を追つめ、場合によっては魚雷を投下したり対艦ミサイルを発射する。
        航続距離は優に7000qを越え、1ソーティのフライトが長時間になるので、機内にはトイレはもちろ
       ん食事を温めたりコーヒーを淹れるキッチンもある。ただこのトイレだが、便座の下がバケツになっていて
       使用した人間が後始末をするルールになっているので、絶体絶命の緊急時以外は使われない事が多い。
        海自はこのスグレモノを100機近く保有しているが、世界的に見てこの数は群を抜いている。ちなみに
       アメリカ海軍は200機以上保有しているものの世界中の米軍基地に散らばっており、日本周辺海域だけで
       100機、しかも24時間体制で何機も飛ばしている
のは、いかに海自が対潜哨戒任務に力を入れているか
       の表れと言えよう。
        ちなみにこのP−3C、海上を低空で長時間飛行という機体に非常にストレスのかかる運用を課せられて
       いるが、任務中の墜落で損耗した機体は一機も無く、02号機は耐用年数15000時間を飛びきって堂々の退
       役
を果たしている。乗組員及び整備の人達の、不断の努力に敬礼!



     【ピストン桿止め用バネピン】 ぴすとん・かん・どめ・よう・ばねぴん  
        64式小銃を構成する部品の中で、最も脱落し易い超問題児パーツ。長年にわたって分解結合を繰り返す
       せいで、小さな部品は摩耗しユルユルになるが、特にこの部品は外れやすい上に極小なので、訓練中に脱落
       しない様に厳重に黒ビニテでぐるぐる巻きにされる。



     【100g1800円】 ひゃくぐらむ・せんはっぴゃくえん  
        海上自衛隊初のイージス艦こんごうが就役した当初は国内外の注目度も高く、政財界からも多くの見学者
       が建造中の造船所を訪問した。艤装員長(後のこんごう初代艦長)本多宏隆一等海佐は一通り艦の説明を行
       った後、鉄腕アトムと同じ十万馬力である事、そして国民1人当たり1000円の建造費が掛かっている
       を説明するのを常としていたが、ある時関西財界人の一人から、
        「それで、グラム当たり幾らですねん」
        との質問を受けた。流石にその数字は把握しておらず、電卓で計算して約18円です、と返答したところ、
       その財界人は
        「100g1800円ですか、神戸牛のええとことおんなじ位や。そらぁ大したフネですなあ」
        と、いたく納得していたと言う。後年海将補となった本多宏隆氏は当時を振り返り、
        「つくづく人の価値基準と言うものは面白いと思いました」
        と語った。



     【標準メニュー】 ひょうじゅん・めにゅー  
        毎月一度発表される、栄養士の監修による一ヶ月分の食事メニュー。しかし実際はこのメニューはあくま
       で叩き台であり、調理員が様々なひとヒネリふたヒネリを加えることにより、さらに隊員のハートを鷲掴み
       にする食事
が作られる。
        例えば、今日の酢豚の食材の中からタマネギニンジン、タケノコをちょっとずつ抜いて、明日のカレイ
       唐揚げを野菜あんかけつきにバージョンアップさせる等々。
        一度に作る食事量が多くても300人分程度な海自艦艇だとこういうアドリブもやりやすいが、1000
       人近い隊員
を抱える基地駐屯地ではこれもちょっと面倒な作業。海自艦艇の食事が美味いというのは、この
       辺りの事情も絡んでいるものと思われる。



    【ビルジキール】 びるじきーる  
        艦艇喫水線下から舷側に沿って左右に突き出ている、長細い板状の張り出し。艦艇のローリング(横揺れ)
       を減少させる効果
がある。
        同様の目的で作られたものにフィンスタビライザーがあるが、ビルジキールは速力に関係なく効果を発生
       させ、停泊時でも有効。
とは言え、実際に乗り込んでいる隊員さん達に言わせれば、
        「うーん、本当に効果あるんですかねえ(笑)。まあ無いよりマシ、ってとこじゃないですか」
        水面下にあるものなので、普段の一般公開や体験航海などで目にする機会はまずないが、進水式ドック
       入り
の艦艇を見る機会があれば是非確認して頂きたい。



    【ヒロシ君】 ひろし・くん  
        新潟地本加茂地域事務所HPの『ヒロシ!しっかりしなさい!!』にて大活躍している謎の人物。近所を
       走る蒸気機関車を無邪気に撮影したり、事務所にお花を売りに来た女子高生のいいカモにされて奥さんに怒
       られたり、家族にいいところを見せようと頑張ったバッティングセンターで体力の衰えを感じてヘコんだり
       
と、居合抜きの達人も顔負けの猛烈な脱力っぷりを見せている。
        加茂地域事務所に突然現れた謎の人物かと思いきや、前任地の新発田地域事務所時代も全く同じ様な事
       やっていて、地元のお祭りに参加したり温泉に入ったりを掘ったり紅葉巡りをしたりお節料理を作ったり
       餅
をついたり金魚を飼ったり地元FM番組に出演したり梅干しを作ったりお花見をしたり山登りしたり北陸
       新幹線
にときめいたり串揚げのタレを2度漬けしたりと、まったくブレがないのが素晴らしい
        その一方で、時折思い出したようにとてもためになるイイ話を聞かせてくれたりと、ヒロシ君の引き出し
       の多さ
燻し銀っぷりには唸らされるものがある。ただ、庭の梅の木に梅ちゃんと名づけたり、自宅の家電
       製品ひとつひとつに名前をつけたり
と、そのセンスはかなり微妙な模様。
        ちなみにヒロシ君の正体は地域事務所所長という噂だが、まさかな・・・。



     【ブイ・トゥ・ブイ】 ぶい・とぅ・ぶい  
        同じ基地の違う艦艇に移動になる事。艦艇が係留しているブイ(浮標)が変わるだけ、という意味である。
        単身赴任や引っ越し作業をしなくて済むので、幹部自衛官やその家族にとっては楽な半面、現在の居住地
       に不満がある場合はもう1〜2年はそこに住まねばならず、
民間サラリーマンの転勤族同様に悲喜こもごも。



    【フィン・スタビライザー】 ふぃん・すたびらいざー  
        ビルジキールと同様に、艦のローリング(横揺れ)を減少させる装置。
        喫水線下に設置された可動式の小さい翼状の板を突き出し、水中で揚力を発生させて艦を安定させる。
       の速力や波高
に合わせて翼の突出量や角度はコンピューターで制御され、横揺れを最小限に抑えてヘリコプ
       ターの発着艦を円滑に行う。
        ただ、水中での揚力を利用する為、ある程度以上の速力がないと効果は薄い。その為、低速航行時はビル
       ジキールのみで、高速航行時はこれにフィン・スタビライザーを併用している。



     【フカよけ布】 ふかよけ・ぬの  
        海自の潜水員や救難員、航空機パイロットが装着する、黄色く長い帯状の布の事。サメやフカは自分より
       大きな(長い)相手を襲わない
習性がある為、海に飛び込む際はこの布を長々とたなびかせるとの事。
        ただ実際は、誰もサメさんやフカさんのところへ確認に行った訳ではないので、まあ気休めみたいなもの
       
だとか。



     【フジツボ】 ふじつぼ  
        カキと並んで、艦艇にとっての天敵である。長期間にわたって航海を続けると、艦底部にこれがびっしり
       と貼りついて
航行時の抵抗になるため、艦の速力が鈍ったり燃費が悪くなったりする。
        そのため艦艇の喫水線下部には、付着防止効果のある酸化銅を混ぜた塗料が塗られる(艦の下半分が赤い
       のはこれが原因)が、完全には防げないので定期検査や年次修理の時にはガリガリと削り落している。
        ちなみにこのフジツボ、殻ごとハンマーでたたきつぶして煮出すととても美味しいダシが出るらしいが、
       艦内で食しているかどうかは不明。



