メインのレトルトを加熱剤にセットして、まずは粉末飲料のBEVERAGE BASE RASPBERRYから作り
ます。スティックシュガー大の小さなパッケージを開封し、中の粉末を20オンス(約600cc)の冷水で溶かす
と、落ち着いたワインレッドの飲み物が出来上がり。
ひと口飲んでみると、うん、あっさりさっぱりで飲みやすいですね。ラズベリー風味の粉末飲料は北欧諸国の
戦闘糧食ではお馴染みで、どれもなかなかのお味ですが、最もニセモノ臭くわざとらしい味のMREのものが
一番美味しい気がするのが不思議です。ああ、レーション舌ってこういう事なのか・・・。600ccと十分な量が
あるので、他の食品が少々アレなお味でも、口直しとして働いてくれそう。
続いてはCHIPOTLE SNACK BREAD。ほほう、長年頑固なまでに変化を拒み続けたスナックブレッド
にも、とうとう新メニューが現れたとは。あの押入れの奥に長期間しまい込んだままの布団のニオイと言うか、
湿っぽくも埃っぽい独特の味わいが慣れるとヤミツキなのですが、果たして新顔はどんな味なんでしょう。
ちなみにチポートレイとは、完熟唐辛子を乾燥させて燻したメキシコの香辛料で、現地では様々な料理に使
用されているそうです。日本で言えば鰹節みたいな存在かな?しかしそのチポートレイをスナックブレッドに入
れて来るとはなあ。無印のスナックブレッドに長年親しんだ身としては、ちょっとその味が想像できないのです
が、とりあえず一口。
ううっ、何じゃこれは・・・。得体のしれない香辛料の香りに、チポートレイ独特の辛味と不思議な酸味が複雑
怪奇に混じり合い、思わず呼吸が止まりそうな味わいになっています。特殊過ぎてちょっと表現に困る味です
が、誤解を承知でひとことで言えば、奈良公園で売っている鹿せんべいをメキシコ人に作らせたらこうなる・・・
かもしれません。
慌ててパッケージの成分表示を見てみると、通常の小麦や砂糖、塩の他に、スパイス、乾燥タマネギ、乾燥
ベルペッパー(これがチポートレイ?)、乾燥ニンニク、スモークフレーバー、パプリカエキス等が入っている模
様。スパイスについては個別に記載されていないので種類までは分かりませんが、断面にはキャラウェイシー
ドっぽいものが見えるなあ。
他にもいろいろ細かい切れっぱしが入っていますが、こうして見るとなんだか中に虫が湧いているみたいで、
著しく食欲を減退させるビジュアルであります。正直言ってかなりマズイですし、あの素朴で美味しかったスナ
ックブレッドがこんな事になるなんて・・・と、思わずはらはらと落涙しそうになりました。ううう、一体何があった
んだスナックブレッド!
とは言え、無印のスナックブレッドもあれはあれで、食べる側に忍耐と慣れを要求するかなり異質なシロモノ
であったことは確か。まっさらな状態の舌で、無印スナックブレッドとチポートレイ入りを食べ比べたら・・・どち
らが美味しいとはなかなか言いきれない気がしますね。
内心の動揺が収まらない中、CHEESE SPREADを開封。こちらはいつもと全く変わらない、塩味の効い
たチェダー風味のチーズスプレッドです。そうか、君は変わらないでいてくれたか・・・。チーズスプレッド君もス
ナックブレッドとは長年いいコンビだっただけに、相棒のあまりの豹変ぶりに戸惑いを隠せない模様です。
次はBAKED SNACK CRACKERS。開封すると中からは、切手を一回り小さくしたサイズの四角いスナ
ック菓子がざらざらと出て参りました。それと同時に、なにこの変なニオイ・・・。明らかに食べもののそれでは
ない、まるで出来たてのプラスチック樹脂の様な特殊な素材臭が鼻をつきます。パッケージにはホットアンドス
パイシーチェダーフレーバーとありますが、これ、明らかに食べてはいけないモノのニオイなんですけど・・・。
なんというか、
「この先へ行ってはいかん!行けば貴様たちも呪われるぞ!」
と、ボロボロの服を着て目が完全にイッてしまってる怪しい爺さんに、山奥の廃村に通じる山道の入り口に
て通せんぼされている様な気分。私ももういい加減分別があってしかるべき年齢のオッサンではありますが、
ここはホラー映画の定石に則って、彼女の前でちょっとイキがってみたいだけの思慮の足りない若者の気分
になり、脳内の怪しい爺さんが止めるのも聞かずにひと口食べてみましょう(笑)。
ううう、なんじゃこりゃ・・・。石油製品の様な香りとともに、かなりヤバい酸っぱさが口の中いっぱいに広がり
ます。これ、本当に食べ物なのか?チェダーチーズというよりも、腐ったサワークリームと生ゴムを混ぜた様
な風味です。イキがった若者になりきれないチキンな私は、ここであえなくギブアップ。残りはゴミ箱に捨ててし
まいました。なんだったんだこのスナックは・・・。みんな!脳内爺さんの言う事は聞いた方がいいぞ(泣)!
