宇治駐屯地桜まつり2019
2019.04.07
今年のお花見は、私の大好きな宇治駐屯地に行ってきました。宇治駐屯地には関西補給処が駐屯し、中部方
面隊の車両や火器、弾薬、その他一切合切の物品を取り扱う後方支援の要、補給任務の一大拠点であります。
広大な敷地内にはたくさんの工場や倉庫が立ち並び、しかもその多くが戦前の古い建築物。特に明治期に建
てられた赤レンガ建築物の存在感が素晴らしく、私的にはもうたまンない駐屯地の一つ。大久保駐屯地のお花
見も開放的でいいですが、今年の桜はぜひ宇治で!と、指折り数えてこの日を待っていたのでした。
最寄り駅となる京阪電鉄宇治線黄檗駅には、お昼11時過ぎに到着。空はうららかに晴れ上がり、絶好のお
花見日和です。駅を出るとすぐに駐屯地の正門が見えてきますが、おお、結構人が多いですね。
敷地内を東西に貫く道路沿いに沢山の桜が並んでいますが、どれもほぼ満開。桜自体は先週末から咲いてい
ましたが、ここしばらくの冷え込みのお陰で花は殆ど散っておらず、見事なタイミングでの桜祭りとなりまし
た。
それにしても、やっぱり宇治はいいなあ。古い木造隊舎と桜の組み合わせには惚れ惚れさせられます。残念
ながらほとんどの建物は立ち入り禁止ロープの向こう側ですが、それでも絵になるなあ、古い建物と桜って。
まるで山奥の廃校に来たような気分です。
古い装備品が屋外展示されている広場が見えてきました。155mm榴弾砲M1や74式105mm自走榴
弾砲、60式装甲車、60式自走105mm無反動砲が春のうららかな陽射しの下、のんびりと余生を過ごし
ている様。シブい爺さん達のお花見みたいで、これも絵になります。
同じく野外展示されているUH-1H多用途ヘリの脇を通って、まずは厚生センターへ。建物内にある駐屯
地クラブ『満天酒場そら』は本日貸し切りで、店内では隊員さんのご家族による懇親会が行われている模様。
売店には特にこれと言ったものはありませんでしたが、通勤の自転車用に作業用グローブを2つ購入します。
その後は再び桜並木へ。ああ、いいなあ、この赤レンガ倉庫と桜の取り合わせ。赤コーンと黄黒のポールが
ちょっと無粋ですが、これは場所が場所だけに仕方ないですね。今日は小さなお子さんも沢山来ていますし、
道路に沿った側溝にはフタもありませんし。
ぶらぶら歩いて、本部庁舎前にある屋台広場に到着。うわあ、すごい人混みです。しばらく来ない間にこん
な事になってたのか宇治駐屯地。京都は他にいくらでも有名なお花見スポットがあるのに、皆さんやっぱり珍
しいところを探してくるんだなあ。
圧倒されながらまずは屋台をチェック。たこ焼き、焼きそば、串焼き、唐揚げ、フランクフルト、フライド
ポテト、みたらし団子、イカ焼き・・・と色々ありますが、流石に全て外部業者の屋台ですね。やはりこれだ
けの人出になると場内警備に手を取られるので、隊員さんの屋台を出せる余裕はないか。宇治は特に敷地が広
いですし。
お、さっき厚生センターに入っていた隊員クラブ満天酒場そらが、カレーの屋台をだしていますよ。まずは
ここからいってみますか。
テント内に店員さんは一人だけで、カレーの盛り付けから代金の受け取り、一緒に出している焼き鳥やフラ
ンクフルトの調理まで全てワンオペなのは大変そう。応援は来ないのかな。結構待たされそうですが、イベン
ト内容がお花見だけになんだかゆったりした気分。のんびり待つのもいいものです。
しばらくして入手できた満天酒場そらのカレー。この盛り付けの乱暴さも、屋台の味わいです(笑)。味は
まあいたって普通の、肩の力の抜けたカレーですが、肉やタマネギが予想以上に入っていて嬉しいなあ。
さて、もう一品食べたいところですが、もしかしたら西門の駐車場の近くにも何か屋台があるかもしれませ
ん。以前はあそこに隊員さんの屋台がありましたし。
という訳で、桜と古い建物を眺めながらぶらぶらと西門方向へ移動。桜、赤レンガ、木造建築がたまンない
