オムライス・昆布巻き
2016.07.03
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さて、前回から約2ヶ月ぶりの日本海食堂。午前の予定が押して昼過ぎの来訪となりましたが、今日はオム
ライスを注文です。あともう一品、ショーケースの中から・・・よしこれ、昆布巻き、これいっときましょう。
妙な取り合わせですが、最近繊維質が足りてない気がしますし。
セルフサービスのお茶を入れ、いつもの席に着きます。普段はお昼前の開店と同時に飛び込む事が多いです
が、この昼下がりのしんとした日本海食堂の雰囲気も悪くありませんね。なんというか、古くて広い銭湯にま
っ昼間から一人で入っている気分。
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しばらくしてやってきたオムライスが、これ。うおお、なんというボリューム!小さいクッションぐらいあ
ります。いや、シワ一つなくぱちんぱちんに張り切ったこのオムライスは、むしろボディビルダーの上腕二頭
筋と言った方がイメージに合ってます。内包したチキンライスの爆発力をギリギリのところで押し止めている
様な、ものすごい膨張感。『巨人の星』の左門豊作とイメージが被ります。
その力こぶそのものの極太オムライスの上には、真っ赤なケチャップがたっぷり。そしてその頂点には、イ
カリングフライが鎮座しています。ケチャップの中に何か塊が混じっていますが、これは荒く潰したトマトか
な?という事は、まさか自家製のケチャップなの?
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とは言え、この店でオムライス以外にトマトソースを使いそうなメニューはチキンライスぐらいしか思い当
たらず、わずか2品の為にわざわざトマトソースを手作りするとも思えません。もしかして、日替わりランチ
でよく使っているのかな?とりあえず食べてみましょう。
まずはオムライスのドテっ腹に、ずぶりとスプーンをめり込ませます。目の前に立ちはだかる巨大な岩盤に
掘削工事を行うトンネル技師の気分。ごぞっと崩れ落ちて来た山肌・・・もといオムライスを口に入れると、
香ばしく焼かれた玉子焼きに甘酸っぱいケチャップが絡み、さらに熱々のチキンライスがなだれ込んで来まし
た。
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チキンライスはかなり具だくさんで、入っているのはピーマン、ニンジン、コーン、タマネギ。あと大振り
にカットされた鶏肉がゴロゴロです。たっぷりのケチャップで半ば練り上げられる様に炒められたチキンライ
スはねっちりもっちりの口当たりで、これぞまさにオムライス!としか言いようのない一品。パラパラのオム
ライスって、なんか味気ないですもんね。
それにしても、オムライスと言えばグリーンピースのイメージが強かったのですが、予想外にピーマンがよ
く合っています。超高温高湿度のチキンライスの中で炒め蒸しとなったピーマンは、その青臭さと日なた臭さ
をしっかりと立ち昇らせていて、まさに夏の太陽の恵みそのもの。
もしかしたらこれは、この季節だけはオムライスにもピーマンを使いたい!という店主さんの信念なのかも。
それぐらいの実力を感じますね、旬の時期のピーマンからは。このオムライスを知った後では、定番のグリー
ンピース入りオムライスが味気なく思えてしまうほどです。
ケチャップの中に入っていた小さな塊ですが、これがトマトじゃなくてなんとミニハンバーグでした!いや、
ハンバーグというよりも・・・これは鶏肉のつくねかな?どちらにしても嬉しいサプライズです。まるで自販
機のおつり受け取り口にて先人が取り忘れた100円玉を発見した様な、チープでささやかな幸せ感。
そしてそのオムライスの後方には小さなレタスの上にポテトサラダが盛られ、輪切りのキュウリとトマトが
肩を寄せ合うようにしていました。生野菜ならではの冷涼な瑞々しさが売りの筈ですが、巨大なオムライスが
放つ活火山の如き熱量には勝てる訳もなく、トマトもポテサラもほんのりと温まってしまっています。
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それにしてもこのオムライスの圧倒的なボリューム・・・。流石に途中から飽きが来ますね(笑)。という
訳で、卓上のウスターソースや醤油で味に変化をつけますが、ウスターソースが合うなあ。やっぱりオムライ
ス君の根っこになっているのは、古き良き洋食としてのスピリッツなのでしょう。
あとこの、流れ出たウスターソースが絡んだ福神漬けが妙に美味しい(笑)。日本生まれの漬物なのに、醤
油よりもウスターソースの方が合うのが不思議ですが、やはりこれはカレーライスの影響でしょうか。
生まれ育ちはまぎれもなく日本でも、名前の由来となった七福神はインド出身の神様。さらに普段から一緒
に仕事しているのは、インド生まれのイギリス育ちで洋食の定番として日本に定着したカレーライス・・・。
本人の望むと望まざるとに関わらず、これほど無軌道な人生を歩んでいる漬物もそうそうない気がしますが、
彼はその自らの在り方について何ら思い悩む様子を見せず、今日も誰かを引き立てる仕事を全うしています。
うーん、迷いがないって素晴らしい・・・。
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それにしてもオムライス、世間一般では子供が喜ぶメニューという立ち位置ですが、よくよく考えてみると
小さい頃に外でオムライスを食べた思い出が全くないんですよね、私。なんというか、外でオムライスを食べ
るという行為が猛烈にガキ臭いというか、こんなもんで喜ぶ俺だと思うなよ・・・という変な自意識を拗らせ
たクソ生意気な子供だったなあ、私って。
そんな私が40の坂をとうに超えた今になって、昭和の昔で時間が止まった様なこの日本海食堂でオムライ
スをパクついているとか、なんとも奇妙な気分。こんなの余所の店ではありえない・・・。そう言う意味では
私の中で最も日本海食堂らしいメニューが、このオムライスなのかもなあ。
あと、昆布巻きです。一本の昆布巻きを筒切りにしたものが盛られていて、きちっと帯を締めておすまし顔
のものがあれば、着物の裾を乱したはしたないものも。なんだか女子校の担任になった気分ですね(笑)。一
つ口に入れてみると、スーパーのお惣菜売り場によく並んでいるユルユル溶けかけのそれではなく、昆布の歯
応えをキッチリと残したところで止めてある絶妙な炊き上がり。ギュッと歯を押し返す様な昆布の食感が、実
にいい塩梅だなあ。
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レトロ洋食の代表格とも言えるオムライスに対して、和のお惣菜の基本とも言うべき昆布巻き。一見して合
わない様で、なかなか面白い取り合わせでしたよ。ただ、抱きしめた身欠きニシンの旨味をしっかり吸い込ん
だ甘辛昆布の味わいは、やはり白ご飯と組んでこそ最も輝くと言えるでしょう。うーん、白ご飯を追加したい!
しかし正直このどでかいオムライスを片付けるので精一杯で、ここから白ご飯の追加はさすがに無理があり
ます。でも、一口だけでもいいから食べたいなあ、この昆布巻きで白ご飯・・・。
豪華でハイカロリーなフレンチのコースを楽しんだのに、家に帰ったら無性にお茶漬けを食べたくなる様な
ものでしょうか。このまま洋の味わいで全てを終える事に抵抗を覚える程度には、私も日本のおっさんが板に
ついてきたという事でしょう。和という根っこからはどうしたって抜けだせない、自分の中の泥臭い土着性を
再認識させられた気分です。
自らのルーツにまるで捉われない、自由で器の大きな福神漬け君の様にはなれそうにないな・・・そんな自
分の限界を知らされた様な苦い笑いを噛みしめつつ、オムライス800円昆布巻き250円の計1050円を
払って日本海食堂を後にしました。
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