チキンライス・麻婆豆腐

2018.02.18


       昨年末以来、2ヶ月ぶりの日本海食堂。富山市内の積雪が予想外に少なかったので、少し早く到着してしま
      いました。まあ急ぐ訳でなし、のんびり待つか・・・と思っていたら、珍しく時間通りの1130に開店。し
      かもいつものおばちゃんではなくご主人自らの開店です。
       普段厨房内にいる店主さんと顔を合わせるのは、2年前の月見うどん以来。向こうはもう覚えてもいないで
      しょうけど、私はなんとなく気まずい気分で先客2名とともに入店します。
       さて、今日は最初からチキンライスに狙いを定めて来ましたが、もう一品は何にしようかな。イワシの煮つ
      け
が美味しそうだけど・・・よしこれ、麻婆豆腐いってみましょう。チキンライスとの相性は微妙ですが、こ
      こで麻婆豆腐を見るのは初めて。もしかして新商品かな?この機会を逃す手はないでしょう。

       店内では石油ストーブが3つ、轟々と燃焼し続けていますが、開店直後の日本海食堂は冷え冷えとした空気。
      
天井が高いので、なかなか空気が暖まらないんでしょう。なんとはなしに店内に溢れかえるレトログッズを眺
      めて歩いていると、ん?さっき開いた玄関にシェードが降ろされていました。営業中の立て札も裏返されてる
      し・・・え?もしかしてまだ開店前?

       しかし店主さんは普通にいらっしゃいませって言ってくれたし、先客の2名も普通に入店しています。まだ
      準備中だけど、外は寒いのでとりあえず玄関前にいる3名だけ先に入れてあげようかという事だったのかな?
      もしかしてまたフライング注文してしまったのか俺?
       なんとなく落ち着かない気分で席に戻ってお茶を飲んでいると、ん?以前まで天井に張り渡してあったタル
      チョ
がなくなってますね。どうしたんだろう。
       ここでオムライス&麻婆豆腐が到着。あれっ?運んでくれたのもご主人さんです。いつものお運びのおばち
      ゃんは風邪でも引いたのかな?大事でなければいいのですが。ご丁寧に水まで入れてくれたご主人さんに、天
      上にあったタルチョの事を恐る恐る尋ねてみると、
       「ええ、だいぶ汚れてきましたので・・・」
       との事。年末に来た時はあったと思うので、大掃除のタイミングで外したのかも。

       さて、それではチキンライスです。オーバルプレートいっぱいに盛られたチキンライスは濛々たる湯気をあ
      げていて、寒い時期は頼もしいなあ。高さもあるので、まるで夕陽に赤く染まったエアーズロックの如き威容
      です。あっという間にカメラのレンズが曇るので、息でフーフーしながら撮影しないと(笑)。
       おっ、よく見るとスプーンが白い紙ナプキンできちんと包んでありますね。国鉄時代の食堂車っぽいという
      か、いかにも洋食らしい嬉しい気配りです。
       その紙ナプキンを捩じり外し、まずはチキンライスの中腹あたりにスプーンを突き立てて一口。おおおおお、
      なんというかこの・・・むっちり蒸れ蒸れのチキンライスがたまりません。チャーハンまがいのパラパラのチ
      キンライスとは一線を画す、このスーパーウェット加減一周回った新鮮さを醸し出しています。

       それにしても、普通これほどウェットになるまでケチャップを使うと、もうケチャップ臭すぎて食べれたも
      のではなくなりそう
ですが、このチキンライスはトマト味が濃厚なのにさらりと軽いのが不思議。市販のトマ
      トケチャップにトマトジュースを足して味わいを増しつつ濃度を調節しているのか、それともチキンライスの
      為にわざわざ専用トマトソースを自作しているのか・・・。
       むんむん蒸れ蒸れのチキンライスにちりばめられた具は、鶏肉ニンジンタマネギピーマン。緑色の演
      出を定番のグリーンピースではなくピーマンに任せているところが、ご主人のこだわりでしょうか。なるほど
      濃厚なトマト味の中で、ピーマン独特のほのかに青臭い苦みがいいアクセントになっています。確かにこれは
      グリーンピースには出来ない仕事だなあ。

       鶏もも肉は大ぶりなカットで、噛み締めるたびにじゅわっと染み出す肉汁のジューシーさ・・・これも小さ
      なカットでは味わえません。タマネギはケチャップ色に染まって目立ちませんが、熱を通されてなお残るしゃ
      りしゃり感と甘やかな芳香
が、熱々一辺倒のチキンライスの中で独特の清涼感を漂わせています。
       それにしてもこのチキンライス、嬉しい位に熱々ですね(笑)。一口ごとに体の中にぽっと火が灯る様な、
      まるで鍋物の如き熱量を誇っています。
       そして脇に添えられた冷たいキュウリ、ポテトサラダ、トマト、レタス、千切りキャベツを合間合間で口に
      含むと、口の中の温度がリセットされてまたチキンライスの熱々さを楽しめます。隙間の多い千切りキャベツ
      君が断熱材の役割を果たし、弱々しいトマト君やレタス君、ポテトサラダ君をチキンライスの熱から守ってい
      る
のも、なんとも心憎い手法。

       おっと、チキンライスの陰からイカリング揚げを発見!これは嬉しいオマケです。赤黒い福神漬けもひんや
      り冷たく、薬味としての役割を全うしているのも渋いなあ。
       濃厚さと爽やかさ、熱さと冷たさのコントラストが効いたチキンライスに夢中になるあまり、麻婆豆腐の存
      在を忘れるところでした。豚バラ肉の細切れと崩した豆腐甘辛醤油風の炒め煮にしてあり、ほんの少し加え
      られた豆板醤の香りがいい塩梅。みじん切りのタマネギの甘さもあって、お子様でも十分に楽しめる辛さに収
      まっています。
       ここでふと気がついたのですが、日本海食堂には辛い料理がほとんどないんですよね。そういう意味ではこ
      の麻婆豆腐はかなり異色の存在というか、独特の個性を持った名脇役的な存在と言えます。可愛らしい紅ショ
      ウガとねぎのみじん切りのトッピングも、老練な中にもどこかおどけた雰囲気が漂うベテラン役者っぽい佇ま
      い

       いやあ、今回も美味しかった。それにしても、美味しさ以外に不思議な満足感がありましたよ、日本海食堂
      のチキンライス。なんというか、昔懐かしお子様ランチを食べた様な気分であります(笑)。
       よく考えたら私って、お子様ランチなるものを食べた記憶が殆どないんですよね。子供心にもあんなガキっ
      ぽい食べ物なんて・・・
と小馬鹿にしていましたし(笑)。さすがにこの歳になってお子様ランチは注文しづ
      らい
ので、今思えば少しもったいない事をしたのかも。もっと年齢相応なクソガキであっても良かったなあ。
       そんなちょっとトホホな後悔を思い出させながらも、その隙間を優しく埋めてくれた日本海食堂のチキンラ
      イス。なるほど、だから他のメニューにはない不思議な満足感を覚えたんですね。

       チキンライス700円、麻婆豆腐400円。このチキンライスは、いつかまた食べたくなる味になりそうだ
      なあ。なんとなく笑っている自分に気がついて、慌てておっさんらしいハードボイルドな表情を取り繕いつつ、
      冬の晴れ間が広がった日本海食堂を後にしました。




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