宇治ですが、コンクリ建物も味わい深いなあ。これも戦前のものでしょうか。今新築したとしても、こんな建
物にはならないでしょう。
広場のあちこちにはレジャーシートを敷いたお花見の人達がいて、みなさんマナーを守って静かに桜を楽し
んでいるのがいい感じ。バカ騒ぎや自分勝手な振る舞いをする人は1人もおらず。お花見かくあるべしと言い
たくなる、理想的なお花見です。
咲き誇る桜を眺めながら、いつもよりペースを落としてゆっくり歩く。たったそれだけで、なんだかとても
豊かな気分になれるのが不思議です。
そんなのんびり気分で西門脇の駐車場に到着しましたが、残念ながらこちらに屋台は無し。ううう、腹減っ
たなあ。さっきのカレーが余計に空腹を刺激したみたいです。屋台に戻りましょう。
お昼時とあって、さらに混雑の度合いを増した屋台広場。うーん、何食べようかな。串焼きやフランクフル
トという気分じゃないし・・・よしこれ、亀山味噌焼きうどん。これいっときましょう。
という訳で、しばらく待って入手した亀山味噌焼きうどんですが、これが驚きの美味でした。味噌特有の野
暮ったい鈍重さがいい意味での力押しになっていて、豚肉もキャベツもたっぷり。すっきりした甘辛醤油味や
気取ったソース味とはまるで性格の異なる、この野太いどすこい感がたまりません。いやあ、大当たりですよ
亀山味噌焼うどん。来年もこの屋台来るのかな?また一つ次のお楽しみが増えました。
隊舎の脇では、滋賀地本のマスコットであるしがぽん3兄弟の3男、空ぽんが子供相手に愛嬌を振りまいて
いました。お隣の県の駐屯地のイベントに花を添えに来た模様です。沢山の子供や女性に囲まれて記念撮影責
めにあっていた空ぽんですが、係の隊員さんに手を引かれて次の場所へ移動。
その後は駐屯地資料館『彰史館』へ。規模は小さいながら、これもいい雰囲気の建物ですね。入って左手に
は宇治駐屯地のこれまでの歩みを写真で展示してありましたが、各種訓練や演習、駐屯地一般開放や納涼盆踊
り等の様子を、昔と今とを並べて展示してあったのが面白いと思いました。
訓練目的は同じでも装備品が全然違うなとか、昔は女性自衛官が格闘訓練とか想像もできなかっただろうな
とか、防弾ベストにサングラス、89式小銃を持って近接戦闘訓練を行う現代の隊員さんなんて、昔の隊員さ
んが見たらSF映画みたいだろうな・・・等と、時代の違いを立体的に感じさせる手法がとても興味深い。
沢山の貴重な資料を分かりやすくまとめたいい資料館ですが、一点だけ気になったのが旧軍時代の制服を着
せたマネキン。制帽に髪型が全く合っておらず、なんだかチャラついた白人が面白半分で旧日本兵のコスプレ
をしているみたい。せめて髪の毛の部分を削るとかすればいいのに。どこから引っ張って来たんでしょうか、
こんな怪しいマネキン(笑)。
その後は宇治駐屯地名物展望塔へ。ここがまだ陸軍砲兵工廠宇治火薬製造所だった120年以上前に、給水
塔として作られたもので、その後最上階の水槽部分を撤去し、現在は展望塔として使われている建物でありま
す。それにしてもこの赤レンガの圧倒的なボリューム、古臭いが故に味わいに満ちたデザイン・・・何度見て
もうっとりします。
内部は頑丈な鉄骨で櫓状に補強され、壁面には昭和26年の宇治管理補給隊準備隊発足から現在に至るまで、
1年ごとの分かりやすい年表にして展示してあります。その歴史年表ですが、殆どの人がろくに読まずスルー
していくのがちょっと残念。じっくり見て行くととても興味深いのになあ。
しかし昭和46年5月の『駐屯地茶摘み開始』ってのは何なんだ?駐屯地内に茶畑があるの?隊員さんが育
ててるの?
ちなみにレンジャー教育を行う駐屯地には、食べられる野草と食べられない野草を見分けるための植物園が
あると聞いた事がありますが、茶畑がある駐屯地なんて初耳です。いや、もしかしたらお茶どころ静岡県の駐
屯地にはあるのかな?