     【富士登山駅伝】 ふじ・とざん・えきでん  
        静岡県御殿場市陸上競技場〜富士山頂を往復する。コース長46.76q、標高差3199mにも及ぶ、
       管理人が死んでもやりたくない駅伝競技
である。
        
長年にわたり各駐屯地から参加の陸自チームが上位を独占してしまった為、一般の部と自衛隊の部に分け
       られてしまった。2011年時点では、滝ヶ原駐屯地チームが4連覇という偉業を成し遂げている。
        ちなみにこの駅伝、無線通信、記録、誘導、給水、輸送、救護のあらゆる面で自衛隊がフルサポートして
       いる。



    【不整地着陸】 ふせいち・ちゃくりく  
        回転翼機(ヘリコプター)の操縦技術の一つで、機体を地面に接地させつつも、ホバリングして機体重量
       を接地している地面にかけない状態を保つ事
。ハーフピッチとも言う。
        地面の凹凸が激しく着陸後に機体の安定が保てない場合や、ヘリの着陸に耐えうる強度がない場所等に緊
       急着陸する際に必要となる技術である。
        一般的にはあまり見る機会はないが、東日本大震災での救難活動でテレビの画面に頻繁に映っていた。一
       般的なビルや校舎は、重量10トン近い自衛隊のヘリの着地には耐えられない為、屋上に着陸していた様に
       見えたあのヘリは、実は浮いていたのである。
        ヘリコプターの操縦免許を持つ人なら普通にできる技術だが、何もない滑走路ならともかく、ビルの屋上
       ではほんの少しの横風でローターのブレードが手すりに接触し兼ねない上に、コントロールの難しい軍用の
       ハイパワーエンジン
を操りつつ人が乗り込む度に重量配分が変化する機体を安定させるには、文字通り針の
       穴に糸を通すがが如き神業の様な操縦技術
が必要となる。なんでもない着陸に見えて、凄いテクニックだっ
       たのである。
        その事について以前ヘリパイの隊員さんに聞いてみた事があったのだが、
        「ああ、あれですか(笑)?まあ、ウチ(自衛隊)でアレを出来ない奴は、機長名乗る資格ないですよ」
        と、こともなげに言っていた。カッコいいとはこういう事である。      



     【船酔い】 ふなよい  
        直線運動を感知する耳石器、回転運動を感知する三半規管、そして視覚の3つのセンサーからの情報によ
       って、人体は自己の置かれた環境の揺れや傾斜を判断するが、洋上のうねりでそれらが正常に働かなくなる
       と、船酔いの症状が出る。
        殆どの場合は時間をかける事で体が適応してしまうが、艦艇勤務の当初は2等海士だろうが3等海尉だろ
       うがビニール袋を離せない毎日を過ごす事となる。
        また、その艦の主機(エンジン)の振動周期も影響している様で、別の艦に異動するとしばらく軽い船酔
       いにかかる隊員も多いとの事。
        ちなみに管理人は変に船に強く、周囲がのたうちまわる様な大シケのフェリーの中でも平然とカップ麺を
       食べていた事が密かな自慢
であったが、
        「ああ、船酔いですか?運動神経の発達した人の方がかかりやすいですよ」
        という某艦乗組員の心ない一言により、そのしょうもないプライドは粉々に打ち砕かれてしまった・・・。



     【浮遊物】 ふゆう・ぶつ  
        海自艦艇で出される味噌汁の具の事。最初のうちは豆腐などの生鮮品が浮かぶが、航海が長引くとタマネ
       ギやジャガイモ、麩など
が幅を利かせるようになる。
        ごく稀に、海上を漂う漂流物の事を指して言う事もある。大きな丸太不法投棄された冷蔵庫等は艦にぶ
       つかると厄介な事になるので、台風の後等は特に見張りが厳重に行われる。
        また展示訓練等では、事前に支援船が予定航路を一回りして漂流物の有無を確認し、乗艦者の安全を図っ
       ている。
楽しいイベントを陰から支えている沢山の支援船の働きを忘れてはいけない。



     【BLANC AILE】 ぶらん・えーる  
        空自のブルーインパルスに比べると非常に地味な、海自航空隊のアクロバットチーム。フランス語で『白
       い翼』
を意味している。正式名は海上自衛隊第201教育航空隊であり、同隊が所在している山口県の小月
       基地の教育航空群の教官たちがパイロットを務めている。
        T−5初等練習機を使用しているのでブルーインパルス程のスピード感は無いが、パイロットが現役の教
       官なので基本的技術のレベルが高く、プロペラ機故に結構な低高度を飛んでくれるので、かなりの迫力があ
       る。



     【ふりかけ】 ふりかけ  
        ソースや醤油、ドレッシング等とともに、艦艇や基地駐屯地の食堂に配備されている。
        伝統的に食事が美味い海自艦艇ではその地位は低いが、陸自駐屯地や空自の基地ではかなり頼もしい存在。
       のりたまやごましお、ゆかり等のトラディショナルなものが安定した人気を誇っている。
        なお、陸自と空自の食事が今ひとつ評価が低い理由は、海自と違って専門外の一般隊員も交代で調理に加
       わる
ので上のレベルに限界があり、ばらつきが出やすい為と思われる。また、平日でも課業終了後は自由に
       外出できる
ので、海の上で閉じ込められる乗組員の様に食事しか楽しみが無いという訳ではない点も挙げら
       れる。



     【ブルーフェニックス】 ぶるー・ふぇにっくす  
        1999年のトルコ大震災時、海上自衛隊はトルコに対して500戸もの仮設住宅の海上輸送を行った。
       その時の作戦名がブルーフェニックスである。
        阪神大震災直後と同じく、被災者の住居に悩んでいたトルコにとって大きな援助となったが、仮設住宅を
       輸送艦内に運び込んだ際、一緒に大量のゴキブリ、ネズミ、ヤモリが侵入してしまい、本作戦に関わった艦
       艇はその後の駆除作業に苦労させられる羽目となった。
        ある艦では、航海中に艦橋の窓ガラスにヤモリがはりつき、爬虫類が苦手な幹部に悲鳴を上げさせたとか。



     【ブルワーク】 ぶるわーく  
        艦艇の艦首部に施された、波よけのための甲板から一段高い壁。補給艦や訓練支援艦ではお馴染みの形だ
       が、護衛艦では艦首にターターランチャーを装備しているはたかぜ型のみがこれを採用している。ナイーブ
       極まりないターターと違って、物事に動じないVLS全盛の昨今では、あまり見られない。



    【ブロー中の札】 ぶろー・ちゅう・の・ふだ  
        潜水艦内で発生する汚水(調理・トイレ・シャワー時の生活排水)は、一旦艦内のサニタリータンク(項
       目を参照されたし)に貯留され、折を見て圧搾空気をタンク内に送り込んで艦外にブロー(噴出)させて廃
       棄している。
        つまりブロー中のタンク内には水圧をはるかに超える高い気圧がかかっていて、この時にトイレで○○○
       を流そううものなら、本来タンクに流れて行くはずのブツが凄まじい勢いで逆流し、個室内とその隊員は
       獄の様な惨劇
に見舞われる羽目になる。
        そういう悲劇を生まないために、作業中はトイレのドアに『ブロー中』の札が掛けられるのだが、これを
       掛け忘れたり切羽詰まっていて見落として、死ぬほどつらい目にあった隊員も過去にいたそうな。
        ちなみに最新鋭のそうりゅう型からはブロー専用のポンプが装備されている為、このような悲惨な事故
       なくなた上に、ブロー直後特有の艦内のブロー臭に悩まされる事もなくなった。心から祝福したい。



     【ベアトラップ】 べあ・とらっぷ  
        ヘリコプターを艦艇の飛行甲板に強制的に着艦させる装置。
        飛行甲板上空でホバリングしているヘリコプターとベアトラップをワイヤーで接続し、ベアトラップ内部
       のウインチを巻いてヘリコプターが揚力を保った状態のまま着艦させ、最後はトラバサミの様な装置でヘリ
       コプターを固定する。凧上げの凧を引っ張りおろして鷲掴みにする要領である。
        もともとは北欧の海軍で、荒れ狂う冬の北海でヘリコプターを着艦させるために考案された。構造と設計
       思想がシンプルなものほど頼りになる
という見本の様な装置であろう。



