No.1 CHILI WITH BEANS

    さて今回は、実に久々となる米軍MRE、『CHILI WITH BEANS』の試食です。今回箱ごと入手できたのは2008年
   製造という比較的新しいブツであります。毎年中身が進化しているMREの事ですから、また以前とは違ったイロイロで私
   の舌を傷めつけながらも楽しませてくれるのでしょうか?
怖い様な楽しみな様な、ちょいM属性全開でパッケージを開封
   です。
    あれ?以前とは違い、薄い透明な樹脂製パッケージで内容物が一まとめにされています。ただでさえ食後のゴミが多い
   MRE、過剰包装もいいところのような気がするなあ。


    ちなみにメインのレトルトは2つ入っていて、『CHILI WITH BEANS』と『MEXICAN STYLE CORN』。前者は所謂
   チリコンカーン、牛肉とインゲン豆を赤唐辛子の効いたトマトソースで煮込んだ料理だと思いますが、後者は今ひとつ正体
   が分かりませんね。恐らくトウモロコシをメキシコ風に料理したものだと思われます。個人的にテクス・メクス(メキシコ風の
   チープなアメリカ料理)
は好きな部類なので、今回はどちらもちょっと楽しみだなあ。
    ちなみにこのCHILI WITH BEANS、1996年以来栄えあるメニューNo.1としてMREを牽引してきたBEEFSTEAK
   に代わって2006年から採用された一番艦、言わばネームシップであり、どちらもアメリカ料理の象徴とでも言うべき正統
   派メニューであります。

    それにしても、やけに食品の数が多いですね。まず目についたのが、薄手の透明なポリ袋。上部は押圧式のチャックに
   なっていて、どうやら加水式加熱剤を使ってお湯を作るためのバッグの模様。へー、以前はこんなの無かったのに。それ
   にしても、火を一切使わずにレトルトどころか飲み物まで温めるとは!全く色々やってくれますね、米軍MRE。この辺りの
   性能チェックも楽しみです。








【本体】
1:CHILI WITH BEANS  2:MEXICAN STYLE CORN
3:CHOCOLATE DAIRY SHAKE   4:クラッカー
5:スプーン   6:キャンディー   7:ジャム
8:ピーナッツバター   9:レッドチリパウダー
10:アクセサリーパケット   11:ホットビバレージバッグ
12:加水式加熱剤







【アクセサリーパケット】
1:粉末コーヒー    2:粉末クリーム    3:砂糖
4:塩   5:マッチ    6:粒ガム    
7:ウエットティッシュ    8:ティッシュペーパー




 





    まずはメインディッシュであるCHILI WITH BEANSの紙箱を開け、レトルトパックを取り出します。水を入れた加熱
   袋にレトルトと取り出した加熱剤を重ねて入れて、紙箱に挿入。
そしてコーヒーを作るための6オンス(約150t)の水
   ホットビバレージバッグに注ぎ、きっちりと封をして加熱袋と紙箱の間に押しこみます。


    加熱剤はすぐに発熱を始め、あっという間に素手では触れないほどになっています。この辺りは全体を重ねて一回余
   分にパッキングした効果があった
ようで、加熱剤のコンディションはかなり上々。今までに見た事がない位の勢いで激し
   く反応しています。
    レトルトが温まるのを待つ間に、CHOCOLATE DAIRY SHAKE POWDERを開封。以前何度か作った事のある
   殺人的激甘チョコシェイクですが、新しいパッケージは上部が押圧式のチャックになっていて、本当に細かい部分が進
   化しているんですねえ。
前のは袋の上部をきつく折り畳んでシェイクする方式だったので、手が滑ると辺り一面にどろど
   ろチョコシェイクを撒き散らしかねないスリルとサスペンス
を強要されていたのですが。
    パッケージの表面に印刷された説明書きの通りに、6オンスの水を入れてきっちりと封をし、しっかりとシェイク。
    ううう、相変わらずとろけたアイスを飲んでいる様な、焼成前のクッキー生地をそのまま飲んでいる様な、強烈な甘味
   です。
ただ、前回の反省を生かして冷蔵庫でしっかり冷やした水で作ったため、まだ若干飲みやすくはなってますが。


    さて、そろそろメインのレトルトが温まって来ました。おお、さっきまで室温だったレトルトが、滅茶苦茶アツアツになっ
   ています!
一緒に紙箱に入れたホットビバレージバッグの水は、熱湯とまではいかないものの、温かい飲み物としては
   十分な温度になっています。
凄いなこれは。やはり温かい食事と飲み物というのは、それだけで元気になりますね。
    まずは開封したCHILI WITH BEANSから行ってみましょう。見るからに凶暴そうなこげ茶色が食欲をそそります。
    おおお、これは美味しい!そして辛い!たっぷりと入った細切れの牛肉が、ボリュームのあるキドニービーンズと一緒
   に濃厚なトマトソースに絡まっています。グリーンチリもたっぷりで、この辛さはなかなか刺激的。タマネギトマトの甘酸
   っぱさで幾分やわらいではいますが、辛いのが苦手な人にはちょっと無理かもしれません。タイ料理が大好物で辛いも
   のが割と平気な私でも、額の生え際あたりにじわっと汗が浮かびました。


