モツうどん・ふくらぎカマ塩焼き
2017.12.16
1220、屋根に薄っすらと雪が残る日本海食堂に到着です。今日の注文は最初から決めて来たモツうどん。
あとショーケースの中からもう一品ですが・・・よし、これ。ふくらぎ(ブリの二つ手前)カマ塩焼き。ガン
ドにも満たない小さなカマですが、なかなか美味しそうですよ。
ポットのお茶を入れ、いつもの席へ。それにしても今日はお客さんが多いなあ。私の後からも続々とやって
きます。土曜日なのに作業着の人が多いのは、年末が近くどこも仕事が立て込んでいる所為でしょうか。
オジサン世代が多いせいか、タバコの煙が薄く漂う店内。普段なら食事中のタバコは勘弁してほしいところ
ですが、日本海食堂だとあまり気にならないのが不思議。天井が高いお陰もありますが、ここに来ると時代感
覚が40年ぐらい巻き戻るんですよね(笑)。あの頃は飲食店でタバコなんて当たり前でしたし。
しばらくして、モツうどんとふくらぎカマ塩焼きがやってきました。熱々の出汁がなみなみと注がれた大き
などんぶり鉢が、冷え込む季節は非常に頼もしい。手早く撮影を済ませ、まずはうどんの大海に浮かんだ小島
の如きモツ煮を一口。
おお、これは美味しい!以前食べた一品もののモツ煮込みをうどんに乗せたものですが、さっぱりした出汁
のお陰でどこか野暮ったいモツ煮が、洗練された味わいになっています。うどん出汁を吸いこんだのか、モツ
自体もふっくらむちむち感を増していて、むしろモツ煮込みをそのまま食べた時よりも美味しい気がします。
味噌醤油ニンニク味の濃厚なモツ煮込みが、『出汁洗い』とも言うべき秘伝の技法によって一皮も二皮も剥
けた感じ。こんな裏技があったのか・・・と、ちょっと驚かされてしまいました。
そしてこの、モツ煮込みの煮汁でオレンジ色に濁った出汁もたまンないなあ。うどん出汁としてのすっきり
感は失ったものの、この混沌と汚濁と豊饒の極みとしか言いようのない重厚な旨味・・・他に代えがたいもの
があります。
きつねうどんの様な愛嬌のある王道感もなければ天ぷらうどんの様な伝統と格式に裏打ちされた重厚感もあ
りませんが、なんというかこの・・・ノールールの地下試合で最も実力を発揮しそうなタイプというか、見た
目の地味さとは裏腹に強烈な存在感を放っているこの雰囲気・・・うどん界を昭和のプロレスに例えるなら、
さしずめマサ斎藤に相当するのがこのモツうどんだと思います。
とにかく不愛想でとっつきが悪く、カタギではない空気すら漂わせているのにカルピスが大好物という妙に
カワイイ一面があり、一部のマニアから強烈な支持を受けている・・・考えれば考える程、このモツうどんが
マサ斎藤に見えてきます。いよっ!監獄鬼!
おっと、冷めないうちにふくらぎカマ塩焼きも頂かないと。カマ独特の柔らかくほろほろと崩れる緻密な身
肉は、箸を突き立てるだけで上品な脂肪がさらさらと零れ落ちそう。10kgクラスの寒ブリの様なド迫力で
はありませんが、この時期の素性のいいふくらぎならではの淡く初々しい脂肪の旨味が、ほどよい塩加減で十
分に引き出されている感じ。うーん、これもお昼ご飯のメニューじゃないなあ。近所にこんな食堂があったら、
絶対アル中になってると思います(笑)。
再びモツうどんに戻ります。モツの煮汁のお陰でうどんの味わいはこの上なくぶ厚くなり、うどん出汁に磨
き抜かれたモツ煮は洗練されたむちむちぽわぽわの口当たりに・・・たまりませんね、このモツうどん。出汁
だけで熱燗を1合、上に乗ったモツ煮で2合、あと濃厚出汁をまとったうどんでもう1合はイケますよ。
出汁のしっかり効いたうどんは意外と熱燗に合いますが、その中にあってこのモツうどんは抜群の相性。数
あるうどんの中でも、鍋焼きうどんと並んで熱燗のタッグパートナーに相応しい存在であります。今回も車で
来たのでそれは叶いませんでしたが、是非一度このモツうどんで飲んでみたいなあ。
ちなみに安価な日本酒の代表格に『鬼殺し』という銘柄がいくつもあり、『鬼を殺すほど粗悪でキツい酒』
『鬼が酔い潰れてしまうほど美味い酒』と、その名の由来は様々ですが、このモツうどんの熱燗との相性の良
さを鑑みるに、鬼をアル中に追い込んでいる真犯人は、もしかしてこいつでは・・・と勘ぐってしまう程。鬼
は知らないんだろうなあ。本当に恐ろしいのはお酒ではなく、その背後で糸を引いているこのモツうどんだと
いう事を・・・。
モツうどん800円、ふくらぎカマ塩焼き550円の計1350円を支払い、またひとつこの世の真理に到
達してしまった余韻を味わいつつ、日本海食堂を後にしました。
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