No.21 TUNA


       さて今回は、メニューNo.21『TUNA』です。ツナ、の一言で済まされてしまうなんだか味けないメニュー名
      ですが、調理方法やソース名が明記されていない所から察するに、普通に油漬け水煮になっているのか
      な?MREにしては珍しい、あからさまなシーフードメニューです。
       それにしても、普段から肉をもりもり食べてそうなマッチョな米兵にとって、このメニューは一体どのような位
      置づけなんでしょう。あまり体を動かさなくなった高級将校あたりからは人気がありそうな気もしますが、そも
      そもそういう位にいる人達は、普段MREなんて食べない
んじゃないかなあ。果たしてどのような内容なのか、
      さっそくパッケージを開封してみます。
       あれ?いつもの紙箱入りのレトルトではなく、メタリックブルーもぎらんぎらんな民生品らしきパックが出て来
      ましたよ?MRE用に作成したメイン料理ではなく、市販品をそのまま流用したの?

       キャンディー等の補助食品に市販品を使うのは、これまでよくありましたが、メインメニューまでアウトソーシ
      ングとは驚き
です。EU圏内の国の戦闘糧食では珍しく無い事とは言え、MREのメインで市販品を見たのは
      これが初めて。ちょっと面白そうではありますね。
       しかしこうしてMREの定番であるタンカラーの食品群に紛れ込ませると、ぎらぎらブルーのツナが猛烈に浮
      いています
。他の食品達も、なんだかチャラい奴が小隊長としてやってきちまったぞ・・・というか、こんなのが
      俺達の指揮官なの?
とでも言いたげな不穏な空気を漂わせています。エイリアン2のバスケス上等兵なら、
       「ケッ!学校出のボンボンのお守りかよ!」
       とか聞えよがしに言いそうだなあ。いつもと違った険悪な雰囲気に戸惑ってしまいますが、とにかく試食して
      みましょう。

        あと今気がついたのですが、これまで当たり前のようにメインのレトルトに寄り添っていた、いつもの加水
      式加熱剤の姿が見えません
。確かに必要ないと言えばそうですが、この辺りからも小隊、いやメニュー全体
      に広がる動揺
が伝わって来て、ちょっとツライものがあるなあ・・・。




【内容】
1:TUNA 
  2:トルティーヤ   3:クッキー
4:チョコレートトフィー   5:ストロベリーシェイク
6:プレッツェル   7:アクセサリーパケット
8:マヨネーズ   9:スプーン
10:シーズニングブレンド








【アクセサリーパケット内容】
1:粉末アップルドリンク   2:塩
3:ウェットティッシュ   4:粒ガム
5:トイレットペーパー   6:マッチ








 


       まずは粉末ドリンク、定番のSPICED CIDERです。パッケージを開封して6オンス(約180cc)の冷水
      粉末を溶かすと、うん、いつもの安心印のアップルドリンクです。甘酸っぱさが程々で、気温の低い時期はお
      湯で作っても美味しいんですよね、これ。今回はのっけからぎくしゃくした雰囲気の試食なので、最初の手堅
      い一手
としては上々の滑り出しでしょう。

       続いてはSTRAWBERRY DAIRYSHAKE。MREではすっかりお馴染みとなったシェイクです。戦場でシ
      ェイクを飲みたがる米兵
も凄いですが、それに応える米軍も大概だなあ・・・。
       パッケージを開封すると、あからさまないちごミルクの香りがする粉末が入っていて、なんだか安ものの入
      浴剤
みたい。ここに6オンス(約180cc)の冷水を入れて、シャカシャカとシェイクします。以前は硬く折りたた
      んだ開封口をしっかり握ってシェイク
していましたが、現在は密閉出来るチャックがついたので、ずいぶん楽
      になりましたね。これのチャックが採用されるまでに、現場で幾多のトホホな失敗例があった事は、容易に想
      像できます(笑)。
       出来上がったストロベリーシェイクですが、これがまたいかにもアメリカンというか、目に刺さる様なピンク色
      食品というよりも何かの化学物質っぽく、中国の河川の様な色合いには心底げんなりさせられます。よく見る
      と細かな泡がびっしりと混じっていて、ブツブツが苦手な人には相当にオゾいビジュアル。幸い私にその気は
      ありませんが、これ、もうちょっと美味しそうに作れないものかなあ・・・。