     【閉鎖】 へいさ  
        潜水艦が合戦準備(潜航準備)を終えた際に行われる、艦内の密閉が完全かどうか確認する作業。
        気蓄機から艦内に空気を送り込んで一時的に艦内気圧を上げ、しばらく気圧計を見て数字が動かなければ
       閉鎖完了
。潜航にとりかかる。
        この時、気圧計の数字が僅かでも下がれば、どこかから空気が艦の外に漏れている(閉鎖が不完全)状態
       なので、浸水の可能性があるという事になる。



    【ヘッジホッグ】 へっじほっぐ  
        第二次大戦中に英国海軍が開発した爆雷投射装置。目標潜水艦が潜む海域上空を覆う様に、24機の対潜
       爆雷を投射
する。ちなみにヘッジホッグとはハリネズミの意。
        一発の威力は大したことは無いが、一機爆発すれば全爆雷が一斉に誘爆する仕組みになっていて、目標潜
       水艦に対して水圧による大きなダメージを与える事が可能。
        投射された爆雷は海域にハートマークを描いて着水するが、これは別に設計担当者がカワイイもの好き
       った訳ではなく、様々に試された投射パターンの中で最も効率がよかったものだそうだ。
        魚雷の誘導装置が発達した現代では爆雷に優位性がなく、あまつかぜ型護衛艦を最後に海自艦艇からは姿
       を消している。以前は江田島の第一術科学校の表桟橋横にて戦艦陸奥の砲塔と並んで雨ざらし展示されてい
       たが、現在は老朽化に伴い別の場所に移動となった模様。



     【ヘッド】 へっど  
        艦艇のトイレの事。まだトイレ設備が十分ではなかった帆船時代に、艦首(ヘッド)の錨鎖孔から排泄物
       を投棄していた
事に由来する。
        なぜ艦の顔でもある艦首から捨てていたかと言うと、帆船は基本的に追い風を受けて進む為、艦尾から投
       げ捨てると自艦が汚れてしまう
為である。



    【ペルシャ湾派遣掃海部隊】 ぺるしゃわん・はけん・そうかい・ぶたい  
        1991年に行われた、自衛隊初の海外派遣任務。普段は裏方に徹していた海上自衛隊掃海部隊が、堂々
       と火の丸を掲げてペルシャ湾へ乗りだした。
        小さな掃海艇でペルシャ湾へ向かうのは狂気の沙汰に近かったが、半年間の派遣期間中、潮流が速く視界
       の効かない濁った海域
に於いて、半分手探り状態ながらも実に34個もの機雷を処分。それまで金は出して
       も汗は流さない
と揶揄された日本に対する各国の冷たい視線を、大きく改めさせる大偉業を成し遂げた。
        派遣が正式決定されたのは出発の10日前というとんでもないドタバタの中、リストにあげられた選抜要
       員のうち辞退者はごく僅か。
その辞退した隊員の理由も、重病の家族がいるから・・・等の同情すべきもの
       であった。
        ちなみにそのあまりの苦難の果ての任務達成ぶりを目の当たりにした部隊上層部から、帰国時は掃海艇を
       民間の大きな輸送船に積み込み、乗組員には飛行機を利用させようという話が出たが、
        「ここまで苦楽を共にした自分のフネを置いて、俺たちだけ飛行機で帰れるか!!」
        と、現場の隊員達は拒否したという。



     【ヘル談】 へるだん  
        海上自衛隊幹部に必須とされる、ユーモアとウィットに富んだエロ話の事。士官室の空気は副長の人柄
       反映される事が多く、訓練成績が思うように上がらなかったり様々なトラブルで重くなりがちな空気を変え
       るには、副長のユーモアのある話術が欠かせない。
        ただ、元からそういう性格の幹部はさほど問題ないが、そうではない幹部の場合はなかなか苦労する事が
       多く、さっきまで何を食べていたのか思い出せない事もあるとか。また、あまりに露骨で下品だと顰蹙を買
       う
ので、匙加減が難しいところである。
        ちなみに語源は助平な話助けるヘルプヘル談
        太平洋戦争当時に海軍士官を務めたある皇族は、ことのほかヘル談がお得意で、海軍内では“ヘルの宮”様
       と呼ばれて慕われたとの事。



     【防衛記念章】 ぼうえい・きねんしょう  
        自衛隊には勲章や従軍徽章、略綬も無いため、代わってこれが採用された。大きな災害派遣や海外派遣任
       務、演習参加や連続無事故、永年勤続表彰の際に授与され
、地味な制服の左胸をカラフルに演出している。
        そのオモチャみたいなチマチマした見た目から、自衛隊では『グリコのおまけ』、米軍では『フルーツサ
       ラダ』
などと呼ばれている。
        概ねベテラン隊員ほどいっぱい持っているので、階級の上下よりも自衛隊で食ったメシの数を表している
       とも言える。また、同じ階級で防衛記念章の数に差がある場合は、少ない方が出世街道驀進中という変な目
       安にもなっている。



    【防衛省】 ぼうえい・しょう  
        東京都新宿区市谷(いちがや)に所在している、陸海空自衛隊の総本山。尾張徳川藩上屋敷跡地に作られ、
       2007年には晴れて防衛庁からに昇格した。
        23万平方米もの敷地に実に1万人以上が勤務し、飲食店は10店以上、理容店、コンビニ、ドラッグス
       トア、図書館、さらには酒屋
まであるため殆ど街である。忙しい時は、家に帰らずとも省内で普通に暮らせ
       る

        また敷地中央の儀仗広場を囲む3棟の庁舎は、防衛に適した“鶴翼の陣”をモチーフに配置されているが、
       あまりに規模がでかすぎて言われるまで誰も気づかない。

        現在は省内見学ツアーも実施されており、係の人の案内付きであちこち見学して回る事が出来る。ちなみ
       に陸と海空では呼び方が違っていて、陸自では『市ヶ谷駐屯地』、海空は『市ヶ谷基地』と呼称する。が、
       実際は陸海空ともにいちがやで通っている。



     【防大の怪談】 ぼうだい・の・かいだん  
        毎年500人ほどの新入生を迎える防衛大学校だが、霊感が強過ぎて学業に支障をきたす学生が毎年一人
       はいる
という。部屋によってはロッカーの裏や引き出しの奥に、目立たない様にお札が貼ってあったりする。
        現在防大が建っていた場所は戦時中は砲台だったらしく、調査で掘り起こしたところ大量の人骨が出た
       言う噂が、毎年上級生から下級生にまことしやかに伝えられている。
        学生会館の地下には理容室やクリーニング室が入っているが、上の建物全体の構造に対して地階が妙に不
       自然な形
になっていて、浴室が意味不明なL字型になっていたり、不思議な所に神棚があったりで、『決し
       て掘ってはいけない場所がある』
証拠だという意見も・・・。



     【棒倒し】 ぼう・たおし  
        防衛大学で毎年行われている体育祭の伝統種目。各分隊ごとに立てられた一本の巨大な棒をひっくり返し
       た方が勝ち。
分隊長の指揮のもと、防御班は必死に棒を支え、攻撃班は相手分隊の防御を乗り越えて必死に
       棒を倒す。
        その戦術も分隊ごとに様々で、フェイントをかけて別方向から攻撃したり、一斉に全方向から飛びかかっ
       たり、一列に突っ込んで一気に圧し掛かったりと、分隊長及び参謀達の作戦立案指揮が勝敗を大きく左右
       する。
        4個分隊によるトーナメント戦で争われるが、最初の準決勝の時点で当たり前の様に負傷者が続出し、
       もボロボロ
。中には担架で運ばれる者もいて、よく見ると会場の隅には救急車が待機していたり・・・とい
       う恐ろしい競技である。
        あまりの怪我人続出ぶりに競技が中止された時期もあったが、ルールを安全化して再開した・・・割には
       大して変わっていない模様。
        そのルールも、『殴ったり蹴ったり』は禁止だが、拳や足の裏で『押す』のはオッケー、という内容で、
       初めてこの奇祭に参加する一学年は、早くも法解釈論的思考を余儀なくさせられる。
        また、露骨なドツキ合いを防ぐ為に『格闘技系の部員の参加は不可』だが、攻撃班への『突き蹴り及び投
       げ技、関節技の指導』は認められたり
なので、もう訳が分からない。
        普段は物静かで礼儀正しい学生達が原始人の如く豹変する様は、来賓で招かれた外国の駐在武官も驚愕
       るとの事。また、ある外国人がこの棒倒しの映像を見てもらした感想が、
        「・・・ここはアメリカとメキシコの国境なのか?」



