月見そば・野菜炊き合わせ
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前回から2ヶ月ぶりの日本海食堂。午前中の予定が立て込んだ為、今日は珍しくお昼過ぎの来訪です。駐車
場には結構な数の車が停まっていますが、店内は割と空いていました。座敷席に5~6人ぐらいの建築作業員
風の人がいたので、あちこちの現場からここに集合してお昼を楽しんでいる模様。
さて注文ですが、今日は最初から月見そばと決めて来ました。苦手な生卵がのった蕎麦であります。以前月
見うどんを食べに来た時は心の動揺を抑える事が出来ず、せっかく早めに店内に入れてくれたご主人さんの心
配りを台無しにする失態を犯してしまった私ですが、日本海食堂全品制覇の道のりで避けては通れない月見そ
ば。月見うどんの反省を踏まえ、本日は明鏡止水、行雲流水の心構えで臨むつもりです。
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ただ、月見そばだけでは辛すぎるので、プラス一品は気分が高揚するアッパー系のおかずを合わせたいとこ
ろ。とは言え今夜はちょっとご馳走なので、遅い昼食をあまり充実させてしまうのは勿体ないなあ・・・ここ
はあえて地味系のおかずを合わせるべきでしょう。
という訳で数ある一品ものの中から、野菜炊き合わせをチョイス。ポットのお茶を入れて、いつもの席に着
きます。ここまでの流れはまずまずですね。苦手な生卵と対決せねばならない動揺からの粗相も狼狽もなかっ
た筈。大丈夫、俺は大丈夫・・・と俯きながら自分に言い聞かせていると、あっというまに月見そばと野菜炊
き合わせが到着。え?もう来たの?ちょっと早くない(泣)?
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考えてみれば昼のピークタイムが終了したタイミングで入った月見そば。そりゃすぐに出来ますよね・・・。
正直まだ心の準備が出来ていない状態ですが、もたもたしているとせっかくの蕎麦が伸びてしまいます。立ち
合いの呼吸が全然合っていないのに行司式守伊之助に無理矢理のこったのこったされてしまったどんくさい相
撲取りの様な気分を味わいつつ、意を決して月見そばとがっぷり四つに組み合います。
あれっ?この蕎麦、あんまり熱々じゃないぞ。以前の月見うどんはもう熱々だったのに、今回はやや控えめ
な熱さ。出汁を一口すすってみると、4月半ばの昼下がりの蕎麦としてはベストの温度ですが、冷たい生卵を
抱えるには少し熱さが足りない気が・・・。
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いや、普通の人ならこれで十分なんでしょうけど、生卵が苦手な私にとっては決定的に熱さが足りません。
まるで来てくれる約束だった援軍が寝坊して来なかった様な気分というか、ちょっとこれヤバくない?と暗雲
漂う状況であります。
しかしここで弱気な顔を見せては、生卵にさらにつけこまれるだけ。まったく堪えていない余裕の表情を取
り繕いつつ、どんぶりの中の蕎麦を箸でひっくり返して生卵の上へ。蕎麦と出汁の熱さで生卵を蒸しあげてし
まう戦術に出ます。
透明ぷるぷるの生卵が、四方八方から襲い掛かる熱でどんどん白く固まっていく様子を脳内でイメージしつ
つ、改めて出汁をひとすすり。北陸の醤油らしいあっさり甘口仕立ての、実にほっとする味わいです。やっぱ
りこれぐらい甘口の方が、蕎麦によく合うなあ。
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しっかり角が立った蕎麦には心地よい硬さがあり、豪放磊落なうどんとは一味違ったクールな個性。純白の
うどんに比べて落ち着いた色合いの蕎麦ですが、それだけに富山名物紅白ぐるぐるかまぼこが映えますね。個
人的には昆布を使った方のぐるぐるかまぼこが好みですが、やっぱりこの柔らかさと華やかな色合いがいいな
あ。薬味の白ネギの爽やかな芳香との相性もよく、なんともしみじみとした味わいになっています。
さて、いよいよ生卵との対決。土塁の如く山盛りにした蕎麦を恐る恐る解きほぐしていくと、果たして全然
火が通っていない透明な生卵が出て来ました。さすがにこのぬるめの出汁で冷たい生卵に火を通そうというの
は無理があったか。
とは言え、これはあくまでも生卵イヤーンな私のワガママな感想。ご主人さんはこの時期のこの気温での月
見そばはこれがベスト!という信念をもって作ってくれた訳です。ならば挑戦者たる私は、それを真正面から
受けて立たねばなるまい・・・。
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まずは改めて蕎麦を丼中央に寄せ集め、生卵を端の方に移動させて黄身を潰します。これで生卵の溶けた混
沌たる海域と、出汁そのままの清澄な海域に分ける事ができました。
そして数本の蕎麦を潰した生卵に浸し、恐る恐るひと口。うーん、不思議な事に溶き卵に浸した方が、出汁
の塩気を強く感じますね。黄身のまろやかさが出汁の塩気を引き立てているんでしょうか。それにしても、濃
厚な黄身が意外と簡単に出汁に馴染んでしまうのに対し、淡白な白身は一向に周囲と馴染もうとしないのが不
思議。箸で突こうがかき混ぜようが出汁の中に決して溶け込もうとせず、周囲の熱を奪いながらぷよぷよと漂
う白身はまるでクラゲの様な奴であります。
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もう一品の野菜炊き合わせですが、大根、フキ、昆布、あとこの四角いのは高野豆腐ですね。大根とフキは
ごく薄くあっさりと、高野豆腐は甘味を効かせて煮しめてあります。程よく歯ごたえを残した昆布もいい塩梅
で、見た目は地味ながらも実に美味しい一品になっています。
柔らかく炊けた大根は角をきちんと面取りしてあり、細かく丁寧な仕事だなあ。フキはかなり柔らかめの炊
きあがり。個人的にはスハスハ感が残る程度にさっと炊いた歯ごたえのあるフキが好みですが、これは歯や胃
腸が弱った地域のお年寄り向けの配慮なのでしょう。
ああ、この炊き合わせで熱燗を飲めたら最高だなあ・・・こういうもので飲みたくなった自分のおっさん臭
さに、若干の寒気を覚えますが(笑)。
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月見そば600円、野菜炊き合わせ400円の計1000円を払って店を出ます。これで月見うどん&月見
そばという、メニュー看板の苦手2大巨頭をなんとか消化することができました。月見うどんクリアでややハ
ードルが下がっていたとはいえ、やっぱり気が重かったんですよね、月見そばとの対決は。
2014年末から始まった日本海食堂全品制覇の旅も、なんだかんだで残りメニューあと僅かとなって参り
ました。なんというか、全国大会(何のだよ)準々決勝あたりで宿命のライバルを倒した気分です。次の来訪
は恐らく6月頃。まだ熱い麺類はいけるかもしれませんが、そろそろ親子丼かな。いや、謎の天体オウムアム
アの如き朝定食もそろそろいっとこうかな・・・と思いつつ、日本海食堂を後にしました。
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