みそラーメン・たらこ煮もの

2017.05.08


       1122、少し早い時間に日本海食堂に到着です。季節外れの黄砂の所為か、薄ぼんやりと晴れ上がった
      休明けの富山の空
。そよ風がいい塩梅ですが、これから暑くなるんだろうなあ。
       しばらく待って、1140にいつものおばちゃんが開店。ひんやりと涼しい店内に入ります。今日は初めか
      らみそラーメン狙いでしたが、あと何か一品。うーん、厚揚げの煮ものはちょっと重たいなあ。焼き魚という
      気分でもないし・・・よしこれ、たらこの煮ものいっときますか。

       湯呑にポットの冷水をそそぎ、いつもの席へ。平日の開店直後とあって他にお客もおらず、深く静かな日本
      海食堂のひととき
。そんな雰囲気を味わっていると、お、来ましたみそラーメン&たらこの煮もの!明るい茶
      色のスープに大きなチャーシューとメンマが盛られ、刻んだ青ネギの色合いも実に鮮やか。見た目はド直球の
      みそラーメン
です。
       まずはチャーシューを傍に移動させ、麺の塊をほぐしてスープに馴染ませますが、おっ、チャーシューの下
      から沢山の炒め野菜が出て来ましたよ。キャベツ、青ネギ、ニンジン、もやし、ピーマンと色鮮やかな顔ぶれ
      で、もはやみそ風味五目そばと言っても差し支えない品目の充実っぷり。先ほどから厨房内でカンカンと中華
      鍋を振り叩く音
が響いていましたが、この野菜を炒めていたんですね。みその濁りを利用して巧みに演出され
      たこのサプライズ感。ご主人の遊び心とサービス精神の表れですね。
       まずはスープをひとすすり。ほほう、見た目の濃厚そうな色合いとは裏腹に、意外にもさっぱりしたみそ味
      です。炒め野菜の瑞々しさがみそ特有の野暮ったさを見事に打ち消して、洗練された雰囲気すら漂わせていま
      す。

       熱々のみそスープ、上に覆いかぶさった炒め野菜、そして自身の熱で蒸し上がった様な細めの縮れ麺はスー
      プにもよく絡み、私の好みにジャストフィットなのが嬉しいなあ。
       トロトロになるまで煮込まれたチャーシューは甘辛醤油の香りが高く、これ単品でも十分過ぎる位の実力を
      持つ逸品
。熱々ご飯で食べるもよし、ビールの肴にもよし。そういえば以前、常連っぽいお客さんがこのチャ
      ーシューを単品で注文していたなあ。正規のメニュー表にはない裏メニュー的な存在っぽいので、日本海食堂
      歴が浅い私が注文するのは憚られますが、程よくこの場の空気に馴染んだ頃合いを見て、一度注文してみたい
      ものです。
       それにしても、この炒め野菜がみそスープに実によく合いますね。なんというか厨房内の店主さんに
       「ラーメンもいいけど、野菜もちゃんと摂らんといかんがいぜ・・・」
       と富山弁で穏やかに諭された気分。男おいどんならここで故郷を思い出してほろりと涙を浮かべたりするん
      だろうなあ。それにしてもおいどんって、豚骨ラーメンしか認めない九州出身なのに、東京の下町醤油ラーメ
      ンにすっかり馴染んでいたのが不思議だなあ。その辺は人一倍頑固そうだったのに。
       自らを変節させて都会に合わせる事を決して良しとしなさそうなおいどんが、生卵入り醤油ラーメンを『愛
      する』
レベルで受け入れるまでに、一体どれだけの葛藤があったんだろう・・・と、変な事に思いを馳せてし
      まいました。

       続いてはたらこ煮もの。小ぶりながらもぱちんぱちんに張ったたらこが、まっ茶色に染まっているのがとて
      も美味しそう。早速一口いってみます。
       ほほう、火が入ってみっしりと押し固まったたらこは甘さも醤油辛さも強烈で、実にパンチの効いた味わい。
      私の地元ではタイの子やハモの子をうす甘く柔らかく煮つける事が多いですが、これだけ強い味でしっかりと
      煮つけたたらこも美味しいもの
ですね。
       そしてこの、芯の芯まで甘辛味をしみ込ませたたらこに対して、焼豆腐は煮汁をさらっと身に纏う程度にと
      どめているのが面白い対比。濃厚なものは濃厚に、淡白なものは淡白なままに。素材の持ち味を生かすとはこ
      ういう事でしょう。これは恐らく、たらこと煮昆布は前日から煮込んで寝かせておき、豆腐は提供するその日
      にさっと煮合わせるにとどめてあるんだろうなあ。

       甘辛く煮つけたみっしり固いたらこをまず一口、そして柔らかく淡い味わいの焼豆腐を一口。さらにたらこ
      の旨味を吸い込んでとろけるまでに煮込まれた昆布を一口・・・これは日本酒が止まらなさそうな一品です。
      ぐぬぬ、車で来てしまった自分が恨めしい・・・。
       お、お客さんが入ってきましたよ。小さなお子さんを連れた若いママさん友達の様ですが、どことなく力が
      抜けたホッとした雰囲気
が漂っているのは、連休中に親戚の家族が泊まりに来て、本家の若奥さんとしては
      の休まる間がなかった
所為でしょうか。義理の兄弟姉妹に
       「毎年連休中に来てごめんねー、これじゃ義姉さん全然休めないよねー」
       とか言われて、心の中では『分かってるんなら来るんじゃねえ!!』とか思いながらも
      笑顔で応対
していたんでしょうか。そんなご苦労様な人達が、心の底からほっとひと息つく事ができるこの日
      本海食堂。かれこれ20回近く来ていますが、そのたびにいろんな味や色んなお客さんの人生模様が垣間見え
      るのが、やっぱり魅力なんだろうなあ。

       続いて作業員風の一団がどやどやと入って来ました。平日昼間の、日本海食堂の主役の登場です。さて、私
      はこのあたりで退散しますか。次に来るのは6月か7月、もう蒸し暑くなってる頃でしょう。そろそろ季節も
      のの冷やし中華を試してみる頃合いかな?みそラーメン750円とたらこ煮もの400円、計1150円の
      足感
に浸りつつ、日本海食堂を後にしました。




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