OSAKA防衛防災フェスティバル2019

2019.03.03


       さて2019年の一発目のイベント、私の地元で開催されたOSAKA防衛防災フェスティバルに参加してき
      ました。会場となるアジア太平洋トレードセンターには昼前に到着しましたが、朝から空模様が怪しく今にも
      雨粒が落ちてきそう
。朝イチの混雑を避けるために雨を承知でこの時間に来たとは言え、なんとか持ってほし
      いなあ・・・と曇り空を見上げつつ、イベント広場に向かいます。
       目の前にはMSC684掃海艇なおしまが停泊し、沖合からはMST464掃海母艦ぶんごが入港しようと
      しているところ。ぶんごの甲板にはたくさんの乗艦者が見えますが、どうやら午前中は青少年を対象の体験航
      海
を行っていた模様です。
       広場の陸自車両展示会場には16式機動戦闘車中距離多目的誘導弾155mmFH-70榴弾砲指揮通
      信車
軽装甲機動車野外手術システム等の駐屯地創立記念行事でお馴染みの車両がずらりと並んでいます。

       さらに大阪地本のドーラン体験や千僧駐屯地第3後方支援聯隊補給隊からの野外入浴セットを使った足湯、
      伊丹駐屯地第36普通科連隊からの野外炊具1号(改)、レンジャー隊員による商業施設屋上からのロープ降
      下
を見て回りました。
       その後は掃海艇なおしまの一般公開へ。MSC684掃海艇なおしまは、2001年3月に就役したすがし
      ま型掃海艇の4番艇。MSC683掃海艇つのしまとともに阪神基地隊にて第42掃海隊を編成している、
      中機雷処理専門の海のお掃除屋さん
ですね。

       若干の待ち時間の後に、久しぶりの掃海艇なおしまに乗艦。おお、甲板には木材の継ぎ目が入っています。
      やっぱり木造船独特の雰囲気がいいなあ。

       磁気に反応する機雷を避け、万が一の触雷の際も木造船体ならではのしなりで衝撃を吸収してくれる、実に
      掃海艇に向いている木造船体ですが、近年はこの規模の木造船を作れる船大工の技術継承が不透明、材料と
      なる輸入木材の供給も不安定
       また木造船ゆえに船体寿命が比較的短く、建造費も維持費も高くつく・・・というデメリットも大きいため、
      現在は強化プラスチック製の掃海艇が主流になりつつあります。そう遠くないうちに、最後の木造掃海艇を見
      送る事になるんだろうなあ。そんな事を考えながら、ラッタルを上がって艦橋後部の甲板へ。

       久しぶりの掃海艇の艦橋ですが、護衛艦と違って周囲のほとんどが窓になっているため、非常に明るい雰囲
      気。内装も磁気を発しない木材を多用しているので、任務の危険性とは裏腹におしゃれっぽさすら漂います。
       操舵装置の傍には艇長さんがいて、見学者の女性達から記念撮影責めにあっています。シュッとした男前
      のでこんな事もよくあるのか物慣れた感じで、カッコいい海軍さんの見本みたいな人ですね。掃海艇の艇長は
      概ね3等海佐が拝命するため、1佐2佐あたりのベテランオヤジが殆どな護衛艦の艦長よりも、ぐっと若々し
      い
のも人気の一つでしょうか。

       ふと見ると、天井に掃海艇なおしまの部隊章と思われるイラストが掲げられてありました。あの槍で貫かれ
      ているこれは、バラの花かな?それにしてもなんでバラなんだろう。傍にいた隊員さんに尋ねてみると、
       「いやあ、これはバラじゃなくて、槍に貫かれて爆発している機雷じゃないですか?私はずっとそう思って
      たんですけど(笑)」

       えー、そうなのか。でもトゲのついたツルもあるし、やっぱりこれバラなんじゃ・・・。

       その後は艦橋前の広い甲板へ。機雷の処分時には見張り台として使われる場所だそうですが、見張りの為に
      広い甲板を作ったというよりも、真下にある水中機雷探知装置の上がたまたま見張りをするのに好都合だった
      という感じかな。船体が小さいのに妙な開放感があるのも、この広々とした艦橋前の甲板のお陰でしょう。
       お、さっき記念撮影責めにあっていた艇長さんがいましたよ。先程の部隊章の説明がなんだか腑に落ちない
      まま
だったので、改めてお話を伺ってみます。

       「はい、仰る通りこれはバラをデザインしています。海上自衛隊の艦艇にはそれぞれニックネームがありま
      して、このなおしまはイニシャルがNである事から、無線通信のフォネティックコードのN(ノヴェンバー)
      をもじってローズ・ノヴェンバーと呼ばれています。そこからバラをモチーフにしたデザインになりました。
      なぜバラが選ばれたのかは分かりませんが、もしかしたら艦名を頂いた瀬戸内海に浮かぶ直島が、バラの産地
      なのかもしれませんね(笑)」

       との事でした。さっき別の隊員さんにお話を伺った時は、爆発してる水中機雷じゃないですか?との事でし
      たが、やっぱりバラだったんですね。おかげさまでスッキリしました・・・とお礼を告げた途端、艇長さんは
      先程までの柔和な笑顔から一転して険しい表情になり、
       「そんな事を言っている奴がいましたか(怒)!一体どいつだろ。あとで○○○しなきゃ・・・」