     【報道対応】 ほうどう・たいおう  
        幹部特別課程で行われる、マスコミ対応術養成訓練。ずらりと並んだ教官達が記者とカメラマン役を担当
       し、学生に威圧的なフラッシュを容赦なく浴びせながらありとあらゆる揚げ足取りと挑発を行い、時には学
       生の身体的特徴までも揶揄して罵倒しつつ、悪意ある追及を前にした時の護身術を叩き込む。
        もちろんマスコミにもまっとうな見識を持った人は沢山居るが、それまで温和で物静かで人間的だった教
       官が、突如としてめちゃくちゃ嫌な奴に豹変する様子は、なかなか衝撃的だとか。



    【砲尾砲員】 ほうび・ほういん  
        艦艇に搭載された砲塔内で、砲弾を装填する人の事。自動装填装置がまだなかった時代の艦砲の発射速度
       は、ひとえに砲尾砲員の腕っぷしにかかっており、選抜された乗組員は食事もいいものが貰えたり、不便な
       艦内において様々な便宜を図られる事が多かった。
        またその腕力を生かしてカッター競技の特艇員として活躍し、艦の名誉を背負って立つ存在でもあった為、
       艦内では士官からも一目おかれる存在であった。
        ちなみに5インチ砲弾の場合、砲弾ひとつで実に32sもの重量。これを何発も抱え上げて装填するのだ
       から、凄い話である。



     【帽振れ】 ぼう・ふれ  
        艦艇の出入港時に行われる儀式。甲板や桟橋に整列した隊員が、頭上に掲げた帽子をぐるぐると回す。
       艦してきたゲストが退艦する際や、艦隊行動を取っていた僚艦と分かれる際、定年退職や異動で艦や基地を
       離れる際にも、儀礼として行われる。
        海外派遣時の帽振れは特に感慨深く、「くれぐれも気をつけて」「必ず無事に帰ってきます」という、
       見送る者旅立つ者の気持ちが交錯し、傍から見ていても胸を打たれるものがある。 
        ちなみに部内の宴会で泥酔した時の『棒振れ』については、あまりにお下劣過ぎて当HPの雰囲気に合わ
       ない
ので、言及は避ける事にする。 



     【ホームスピード】 ほーむ・すぴーど  
        艦艇が航海を終えて母港に近づきつつある時に、艦長が指定した速力よりもこころもち早い速度で航行す
       る事。

        本来は艦長の指示した一番燃費のかからない速度を守るべきだが、「早く家に帰りたいよう!」という乗
       組員の気持ちを汲み、艦長はあえて見て見ぬふりをしてくれている。



     【砲雷科】 ほうらい・か  
        自衛艦に搭載されている武器の操作・整備・運用を行う。艦内の各科の中では最も大所帯になるので、
       入港時の甲板作業や洋上給油作業、各種装備の整備、ヘリの発着艦オペレーション
までも担当する。
        仕事内容に変化があり体を使った作業が多く、射撃訓練等では成功失敗の評価をはっきりと知る事が出来
       る
ので、やりがいを実感する隊員が多い。
        その反面、何かと便利使いされたり真夏や真冬の甲板作業でつらい目にあう事も多いが、やはり艦艇の花
       形部署
という事もあり、人気は高い。



     【補給艦とわだ】 ほきゅうかん・とわだ  
        テロ対策特措法に基づいてインド洋に派遣された際、長期間の航海でも乗組員がリラックスできる様、
       内に
畳部屋を作った事で有名。疲れた時は新しい畳の匂いのする部屋でゴロゴロする事が出来、乗組員には
       かなり好評
だった。
        派遣される艦艇は様々なアイデアを練って乗組員の精神衛生に気を配っているが、中でもとわだの発想は
       群を抜いてユニーク
で、他にもトイレに活け花を飾ったり、AIBOを2匹持ち込んだりした。ストレスを
       貯めた強面海曹が飼い犬を思い出しつつ畳部屋で無邪気にAIBOと戯れる様
は、なかなか強烈なインパク
       ト
だったそうな。



     【保健行軍】 ほけん・こうぐん  
        停泊中や年次修理の合間に企画される、お弁当持参の職場ハイキング。隊員の家族同士の親睦を深める為
       のものであり、民間では今時珍しい昭和の香りのするイベントである。
        しかしそれなら『親睦ハイキング』で良さそうな気がするが、細かい言葉尻をいちいち捕まえては生き甲
       斐を感じている暇な人達
をあざ笑うかのように、現在でもこの名称が使われている。
        もともとは旧海軍兵学校の冬の伝統行事であり、当時は内火艇で手ごろな小島に上陸し、分隊競技を兼ね
       たウサギ狩り
を行うのがメインイベントであった。しかし野生のウサギはなかなかすばしこく、夕食の鍋に
       は小さな肉片が入っているかどうか・・・程度の戦果だったそうな。



    【ホストシップ】 ほすと・しっぷ  
        外国の軍艦が日本に寄港した際に、これに付き添って滞在中の様々な面倒をみる艦の事。
        内容そのものが外交の一端であり、防衛省及び外務省を通じての事前調整、入港時の礼砲交換の要領及び
       水先案内
の手配、接岸場所の指定及び支援、補給・修理の支援、艦内公開やレセプションのセッティング、
       上陸後の名所旧跡への案内、治安状況や観光スポット情報の提供、そして万が一のトラブルの際は警察や相
       手方との間に入っての折衝
など、担当する副長は発狂寸前の忙しさとストレスに襲われる。
        無事に出港してくれると、心の底からホッとするとの事。



     【ホットバンク】 ほっと・ばんく  その他
        “人肌の寝台”という意味。米海軍の原子力潜水艦には下士官水兵の人数分の寝台を用意する余裕がなく、
       当直明けの人間は先に寝ていた者の体温や体臭が残っているベッドに潜り込まねばならない。慣れないうち
       は極めて不快だが、慣れてもめちゃくちゃ不快であろうことは想像に難くない。
        ちなみに海上自衛隊潜水艦部隊ではそのような事はないのでご安心を。ただ、実習生が乗り込んできた場
       合は一時的にベッド数が足りなくなる事があるが、その際は魚雷発射管室の魚雷ラックが寝台になる。最初
       はどうにも落ち着かないが、隣にある魚雷がひんやりしてけっこう快適との事。



     【ボディパック】 ぼでぃ・ぱっく  
        所謂遺体袋。1991年の湾岸戦争後に海上自衛隊の掃海部隊がペルシャ湾に派遣された際、総員511
       名に対して40人分のボディパックを持参。
輸送艦ときわの倉庫の目立たない所に、他の物資で隠すように
       して積み込まれた。
        ちなみに、警察用語では『極楽袋』。こっちの方が呑気そうでイイと思う。



     【匍匐前進】 ほふく・ぜんしん  
        遮蔽物の少ない平坦な戦場で、正面からの攻撃を避けつつ発見されにくい様に前進する技術。第1〜第5
       までの段階があり、第1はお姉ちゃん座りに近い速度重視。第2、第3と数字が上がるに従って、地面にへ
       ばりつくが如き前進になる。
        部外の飲み会で酔っぱらってこれをした事のある隊員は少なくないが、国民の無理解、一部マスコミや教
       職員達の悪意の十字砲火
に晒されながらも、ひたすら地を這うようにたゆまぬ前進を続けてこられた先輩方
       のDNA
が、今も綿々と受け継がれているのだろうか。



