天ぷらうどん・カレイの煮もの
2015.11.08
1140、アケの客として入店。ここのところ他のお客さんと一緒の入店が続いたので、開店したばかりのしん
とした店内が妙に新鮮だなあ。初めてこの日本海食堂を訪れたあの雪の日が、随分昔の事の様に思えます。
本日のお目当ては天ぷらうどん。あと、ショーケースから何か一品・・・よし、このカレイの煮ものいっときまし
ょう。セルフサービスのお茶を淹れ、いつもの席に落ち着きます。
ふと見ると、座敷の壁一面に巨大な山と森、あと湖の絵が描かれています。古く赤茶けた色合いですが、ど
うも立山辺りの風景とはちょっと違う様な・・・。なんだか北米の山奥みたいな印象ですが、なんでこんな絵が。
描かれた当時は相当ちぐはぐだった気がしますが、今こうして見ると妙にしっくり来るのが不思議です。
そんな事を考えていると、すぐに天ぷらうどんとカレイの煮ものが到着。うどん出汁は透明感のあるきつね色
ですが、やや醤油が濃い感じ。中央には大きなエビ天がどんと乗っていて、紅白のぐるぐるかまぼこも富山ら
しさを演出しています。
まずは出汁をひとすすり。ほほう、鰹節と昆布のあっさりした関西風出汁ですが、バランスの良い甘辛加減
からぐっと甘味に振っているこの塩梅は、やはり北陸の醤油。なるほど、魚が美味しいところの味です。
うどんの上に鎮座したエビ天は、ぷくぷくと小さな泡を噴きつつその豊満なボディに出汁をしみ込ませている
最中。からりと揚がった衣への出汁の浸入を必死に拒みつつも、
「ああっ、もうこのまま出汁さんにめちゃくちゃにされてもいい・・・」
とでも言ってそうな様子が悩ましいですね。
うどんは太く角ばったタイプですが、讃岐うどん風の強いコシではなく、ふんわりと優しい口当たり。自身のコ
シを主張するよりも食べ手の胃腸へのいたわりを優先させた、これから気温が下がるにつれてますます美味
しくなりそうなホッとするうどんです。
ここで出汁に程良く緩んだコロモを一口。ああ、このさっぱりとした揚げ油のコク。天ぷらうどんの主役がエビ
天である事に疑問はありませんが、エビの旨味を吸いつつ出汁の旨味までしみ込ませたコロモこそが陰の主
役でしょう。迷い戸惑い一切なしのド直球の天ぷらうどんの真髄を追求しつつ、甘味の強い独特の醤油で富山
県という地域性をもしっかりと打ちだした、珠玉の天ぷらうどんでありました。
一方、カレイの煮もの。こちらも甘味が勝ちながらも、カレイの淡白な旨味を損ねないごくあっさりした味つけ
です。この味つけを再現しようとしても、大阪の醤油では難しいだろうなあ。やはり甘さの立った北陸の醤油が
あってこそ。いいなあ、こういう地元ならではの味つけって。
カレイ独特の白く緻密な身肉を煮汁にひたして食べると、ああ、やっぱりこれは白ご飯が欲しくなる・・・。エン
ガワに並んだ細くてぷりぷりした筋肉も、一つ残さず割り箸の角でこそげとって堪能します。全体としては淡白
な個性なのに、ここだけしっかりと脂が乗った味わいなのが面白いなあ。
同じ煮汁で炊いてあるのは白ネギ、あと臭みとりのショウガ。ぬるりつるりとした白ネギは滑らかな甘さを誇
りつつも独特の香気を残し、ショウガもしっかりとカレイの出汁を吸って辛味をアクセントにしています。自分の
味ではない余所の美味しい煮魚って、ほんと幸せな気分になれますね。
食べている最中に、2人連れのお客さんが入って来ました。席に着くなりメニューも見ずに、
「鍋焼きうどん、2つ!」
そうそう、ここの鍋焼きうどん美味しいんですよね。きっと今日は鍋焼きうどんを食べるぞ!と、家を出る時
から楽しみにしていたんだろうなあ。
続いて入って来た老夫婦。90近いと思われるオジイチャンは壁のメニューをひと睨みしたのちに、
「カツ丼!」
と、選手宣誓の様に力強く注文。おお、そのお歳でカツ丼行きますか!やっぱり北陸のオジイチャンはパワ
ーあるなあ。
それにしてもこの、出汁に程良くとろけたコロモの味わい・・・たまらないものがありますね。仮に某国の武装
ゲリラがこの日本海食堂を占拠し、私の眉間に小銃を突きつけつつ天ぷらうどんからエビを引っこ抜いたとし
たら、目に真珠の様な涙を浮かべつつ泣き寝入りするしかありませんが、もしコロモの方を取り上げられてし
まったら・・・。
大魔神の如き形相でテーブルを蹴倒して立ちあがった私は、銃撃を浴びせる武装ゲリラ達をバッタバッタと
なぎ倒し、抑えきれない怒りのままにバタフライで海を渡り某国へと乗り込んで中枢部を壊滅に追いやり、空
港にて出迎えた安倍首相や噂のとらんぷちゃんをはじめとした各国VIP達に囲まれて握手攻めにあうでしょう。
さらに現地での俺の暴れん坊ぶりは俺主演でハリウッドにて映画化されて全米中を泣かせまくり、その年の
アカデミー賞を総ナメにしつつ巨万の富を築いた俺は、航空自衛隊のF-15戦闘機の護衛つきのプライベー
トジェットで週末ごとに富山空港に降り立っては日本海食堂に通い詰め、たまたま食べに来ていた江頭2:50
のピーピーピーするぞ!で白衣を着ていた2007年頃の早川亜希さんに
「Kさんステキ!抱いて!」
と飛びつかれてチューされるも、
「ノーッ!ミーは今、神聖な日本海食堂でのお食事の最中よ!邪魔しないでほしいね(怒)!」
と何故か空手バカ一代のグレート東郷調に叫びつつ、割り箸でつまんだ紅白ぐるぐるかまぼこで早川亜希さ
んにビビビビビと往復ビンタをかまして・・・誰か俺を止めろ!!
天ぷらうどん800円、カレイ煮もの500円の計1300円を払って日本海食堂を出ます。そう言えば以前平日
に来た時は、殆どのお客さんがランチを注文していたっけ。メニュー表には記載されていませんが、日替わり
ランチもあったんだよなあ。となると、また平日に来る機会を作らねば・・・などと考えつつ、日本海食堂を後に
しました。
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