ハムエッグ・めし・豚汁・こごみ胡麻あえ
2016.04.16
という訳で大阪から愛知の一宮~長野~新潟~富山~大阪を一日で走り切る1100kmツーリング。夕方
には富山県に入り、いつもの日本海食堂に到着です。それにしても、お昼に寄った長野県伊那市のかけはし
食堂(レポできません!)の筆舌に尽くしがたい味わいに比べると、通い馴れた日本海食堂がなんと安らぎに
満ちている事か・・・。なんかもう、今日は軽いものでいいや・・・という気分です。この時間に来るのは初めて
ですが、残照を背にした日本海食堂というのも神々しいものがあっていい感じ。
まずはハムエッグを注文。あとめしと豚汁、もう一品なにかつけようかな。ヒジキやかぼちゃの煮つけ、ミギ
ス塩焼き、イワシの煮付けあたりもよさそうですが・・・あ、これいっときましょう、こごみ胡麻和え。季節感あり
ますし。
客席の中央には、12名ほどの団体客がいます。なんとなく30代あたりで揃っている年齢層、ごく普通の普
段着から察するに、地元の青年会か何かの会合かな?既に飲み食いは終わっている様ですが、大根のケン
が残った大皿があるあたり、事前予約でお造りの盛り合わせなんかも出来るのかな。そういえばメニューに
刺身定食がありましたね。そのうち食べてみたいなあ。朝定食というのも気になります。12時前にならないと
開かない店の朝定食とは・・・。
等とぼんやり考えていると、もうハムエッグがやってきました。見たところ薄い丸ハム3枚に卵が2つ。当り
前ですが絵に描いた様なハムエッグです。気になるのは卵の焼き加減ですが、白身にはしっかり火が通って
端の方はチリチリ。黄身の上には熱で固まった白い膜が張っていますが、その下の黄身はプルンプルンの
生の状態。なるほどこれがご主人のベストの焼き方か。黄身の上に白い膜がかかっている点以外は、ほぼ
私の目玉焼きと同じですね。これは恐らくハムの上に卵を落としたあと、蓋をして弱火で蒸し焼きにしたんだ
ろうなあ。
折角2つある目玉焼きです。片方は私の定番である醤油で、もう片方は普段使わないウスターソースで味
わってみましょう。
まずは醤油から。うん、白ご飯との相性が申し分ない、安心安定のいつもの目玉焼きです。私の場合は最
初にベーコンをフライパンで焼いて旨味と塩分を油に移したあと、その油で目玉焼きを焼いて、固まった白身
の上に改めてベーコンを添えるやり方ですが、こうやってハムと卵を最初から重ね合わせてしまう方法も悪く
ないですね。見た目のハムの存在感こそ薄れますが、同じフライパンで別々に焼いて最後に合体させるやり
方に比べると旨味の融合具合が高い感じ。あと、こちらの方が冷めにくい気もします。
もうひとつの目玉焼きはウスターソース。ほほう、これも悪くない。白ご飯よりもトーストに合う感じですが、普
段あまり使わない調味料なので珍しい料理を食べている様なお得感があります。
そのハムエッグの付け合わせはクリーミーな胡麻ドレッシングがかかった刻みキャベツとレタス、キュウリ、
トマト、パセリ、あとポテトサラダ。それにしてもこのキャベツ、刻みが随分荒いなあ。以前食べたカツカレー
に添えられていた刻みキャベツは、もっと細かった気がしますが・・・。
これはもしかして、目玉焼きのぷりぷり感を際立たせるために、あえて太めに刻んだんでしょうか。確かに
この目玉焼きに極細刻みキャベツでは、お互いの長所を潰しそう。ぱりんと噛み切るキャベツの固さが白身
の滑らかな口当たりを際立たせ、焼き上がったハムの塩気と脂肪感はキャベツの切り口から漂う冷涼な香
気で洗い流す・・・なるほど、これは計算しつくされた太さと言えます。
そしてポテトサラダはひんやりと冷たく甘く、これもハムエッグといいコントラスト。私のスタンダードよりも随
分甘めの味付けにはちょっと戸惑いましたが、この一皿に足りないのは『甘さ』である事を考えると、その巧
みな計算に頷かざるをえません。