    【ポン引き】 ぽんびき  
        地本・・・いや地連の勧誘員の事。駅前や繁華街にてウブそうな若者を見つけては、
        「公務員だから休みは多いし安定してるよ」
        「資格もいっぱい取れるよ」
        「衣食住タダだからお金溜まるよ」
        「働きながら大学にも行けるよ」

       などと甘い言葉を耳元で囁く事を得意としている。またの名を人さらい。もしくはチレンジャー
        そして見事に釣りあげられた隊員の言葉によると、
        「決して嘘は言わないが、本当の事も言ってくれなかった人」
        近年はこの手のステレオタイプな勧誘活動は行わず、もっぱら現役隊員や協力団体の紹介高校大学の就
       職説明会
にシフトしている模様。
        特にバブル期の人員確保は大変だったようで、
        「何日も足が棒になるぐらい歩き回って声をかけてもまるで相手にされず途方に暮れていた時に、昔部下
       だった隊員が入隊者を紹介してくれた時は、本当に涙が出る位有難かったですよ。今の勧誘員は、そんな経
       験できないんでしょうねえ・・・」

        と、昔広島地連で勧誘を担当していた二等海佐さんが、護衛艦こんごう艦上で苦労だらけだった筈の当時
       を懐かしそうに語ってくれた。

        ちなみにこのポン引きという言葉、軽い自嘲的な意味合いがない事もないので、隊員さんに面と向かって
       言うのはやや失礼な気がしないでもないので注意。



     【ポンプジェット】 ぽんぷ・じぇっと  
        ウォータージェット推進の一種で、潜水艦のスクリュー部分に円筒形の覆いを被せたもの。高速航行時の
       キャビテーションノイズを抑え、推進効率を上げる効果
がある。
        水中でスクリュープロペラが回転すると、推力となる推進軸方向とは別に後方にらせん状に拡散していく
       回転流
が発生するが、この無駄になる回転流を円筒状の覆いで囲いこみ、推力に変える仕組み。
        長所としては、推進効率が上がるので推力が増え、高出力時の燃料消費量を抑える事が出来る。
        短所としては、設計が複雑で建造コストもかかり、低出力時は逆にロスが大きくなる。
        海自の潜水艦はこのポンプジェット方式ではないが、魚雷にポンプジェット方式を採用している。





     【前川原駐屯地】 まえがわら・ちゅうとんち  
        福岡県久留米市に所在し、敷地内には陸上自衛隊幹部候補生学校がある。部内では前川原よりも“久留米”
       と呼ぶ方が通りが良い。
        鬼の様な教官達が候補生に幹部自衛官魂を叩きこむべく手ぐすねを引いて待っており、防大で4年間しご
       き抜かれた幹部候補生ですら逃げ出したくなる程厳しく鍛えられる。1年間の修行に耐えて全国の駐屯地に
       散って行く幹部のタマゴ達は
        「二度と来るめい(久留米)、鬼川原(前川原)」
        と言い残すとか。



     【間稽古】 まげいこ  
        駐屯地での通常の課業が終了する夕方以降に行われる、自主的なトレーニングの事。隊員各自がノルマ
       科し、広大な敷地内を黙々と走り込んで廊下に貼られた棒グラフをこつこつと伸ばしたり、ウエイトトレー
       ニングで汗を流したりしている。
        また教育隊では、この時間が号令調整隊歌演習、補強トレーニングに充てられる。
        ちなみに海自では、同様の自主トレを“別課”と称している。空自では何て言うんだろう。



     【マスカ―】 ますかー  
        エンジンや減速機、排水ポンプ等から発生する水中雑音を消すために、スクリューの外側を細かい泡で包
       み込んでしまう装置。
潜水艦と水上艦の両方に装備されている。
        外に出る音自体はかなり抑える事が出来るが、長大なウェーキ(航跡)を引いてしまうので、敵の哨戒機
       が上空にいる可能性がある場合は使用できない。



    【松戸カレー60A】 まつど・かれー・ろくまる・えー  
        陸上自衛隊需品学校が所在する、千葉県松戸駐屯地隊員食堂のオリジナルメニュー。カレーの上に地元松
       戸市の特産物である白宇宙かぼちゃの素揚げがトッピングされている。末尾の60A松戸駐屯地創立60
       周年を記念
して考案された事に由来している。
        ちなみにこのかぼちゃ、駐屯地内の野草園で隊員さんの手によって育てられていて、ほっくりした口当た
       り
濃厚な甘さがカレーによく合うとのこと。油で揚げる事でカロチンの吸収率も高まるというなかなかの
       スグレモノで、海自ご自慢の金曜カレーに勝るとも劣らない味だとか。名実ともに松戸駐屯地の味と呼ぶに
       相応しい一品
だそうだ。



     【松戸駐屯地】 まつど・ちゅうとんち  
        千葉県松戸市と鎌ヶ谷市にまたがる形で所在し、陸上自衛隊需品学校がある。糧食班の教育を行っている
       ため、陸自駐屯地の中でも飛びぬけて食事が美味い事でも知られており、隊員食堂で提供されるメニューも
       凝ったものが多い。
        基本的に教育中の隊員が毎日の調理を担当しているが、仕込みから仕上げまでを板長のごとき教官達が常
       に目を光らせているので、料理のレベルは嫌でも高くなるとの事。
        他に松戸ならではの特色としては、全国の駐屯地でもここにしかない落下傘整備工場、そして駐屯地のど
       真ん中を貫く新京成電鉄の線路が挙げられる。なんでも自衛隊員しか使わない珍しい踏切も存在し、鉄道マ
       ニアの間でも微妙に有名だそうだ。



     【マボタク】 まぼたく  
        防衛大学京浜急行馬堀駅の間の移動にタクシーを利用する事。
        
「学生のクセにタクシーで飲みに出るなんて生意気な!」
        とお怒りになる向きもあるかもしれないが、辺鄙な場所ゆえにバスの便が少なく、3〜4人で割ればそう
       大した金額でもない
上に貴重な外出時間ギリギリまでシャバで羽を伸ばす事が出来る。
        さらに地元のタクシー会社の経営を潤し、なおかつ横須賀市の財政にまで僅かながらも貢献しているので、
       あまり野暮なことは言わないであげてほしいものである。



 new!!【マムシ】 まむし  
        陸自の野外演習における仮想ではない敵。意外と樹木の上にいる事があるらしく、以前74式戦車の開け
       放したハッチからマムシが車内に入り込み、乗員が大パニックになった事があった。
        煙や水、殺虫剤とあらゆる手を尽くしても出てこようとせず、最後はその場でクレーンを使って車体から
       砲塔部を分解
し、ようやく捕獲に成功した。
        その後のマムシの処遇については不明だが、過去には演習の度に暇を見つけては山中に入ってマムシを捕
       獲し、趣味のマムシ酒作りの材料にしていた豪傑連隊長がいたそうなので、もしかしたら今頃は酒瓶の中に
       いるのかもしれない。



     【満艦飾】 まんがんしょく  
        自衛艦の艦首〜マスト〜艦尾にかけて、国際信号旗をはためかせる風習。特定の祝祭日(建国記念日、天
       皇誕生日、憲法記念日、海の日、文化の日)、並びに自衛隊記念日、観艦式の際に行われる。
        当初は万国旗を使用していたが、旗の上下先後で序列をつけているという誤解が生じかねないため、現行
       の国際信号旗を使用するようになった。
        無線による通信手段が無かった大航海時代、友好国の港に入る前に唯一の通信手段であった信号旗を全て
       揚げてしまう事で、貴国に対して敵意ある行動に出る意思はありませんというメッセージを送っていた習わ
       しに由来している。