とは言えこのMRE、賞味期限を3年ほど過ぎているので、これがこのスナックの実力とは思わない方がい
いでしょう。期限内のものならもっと美味しく頂けたかも。
一欠けらしか食べていないのにかなりムカムカする胃をラズベリードリンクでなだめつつ、すっかり温まった
メインのSPAGHETTI WITH MEAT SAUCEを開封。以前試食した時と全く同じ、優しく元気な甘酸っぱ
さがとても美味しいミートソースにホッとさせられます。
スパゲティそのものは2cm程のぶつ切りですが、パチンコ玉よりも少し大きいサイズの牛肉が沢山入って
いて、見た目以上に食べ応えがありますね。以前のミートソースに比べてやや甘味が強くなった気がしますが、
やっぱりMREのトマトソース味はハズレ知らず。
そうそう、途中でハラペーニョソースを足してみましょう。うーん・・・合う様な合わない様な・・・。ハラペーニョ
ソースの青臭さとトマトソースの甘さが、今一つしっくり来ない感じ。決して悪くはありませんが、これなら無くて
も別にいいかな・・・という感じでした。
最後のシメは、恐らくデザートと思われるCHERRY BLUEBERRY COBBLER。チェリーとブルーベリー
は分かりますが、コブラって一体・・・?今日のこれまでの流れを見る限り、知らないまま食べるのは極めて危
険な気がしたのでちょっと調べてみましたが、どうやらワイン、果物、砂糖などで作った飲み物という意味だそ
うです。
ただ、恐ろしい事に金玉という意味もあるらしく、下手に調べてしまったばかりに余計に不安が増すという悲
惨な負のスパイラルに陥ってしまいました。チェリー!ブルーベリー!きんたま!(下品ですみません)これか
ら一体何を食べなきゃいけないんだ俺(涙)。
半泣きになってパッケージを開封してみると、飲み物と言うよりもどろどろになった果実のシロップ煮みたい
なものが出てきました。アメリカンチェリーっぽいエグミのある甘酸っぱさは、これはこれで悪くないですが、な
んというかこの・・・お汁粉みたいな味?これってアメリカンチェリー味のお汁粉なんじゃないの?
成分表示を見ると、大豆油の他にpartially hydrogenated soybean(大豆と水の化合物?)なるものが
入っている模様です。よく分かりませんが、これがお汁粉っぽさの原因かな?
そしてこの、ところどころに見え隠れしている白い塊は一体?まさかこれが金玉?(重ね重ね下品ですみま
せん)恐る恐る食べてみると、んんん~、脂肪感のないバターの塊?なんなんだこれは一体・・・。
味そのものは悪くありませんでしたが、何とも不可解というか最後まで安心して食べる事が出来なかったと
いうか、頭の中が終始『?』で一杯になった一品でありました。
いやはや、メインのスパゲティーこそ安心の味わいでしたが、それ以外の食品にひたすら振り回された感の
ある試食でしたね。MREは一食あたり1050~1150kcalほどのエネルギーがありますが、これを食べる為
に1500kcalぐらい消費してしまった様な、本末転倒な疲労感だけが残りました。
それにしてもスナックブレッドの変わりっぷりには心が痛みました。なんというか、東京の大学に進学したユ
リッペが、何故かケバケバのギャル風になって夏休みに帰省して来たのを目の当たりにしてしまい、思わず
竿を握りしめたまま(釣りに使う方ですよ)呆然と立ち尽くす釣りキチ三平・・・の様な気分であります。
「ちょっともう(怒)、お互いガキじゃないんだしぃー、ユリッペとか気易く呼ばないでくれる?ウザッ(ペッ)」
「な、なしてそんただ事いうだユリッペ!以前みたいにケッヒヒヒヒって笑ってくれろ!(泣)」
全24メニューを誇る2008年度版MREの試食も、いよいよ終盤に差しかかりましたが、まさかここに来て
こんなに切なくやるせない気分にさせられるメニューに遭遇するとは・・・。スナックブレッドが変わってしまった
のか、それとも俺が変われなかったのか・・・と、うつむきながら暗い目で呟いてしまった試食でありました。
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