| 野菜いため定食
 2016.08.20 
 
        1135、店を開けたばかりの日本海食堂に到着。入口に立てかけられた大きなよしずが、いかにもこの季節らしいなあ。
 今日は以前から気になっていた野菜いため定食を注文。恐らく以前食べた事のある肉いため定食から肉を抜
 いたものが出てくると思われますが、あれ美味しかったんですよね。昨日は野菜が少ない食生活だったからち
 ょうどいいや・・・とコップに冷水を注ぎ、いつもの席につきます。
 背後では、座敷に置かれた巨大な超年代物クーラーがブブブブブと唸りをあげています。これだけ古いと消
 費電力も相当だと思いますが、それでもご主人はこのレトロなクーラーを使い続けるのでしょう。そのこだわ
 りと心意気には拍手を送らざるを得ない・・・。
 
        ふと見ると、テーブル上のPOPメニューにモツうどんを発見。あれ?メニュー看板にはないメニューです。長い歴史を持つこの日本海食堂、その途中でメニューが増えたり減ったりして、こういうシークレット的なも
 のもあるんですね。いつか注文してみないと。
 調理場からは、瑞々しい野菜が中華鍋で炒められるシャーシャーという音が鳴り響いてきました。あれはき
 っと私の野菜炒め・・・空腹のあまり音にまで愛着を感じます(笑)。
 やがてシャーシャー音は鳴り止み、あとは運ばれてくるのを待つのみ・・・の筈が、そこからさらに待ち時
 間が続きます。あれ?折角の熱々の炒め加減が台無しになってしまいますよ?お運びのおばちゃんも特に忙し
 そうな風ではありませんが・・・。
 そこからしばらくして、野菜いため定食が到着。ああ、もったいない。中華鍋からおろしたての熱々を食べ
 たかった・・・と思いましたが、あれ?なんか思っていた野菜いためと随分違うぞ?肉抜きの肉いためを想像
 していたのですが、出てきたのは八宝菜風というか、麺抜きのちゃんぽんみたいな代物です。
 
        なるほど、これはいい意味で予想を裏切られました。炒めた後に軽くスープで煮込んだから、シャーシャー音が消えた後しばらく間があったんですね。そりゃそうだ、ここの店主さんがせっかくの炒め上がりを台無し
 にする訳がありません。
 ホッとしつつ、まずは一口。おお、さっぱりとした中華風のとろみのあるスープが実に美味しい。程よい塩
 味が野菜の穏やかな甘さを引き出していて、広大で豊饒な砺波平野の恵みを一皿に凝縮したかの様。
 例によって品目は素晴らしく多く、キャベツ、もやし、タマネギ、ニンジン、コーン、ナス、オクラ、ピー
 マン、キクラゲと威風堂々の9品目。熱々の油で一気に火を通してしゃっきりさせた野菜が、その後塩味スー
 プで程よくゆるんだ塩梅が絶妙ですね。
 全体のボリュームの半分近くをキャベツ、もやし、タマネギが担っていますが、その中でオクラ、ナス、ピ
 ーマンの旬の夏野菜トリオが存分に持ち味を発揮しているのがいい感じ。野菜炒めにオクラが入るのは珍しい
 ですが、軽く煮込まれる事でねばねば感がライトになり、同時にオクラの持つ青臭い旨味がスープに溶け出し
 てたまンない味わいになっています。目を閉じて口を動かせば、真夏の陽射しと畑を吹き抜ける風が感じられ
 る様。
 
        お、よく見るとこのコーン、冷凍ものではなく生ですね。独特のしゃきしゃきした歯ごたえと、しゅわっと抜けていく淡い甘みが心地いいなあ。一年を通して冷凍コーンを使う方が手間もコストもかからないのに、旬
 の時期は旬の味を大事にしよう!という店主さんの気概を感じます。
 またよく見ると、ニンジンは皮がついた状態でカットされています。ニンジンの香りと栄養は中身よりも皮
 部分の方が多く、安全な畑で作られたものをきれいに洗えばむしろ皮は残すべきと聞いた事がありますが、な
 るほどこういうカットなら皮が目立たずに済みますね。
 
        ちなみに小鉢は厚揚げ、こんにゃく、ニンジンの煮つけです。こちらのニンジンの皮をむいてあるのは、見た目に気を配ったお客さん仕様かな。皮付きのままの方が味も香りもいいんだから・・・と、煮つけにまで皮
 つきを押しつける真似は避けたのでしょう。味、栄養、見た目のそれぞれにバランスよく目を配っているのが
 分かります。
 
        味噌汁は、北陸独特の粒子が荒く塩味が強い味噌を使っています。地味な見た目とは裏腹に意外と具沢山で、わかめ、豆腐、えのき、青ネギ、あとミョウガまで入っています。いやあ、私好きなんですよね、ミョウガっ
 て。別にミョウガがなくてもこの味噌汁は成り立ちますが、入っているとしみじみ嬉しい・・・そんな存在で
 す。
 漬け物はキュウリの浅漬け。部分的に皮を丁寧にむいてあり、涼し気な見た目と独特の青臭さ、食感のバラ
 ンスがこれまたお見事。業務用の柴漬けなんかでお茶を濁すのが普通なのに、日本海食堂はこんなところも決
 して手を抜こうとはしません。
 
        最後は皿に残った野菜の欠片をキャベツで集め、ちょっと周囲の目を伺ってからスープごとごはんにだばぁ。いや、私は普段外でこんなお行儀の悪い食べ方はしないんですけど(笑)、この野菜の旨味が溶け込んだスー
 プだけはこうして食べざるを得ません!お茶漬けの様にさらさらとかき込んで、野菜いため定食を完食。いや
 あ美味しかった!野菜のフルコースを堪能した気分です。
 それにしても、普通はコスト管理や手間の絡みから単純に肉いためから肉を抜いた材料で作るでしょうに、
 完全に別物の野菜いためを提供してしまうところが店主さんの料理へのこだわりであり、仕事への誇りの持ち
 方なんでしょう。いやはや、まったく御見逸れしました。
 炎天下の駐車場に置いてあった車に乗り込む時の熱気の塊に飛び込む感覚には閉口しましたが、これから先、
 サウナの様になった真夏の車内に乗り込むたびに、日本海食堂の夏の野菜炒めの味を思い出すのかな。それはそ
 れで悪くない・・・。
 
        となると、冬場はやはり冬野菜が中心になった野菜いためが出てくるのかな?まずは店内看板にあるメニューを全て食べつくす事が目標なので、一度食べた野菜いためを再び注文するのはずっと後の事になりそうです
 が、そういう意味ではこの食堂をとことん楽しみ味わい尽くす余地は、まだまだあるんだなあ。それはちょっ
 と嬉しい事だ・・・と思いながら、日本海食堂を後にしました。
 
 
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