カレーライス

2018.09.09


       前日から続く強風&小雨模様の中、1145に日本海食堂到着。開店直後とあって先客は2名が3組だけ
      で、うち2組は初来店なのか、店内を物珍しそうに見て歩いています。
       本日のお目当ては、以前から謎の存在であった朝定食。12時前にならないと玄関が開かない日本海食堂
      に朝定食があるというのが不思議な話ですが、昔は長距離トラック運転手達の憩いの場だった日本海食堂。
      営業時間に関係なく、朝定食的なメニューの需要があったんでしょう。
       そんな古き良き日本海食堂らしさを最も残していると思われる朝定食ですが、いつものおばちゃんに出来
      ますかと尋ねたところ、
       「いやあ・・・もうやってないんですよ。ご飯とお味噌汁はありますから、おかずの中から何か選んでも
      らう形になりますね(笑)」

       との事。やっぱりそうですよね。長距離トラックを転がす荒くれ者達がワイワイ騒いでいた時代の日本海
      食堂で食べてみたかったなあ、朝定食。これも時代の流れってやつか・・・。
       という訳で、次回の予定だったカレーライスを繰り上げて注文。カツカレーを食べたのはかれこれ3年ぐ
      らい前なので、その記憶も程よく飛んでいます。ほぼ初挑戦感覚で臨めるでしょう。あともう一品欲しいと
      ころですが、カレーに合うおかずがなかなか難しい・・・。夕食を盛り上げるという意味でも、お昼はカレ
      ーだけにしておきます。お茶を入れていつもの席へ。
       しばらくしてカレーライスが到着。おや、カレーは最初からごはんにかけた状態で提供されるのか。カツ
      カレーみたいに銀のカレーポットで出てくるのかと思っていましたが、あれは大看板であるカツを引き立て
      る為の演出だったのかも。

       ただ、不思議なのがこのカレーのかけ方。お皿のど真ん中に盛り付けた白ご飯の上を、カレーで完全に覆
      ってあります
。見た目が円墳っぽいというか、まるでUFOみたい。
       見たところ具は牛肉ニンジンタマネギで、ジャガイモはありませんね。古き良き日本海食堂の雰囲気
      的にはジャガイモは欠かせない
気がしますが、これは店主さんの味に対するこだわりなのでしょう。最初の
      スプーンを突き立てる場所を吟味しつつ、まずは一口。
       ああ、そうそう、これこれ!カツカレーの時と同じ、マイルドで優しい甘さに満ちたイニシエのカレーラ
      イス
です。ちょっとジャワカレーの甘口っぽく、実に安心できる味わい。辛さや香りを求める人には物足り
      ないかもしれませんが、ここはカレー専門店ではなく地域に根差した大衆食堂。お子様ランチ的なメニュー
      がない以上、子供に人気のあるカレーライスが甘口になるのは当然と言えます。
       いや、このたまらない懐かしさに満ち溢れた甘口カレーは、むしろ大人にこそ食べてもらいたい一品。カ
      ツがないぶん、よりダイレクトにオールドカレーらしさが味わえる気がします。
       カレーの脇に盛られた野菜はポテトサラダ千切りキャベツトマト、あと茹でたゴーヤー。あれ?よく
      見ると野菜の下にも白ご飯がありますよ?折角の冷たい生野菜がご飯の熱で台無しになるんじゃ・・・と思
      いましたが、下敷きになった太めの千切りキャベツが通風性を確保しているお陰で、白ご飯の熱を上手く外
      に逃がしています。

       チキンライスの時にも感心しましたが、なるほど、断熱材としての効果を期待しての太切り千切りキャベ
      ツ
か。熱いものは熱く、冷たいものは冷たいままに・・・これも計算し尽くされたカットなんですね。
       ポテトサラダは冷たく甘酸っぱく、トマトとゴーヤーは夏の香りぷんぷん。おまけ的に添えられた甘めの
      厚焼き玉子
も、飛び道具的な存在感を放っています。
       ただ、カレーそのものが非常にマイルドで優しい味なので、見た目以上に量がある白ご飯とさっぱり生野
      菜、甘い厚焼き玉子に負けている気がしますね。福神漬けが添えられてはいますが、こちらも甘みが強いの
      でカレーにとっては不利な状況です。
       という訳で、テーブル上のソースをひと垂らししてカレーを支援。ああ、スパイシーな辛味が加わって、
      この一皿の輪郭がぎゅっと引き締まった様。続いて醤油も投入してみますが、おお、これもいい感じ。ウス
      ターソースほどのピリリ感はないものの、醤油の深い味わいが茫洋とした個性のカレーに奥行きを与えてい
      る感じです。まずはカレーをそのままで、次にソースを足して変化をつけ、さらに醤油で味に深みを出すの
      がこのカレーの理想的な食べ方だと思います。
       ちなみにこのカレーライス、先述の如く皿のど真ん中に小山の様に盛り付けてあるので、左側をソースで、
      右側は醤油で・・・
という食べ方をしても真ん中で味が混ざらないのが有難い。中央のカレーそのまんまの
      部分も含めて、一皿で3つの味が楽しめます。あ、ソースゾーンと醤油ゾーンを接近させて、あえて混ざり
      やすい様にする
のもアリだなあ。

       最初はこの不思議なご飯の盛りとカレーのかけ方に疑問を覚えましたが、なるほどこういう事か。調理場
      の中にいるであろうご主人に向かって、にやりと笑ってしまいました。
       それにしても、最近はこういう古き良きカレーが少なくなってきたんだよなあ・・・と、ひと口ひと口を
      しみじみ味わって食べていましたが、ん?なんかこの牛肉に違和感を覚えますね。十分に染み込んだカレー
      の味とは別に、何か下味の様なものが感じられるのですが・・・。
       目をつぶり、舌先に全神経を集中させます。んん~、これはもしかして・・・醤油味?確証は無くあくま
      で私の推測に過ぎませんが、牛どんぶりの煮汁を使ってカレー用の牛肉をじっくり煮込んであるのかな?
      れならばこの和の香りがするテイストにも納得がいきますね。蕎麦屋のカレー丼にちょっと似た方向性とい
      うか、いい意味で力の抜けたカレーの味わい。
       それは同時にもうすぐ2世代前となってしまう昭和の残り香であり、時代の底にたまった沈殿物の様なこ
      の日本海食堂に相応しい味わいだと思えます。わざわざ牛どんぶりの煮汁で牛肉を煮込み、それをカレーに
      加える・・・この一見不可解に思えるひと手間にこそ、日本海食堂の日本海食堂カレーライスたる所以があ
      るのでしょう。
       っていうか、先程からまるで牛どんぶりの煮汁がこのカレーのベースになっている事が確定している様に
      レポを書いていますが、本当のところはどうなんだろう。
       「へ?牛どんぶりの煮汁?そんなの入れてませんけど・・・(笑)」
       とご主人にさらりと否定され、またしてもいい歳して味覚の未熟ぶり余計な語りたがりで大恥をかく羽
      目になってしまうのか(笑)。一度ご主人に確認してみたい様な、するのが怖い様な・・・。心を千々に乱
      れさせつつ、真夏の日本海食堂を後にしました。




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