その翌年昭和47年には、宇治駐屯地創立20周年を記念して関西地区補給処音頭なるものが制定、発表さ
れたとの事。ちゃんと振り付けもあるのか・・・まあ音頭ですからねえ。
さらにその翌年には、関西地区補給処音頭がソノシート化され、約2000枚を関係部隊や隊員さんに配布
したとか。今も残ってるのでしょうか、ソノシート。欲しい、猛烈に欲しい。とは言え貰った隊員さんは、い
ったいどんな表情で聴いたんでしょうか。あくまでも私の想像ですが、
「・・・こんなもんに金使いやがって!」
だったんじゃないかなあ・・・(笑)。っていうか、若い人には何の事やらでしょうねえ、ソノシート。
そんな一つ一つのトホホニュースだけではなく、また別の一面も見えてくるのがこの年表の興味深いところ
です。昭和26年の部隊発足を皮切りに、当初は
『スポーツ大会に参加したよ!』
『隊員クラブを作ったよ!』
『女性自衛官が来たよ!(≧∇≦)キャー』
『映画のロケが来たよ!』
『落語家柳家金語楼が来たよ!』
『クリスマスパーティーを開催したよ!』
『NHKのど自慢の収録が来たよ!』
と、至って呑気な項目がちらほら混じっていましたが(こんな軽薄な文面ではありませんが)、これが最近
になると度重なる海外派遣任務や大規模な災害派遣、その合間を縫って各種集合訓練や部隊演習が詰め込まれ、
年表がどんどんハードでシビアな文言で埋め尽くされていきます。サイバー攻撃対処訓練なんて、昔の隊員さ
んが聞いたら訳わからないだろうなあ。
日に日に厳しさを増していく世界情勢、毎年の様に発生する大規模自然災害、そして近い将来、ほぼ確実に
発生するであろう南海トラフ巨大地震への備え・・・中部方面隊の後方支援の要たる宇治駐屯地に科せられた
役割の重さについて、改めて思い知らされた気分です。
そんな事を考えながら階段を上がり、最上階の展望室に到着。ちなみにこの展望室は撮影厳禁です。周辺の
住民のプライバシーに配慮したそうですが、これはまあ仕方ないですね。高さ約30mという中途半端に生活
感のある眺めなので、真上から撮影されてる気分になる人もいるでしょう。
ちなみに最上階にいた隊員さんに茶摘みについて尋ねてみると、地域の農家の支援を兼ねた茶摘み体験とし
て行っているそうです。
「駐屯地の中に茶畑がある訳ではないんですよ(笑)」
との事でした。そりゃそうですよね(笑)。
屋台を味わい桜を楽しみ、のんびりゆったりと春の一日を過ごすことが出来た宇治駐屯地桜まつりでありま
した。とは言え展望塔の歴史年表の終盤のハードさには、やはり考えさせられるものがありましたね。今年は
隊員さん達が活躍する様な大規模自然災害がない事を、心の底から祈りたい気分。日々の多忙な業務の合間を
縫って桜祭りや納涼行事、駐屯地創立記念行事を行ってくれる宇治駐屯地ですが、たまには
「なんか最近ヒマだから、関西地区補給処音頭パート2でも作るか!」
ぐらいにのんきな一年になってもいいじゃないですか!
とは言え、今のベテラン隊員さんですらなんじゃそりゃ・・・ってなりそうですよね、関西地区補給処音頭。
今後の新隊員確保を見据える意味でも、音頭ではなくむしろ関西地区補給処ラップとかの方がいいのかも。
毎年秋に行われる創立記念行事にて、ノリノリの関西地区補給処ラップを披露する若い隊員さん。微妙な面
持ちでそれを聴いている、駐屯地司令とその幕僚。
「なあ、今若いのがやってる関処ラップって、どう思う?」
「はあ、正直自分にはよくわかりません、司令」
「俺もわからんわ・・・でもな、若い奴等の気持ちを理解する意味でも、分からないを分からないままにし
ておくのはダメだと思うんだよ」
「はあ(この人指揮官としてはすごく有能なんだけど、昔からたまに変な事言い出すんだよな・・・)」
「という訳で、今日から二人でラップの練習するぞ!恥ずかしいから皆には内緒でな!来年の桜まつりで披
露してびっくりさせようぜ!」
「はあ・・・(えええええええええええええええええ、ちょ、司令、えええええええええええええ)」
こんな一幕を想像してしまい(そんな司令いる訳ないだろ!)、帰りの電車の中でなんだかとても面白くな
ってしまった今年の宇治駐屯地桜まつりでありました。
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