No.23 CHICKEN WITH PASTA
IN PESTO SAUCE


       さて今回は、メニューNo.23『CHICKEN WITH PASTA IN PESTO SAUCE』です。ペストソース
      はこれまた穏やかではないというか、陸自の特殊武器防護隊が出動しそうな名前が気になりますが、調べて
      みるとバジル松の実を使った爽やかな香りのソースとの事。いわゆるジェノヴェーゼってやつでしょうか。
       近年急激に味覚を向上させてきたアメリカ軍戦闘糧食MRE、果たしていい意味でやってくれるのか悪い意
      味でやってくれるのか、半ニヤケでパッケージを開封です。初見の食品もありますし、今回も楽しめそうです。






【内容】
1:CHICKEN PESTO PASTA
2:PINEAPPLE   3:粉末バニラプディング
4:粉末レモンライムドリンク   5:スナックブレッド
6:ベーコン入りチーズスプレッド
7:レッドペッパー   8:加水式加熱材
9:ホットビバレージバッグ   10:スプーン
11:アクセサリーパケット






【アクセサリーパケット内容】
1:粉末クリーム   2:トイレットペーパー
3:マッチ   4:粉末コーヒー   5:塩
6:砂糖   7:粒ガム   8:ウェットティッシュ












       まずはメインのレトルトを加熱剤にセットして、その間に粉末飲料LEMON-LIMEから作りましょう。12
      オンス(約360cc)
の冷水で溶かすと、いかにもアメリカ人が喜びそうな蛍光色の飲み物が出来上がり。ポス
      ターカラーの黄緑色をそのまま水に溶いた様なわざとらしさ
ですが、これが結構イケるんですよね。さっぱりし
      た酸味が爽やかで、暑い季節だとさらに美味しく頂けます。

       続いては、もうひとつのレトルトであるPINEAPPLEを開封。一口大にカットしたパインのシロップ煮ですが、
      やけに色が悪いというか、正直味付けメンマにしか見えません。もっともこれは賞味期限を2年過ぎたブツ
      ので、このあたりは仕方ないかな。期限内のものならもっと美味しそうかもしれません。
       口当たりはかなり柔らかく、舌の上でぐずぐずと崩れていく食感が不気味ですが、なかなかどうして普通に
      パイン缶の味
ですよ。シロップの甘さもすっきりしていますし、パイン自体の風味がちゃんと残っているのでレ
      モンライムドリンクと同系統の爽やかな酸味がいい塩梅。

       次はWHEAT SNACK BREAD。田舎のばあちゃん家の押し入れの奥の湿った埃みたいな匂いがする、
      MRE定番のパンであります。枯れ草っぽい香りもあり、まるで飼葉を食べている馬にでもなった気分ですが、
      慣れるとこれがしみじみ美味しいんですよねえ。
       CHEESE SPREAD WITH BACON。これは今回で2回目かな?滑らかで塩っぱいチェダーチーズ
      ベーコンチップが入っていて、スモーキーな風味がなかなか。これだけ食べても美味しいですが、スナックブレ
      ッド
クラッカーと組むとキツイ塩気が緩衝され、ぐっと食べやすくなります。

       そろそろメインのレトルトが温まってまいりました。熱々のCHICKEN PESTO PASTAを開封して中身を
      開けると、微妙に怪しげな物体がぼとぼとと出て来ました。ぷんとスパイシーな香りが漂い、普通のバジルソ
      ースでもなさそう。ごろごろの鶏肉とネリネリになったパスタがたくさん入っていて、OD色のバジルソースも食
      欲をそそります。まずは一口頂いてみましょう。
       おお、これは美味しい!香辛料の香りが強く、普通のジェノヴェーゼとは随分違う気がしますが、バジル
      松の実
、そこにパクチーレモングラスの風味を加えた様な、何とも不思議な無国籍な味わいです。
       強いて挙げるなら、ジャマイカのジャークチキンが一番近い気がしますが、微かに混じるオイスターソース
      ぽい味わいが、東南アジアテイストとも言えますね。いったいイタリアンなのかジャマイカンなのか東南アジア
      なのか分類しづらい味ですが、やはりこのサンドライドトマトオリーブオイル、そしてバジルの香りが、地中
      海に面したイタリア半島の味なんだろうなあ。

