肉うどん・きゅうり漬物
2016.09.11
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1630、日本海食堂に到着。夜の部の開店時刻ですが、店内は真っ暗だなあ。時間通りに店が開かないの
はよくある事なので、雨上がりの駐車場をぶらぶら歩いて時間を潰します。しばらくして、1700に玄関が
開きました。
今日は生そばのつもりで来たのですが、うーん、着いてみるとそんな気分じゃないなあ。よし、今日はこれ、
肉うどん。あとショーケースの中から何か一品・・・なんとなくさっぱりと、きゅうりの漬物いっときましょ
うか。
時刻は17時過ぎ。外は明るいし、さすがにこの時間だとお客さんはまだ・・・と思っていましたが、私の
後から2人の現場作業員風が入ってきました。仕事を早めに切り上げたので、ちょっと一杯引っかけて帰るか
という雰囲気。
すぐに肉うどんときゅうり漬物がやってきました。やや濃いめの色合いの出汁の表面には、小さな油滴がキ
ラキラと散らばっています。うどんの上にはチリッと丸まった牛薄切り肉がたっぷりと盛られ、これは美味し
そうですよ。
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まずは出汁をひとすすり。北陸独特の甘みの強い醤油の風味が立った、美味しいうどん出汁です。しかし以
前食べた天ぷらうどんの出汁に比べると、若干塩味が勝っている気がするなあ。恐らく牛肉の煮汁も加えてあ
るんでしょう。
それにしてもこの牛肉の煮汁と出汁の味わい・・・たまらないものがありますね。牛肉らしい力強い旨味と
僅かな渋味があっさり出汁に強烈な過給機効果をもたらして、和風ラーメンスープの様なパワフルな味わいに
なっています。
トッピングの牛肉にはスライスしたタマネギ、あと青ネギの白いところも入っていますね。くたくたになる
まで煮込まれたタマネギが甘味を惜しげなく提供している一方で、牛肉はあくまでもさっと煮込むにとどまり、
しっかりした噛み締め味が残っているのが素晴らしい。とことん煮込んでとろとろになった牛肉も美味しいも
のですが、ここ日本海食堂のうどんはコシの強さよりも口当たりの優しさを重視した関西風やわらかうどんな
ので、食感のコントラストという意味でも牛肉の固めの噛み応えは残しておきたいところ。
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太めのうどんはあくまでもふわりと柔らかく、疲れた身も心も優しく癒してくれる感じ。カツオと昆布、牛
肉のダシを存分に吸い込んで純白の身をうっすら茶色く染めていますが、これは牛肉の煮汁を加えた出汁で軽
く煮込んであるのかな。茹でたうどんに出汁をかける方式も透明感があっていいですが、軽く煮込むのも一体
感が増していいですね。以前食べた天ぷらうどんではそれを感じなかったので、これは牛肉の旨味をうどんに
しっかりと馴染ませるための店主さんのひと工夫なのかも。
ふと思いつき、半分程食べ進んだところで一味唐辛子をぱらりとかけてみました。おお、どっしり重厚な出
汁に爽やかな辛さが加わって、味の輪郭がぎゅっと引き締まった感じ。これは最初からではなく、途中で味の
変化をつけるのに有効なアイテムです。
いやはや、このうっとりする様な出汁だけは一滴たりとも残したくないなあ。流石に40を越えると塩分摂
取量に気をつけねばなりませんが、この旨味の塊の如き出汁を残すことができようか・・・。
それにしても、さっと煮込んだだけなのにこれだけの牛肉の旨味が煮汁に染み出るものでしょうか。こう言
ってはなんですが、商売で出している一杯800円の肉うどんに、それほどいい牛肉を使えるとも思えないん
ですよね。
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これはもしかして、前日煮込んだ牛肉の煮汁をつぎ足しながら煮込んでいるのでは。煮魚の美味しいお店っ
て、必ずその店秘伝のかえし(何度も継ぎ足しながら煮返した濃厚な煮汁)があると聞きますし。それ故に、
牛肉に歯ごたえを残す為の短時間の煮込みでも、牛肉の旨味を十分に煮汁に乗せることが出来るのでしょう。
弱火でくつくつと煮込みながら、丁寧に丁寧にアクを掬い取り続ける店主さんの姿が瞼に浮かびます。まあこ
れはあくまでも私の想像に過ぎないので、いつか店主さんに尋ねてみたいなあ。
いやあ美味しかった!実にパワフルな肉うどんでありました。これを食べたら風邪なんて吹っ飛びそうで、
そういう意味ではこの店の傑作ともいえる鍋焼きうどんと双璧をなすメニューですね。
「今日は肉うどんにしようかな、いや、鍋焼きうどんも捨てがたいぞ・・・」
なんて風に風邪をひいた時ですら楽しめるのですから、日本海食堂の近くに住んでいる人が心の底から羨ま
しい・・・。
あとこの牛肉は、恐らく牛どんぶりのアタマの流用と思われますが、この牛肉がどっさり乗った牛どんぶり
はさぞかし美味しかろうなあ。出汁を経由せず直接ご飯に乗っているだけに、牛肉の旨味をさらにダイレクト
に味わえる筈。近いうちに是非食べてみたいですね。
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あと、きゅうりの漬物です。大ぶりにカットされたきゅうりは、まるで斧で割られた薪の様。一口齧ると軽
い甘辛醤油味の中に、しっかりとした塩気ときゅうりらしい爽やかな香りが感じられます。この甘みの強い醤
油はなるほど富山の味ですが、あらかじめ強めの塩漬けでその甘さを引き締めているのがいい感じ。
このきゅうりの漬物は、肉うどんよりも白ご飯に合わせた方が正解だっただろうなあ。蒸し暑い夏にこの漬
物と冷たい麦茶があれば、どんぶり飯がいくらでも入ってしまいそうな恐怖を覚えます(笑)。目を閉じて味
わっていると、扇風機の風、セミの鳴き声、そして風鈴の音色までもが聞こえてくる様な味・・・。
残念ながら若干旬を外したタイミングでの試食となりましたが、来年の夏は是非ともこれで白ご飯を食べた
いものだと思いつつ、日本海食堂を後にしました。
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