       いまいち食欲が沸きませんが、まずは一口。うーん・・・室温で放置して溶けきってしまったイチゴアイスみた
      いな味わいですが、イチゴとミルク、あと砂糖の相性の良さのお陰か、見た目ほどの違和感はありません。む
      しろ駄菓子屋テイストというか、チープ&ジャンクな美味しさを感じます。もったりした口当たりが実に重甘く、
      正直ちょっとしんどくはありますが、慣れるとクセになりそうな正体不明な美味しさがありますね。
       糖質や脂質も豊富ですし、消化が良く胃腸の負担が少なそうという点では、実に戦闘糧食向けの一品と言
      えるでしょう。ちなみにこれ一袋で、実に460kcalものエネルギー量がある模様。どれぐらいの甘さと脂肪っ
      ぽさ
があったかは、この数字から御想像下さい(笑)。

       次はPRETZEL STICKS。長さ3cm程の、棒状のプレッツェルです。小麦生地を固く焼き上げた香ばしさ
      とはっきりした塩味
が印象的で、2種類のドリンクともなかなか合いますね。赤ら顔のアメリカのおっさんが映
      画館ででかいコーラを飲みつつ、袋から鷲掴みにしてぼりぼり食べてそうな感じ。
塩味が強いので、ライト系
      のビールとも相性良さそう
です。

       続いてはKREAMSICLE COOKIES。クリームサイクル?クリームのスペルはではなくだった気がし
      ますが、それにサイクルもCYCLEでは?商品名としてはこれでいいのかな?と首をひねりながらパッケージ
      を開封すると、500円玉よりも少し小さいサイズのぶあついクッキーが、ごろごろざーっと出てきました。沢山
      混ざっているこのオレンジ色の塊は、チェダーチーズでしょうか。
       一つ食べてみると、水分の少ないカリカリした食感のクッキーで、入っていたのはオレンジ風味のチョコレー
      ト・・・っぽいもの
。甘さはかなりキツイですが、意外と爽やかで食べ易いなあ。甘いものが苦手な私でさえも、
      もう一つ、もう一つと、ぽんぽん口に入れてしまうのが不思議でした。

       さて、いよいよメインのWHITE TUNAです。『ALBACORE』『IN WATER』とあるので、どうやらびんちょ
      うまぐろの水煮
の様ですね。パッケージには本製品を使ったと思われるサラダの写真がデザインされていま
      すが、雰囲気的にはちょい高めの猫のエサみたい(笑)。
       開封してみると、まんまマグロの水煮フレークが出てきました。そしてむわっと漂ってくる、あからさまなネコ
      缶の香り・・・
。なんというか、「うっ」と来る生臭さです。苦手な人だとちょっとキツイだろうなあ、これ。

       恐る恐るひと口。ん?最初に感じた生臭さは殆ど無く、意外と普通に食べる事が出来ますよ。かなり細かく
      ほぐしてあるので、噛み締め味というか食べ応えが薄いのが少し物足りませんが、拍子抜けするぐらいにごく
      普通のツナ水煮
であります。
       しかしこれがメインか・・・。微妙に期待外れというか、料理じゃなくてただの食材だろこれ・・・と思っていたら、
      マヨネーズがついていた事を忘れていました。そうそう、これでツナマヨにしろ、って事ですよね。

       さっそくFAT FREE MAYONNAISEを開封してひと口舐めてみますが、うーん・・・なんか変な味。どこが
      どう変なのかは上手く言えませんが、本来マヨネーズが持つ酸味、甘味、旨味のそれぞれが微妙にズレてい
      る
と言うか、分離しないまま古くなってしまったマヨネーズって、こんな味なのかな?決して不味くはありません
      が、変なクセが気になります。