    それにしてもこの濃厚な味、今まで食べた缶詰のチリコンカーンの中では一番美味しいなあ。スパイシーで力強い味
   が素晴らしく、これはビールが欲しくなりますね。ごろごろと入っている牛赤身の渋味、コクもしっかりと引き出していて、
   これは確かにBEEFSTEAKに取って代わるに相応しい実力を感じます。いやはや、まるで試合開始直後に先頭打者
   が逆転満塁サヨナラホームランを打ったかのような
(いや、ないない)、実に痛快な美味しさでした。


    CRACKERは以前と一つも変わらないスタンダードなクラッカーで、サクサクした口当たりが懐かしいなあ。それにし
   てもこのクラッカー、メインのCHILI WITH BEANSとの相性が抜群ですね。クラッカーのやや粉っぽい風味が、濃
   厚なソースにうまく纏められる感じです。


    もうひとつのレトルトは、MEXICAN STYLE CORN。開封して皿にあけると、なんだか凄く顔色の悪い粒コーンがどろ
   どろと出て来ました。
肝臓でも悪いのかと心配になる色合いで、先程のメインで盛り上がった球場の雰囲気に一気に水
   を注された気分です。
    しかし食べてみなきゃわからんよな、と一口。うーん…何なんでしょう、この見た目通りの味は…。粒コーンのクリーム
   煮に酸化した古いカレー粉をぶち込んで、タバコの吸い殻を落とした様なこの風味…。決して食べれないという訳では
   ありませんが、3日位徹夜をする羽目になった漫画家の様なこの顔色、食欲を削ぐ事この上無しであります。


    それにしても何なんでしょうこのタバコの吸い殻みたいな匂いは。闇市で吸い殻入りの雑炊を出されてマジギレしてい
   たつのだじろう版大山倍達の気分を満喫であります。

    ただ、沢山入っている粒コーンの皮が固く噛み応えがあり、見た目以上の満腹感がありました。しかしこれなら、普通
   のホールコーンを入れておくだけの方が100万倍マシ
な様な気がするなあ。
    それにしても、これが本当にメキシコ風なんでしょうか。メキシコ人に食べさせたら、鬼の形相でトペ・コンヒーロをぶち
   かまされた上に、ソンブレロの先っちょで目潰しをくらいそうな気がするんですけど…。


    BLACKBERRY JAMも、相変わらずの喉が焼けるような重々しい甘さ。甘味が苦手な私が全部食べたら発狂しそ
   う
だったので、一口だけにとどめておきました。


    PEANUTS BUTTERも、以前とまったく変わらない粘着質かつヘビーな食感。10年ぶりの同窓会で久々に出会った
   クラス1の問題児が、その歳月をものともせず全く変わっていなかった時の先生の気分ってこんな感じ
でしょうか。何とも
   言えない脱力感とガッカリ感、そしてほんの少しだけの嬉しさ…
。考えてみれば今回の久々のMRE試食、私にとっては
   同窓会みたいなものだったんですね。


    ホットビバレージバックのお湯で作ったコーヒーですが、これはまあごく普通のコーヒーでした。しかし、加水式加熱剤
   を使って温かいコーヒーが飲めるとは。知らない間に、みんな立派になってたんだなあ。この温かさだけで、十分評価で
   きる味わいと言えます。

    あと、デザートというかお菓子のキャンディーはSkittle。アメリカでは何処でも手に入る、ごくごく普通の粒キャンディー
   ですね。カラフルな原色でとにかく甘いのですが、ポケットに入れておいて疲れた時に2〜3粒口に含むと、確かに元気
   にはなりそうです。


    以上、2年ぶりとなる米軍MREの試食を終わります。個性とアクのきついメンバーを、真ん中にいるCHILI WITH 
   BEANSがその強力なリーダーシップと腕力で、無理矢理力ずくでまとめた様なメニュー
でした。でも、それって、アメリ
   カ人が国際社会で振舞いたいアメリカ人像そのものの様なアメリカ人
なんですね。それをある意味アメリカ料理の象徴
   と言っても過言ではないメニューで体現している所が、色んな意味で実に興味深いというか、とにかくアメリカ!な印象
   を受けました。まさに新世代MREのメニューNo.1を担うに相応しい、極めてアメリカンなメニューでありました。




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