今回のレトルトは2つとも温めた方が美味しそうなので、ホットビバレージバッグの出番はなさそうです。レトルト2つは
加熱剤の袋に入らないので、クラムチャウダーと加熱剤を入れた袋の外にポークリブを当てて、温める事に。水を入れ
た途端に発熱体はすぐに反応を開始し、あっという間に素手では触れないほどの高温になりました。
いやー、期限内(検品後3年)にもかかわらずすっかり劣化してしまい、ウンともスンとも言わない加熱剤を沢山見て来
ましたが、パッケージを2重にする事で、ここまで発熱剤のコンディションが劇的に向上するものなんですね。元々その
機能性においては他国戦闘糧食の追随を許さない米軍MREですが、また一歩大きく前進した様子は見ていて非常に
頼もしいなあ。
さて、その間にまずは飲み物から作ります。粉末ドリンクはLEMON-LIME。12オンス(約330ml)の水で溶かすと、
まさに目に突き刺さるような蛍光グリーンの液体が出来上がりました。あまりの化学薬品っぽさに目眩がしますが、こ
のあたりの感覚は実にアメリカだなあ…。
しかしこのレモンライム味がなかなか爽やかで、さっぱりと甘酸っぱくて美味しいんですよね。味はレモンライムと言う
よりも、むしろキウイやスターフルーツに近く、冷水で作るとちょっと馬鹿に出来ない味であります。ゴクゴクと飲みたくな
りますが、MREの事ですからこの後どんなメインを出して来るか分かったものではありません。万が一…と言うより、万
が五千ぐらいの確率でお口直しが必要と思われるので、取っておいた方がいいですね。
大きなアルミパックはTORTILLAS。トルティーヤとはタコスの生地としてよく使われる、トウモロコシ粉や小麦粉を使
ったクレープ状の生地です。いやー、こんなものモノまで戦闘糧食として採用するとは驚きです。もはや定番となりつつ
あるクラッカーやスナックブレッドは結構好きなのですが、トルティーヤまで出てくるとは。パッケージからは、直径16p
ほどの丸いトルティーヤを二つに折り畳んだものが2枚、ほんのりとした湿気を保った状態で出て来ました。
さて、そろそろレトルトが温まった頃かな…と触ってみると、おお!先程まで室温だったレトルトがアツアツになってま
す!スゲー!ここまであからさまにやる気まんまんの加熱剤に出会ったのは初めてなので、ちょっと感動です。リビドー
だけで行動している目覚めたて男子中学生の様な抑えの効かなさに一抹の不安も感じますが、とりあえずよくやった!
見事な仕事っぷりと言えるでしょう。
まずはCLAM CHOWDERを、火傷に気を付けながら開封です。んん〜、何だこりゃ。とてもスープとは言えない様
な、真っ白い粘液がドロドロもったりと落ちて来ました。とりあえず一口。
ん?見た目はちょっと引かざるを得ないものがありますが、結構美味しいですよ、これ。しっかりとした胡椒の風味が
クラムチャウダー独特の潮の香りを引き立てていて、なかなかのお味になっています。
しかしこれ、スープと言うよりも煮ものですね。具は刻んだ二枚貝とジャガイモ、セロリ。タマネギの風味も感じられま
すが、完全に煮溶けてしまったようで姿かたちは見当たりません。所謂スープっぽいものを想像しているとかなり面喰ら
いますが、焼く前のシーフードグラタンからチーズを抜いたらこんな感じかな?貝は北寄貝のような食感で、なかなかジ
ューシーです。
気を良くして2つ目のレトルトPORK RIB,BORNLESS,IMITATIONを開封。こちらもすっかりアツアツになってい
て、素手で触ると火傷しそう。
中からは、四角く平べったい固めのハンバーグの様なものが出て来ました。醤油を焦がした様な香りも漂い、これも
かなり期待できそうですね。
おお、これも美味い!炭火で燻した様なスモーキーフレイバー、香辛料の刺激的な香り、そして何と言うのでしょうか
これ、甘口の醤油にラー油をたらしたような、白ご飯とすごく相性が良さそうなしっかりした味が堪りません。
歯触りは成形肉らしくかなりみっしりとしていて、柔らかめのサラミの様な食感です。ハンバーグよりも遥かに固く締ま
っていて、いかにも肉を喰らっている!という満足感があります。
ここでBBQソースがあった事を思い出しました。以前別のメニューで食べた時は、干しプルーンを裏ごしして醤油を
混ぜた様な不気味な風味だったのですが、果たしてこれと合うかなあ。やや怯みつつ開封して一口なめてみると、ん?
