No.24 CHICKEN SALSA


       さて今回は、2008年版MREの最終メニュー、No.24の『CHICKEN SALSA』です。ちなみにサルサと
      は、日本では生のトマトやタマネギ、ピーマン、にんにく、青唐辛子等を様々なスパイス柑橘果汁で和えた
      フレッシュソースを指す事が多いですが、本来は液体調味料全般を意味していて、日本が誇る醤油も立派な
      サルサの一種。salsa de soyaという名前になるそうです。
       つまりこのメニューは、何らかのソースを使った鶏料理・・・という解釈でいいのかな?などと考えつつ、頑丈
      なパッケージを開封。2008年版の締めを担うメニューに相応しく、沢山の食品類が出て来ました。今回封入
      されているレトルトは2つ。水を注いだ加熱材をこの2つのレトルトで挟むようにして、しばらく温めます。





【内容】
1:CHICKEN STRIPS WITH CHUNKY SALSA
2:FRIED RICE   3:スナックブレッド
4:クッキー   5:粉末カプチーノドリンク
6:ハラペーニョチーズスプレッド
7:Pieces   8:ホットビバレージバッグ
9:加水式加熱材   10:アクセサリーパケット
11:スプーン






【アクセサリーパケット内容】
1:粉末アイスティー   2:粒ガム   3:塩
4:マッチ   5:ウェットティッシュ
6:トイレットペーパー
7:グリーンペッパーソース












       さて、まずは2種類用意された粉末ドリンクから。おなじみの粉末アイスティー6オンス(180cc)の冷水
      に溶かしますが、うん、いつも通りの安心風味ですね。ややニセモノっぽくはありますが、粉末を溶かすだけ
      でこれだけの味になるなら文句はありません。毎回毎回変な意味での緊張感を強いられる戦闘糧食の試食
      も、彼さえいれば何とかなる・・・という安定感が有り難いなあ。

       もう一方は、MOCHA CAPPUCCINO INSTANT POWDER。細長いパッケージを開封し、これも6オ
      ンス(180cc)
の冷水を注いで、きちんとチャックを締めた後にぶんぶんシェイクします。
       で、出来たのがこれ。エスプレッソらしい独特のコクとシナモンの香りが活きた、とろりとした口当たりのカプ
      チーノドリンク
です。粉末ドリンクは各国戦闘糧食の定番ですが、ちゃんとシェイクし易い形状のパッケージま
      で作ってしまうのは流石アメリカ軍と言わざるを得ません。

       続いては、これもお馴染みスナックブレッド。もう何度書いたかわかりませんが、この押し入れの奥のカビく
      さい布団
みたいなニオイ・・・最初は抵抗を覚えましたが、慣れると病みつきになってしまいます。
       そしてその脇に控えているのは、これもすっかり定番となった感のあるハラペーニョチーズスプレッド。はっ
      きりした塩味と刺激的な辛さが、甘味系が幅を利かせる事の多いMREの中にあって独特の存在感を放って
      います。

       さて、そろそろ2つのレトルトが温まってまいりました。まずは小さいほうのFRIED RICEから行ってみまし
      ょう。これは初めて食べるメニューですが、いわゆるチャーハンっぽいものなのかな?
       硬いレトルトを開封すると、薄茶色いタイルみたいなものが出て来ました。全体を丁寧に突きほぐしていくと、
      おお、まさにチャーハン!といった見た目です。わくわくしつつ、まずは一口。

       ほほう、やけにぼそぼそした口当たりの、濃いコンソメ味で作ったへっぽこリゾットみたいなものですね。具
      はニンジングリーンピースだけですが、味そのものは悪くないですし、やはり日本人としてはメニューにお米
      があるだけでホッとします。

       それにしてもこの、砕いた蝋みたいな口当たりは頂けないなあ。陸自の強力な加熱材とは違い、米軍の加
      加材は冷えてベータ化した米をアルファ化させるだけの十分な熱量がない
んですよねえ。特に今回はもう片
      方のレトルトにも熱を奪われる形になりますし、条件的にかなり不利だったかも。フライドライス自体は悪くな
      い味
ですが、本来10段階で6はある美味しさが、加熱不足による食感の悪さでまで落ちているのが残念。
      湯煎で十分に加熱すれば、もっと美味しくなると思います。

       さて、いよいよメインのCHICKEN STRIPS WITH CHUNKY SALSA。熱々のレトルトを開封すると、
      おお、強烈なトマトソースの香りとともに、赤茶けた色合いの料理がどぼどぼと出て来ました。ぱっと見はカレ
      ーっぽいですが、この自己主張の強いトマトの香りが強烈。とはいえ、MREのトマト味はどれもハズレのない
      味
なので、さほど心配はいらないでしょう。
       それにしても、最後の最後に安心系トマトソースでまとめて来るとは、アメリカ軍も随分丸くなったなあ。MR
      Eの悪い評判を決定づけた往年の味音痴メニューが、もはや懐かしくすら感じられます。いや、この2008年
      版にもいましたね、CHEESE AND VEGGIE OMELETというキ○ガイメニューが・・・。
       とりあえず一口頂いてみます。うぐぐ、な、なんじゃこりゃ。異様に押しつけがましいトマト味、そしてこの不自
      然な甘味
。原料にトマトを一切使用せず化学物質だけで無理矢理トマト味を再現した様な、非常にニセモノく
      さい味わい
です。古いSF映画で21世紀の人達が食べている合成食品みたいな味わい・・・。

