まずは粉末飲料のVANILLA DAIRY SHAKEから。パッケージの上部を切り取り押圧式のチャックを開けて、
6オンス(約170ml)の冷水を注ぎます。しっかりとチャックを締め直し、そのまましばしシェイク。
コップにあけると、真っ白でデロデロのシェイクの出来上がりです。うーん、いつ見てもすり下ろしたとろろ芋み
たいだなあ。早くもどんよりと甘い香りが漂ってきて気分が萎えそうになりますが、とにかく一口。
うぐぐ、予想を裏切らないエグい甘さです。戦場で極甘シェイクを飲みたがる米兵も凄いと思いますが、それ
に応えて見せる米軍も凄いなあ。自衛隊で言えば、戦闘糧食U型改良版にインスタントお汁粉が入っている様
なものでしょうか(ないですけど)。
しかし手っ取り早くカロリーを補給するには、なかなか理にかなった一品なのかもしれません。味の評価は別
として、消化吸収も良さそうですし。
それにしても、これ一杯で460kcalもあるの?確かに脂肪と甘味の塊みたいな飲み物ですが、コンビニおにぎ
り2つ分のカロリーとは・・・。やっぱりアメリカの兵隊さんは半端ではありません。
続いては、最早お馴染みのCRACKERS。これがまたCHEESE SPREADとよく合うんですよね。サクサクで粉
っぽい口当りのクラッカーとねっちり塩っぱいチェダーチーズが、実によく噛みあっています。バニラシェイクの
畳みかける様な甘味でマヒしてしまった舌を、香ばしさと塩気でばちーんと目覚めさせてくれる感じです。
さて、そろそろメインのBEEF STEWが温まってまいりました。火傷に気をつけながら硬いレトルトを開封し、皿
にあけます。そうそう、以前食べた時もこんな感じだったなあ。15o角にカットされた牛赤身肉が、野菜と一緒に
どっちゃりと出てまいりました。野菜はジャガイモ、ニンジン、グリーンピース。ぱっと見は凄く美味しそうなドッグ
フードみたいですが(褒めてるのか?)、とにかく一口頂いてみましょう。
うん、そうそう、こんな味。ドミグラスソースと言うよりもグレイビーソースっぽく、今ひとつ輪郭がはっきりしない
ぼんやりのほほんとしたとした味わいです。
それにしても、同じビーフシチューと言う名前なのに自衛隊のU型のそれとは随分違いますね。こうして食べ
てみるとはっきり分かるのですが、自衛隊のU型ビーフシチューはかなり醤油っぽい味です。確かに白ご飯と
一緒に食べるなら、ああいう味の方が美味しく頂けるんでしょうね。
見た目に関しては、U型の方が遥かに美味しそうです。戦闘糧食とは言え見た目の美味しさはしっかりと拘っ
て欲しいところですが、喫食時はどちらもレトルトパックにスプーンを突っ込んで食べるので、むしろMREの方
が食べ易くて合理的なのかも。U型は牛肉もジャガイモもゴロゴロですからね。
この辺りは一度隊員さんに食べた時の感想を尋ねてみたいですし、逆にU型ビーフシチューを米兵に食べさ
せて感想を聞いてみたい様な気もします。
ちなみに牛肉は沢山入っていますが、これ細切れ肉を圧縮成型したっぽいなあ。噛むとほろほろと口の中で
崩れますが、柔らかくなるまで煮込んだという風ではなく、単に部品単位に分解していく感じです。一品の料理と
しての完成度では自衛隊のU型の圧勝ですが、コストを含めた一つのシステムとしての戦闘糧食と言う意味で
は、MREに軍配が上がるのかなあ。
とは言え、メイフェーアとかのシチュー缶詰って、大体こんな感じの味なんですよね。アメリカの一般家庭では、
夕食のメインディッシュが缶詰を開けてお皿にポン、という事も全然珍しくないそうなので、米兵さん達はこういう
味で故郷の家庭を思い出したりするのでしょうか。
そういう意味では、このビーフシチューはむしろU型のさば味噌煮と比較すべきなのかもしれません。現在も
世界のあちこちで国連平和維持活動に従事している陸自の隊員さん達は、U型のあの缶詰っぽい味のさば味
噌煮を食べては、ふるさと日本の事を思い出しているのでしょうか。
最後はVANILLA POUND CAKEと粉末コーヒーで締めましょう。しかしパウンドケーキって久しぶりだなあ。て
っきり廃止メニューになったのかと思いきや、たくましく生き残っている様で何よりです。これもかなり甘いのです
が、バターの香りが効いていて結構美味しいんですよね、これ。
しかしバニラと銘打ってある割にはそんな味がしません。むしろ、心なしかパイナップルの様な香りを感じます。
うーん、よく分かりませんが、美味しいからいいや。安っぽいインスタントコーヒーとの相性もよろしく、何だかん
だで最後まで美味しく頂けました。
バニラシェイクの甘さとチーズスプレッドの塩っぱさがぶつかり合いながらも、ビーフシチューがその茫洋とし
た味わいで両者の間を取り持って、なかなかよくまとまったメニューだったと思います。ビーフシチューそのもの
の実力はさほどでもありませんでしたが、十分メインを張れるだけの風格と言うか器を感じましたね。締めのパ
ウンドケーキとコーヒーもいい仕事をしてくれましたし。
日露戦争当時、大陸で戦線が膠着し、ストレスのたまった参謀同士がののしり合いの喧嘩を始めたことがあ
ったそうですが、その時満州軍総司令官を務めていた大山巌大将がふらりと現われ、
「みんなで仲良く戦(ゆっさ)をすっとでごわす!」
と笑い飛ばし、とたんに場の雰囲気が和やかになった・・・という逸話を何かの書籍で読んだ事があったので
すが(記憶違いだったらすみません)、そんな一軍の将と呼ぶにふさわしい器の大きさを、ビーフシチューから
感じました。
特に仕事が出来るタイプではありませんが、その懐の深さでしっかりと集団をまとめ掌握しているリーダーと、
相応の実力を兼ね備えた部下たち・・・そんな一つの食事としてのまとまりを感じさせるメニューでありました。
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