       もっともこのMREは現時点で賞味期限を3年過ぎたシロモノなので、仕方ない事かもなあ。これがこのマヨ
      ネーズの実力とは思わない方がよさそう
ですね。長年戦闘糧食を食べていると、賞味期限の感覚がマヒして
      しまうのが困りもの。期限を3年オーバーのマヨネーズなんて、普通は口に入れないでしょうに(笑)。
       そのマヨネーズで和えたツナを、TORTILLASで包んで食べてみます。当然このトルティーヤも賞味期限を
      3年超過したブツですが、それでもちゃんとしっとりしているのですから、考えてみれば恐ろしい話だなあ。一
      体どういう方法でもたせているんだろう。

       で、そのツナマヨトルティーヤですが、おお、これは美味い!なんというか、マヨネーズトルティーヤがそれ
      ぞれ持っている酸味のクセをお互いに打ち消し合い、無個性だったツナがその隙を突いていきなり自己主張
      を始めた感じ。これぞ組み合わせの妙!ってやつですね。ばらばらな形をした3つの欠片を組み合わせたら
      キレイな正三角形
が出来た様な、思わず『おおっ!』と驚きの声を上げてしまいそうなハーモニーであります。

       試しにツナマヨとトルティーヤを別々に食べてみましたが、それぞれが持つ変なクセと酸味が気になってしま
      い、正直どちらも
       「うーん・・・あんまり・・・」
       といった印象。しかしこのツナマヨをトルティーヤで包んで食べると、
       「ああ、そうそう、これだよこれ!」
       となるのが面白いなあ。
       ちなみに今回のアクセサリーパケットには、シーズニングブレンドの小袋が入っていました。これはツナマヨ
      に使うんだろうなあ。まさかストロベリーシェイクに混ぜるとも思えませんし。

       試しにトルティーヤに包まれたツナマヨに少し混ぜてみると、ほほう、これもなかなか。甘酸っぱくやや子供
      向けっぽかったツナマヨが急に大人の味に化けた感じで、ビールにも合いそう。これなら最初から入れた方
      が良かった
ですが、ツナの1/3はそのままで、もう1/3はマヨネーズを混ぜて、残り1/3はシーズニング
      を加えて楽しむのが、お得な食べ方だと思いました。
       最後は、TOFFEE CHOCOLATE FLAVORED。トフィーとはバター、小麦粉、砂糖を練って焼き上げた
      甘いお菓子で、まあキャラメルみたいなものですね。食材としてクッキーに混ぜて焼いたりするそうです。意外
      な事に甘さはごく控えめで、チョコレートというよりもさっぱりした黒糖に近い味わい。なぜか八丁味噌っぽい
      風味
もあり、不思議な味だなあ。なかなか面白い一品でした。

       いやあ、甘かったり辛かったり重かったり珍妙だったりと、どの食品もそれぞれが強くかなり個性派揃い
      
なメニューでありました。そんな中で小隊長を任された士官学校を出たばかりの頼りなさそうなツナ君は、果
      たして大丈夫なのか?という不安がありましたが、見た目とは裏腹に意外なしぶとさ引き出しの多さコミュ
      ニケーション能力
帳尻合わせの巧みさを発揮してくれました。
       マヨネーズとシーズニングの好アシストもあったとはいえ、デコボコながらもこの小隊はなんとかなるかな?
      最初は露骨に馬鹿にしていたバスケス上等兵も、
       「フン、まあこれからお坊ちゃんのお手並み拝見といくかね」
       ぐらいの評価はしてくれた気がしました。
       ただ、どれもこれも空港の売店で買い揃えた様なスナック菓子風だったせいか、個人的にちゃんとした食事
      をした気にならなかった
のが、少し微妙なところ。日本食で言えば、お煎餅、ボンタン飴、かりんとう、酢昆布、
      羊羹、お茶
でお腹を満たした様な感じでしょうか。そこそこ美味しかったし必要なカロリーは摂れたけど、食事
      としてはなんか違う・・・
そんな印象でした。

       とは言え、常にトライ&エラーを繰り返しつつ、毎年のように進化を続ける米軍のMREです。いつの日か、
      このメニューこそが新世代MREのエポックメイキング的な存在だった・・・と思える日が来るかもしれません。
      美味い不味いよりも、面白いか面白くないかで評価すべきメニューだったと思います。
       総合評価では戦闘糧食の頂点に君臨する、と言っても過言ではないMREですが、今回はまた別の面での
      底力
を見せつけてくれた試食でありました。




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