No.22 CHICKEN AND DUMPLINGS


       さて今回は、メニューNo22『CHICKEN AND DUMPLINGS』です。ダンプリングとは、練って丸めた小
      麦粉を蒸したり煮たりしたもの
で、安価でボリュームがあり栄養的にも優れているため、世界中に似た様なも
      のが多い食材であります。日本のスイトンお団子もその一種ですし、ジャガイモやかぼちゃを使ったイタリア
      のニョッキも、ダンプリングに含まれるとの事。
       そのダンプリングですが、私的にはイギリス軍戦闘糧食で初めて食べたので、なんとなくイギリス料理の一
      種だと思っていたんですよね。正直あんまり美味しくなかったですし(笑)。
       今回組み合わせとなった鶏肉は、牛や豚と違って禁忌とされている宗教が少なそうですし、ある意味人種の
      坩堝
と言われるアメリカに相応しい、非常にワールドワイドなメニューの一つと言ってもいいでしょう。
       パッケージを開封すると、例によって沢山の食品類が出て参りました。ざっと見たところ、今回は随分と甘そ
      うな食品
が目につくのが心配ではありますが、とりあえずメインのレトルトを加熱材にセットして、試食の準備
      に取りかかります。






【内容】
1:CHICKEN AND DUMPLINGS
2:CHOCOLATE COVERED COFFEE BEANS
3:粉末バニラシェイク   4:ショートブレッドクッキー
5:スナックブレッド   6:グレープゼリー
7:チャンキーピーナッツバター
8:アクセサリーパケット   9:加水式加熱材
10:ホットビバレージバッグ   11:スプーン






【アクセサリーパケット内容】
1:粉末クリーム   2:塩   3:砂糖
4:ウェットティッシュ   5:トイレットペーパー
6:マッチ   7:粒ガム   8:タバスコ
9:粉末コーヒー











       まずはVANILA DAIRYSHAKEから。パッケージを開封して6オンス(180cc)の冷水を注ぎ、チャックを締
      めたあとはひたすらシェイク。出来上がったのは、すっかりお馴染みのどろどろねろねろなバニラシェイクです。
      とにかくヘビーな甘さで、甘味が苦手な私は飲んでいると頭痛がしてきます。それにしても、溶けたバニラアイ
      スと山芋のとろろ、そこに山盛りの白砂糖をぶち込んだ様なこの味わい・・・
。シンプルで単純明快なカロリー
      押しが、いかにもアメリカらしいなあ。

       続いてはSHORTBREAD COOKIE。食事の初っ端からいきなりシェイク&クッキーかよ・・・と早くもげん
      なりしますが、それよりこのショートブレッドクッキーって、以前別メニューのMREで試食した後に思いっきり体
      調を崩した事があった
なあ・・・。あの時の何とも言えない胃腸の不快感が蘇ります。
       今回のショートブレッドクッキーは一枚もので、直径80mm、厚さは15mmという巨大なサイズ。見た目は
      以前の毒クッキーと全然違いますが、これ大丈夫なのかな・・・。
       すこし躊躇った後に、思い切ってちょびっとだけ齧ってみますが、あれ?以前の気持ち悪い金属臭というか、
      何とも言えない紙粘土の様なテイストは全くなく、カリカリと軽快な歯触りの普通のクッキーです。もちろんMR
      Eだけあって目眩がするほど甘いのですが、少なくともゴキブリ用のホウ酸ダンゴみたいだった以前のショート
      ブレッドクッキーと比べると、こちらははるかに人間の食べ物らしいと言えますね。

       それにしても激甘シェイクとクッキーが、このメニューのオープニングとは・・・。正直かなりメゲますが、ここ
      でWHEAT SNACKBREADが登場。かなりクセのあるニオイ・・・いや香りに最初は違和感を覚えましたが、
      慣れるとこれが不思議に美味しいんですよね。カビ臭い押し入れの湿った布団に挟んで3年ぐらい寝かせた
      パンの耳みたいなこの風味
が、ヤミツキになってしまいます。
       ただ、水分の少ないモサモサした口当たりなので、これを濃厚極まるバニラシェイクで食べるのはちょっとツ
      ライなあ。慌ててアクセサリーパケットの粉末コーヒーを冷水で溶かし、アイスコーヒーを作ります。安っぽいイ
      ンスタントですが、この単純な苦さに救われた気分。

       それにしてもこのスナックブレッドを食べていると、田舎のバーさん家の押し入れに籠っては駄菓子を並べた
      り空想の地底の宝の地図を書いたりして悦に入っていた、小さい頃の記憶が蘇ります。うーん、あの頃から
      密基地とか閉鎖環境とか籠城とかの、一人遊びが好きだったんだなあ。自分の趣味嗜好のルーツのを改め
      て思い知らされた気分であります。
       続いては、GRAPE JELLY。ゼリーと言うよりもジャムに近いしろもので、酷暑の砂漠に降り注ぐ太陽光線
      の様な焼けつく甘さ
が強烈。なんでまたこんなに激甘メニューばかりを揃えて来たんだろう。消化吸収に優れ
      たカロリー源としてはどれも優秀ですが、私にとっては疲労感がキツく、1000kcal摂取するのに2000kcal
      ぐらい消費
させられteる感じ。元本より利子返済の方が多額になっている、悲惨な多重債務者の気分を満喫
      であります。