    【三笠記念艦】 みかさ・きねんかん  
        日露戦争で連合艦隊の旗艦として獅子奮迅の活躍をした戦艦三笠であったが、帰国後は凱旋を前に乗組員
       の放火により沈没
したり、その後引き上げられてからは何故か内部を水族館(水族艦?)にされたりと、非
       常に数奇な運命をたどる事となった。
        現在は、神奈川県横須賀市の三笠海浜公園にて記念艦として保存、展示されているが、若い頃ブイブイ言
       わしていた爺さんが、今ではすっかり丸くなって海辺でのほほんと日向ぼっこしている様な、なかなかカッ
       コイイ佇まい
である。



 new!!【右側通行】 みぎがわ・つうこう  
        自衛艦内の通路は右側通行であり、海上自衛隊の施設内の通路も動揺に右側通行となっている。慣れない
       うちはなんか変な感じだが、海上交通は原則的に右側通行なので、とっさの際に間違わない様これにならっ
       ている。



     【右向け左!】 みぎ・むけ・ひだり  
        講談社週刊ヤングマガジンにて連載された、陸上自衛隊武山駐屯地を舞台にした漫画。原作史村翔、作画
       すぎむらしんいち。

        原作者が元自衛官とは言え航空自衛隊の生徒隊だったり、バブル華やかなりし頃の作品なので、いま読み
       返すと「?」な描写も多いが、妙にリアルな当時の教育隊の様子が描かれていて、いつ読んでも笑ってしま
       う。ミリタリー関連の書籍を10冊読むより、当時の自衛隊の雰囲気を感じる事が出来るかもしれない。
        現在は文庫版も出版されているので、是非ご一読頂きたい。内容は無茶苦茶だが、原作者の『どんな所に
       も青春はある』
というメッセージが、意外と胸を打つ内容である。
        連載終了後に実写で映画化もされたが、こちらは『ジエイタイはこんなに楽しいところだよ〜』をPRし
       た広報フィルム
みたいでちょっと・・・。



     【ミザ】 みざ  
        上記の【チョザ】を参照されたし。



    【ミサイル艇1号】 みさいるてい・いちごう  
        1993〜1995年にかけて3隻建造された、ガスタービン&ウォータージェット方式の小型ミサイル
       艇(基準排水量50d)。
海自初の全没式ハイドロフォイル艇で、高速航行時には船体が完全に浮きあがり、
       海面下に没した水中翼で舵を取る。高速で小回りが利くのが特徴だが、荒天に弱く操縦は極めてデリケート
        排気音は完全にジェット機そのもので、離水時の号令は「テイクオフ!」軽量化第一なので艇内スペー
       スは
限りなくミニマムで強引な構造。おまけに艇内に入るといきなりCICなので、マスコミにもなかなか
       公開されなかった。
        魚雷艇の後継として作られたので他の用途には使いづらく、就役後すぐにデビューしたはやぶさ型ミサイ
       ル艇
の方が不審船対策として注目を集めたため、あっという間に影が薄くなり名前もつけられないまま退役
       した不遇な艇である(涙)。

        機関構造的に着水状態(ハルボーン)の8ノット、翼走状態(フォイルボーン)の42ノットの2種類し
       か速度が選べず、極端に遅いか極端に早いかしか選べない不器用さが仇になった模様。
        また、母港以外に入港する際は専門のバックアップ部隊を派遣しないといけないという、致命的な融通の
       効かなさ
も足枷になってしまった。つくづく残念なフネである・・・。



    【ミポリンと愉快な仲間たち】 みぽりん・と・ゆかい・な・なかま・たち  
        平成21年、当時の青森地方協力本部長竹本三保一等海佐を中心に、陸海空地本職員並びに事務官で結成
       されたアイドルユニット。むつ市で収録が行われたNHKのど自慢に果敢に挑戦し、“世界に一つだけの花”
       を歌って自衛隊の募集PRを目論んだが、残念ながら予選落ちしてしまった。
        翌22年、同県十和田市にて行われた収録でリベンジを誓ったが、今度は予選申込み多数による抽選で、
       あえなく門前払いとなったのは極めて残念な話であった。



     【ミリミリ】 みり・みり  
        あらゆるスケジュールを分割し、ミリ単位で細かく細かく行う事。特に訓練計画の安全面に関してこれが
       要求され、行動予定は分単位で設定される。いいかげんな計画を立案して中隊長に持って行くと、
        「もっとミリミリでやらんか!」
        と雷を落とされる事に。万事大らかな空自や何事にもスマートさを要求される海自にはない、陸自独特の
       気風
である。
        もっとも実際の戦場では、見ていて胃が痛くなる位大雑把な人間の方が向いているとの意見も・・・。



     【無音潜航】 むおん・せんこう  
        潜水艦が、艦の潜航と乗組員の生命維持に最低限必要な機器だけを使用して、出来る限り騒音を立てずに
       潜行する事。

        騒音のもととなる空調やトイレの排水などは真っ先に止められてしまい、各区画のドアは開放した状態で
       固定される。当然おしゃべりなどは一切禁止され、不用意に音を立ててしまった隊員はその部署にいる全員
       から視線でボコられる羽目になる。

        空調が停められ、異様な緊張感と熱気に包まれた静かな艦内、トイレの中には流される事を許されない排
       せつ物がうず高く・・・。



     【虫歯】 むしば  
        潜水艦乗組員には禁物。通常航海時は問題ないが、潜航中のシュノーケル使用時に吸気筒が波を被って安
       全弁が閉鎖し、
瞬間的に艦内気圧が低下した時は地獄を見る羽目になる。以下、そのメカニズムを。

        @艦の外からシュノーケルで空気を取り込んで、潜航中にディーゼルエンジンを稼働
        Aシュノーケルが波を被って海水侵入防止弁が作動。外部からの吸気が遮断されたため、ディーゼルエン
          ジンは艦内の空気を使用して稼働

        B艦内の空気がエンジンに使用されるため、艦内気圧は急激に低下
        Cしかし虫歯の穴の中の空気は1気圧のまま。従って、歯は口腔内で大爆発・・・

        同様の現象は与圧されていない戦闘機のコックピットでも発生するので、潜水艦乗りと戦闘機乗りはこま
       めに歯科検診を受ける事となる

        ちなみに、潜水艦は艦内気圧が610hpaを下回ると、エンジン自体が緊急停止する仕組みになっている。



    【むつかしござる】 むつかしござる  
        海軍兵学校入学試験の口頭面接で出題された問題の正解。
       『ここに6つの菓子があり、どうすれば5匹の猿に喧嘩をさせず平等に分け与える事が出来るか?』

        当時は旧帝大と並ぶ超難関であり、全国各地から極めつけの秀才が集まってきた海軍兵学校らしからぬ
       んち問答
だが、実際に出題されたのだから凄い話である。
        ただ、この設問が合否にどのくらいのウェイトを占めていたかは明らかでなく、答えられなかったのに合
       格した学生も多数いた。おそらく回答の正解不正解ではなく、質問された際の反応を見極められていたので
       あろう。
        
すぐに「わかりません」と白旗を揚げるか、分からないなりにギリギリまで粘って考えたか、とっさの際
       に
視点を変えた思考をしようとしたか、相手の意図を見抜こうとしたか・・・。
        偏差値で言えば早稲田慶応クラスと恐れられる海上自衛隊幹部候補生学校に合格した皆様は、如何なもの
       であろうか。



 new!!【双眼鏡】 めがね  
        海自では双眼鏡と書いてめがねと呼称する。8倍程度の携帯式のものもあるが、大きな据え置き型のもの
       が艦橋横の両ウイングに一基ずつ配置されている。倍率は20倍。
        レーダーがどれだけ発達しても、敵攻撃機の最終的な確認は目視で行われ、視界に航空機をとらえた時に
       双眼鏡を旋回させるレバーのスイッチを押せば、方位情報が艦内のCIC(戦闘指揮所)の武器管制システ
       ムに入力される
。ただの双眼鏡と言えども、立派に一つの兵器なのである。
        体験航海等のイベントでは、背の届かないちびっこ用に隊員さんお手製の踏み台が用意されたりしていて
       微笑ましい。