       パスタがヤワヤワなのは長期保存のレトルト故に仕方ない事ではありますが、オイル分が多く鶏肉も結構
      な量が入っているので、食べごたえは十分にありますね。多種多様な香辛料やハーブのお陰でかなりスパイ
      シーですが、キツイ辛味ではありません。いやこれ、ほんと美味しいですよ!
       と、ここでGROUND RED PEPPERの小袋が入っていた事を思い出しました。純粋なジェノヴェーゼに
      辛味は余計ですが、この不思議な味わいのパスタにはちょっと試してみたくなります。という訳で、様子を見
      ながら少しだけ。
       おおお、これは滅茶苦茶美味しい!得体のしれない謎の味に一本太い芯を入れたというか、イタリア人
      ジャマイカ人タイ人を合体させて唐辛子を食べさせたら、メキシコ人になってしまった・・・という感じ。これは
      タコスにくるんで食べてみたい!っていうか、これ本当にMREなの?MREがこんなに美味しくていいの?
      れではもう他のメニューを食べる事が出来なくなってしまいます(笑)。

       いやほんと、驚きの美味ですね。汗をかきつつ美味い美味いを連発する私の横で、ソンブレロ&ポンチョ姿
      の陽気なメキシカン
『HAHAHAHAHA!アミーゴアミーゴ!』と、マラカスを振っている様な気分であります。
       夢中になって食べ進んでいるうちに、残りはあと3口ぐらいになってしまいました。ああ、この感動の美味も
      もう終わりなのか。祭りの終わりの悲しさって、こんな感じだよなあ・・・。あまりにも私好みな味だったので、
      ょっと褒め過ぎ
な気もしないでもないですが、それを割り引いても驚天動地の美味しさでありました。
       そしてこのソースとスナックブレッドの相性が抜群で、レッドペッパーの香りと辛味もスナックブレッドの素朴
      な甘さをさらに引き出してくれる感じ。防虫剤臭い和服を着て日がな一日縁側でネコを撫でていたおばあちゃ
      んが、エロ孔雀みたいな衣装に身を包んだ途端に50才位若返り、突然サンバのリズムで踊り出したかの様。
      ひゅーひゅーばあちゃんイケてるぜ!

       そして今回初のお目見えとなる、VANILLA PUDDING DESSERT POWDER。パッケージを開封する
      と、さらさらの白い粉末が入っていました。末端価格が気になる見た目ですが、ぷんとバニラの香りが漂って
      きて、元気になるお薬とかそういうものではなさそう。説明書きの通りに4オンス(120cc)の水を入れ、切り
      口をしっかり押さえながら60秒間シェイクします。

       中で液体が動いていた感触は最初のうちだけで、すぐに中身が固体になった感じ。きっちり60秒後に恐る
      恐る中身をあけると、もったりべったりした妙な物体が出て来ました。一口食べてみると、うはあ、なるほどこ
      れはバニラ味のプリンそのもの!
見た目は全然プリンじゃないので少し戸惑いますが、型にはまった旧態依
      然とした生き方
を拒否して自らのあるべき姿を模索し始めた、平塚雷鳥の如きフリーダムなプリンです。
       そしてこれが妙に美味しい(笑)。これまで何度も書いてきた様に、私は甘いものが苦手なクチなのですが、
      この滑らかな口当たり、舌の上でふわりととろける濃厚かつ上品な甘み・・・。参りました、頭を下げたくなる味
      わい
であります。それにしても、水を入れてシェイクするだけでこんなものを戦場で味わえるのですから、全く
      アメリカ国防省本気過ぎ

       最後は粉末コーヒーで締めます。この安物のなんでもないスティックコーヒーが、カーニバルの異様な喧騒
      に舞い上がってしまった自分
をいい意味で現実に引き戻してくれます。凡人には凡人にしかできない仕事が
      あるのさ
、と、また一つMREに教えられた気分。
       いやあ、美味かった!ほんっと美味しかったです!メニュー全体の甘さ、酸っぱさ、辛さ、そして香りが手を
      取りあった見事なバランス。久々に感動モノでありました。戦闘糧食の味覚的な最高峰はやはりフランス軍
      と思っていましたが、今回のメニューは瞬間最大風速的ながらも、それと肩を並べたと言っても過言ではない
      でしょう。フランス軍戦闘糧食は王者としての余裕を持って、皮肉とエスプリの効いた祝福の言葉をMRE君
      に贈ってあげてほしいものです。

       全24種類にも及ぶ2008年版MRE試食の旅も、いよいよ次回でラスト。クライマックスに持ってくるには最
      高のメニューでした。それだけに最後の締めとなる24番メニューへの期待が高まりますが、果たして米軍は
      それに応えてくれるかどうか。素晴らしいエンディングを見せてくれるか、はたまたとんでもなく悲惨なオチ
      待っているのか・・・。
       どちらにしても、自分で自分の試食レポートのハードルを上げてしまった気がするなあ。食べる方も気合を
      入れて臨まねば・・・と、ゴールを目の前に改めて気を引き締め直した試食でありました。




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