なめこ汁・めし・じゃがいも煮・鰯塩焼き

２０１８．０８．０５

　　　　　　　２ヶ月ぶりの日本海食堂は８月の炎天下、お昼過ぎの来店となりました。ここのところ連日の暑さにやられ
　　　　　　ていますし、そろそろスタミナ丼をいっとくかとほくそ笑みつつ入店するも、あいにく今日はないとの事。そ
　　　　　　うか、ある時とない時があるのか・・・正規のメニュー看板にはない裏メニューらしい話だなあ。またいつか
　　　　　　の機会を狙うとしましょう。
　　　　　　　さて、注文はどうしよう。今日は結構お腹が減っているので、軽く朝定食という感じでもないですし・・・
　　　　　　とりあえずこれ、なめこ汁いっときましょう。消化するタイミングが難しいメニューだったので、今日は他の
　　　　　　一品ものと組み合わせて定食屋スタイルでいく事にします。
　　　　　　　という訳で、なめこ汁とめしを注文。あとはショーケースの中に並ぶおかずの中から・・・あ、これ美味し
　　　　　　そうですよ。ジャガイモと豚バラ肉の煮込みかな？あと鰯の塩焼きを追加。品目多く栄養バランスもよく、ス
　　　　　　タミナ丼の代打に相応しい夏向き定食の出来上がりです。
　　　　　　　ポットの冷水を入れて、いつもの席に。先客はお昼休み中の現場作業員風が３名のみで、１３時過ぎの日本
　　　　　　海食堂はピークタイムが一段落したのんびりした雰囲気が漂っています。普段は開店直後に来る事が多いです
　　　　　　が、たまにはこんなのんびりした雰囲気も悪くない・・・と和んでいると、一品もの組み合わせ定食がやって
　　　　　　きました。ああ、このどんぶりご飯に蓋を乗せてある律義さが、日本海食堂だなあ。

　　　　　　　まずは今回のメインであるなめこ汁をひとすすり。粒子が荒く口当たりはさらりとした、塩味の強いいつも
　　　　　　の富山の味噌です。水面・・・いや味噌汁面には沢山のなめこが気持ちよさそうに浮かんでいて、まるでなめ
　　　　　　こ温泉の様。刻んだネギも独特の芳香を漂わせています。
　　　　　　　お椀の底からは賽の目に切った豆腐、あとえのきも顔を覗かせました。地味な味噌汁ながらもこれで５品目。
　　　　　　不思議なスハスハ感ととろとろ感を合わせ持つなめこも北陸の味噌によく合っていて、この季節は冷やご飯に
　　　　　　ぶっかけて食べたくなりますね。あまりお行儀のいい食べ方ではありませんが、そもそも汁かけ飯は古来武士
　　　　　　の倣いであったとも聞きますし。

　　　　　　　続いてはじゃがいもと豚バラ肉の煮もの・・・ってこれ、一見して角煮風の豚バラ肉かと思いきや、一口食
　　　　　　べてみるとハムの塊でした。ハムで作った肉じゃが、いやハムじゃがですね。もしかしてご主人さん、お中元
　　　　　　でハム詰め合わせセットを沢山貰ってしまったのでしょうか（笑）。
　　　　　　　ハムの煮ものは初めてですが、独特のハムくささが美味い具合に全体のダシになり、なかなか面白い味わい
　　　　　　になっています。ピーマンの青臭さと加工肉のクセがお互いを上手く打ち消しあっているのも、興味深い手法
　　　　　　だなあ。煮溶けたじゃがいものざらついた粘りもそれぞれの隙間を上手に埋めていて、旬のピーマンの季節感
　　　　　　もアピール。なるほど、こんな手があったのか。技あり２本の合わせ一本を取られた気分です。

　　　　　　　そして小皿の上に豊満な身を横たえているのが、鰯の塩焼き。頭と尻尾を落としてあるのが個人的にちょっ
　　　　　　と寂しいですが、小さなショーケースいっぱいに多種多様なおかずを並べる日本海食堂。スペース的にあまり
　　　　　　大きな皿は使いづらいのでしょう。
　　　　　　　それにしても、これは珍しい飾り包丁の入れ方。鰯の身に密に入った小骨を断ち切り、身離れをよくしつつ
　　　　　　火の通りも均等にするには、こういう方法もあるのか。

　　　　　　　一口食べると、鰯独特のワイルド＆繊細な味わいが口の中一杯に広がります。塩加減もちょうどよく、青魚
　　　　　　好きの私にとってはもうたまンない味わい。ああ、これは昼から冷酒が欲しくなる・・・。
　　　　　　　この時期の鰯にしては丸々と太ってしっかりと脂ものっていますが、夏のさっぱり鰯もそれはそれで美味し
　　　　　　いもの。同様に、ブリも特に脂の乗りが問われる魚ですが、時季外れの程よく脂が抜けた涼し気な味わいも、
　　　　　　ブリのもう一つの魅力でしょう。

　　　　　　　めしは水分の多い、若干柔らかめの炊きあがり。米どころ富山としては少しもったいない気がしますが、こ
　　　　　　れは地域のお年寄りが少しでも食べやすい様に・・・というご主人の配慮でしょう。私は比較的元気なオッサ
　　　　　　ンですが、暑さにやられたお客さんの胃腸の負担を考えても、これが正解。
　　　　　　　セットでついてきたお漬物はキュウリの甘辛醤油漬け。酢の酸味も爽やかに効いていて、これもこの季節の
　　　　　　味わいですね。あ、でもこれってよく考えたら、自家製きゅうりのキューちゃんなのでは？きゅうりの生の香
　　　　　　りが残っている分、本家よりもこっちの方が美味しいですね。私も一度自作してみようかな。紫蘇の実とショ
　　　　　　ウガを足して。

　　　　　　　いやあ、美味しかった。スタミナ丼を注文できず、急遽一品ものの寄せ集め策に出ざるを得なかった今回の
　　　　　　訪問でしたが、予想外に充実した内容となりました。豚肉とピーマンに多く含まれるビタミンは夏の疲労を回
　　　　　　復させ、たんぱく質やカルシウム、リン、ビタミンが豊富な鰯で筋肉と骨の強度を維持。さらになめこで消化
　　　　　　器系の粘膜を保護し免疫力を高めるという、実に夏向きのチョイスとなりました。やるなあ俺、美味しそうな
　　　　　　ものを適当に選んだだけなのに（笑）。
　　　　　　　頼れる４番打者が試合開始直前のケガでスタメン落ちを余儀なくされ、やけくそになって適当に代打を並べ
　　　　　　たらたまたま見事に打線が繋がってしまい、舞い上がってしまっている監督みたいな気分であります。
　　　　　　　「名将の代打策が見事的中！」
　　　　　　　と、誰も言ってくれないので自分で自分を賞賛しつつ、来る時よりもはるかに元気になって日本海食堂を後
　　　　　　にしました。

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