     【モンテネグロ】 もんてねぐろ  その他
        現在日本国と正式に戦争している・・・のかもしれない国。
        日露戦争当時、モンテネグロはロシアと共に日本と戦ったが、戦後の講和会議にロシアが呼ぶのを『忘れ』
       日本はモンテネグロがロシアについていた事を『知らなかった』為、終戦から100年以上たった現在も
       本とモンテネグロとの間に講和条約が締結されていない。

        うーん・・・まあ、仲良くやりましょうモンテネグロの人。





     【野外支援車】 やがい・しえん・しゃ  
        荷台のコンテナ部分がトイレになった4トントラック。洋式の大小便器がそれぞれ5つずつ設置されてい
       る。電源や上下水道設備のない場所でも24時間全自動で運用する事が出来、排泄物は電磁加熱装置(強力
       な電子レンジ)にてごく少量の灰に姿を変え、パッキングの後に一般ごみとして処分する事が可能。おまけ
       に燃焼過程で発生した水分は、脱臭して洗浄液として再利用される。地味な見た目とは裏腹に凄い実力を持
       った装備品で、駐屯地創立記念行事等で時折その姿を見る事が出来る。
        普段は大規模な野外演習で使用されているが、野外洗濯車、野外入浴システム、野外炊具1号(改)とと
       
もに、大規模災害の被災地でも大活躍しているので、見かけた時はねぎらいの言葉をかけてあげてほしい。



      【野外炊具1号(改)】 やがい・すいぐ・いちごう・かい  
        陸自の誇る“走る台所”。最大250人分のご飯とおかずを45分で調理できるスグレモノである。発電機
       を装備し、バーナーの点火・消火もタイマー制御。野菜の皮むきやカットも自動化されていて、炊飯以外に
       も
煮る・焼く・蒸す・揚げる・炒めるの全てが可能。野外演習災害派遣、地域の防災訓練でも大活躍して
       いる。
        また、車両による牽引での移動中にも炊飯が可能で、演習場に到着と同時に温かい食事を摂れる・・・筈
       だが、実際は消防法のお陰で一般道を走行中の炊飯は禁じられている。それでも、中隊長の乗る指揮通信車
       よりもずーっと隊員達から敬愛されており、有事の際には
この装備品を守ろうと半ば真剣に語られている。



      【夜光虫】 やこう・ちゅう  
        これが大量発生している海域を夜間航行すると、波がしらや航跡が青白く光る幻想的な光景を目にする事
       ができる。見渡す限りの満天の星空と並んで、船乗り以外には味わえない大自然の神秘と言える。
        ちなみに海自艦艇のトイレでは海水を洗浄水に使用しているので、この時トイレに行くと灯火管制で真っ
       赤に染まる視界の中、青白く光る便器に鎮座した自分の○○○を眺める事が出来る
のだが、こちらはちょっ
       とビミョーな大自然の神秘と言えよう。



     【ヤマセン】 やません  
        山船頭の略。陸上配置の前歴が長く、久々の海上勤務で操艦が思うように行かない艦長を揶揄した言葉
       ある。面と向かって言われる事はまず無いが、艦長失格に近い意味なのでかなりキツイ表現
        出世街道を驀進する幹部はどうしても海上勤務から遠のきがちなので、これもある意味仕方のない事であ
       り、どの国の海軍も似た様なものである。



     【大和オムライス】 やまと・おむらいす  
        戦艦大和の士官食堂の裏メニュー。チキンライスを卵焼きでくるんでケチャップをかけた、いわゆる普通
       のオムライスだが、上に乗せるグリーンピースが必ず奇数なのが特徴であった。
        割れる偶数では艦の位置が割れる(特定される)、艦が割れる(裂けて沈む)に通じるので縁起が悪い
       いう駄洒落みたいな理由なのがちょっとトホホ。何かにつけて合理的な考え方を優先する海軍であったが、
       こういうところはやっぱり日本人らしいと言える。



     【油圧手】 ゆあつ・て  
        潜水艦の潜航・浮上航行時に、姿勢を制御するベントやバルブを操作する役職。艦内の三千個以上にも及
       ぶバルブを全て把握する、フルオーケストラの指揮者にも匹敵する極めて重要な仕事であり、ベテラン先任
       海曹
熟練の技と職人の勘を最大限に発揮する。
        発令所左舷のバラストコントロールパネル前がその職場で、無数にあるスイッチと表示板を自在に操る。
       ちなみに“○”は開放、“−”は閉鎖を意味する。これは日本語表記の『開』『鎖』だととっさの時に見間違
       え兼ねない
為。
        出港直後と入港直前では真水や食料、燃料が消費された分艦内の重量バランスが変わるし、食事時には科
       員食堂に隊員が集まる
ので、これもまた艦の姿勢を乱す原因になる。そんな中で潜航中の艦の姿勢を保つの
       だからもう大変。



     【行き脚】 ゆきあし  
        航行中の艦が出している速度の事。
         
使用例:「潮流のせいで行き脚が上がらないな」
              「行き脚、そのまま」

        また、“物事に積極的に取り組もうとする姿勢”と言う意味もあり、やる気まんまんの実習幹部を評して、
         「今度の○○実習幹部は、なかなかの行き脚だな」
         と言う風にも使用する。



 new!!【ヨーソロー】 よーそろー  
        艦首方向(進路)はそのままで、の意。語源は『宜しく候』。本来は船乗りの言葉だが、海自の航空機内
       
でも同じ意味で使われている。



     【用具収め】 ようぐ・おさめ  
        予定されていた訓練業務が、一通り終了したことを告げる号令。
         例:「教練対空戦闘、用具収め」
           「一般公開、用具収め」
        また仕事以外でも、艦艇乗組員は日常会話の中で何かとこの言葉を使う事が多い。
         例:「よーし、そろそろお開きにするか。宴会、用具収め」
        ちなみに陸自では、「○○、状況終わり」と言っている。  



     【よかちん】 よかちん  
        旧軍時代から陸自に連綿と受け継がれた宴会用の歌。一番から十番まであり、内容は極めて下品でバカバ
       カしい。
地方によってさまざまなバリエーションがあるが、近年の女性自衛官の増加により、セクハラを恐
       れて
殆ど歌われる事がなくなっているのが残念。陸自無形文化財(?)として保護してほしいものである。
        歌う際には酒瓶徳利などが必要らしいが、一体何のどういう状態をどう表現する為に使うのか、管理人
       には全く想像もできない。





    【ラップ現象】 らっぷ・げんしょう  その他
        音源が無いはずの場所から聞こえてくる、不思議な軋み音や破裂音。心霊現象の一つとして取り扱われる
       事が多いが、その殆どは湿度や温度の変化により、住居の内装や構造材が膨張収縮、反りを起こして発生さ
       せるただの物理現象
である。
        同様の音は、潜水艦でも発生する。潜航中の潜水艦の耐圧船殻には厖大な水圧がかかっており、深度を変
       変えると各艦固有の深度“ピシッ”“パシッ”等と、構造材が軋む音が艦内に鳴り響く。
        乗組員にとってはいつもの事なので誰も気にしないが、取材のマスコミ実習生といったお客さんが乗艦
       した際は、これが格好の悪戯のネタになる。
        潜航時に軋み音が鳴り響いた途端、その場にいた各員がまるで示し合わせたかの様にざわついたり、
        「おい、これちょっとヤベえぞ・・・」
        と不安げに囁き合う
と、たいていのお客さんは青くなってキョドり始めるとか(笑)。
        このネタを書くのはちょっと無粋かなあと思ったが、管理人的には非常に面白いエピソードだったので、
       あえて書いてしまった。