以前のBBQソースとちょっと違いますね。甘酸っぱさを強調したとんかつソースの様な味わいで、シンプルでストレート
ながらも奥行きを感じる味になっています。
試しにポークリブに乗せて食べてみると、おお、これはよく合っています。スパイス醤油の様な刺激的な味わいに甘酸
っぱい丸みと優しさが加わり、ぐっと複雑な風味になったのが素晴らしい。
ここで先程のトルティーヤにポークリブを一欠のせて、タコス風に折り畳んで食べてみます。ほほう、これはなかなか。
このメインにトルティーヤを合わせた意図がよくわかりますね。トルティーヤに染みたポークリブの肉汁が、実にイイ感
じであります。
今度はBBQソース付きのポークリブをトルティーヤで巻いてみましょう。おお、みっしりとしたポークリブとややパサつ
いたトルティーヤの間を、粘度の高いBBQソースが巧みに繋ぎとめ、先程よりも更に味の融合が深まった感じです。い
やこれ、本当に美味いですよ。
さらに今度は、ポークリブ+BBQソース+チーズスプレッド。流石に3つも乗せると半割のトルティーヤで包むのに苦
労しますが、これがもう驚きの美味さ。甘!辛!酸!の三拍子そろった風味が絶品で、戦闘糧食であると言う事を一
瞬忘れそうになりますね、これ。ネタとは言え、今まで色々とバカにして済まなかった…と、MREにお詫びしたい気分
になってしまいました(笑)。
最後はナッツレーズンミックス。開封すると文字通りナッツとレーズンがザラザラと出て来ましたが、よく見るとM&M
っぽい粒チョコも混じっています。ナッツはピーナッツ、アーモンド、クルミ、ヘイゼルナッツ。それぞれに固く締まった植
物性脂肪の旨みがありますが、どれも微妙にレーズンの香りが染みているのが意外と合いますね。チョコレートとの相
性もよろしく、栄養価や保存性を考えると実に戦闘糧食向けのおやつと言えるでしょう。
いやー、実に満足度の高いメニューでした。ポークリブとBBQソース、トルティーヤ、チーズスプレッドの見事な連携
プレーには圧倒される思いでしたね。個人の能力もそれぞれ素晴らしいものがありますが、組み合わせる事でその実
力が2倍にも3倍にもなる、と言う事を改めて思い知らされる、極めて優秀なメニューだと言えるでしょう。
そしてこの、自分で包んで食べる楽しさという点において、クラッカーやスナックブレッドではとても追いつかない食の
快楽をも味わえるところがトルティーヤのいい所です。栄養価や味ももちろん大事な要素ですが、こういったところも含
めての食文化であり、戦闘糧食なのだと思います。いやはや流石アメリカ軍、と言わざるを得ませんでした。
こうなると我が日本国の自衛隊も負ける訳にはいきませんが、日本食の何で対抗すればいいんだろう…あ、アレで
す!我々には手巻き寿司があるではないですか!自衛隊謹製の戦闘手巻き寿司の開発が待たれま
すね。
ただ、この傑作メニューにあえて一言だけケチをつけさせて頂くとすれば、やっぱり生野菜が欲しいんですよねえ。B
BQソースとチーズスプレッドつきのポークリブに、あとレタスかトマトでも入れば、名実ともに歴代最強のMREとなる事
は間違いないでしょう。米軍には、常温で3年間の保存が可能な戦闘生野菜の開発に取り掛かって貰いたいものです。
我ながら一休さんに出てくる将軍様を彷彿とさせる無理難題ぶりですが、MREはやれば出来る子!と、固く固
く信じております(笑)。
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