       さらに苦行・・・いや食事は続きます。CHUNKY PEANUT BUTTER。砕いたピーナッツ片が入ったピー
      ナッツバターですね。サクサクしたピーナッツ片のお陰で、無印ピーナッツバターよりも食べやすくはなってい
      ますが、ここまで執拗に甘味にボコられた上に、このべったりもったりしたピーナッツバターか・・・。

       満腹感とは全然違う意味で食欲をなくした状態で、温まったメインのCHICKEN AND DUMPLINGSに取
      りかかります。アツアツのレトルトから皿にあけると、うわっ、なにこれ懐かしい。最近とみに腕を上げて美味し
      くなったMREらしからぬ、まるで10年以上昔のMREの様な、とても不味そうな見た目のメインディッシュです。
      最低限の栄養だけは整えましたよ、というこのビジュアル、うーん・・・。
       いやでも、こうして画像を見ていると、なぜか美味しそうに見えるなあ。美味しそうなものが不味そうに、不味
      そうなものが美味しそうに写ってしまう私の超絶撮影テクニック、どうにかならないものでしょうか・・・。とは言え、
      この全く期待できなさそうなところが逆に期待できるというか、最高に不味いと称賛され続けてきた昔のMRE
      を取り戻したかのようなMREです。これは間違った意味でワクワクしてきたぞ!

       微妙に嬉しい引きつり笑いを浮かべつつ、まずは一口。うーん、なんていうんだろうこれ。八宝菜を食べた事
      のないアメリカ人が、写真を見て完全独自解釈のもとに作り上げた訳のわからない八宝菜もどき
というか・・・。
      ちょっと一言では表現できない味わいです。
       たくさん入っている鶏胸肉ですが、ソースに粘度があるのでパサついた感じはありませんね。そしてこの、
      くてフワフワしたものがダンプリングかな。練った小麦粉というよりもジャガイモもちに近い食感で、意外と悪く
      ないですよ。カスタードクリームにまみれていたイギリス軍戦闘糧食のダンプリングよりも、まだ食べやすいと
      思います。
       入っている野菜で確認できるのは、セロリニンジングリーンピース。冷凍臭とレトルト臭が入り混じった、
      かなり微妙なアメリカン中華テイストではありますが、正直もっと悲惨な味を覚悟していたので、これはこれで
      悪くないかも。2008年メニューの中ではかなり不味い方に入ると思いますが、それでも昔のMREに比べれ
      ばこんなのどうって事ないぜ!
というマニアのいやらしい古参気どりを誘発させる味わいです。

       アクセサリーパケットの塩やタバスコ様の力を借りれば、もう少しはっきりした味になって食べやすい気がし
      ますが、今はこの昔懐かしい不味さが妙に愛おしいなあ。世界標準に近い美味しさと引き換えにいつの間に
      か失ってしまったMREらしさというか、MREの悪い意味での個性をしみじみと味わいたい気分。
       最期はCHOCOLATE COVERED COFFEE BEANS。タンカラーのパッケージを開封すると、市販品
      っぽい小袋が出てきました。赤黒黄のカラーセンスが女郎蜘蛛チックで、パンクテイストな字体が露骨に攻撃
      的
。お菓子と言うよりも、脱法ハーブかイケナイきのこの様に見えてしまいます。ケッ、どうせこれも甘いんだ
      ろ・・・
とため息をつきながら開封すると、M&Mチョコを膨らませた様な丸っこい粒がたくさん出てきました。

       やさぐれ気分で一つ食べてみると、固い糖衣に包まれたビターチョコでありました。ほのかにブランデーっぽ
      い香りが漂い、うーん、これはこれで悪くないか・・・と思っていると、中から固い種の様なものが。何だこりゃと
      手のひらに出してみると、ん?これって、コーヒー豆?
       齧ってみると焼け焦げた様な苦さが口の中いっぱいに広がり、まるで消し炭に齧りついている気分。素材の
      味を大切にしてはいますが、これってコーヒー豆ない方が美味しいんじゃないかなあ・・・。

       いやはや、最近のMREはどれも美味しくなったよねーと油断していた私に、背後から猛烈な膝カックンを喰
      らわせた様な、久々につらい試食でありました。食後しばらくは気持ちの悪い胃腸の膨満感に悩まされ、塩こ
      んぶと白ご飯で口直したい気分でいっぱいでした。
       それにしても、なんでまたこんなエグい甘さの食品を揃えて来たんだろう。なんというか、校内指折りの問題
      児ばかりを集めたクラスの担任を押しつけられた、定年間近の気の弱い先生
みたいな気分。
       「ちょっと待てよ・・・こんなの俺にどうしろと・・・」
       とぼやきながら食べ終えた試食でありました。




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