またよく見ると、潰したジャガイモの中にネジリが入ったショートパスタが混ぜ込んであります。茹でて潰した
ジャガイモ独特の微かなザラつきの中で、控え目に自己主張しているつるりとしたショートパスタ。一瞬飛び
道具的な奇襲かと思いましたが、なかなかどうして面白い組み合わせです。そもそもポテトサラダもパスタサ
ラダも同一軸線上の味付けなんですから、合わない訳がないんですよね。いつの間にか随分と固くなってい
た自分の考え方を、さりげなく指摘された気分。
めしですが、よく考えたら単品のこれを注文したのは初めて。特にこれといった特徴のない味ですが、ショー
ケースに居並ぶあらゆるおかずを引き立てる最高の無個性。炊きあがりはやや柔らかめですが、これはご
主人の好みなのか、それとも地域のお年寄りにも食べやすいように・・・という配慮なのか。
そして豚汁ですが、おお、以前カツ丼についてきた小さなお椀の豚汁とは違い、どっしりした鉢に入っている
ので単品としての存在感が強烈。具は豚バラ肉にジャガイモ、タマネギ、豆腐、ニンジン、大根、青ネギと、十
分な品目を誇っています。私は根菜が大好きなので、これは嬉しい一品だなあ。
味付けはさらりと塩辛い北陸独特の味噌。昔バアサマが作ってくれたみそ汁と同じ味です。スーパーで味噌
を買って帰れば大阪でも同じ味を楽しめますが、それはなんだか違う気がして未だにやった事がありません。
あと、こごみの胡麻和え。ほほう、胡麻は胡麻でも、黒胡麻を軽く摺ってあるんですね。その分全体の色合
いはやや暗くなりますが、白胡麻よりもこっちの方が緑が鮮やかに見えるなあ。こごみは独特のしゃきしゃき
感が残った絶妙な茹で加減。微かなぬめりと香りが口中に広がり、北陸の遅い春を感じさせる詩的な一品
になっています。うーん、これは若鶴のぬる燗が欲しくなる・・・。
しかしこの、異様に甘い味付けにはちょっとびっくりです。まるでこごみの砂糖漬けの様。北陸の甘い醤油
が大好きな私ですが、殆ど砂糖だけで味付けしているのでは。僅かに薄口醤油を効かせた感はあるものの、
これはおかずというよりもほとんどお菓子・・・。
これ単品だけでは違和感が拭えませんが、醤油とソースで食べるハムエッグや塩気の効いた豚汁と合わせ
ると、一気に化ける感じ。なるほど、これはこの味付け以外には考えられないな・・・と納得させられました。
食べている途中で先程の団体客は帰っていき、入れ替わる様にして3世代の家族連れがどやどやと入って
きました。へー、昼とは客層が違って面白いな。小さな子供が2人いますが、この日本海食堂が日常の外食
の思い出になるのか。君が今当たり前に楽しんでいるこの場所は、他に代える事の出来ない味わいがあると
いう事を、大きくなっても憶えていて欲しいなあ。
そんな感慨に浸っていると、その3世代家族が
「えーと・・・チャーシュー!」
と注文。ええっ?チャーシュー?チャーシュー麺はメニューにないから、酒の肴としてチャーシューだけ単品
で頼めるの?地元のお馴染みさんだけが知っている裏メニュー的なものなのかな?確かにここの醤油ラーメ
ンに乗っているチャーシューは、とろける様に甘くて美味しいんですよねえ・・・。
大阪から通うたびに、一つずつメニュー画像のお品書きをラインで消しては地味な達成感を味わっている
私ですが、メニューにないメニューがあったなんて。超地域密着型の長い歴史を持つ日本海食堂ですから、
そういうものがあっても不思議ではありませんが、私が目指している全メニュー制覇というゴールの向こうに
は、まだ未知の険しい山々が続いていたとは・・・。
何かの奥義を極めるという事は、そういう事なのかもしれないな・・・と呟きつつ、1100円払って日本海食
堂を出ます。さああとは大阪まで370km。本日の最終SSを前に気合を入れつつ、富山県を後にしました。
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