    【リアクティブ・アーマー】 りあくてぃぶ・あーまー  その他
        爆発反応装甲の事。戦車の装甲の外側に爆薬を装着し、被弾時に爆発させて砲弾自体が持つ威力を減衰さ
       せる
、逆転の発想的な面白装甲である。ついでと言っては何だが、随伴している歩兵部隊がいたら吹き飛ぶ
       破片で
全滅してしまうという過激なお茶目さも売り。陸自では採用していないので安心してほしい。
        現在は複合装甲が主流になり、あまり使われなくなった。味方の歩兵が一番ホッとしている事は言うまで
       もないだろう。



     【陸自隊員居住区】 りくじたいいん・きょじゅうく  
        おおすみ型輸送艦内にある、陸自隊員の居住区。今どき水上艦でもあまり見られない極狭のキャンバス製
       三段ベッド
が蚕棚の如くずらりと並び、初めて乗艦する隊員は一様に驚きの声を上げる。同艦ではペーペー
       の海士でさえも快適な2段ベッドが与えられるが、お客さんである陸自隊員は幹部であろうと棚の隙間で寝
       る様な気分
を味わえる。
        とことん部下と苦楽を共にするのが陸自の流儀だが、完全武装の3個中隊(約330名)と戦車や車両
       飲み込まないといけないので、これも致し方無しであろう。もっとも実際は、慣れない船酔いの余り寝床の
       狭さなんかすぐにどうでもよくなる
らしいが。



    【リクルート航海】 りくるーと・こうかい  
        防大生のみを対象とした体験航海。陸海空の振り分けがなされていない一学年時に行われ、海のロマン
       各艦特製カレー
をエサに、海自においでよ〜海自においでよ〜と言葉巧みにウブな学生を誘惑する。
        ただこの結果は当日の天候にかなり左右され、たまたま海が荒れた日にこれが当たると、その年は海自志
       望者が激減
してしまうとの噂も。ただでさえ厳しい艦艇ローテーションの合間を縫う形で行われるので、直
       前の日程変更などままならず、担当者は天気図を眺めて祈る様な毎日を過ごすとか。
        正式には、防衛大学校第一学年護衛艦訓練計画・・・という長たらしい名前。



    【礼砲】 れいほう  
        艦が他国の港に入港する際、儀礼として発砲する空包の事。昔の先込め式の大砲は、一発撃った後の次弾
       の再装填まで非常に時間がかかった
ため、貴国に危害を与えるつもりは無いという意味で、入港前に砲内を
       カラにした事をアピール
した昔の習慣にならったもの。現代では、訪問国の国旗に敬意を払うという意味で
       行われている。
        海自の誇る練習艦かしまには、艦橋真下に40o礼砲が2門装備されている。通常は一門だけで間に合う
       が、万が一の不発の際にスムーズに次弾を撃てる様、バックアップとして待機させている。
        ちなみに陸自にもれっきとした礼砲があるが、普段使われる事は滅多にないので、必要な時だけ特科部隊
       から礼砲中隊を臨時編成している。使用する105o榴弾砲もとうの昔に退役した装備品なので、VIPが
       来たりイベントがあるたびに、倉庫から引っぱり出して使用している。



     【レッコ】 れっこ  
        捨てるの意。元々は英国海軍の舫綱を話す時の号令であるLet's go!が由来だが、そこから転じて物を手
       放したり捨てたりする意味
になった。
        使用例:「先任、これもうボロボロですけど、どうしましょうか」
             「うーん、使いもんにならんな、レッコしとけや」

        てっきり海軍用語かと思っていたが、マグロ漁船なんかで延縄を投げ入れる際にも「レッコ!」と言うそ
       うだ。



    【レッドレッド】 れっど・れっど  
        洋上にて2隻の艦艇が、左舷と左舷を向かい合わせる形ですれ違う事。航海灯の左側が赤色である事に由
       来している。
        ちなみに右側の航海灯は緑色なので、右舷同士ですれ違う際は「グリーングリーン」と相互に確認し、海
       上での衝突事故を防いでいる。



    【練習艦かしま】 れんしゅうかん・かしま  
        海上自衛隊幹部候補生学校を卒業した実習幹部達は、部隊配属の前に半年かけて世界各国を回る遠洋航海
       
に出発する。その練習艦隊の旗艦が練習艦かしま。
        通常ほどの海軍も使い古しのボロ艦を改修して練習艦にするが、かしまは最初から練習艦として建造され
       たので、その設備の充実ぶりは寄港先の海軍から見ても羨望の的。
        ただその任務の性格上、一年の殆どが国内外を巡る長期航海になるので、家族持ちの乗組員にとってはか
       なりの負担となる。そのため一年ごとに約半数の員数が入れ替わるが、お陰で艦を隅々まで熟知したベテラ
       ン乗組員が一人もいない
という事態が通常化。そんな中で個艦としての錬度を維持しつつ、実習幹部を一人
       前に育てなければいけない
ので、極めて大変な話である。
        また、世界中を巡っては各国海軍と親善交流やレセプションを頻繁に繰り返すので、かしま艦内の一部は
       ちょっとしたホテルの様な内装になっている。司令公室やVIP専用区画の浴室は総ヒノキ造りだし、障子
       をイメージした調度品や屏風、日本画が飾られ、来訪者をこれでもかとばかりに日本文化漬けにしてしまう。
       中でも極めつけは朱塗りの便器だが、流石にこれはちょっとやり過ぎの感が・・・。
        ちなみに、寄港先の王族国家元首を招いての艦内パーティーも数え切れないほど行われる為、かしまの
       給養員はホテルのシェフに引けを取らない程の腕自慢が選抜される。給養員にとっては名誉な話であり、乗
       組員にとっては文字通り美味しい艦と言えよう。



     【練習潜水艦】 れんしゅう・せんすいかん  
        耐用年数(海自潜水艦は16年)よりも前に第一線を退いた潜水艦は、その後練習艦として乗組員の訓練
       や新装備のテストベッド、また対潜水艦訓練の目標艦としての任務に就く。
        ただ第一線を退いたとは言え、装備や整備の具合は通常の潜水艦と遜色なく、艦齢16年は諸外国潜水艦
       では現役バリバリの部類に入るので、有事の際にはいつでも作戦参加が可能である。
        海自潜水艦の乗組員が艦や性能の割に多いのは、いざ練習艦が作戦参加となった時に、すぐに現役の乗組
       員を各艦から供出して揃える事が出来る様に
という意図があるとかなんとか。
        ただ、海自潜水艦も今後は定数を増やす方針となったため、この辺の事情の変化も考えられる。





     【WAC】 わっく  
        omens rmy orps陸自女性自衛官の意。近年の自衛隊に対する評価の変化と職場環
       境の改善もあり、限られた女性自衛官候補生枠への応募が急増。男性自衛官以上の競争率をくぐりぬけて採
       用された彼女達は、何処に出しても恥ずかしくない優秀な人材ぞろいとの事。海外派遣任務や大規模災害等
       にも参加し、女性ならではの視点から活躍の場を広げている。
        その反面、まだトホホな思いをする事もある模様。阪神大震災当時、陸自と海自が神戸港で作った入浴施
       設での出来事だが、浴室内で不足しているものや気分が悪くなった人がいないか、女湯担当のWACが様子
       を見に入ったところ、戦闘服、化粧っ気のない顔、アップにした髪を作業帽の中に入れてツカツカと大股で
       歩いていた様子
からと間違われ、女風呂が大パニックになってしまった事があった。
        慌てて自分が女性であることを説明してその場は笑いで収まったが、その後WACはちょっと落ち込んで
       いた
とか・・・。


     【ワッチ】 わっち  
        交代制の当直の事。3時間働いて6時間休む三直、3時間働いて9時間休む四直(艦の人員や任務内容に
       よって様々)
など、状況に合わせて変化する。全員が配置につく総員配置がかかると、寝ている隊員も飛び
       起きて持ち場につくことになる。
        当直時間により、昼ワッチ、夜ワッチ、泥棒ワッチ(深夜)という言い方もある。





用語辞典作製にあたり、参考にさせて頂いた書籍一覧




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