       トマト、タマネギ、グリーンチリ、レッドチリといった個々の食材の風味は確かに感じられますが、このエグい
      甘さの変態トマトソースのお陰で全部台無しになってる感じ。鶏肉はごろごろとたくさん入っているものの、こ
      れも消しゴムのカスを無理矢理押し固めた様な圧縮成型肉で、もう鶏なのか牛なのか豚なのかよくわかりま
      せん。
       あ、そうそう、アクセサリーパケットの中にグリーンペッパーソースがいた筈!この苦境を何とかすべく振り
      かけてみますが、ああ、ダメだこりゃ・・・。ただ単に青臭く酸っぱくなっただけで、なんだかチキンサルサを食
      べたあとに吐いたゲロ
(表現が酷いのでステルス化しておきます)をもう一度食べさせられてるみたい。ううう
      うう、やめときゃよかった・・・。
       しかしこの悲惨なチキンサルサを食べた後に先程の微妙なフライドライスを口に運ぶと、ボソボソした食感
      があまり気にならなくなるのが驚き。顧客が到底受け入れそうにないプランAを提示したあとに、本当に売り
      込みたい利益率の高いプランB
を出す手口というか、小賢しい営業テクニックの様なものを感じます。

       それにしても、年々美味しくなっているMREの安心印のトマトソースで、ここまでエグいイロモノを引かされ
      るとは完全に予想外でした。これまでのいい流れを見守ってきた私としては、
       「どどどどどどうしちゃったのMRE!?」
       と戸惑ってしまう悪い意味での原点回帰の味わいでしたが、そんな中でスナックブレッドや粉末アイスティー
      といったベテラン古参勢の働きに、どうにか助けられた感じです。

       戦で大きなヘマをやらかして、石高を大幅に減らされた上に地方に左遷されたポンコツ大名。お殿様のチ
      キンサルサ
は今日も朝からご乱心で日本刀を振り回し、フライドライスやハラペーニョチーズスプレッドを始め
      とした家臣たちも城内を逃げまどうばかり。そんな大パニックのさ中、その場につと歩み寄った老家老スナッ
      クブレッド
が穏やかに諌めただけで、途端に落ち着きを取り戻すお殿様チキンサルサ。ほっとした空気が漂う
      城内。
       それまでは地味だの口うるさいダサいだのイケてないだの近づくと変なニオイがするだのと、陰で好き
      放題言っていた腰元達も、途端にキャー家老様ステキ♡とか言い出したりして、ちくしょうこれだから女っての
      は信用できないんだよ!

       ・・・なんだか途中から違う話になってしまいましたが、メインメニューの御乱行を地味メニュー達がかろうじ
      てくい止めた
感のある試食でありました。家老筆頭のスナックブレッドには、大いなる称賛を込めて拍手した
      い気分ですが、
       「MREも随分美味しくなったとK殿は仰られるが、なんのなんの、まだまだこの年寄りに楽をさせてはくれま
      せんわい・・・」

       と静かに苦笑して、冷めた渋茶をすするだけ・・・といった佇まい。真の実力者とはこういうものか・・・と、ま
      たしてもMREに教えられた気分です。

       あと、食後のおやつ2品で締めくくります。一つ目はPATRIOTIC SUGAR COOKIES。うーん、クッキー
      にまで愛国心を求めるのか、流石アメリカ・・・と感嘆しつつパッケージを開封すると、中からは出土した縄文
      式土器の欠片
みたいなものがざらざらと出て来ました。あ、いや、よく見ると一つ一つが色んな形になってる
      
んですね。はためく星条旗USAの文字、アンクルサムの顔、星マークのシルクハット、あと自由の女神が
      自慢してるソフトクリーム・・・。この単純で脳天気な愛国心の発露、実にアメリカだなあ。
       やや甘いですが、マリービスケット乳酸菌飲料を足した様な味は意外と爽やか。甘味の苦手な私でも十
      分美味しく頂けました。
       二つ目のPiecesは、これまで何度か食べたM&Mチョコみたいな糖衣ピーナッツバター。さほど美味しい
      とも思えませんが、袋入りのピーナッツバターよりもずっと食べやすく、行動中に手軽に補給できる高エネル
      ギー食
としては十分に優秀ですね。

       自分が一切我慢しなくていい形で主役を張りたいのは結構ですが、それはあくまでも名脇役達のサポート
      
があってこそ。そこのところを忘れちゃいかんよと、アメ・・・もといチキンサルサに自分から気付いてほしいと
      思った試食でありました。




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