       あわわわわわ、私の軽率な一言が原因で、さっきの隊員さんがお説教される羽目になるのか。なんか悪い事
      言っちゃったなあ。とは言え、『KNOW YOUR BOAT』は船乗りの基本。自分のフネの部隊章の由
      来を把握していない乗組員がいたなんて、部隊指揮官としては由々しき問題なのでしょう。
       さっきの隊員さんが艇長さんに絞られる気まずい風景を見たくなかったので、逃げる様に艦橋を後にします。
       その後は前甲板に出て、20mm機関砲を撮影。海底から切り離して浮上させた水中機雷を、遠くから射撃
      して爆破処理
するための装備品です。機銃弾を簡単に弾き飛ばしそうな丸い水中機雷を遠距離から狙うのは大
      変そうですが、上手な隊員さんは最初から簡単に命中させてしまうとか。訓練よりも射撃センスがものをいう
      世界だと、別の掃海艇で聞いた事があります。

       以上でちょっと気まずい掃海艇なおしまの見学は終了。舷門の隊員さんに挨拶して上陸します。お、さっき
      まで長蛇の列が続いていた掃海母艦ぶんごの乗艦待ちが、ずいぶんと短くなっています。
       MST464掃海母艦ぶんごはうらが型掃海母艦の2番艦で、1998年3月就役。掃海艇や掃海ヘリの支
      援
を行うために建造された艦ですが、その補給輸送能力の高さ高度な医療設備、司令部機能を併せ持つ事か
      ら、大規模災害の現場でも実力を発揮している艦の一つです。

       という訳で、さほど待つ事もなくぶんごの厳門に到着。さすが大型艦、見上げる様な高さの乾舷です。ラッ
      タルを上がってまず見えてきたのは、前甲板に佇む76mm単装速射砲。きり型やゆき型護衛艦に搭載されて
      いるものと同じ、発射速度が売りの小型軽量砲塔です。ぶんごはきり型やゆき型護衛艦に比べてたっぷりとし
      た艦幅
があるので、なんだかやけに小さく見えますね

       そのすぐ近くには、教練用の模擬弾が展示されてありました。重量は実弾と同じく、弾頭部を含めて約13
      kg
。発射時の給弾は全自動で行われますが、給弾装置への装填は一発ずつ人力で行います。
       76mm単装速射砲から先の甲板はクローズされていますが、ここも艦の幅があるせいかすっきりした印象。
      そこから振り返ると、ボリュームのあるぶんごの艦橋が圧し掛かってくる様。ステルス性能を持たせるために
      僅かな傾斜
がつけられていますが、掃海艇を横付けして補給作業を行う必要があるため、船体そのものには傾
      斜はつけられていない
そうです。

       これは随分中途半端な設計に思えますが、そもそも任務の内容的に高度なステルス性能を要求される艦では
      ありませんし、船体形状のステルス化の流れの中では過渡期的な時代に設計されたので、こんなものなのでし
      ょう。
       続いて艦橋構造物と煙突の間にある、ちょっとしたスペースにたどり着きました。足元には艦内に通じるエ
      レベーターの扉の大きなヒンジ
があり、左右に搭載されたクレーンを使って、ぶんごの両舷に横付けした掃海
      艇に補給作業を行う模様。

       煙突の横にある大きなドラムに巻き取られてあったのは、オレンジ色の磁気掃海具です。電線を内蔵した
      力体
を海面に長々と浮かべて、そこに電流を通して強力な磁場を発生させる事により、水中機雷に船舶だと誤
      認させて爆破処理
するための装備品。いわばデコイですね。
       作業時は十分に安全な距離をとるとは言え、大型船を真っ二つにする威力を持つ水中機雷が相手です。相当
      な緊張感が漂うんだろうなあ。

       続いては後部の飛行甲板へ。おお、この広さ!この開放感!甲板中央には航空掃海具を艦内に収容するエレ
      ベーター
がありますが、航空掃海具とワンセットで運用されるMH-53E掃海輸送ヘリは全機退役したので、
      今は何も使っていないのかなあ。護衛艦の格納庫に比べてやけに高い天井も、全高10m近いMH‐53E掃海
      輸送ヘリに合わせた設計
なんですね。

       飛行甲板の後方には、円筒形の沈底機雷と球形の係維機雷が展示してありました。アブナイことこの上ない
      奴ですが、ぱっと見がウニみたいでカワイイのがなんかズルいなあ。確かこの突起の中には液体を封入したガ
      ラス管
が入っていて、船底にぶつかった時に内部のガラス管が割れ、漏れ出た液体が科学反応を起こして起爆
      するんでしたっけ。

       その後も行列はじわじわと前進し、30分かけてようや右舷の旗甲板に到達。最近の艦艇広報の混雑ぶり
      を考えれば、これでもまだマシな方でしょう。しかし艦橋も人が一杯で、結局さらに30分待ってようやく艦
      橋内部に入る事が出来ました。

       前方の窓からは、広場にずらりと並んだ陸自車両群が見下ろせました。やっぱりぶんごの艦橋は結構な高さ
      がありますね。さすが基準排水量5700㌧。
       私の後にもたくさんの人達が並んでいたので、艦橋の見学はほどほどにして艦内へ。お、司令公室が公開さ
      れていました。設計段階から洋上の司令部機能も充実させたぶんごだけに、実に広々と使い勝手がよさそう。
      そのぶん係の隊員さんは掃除が大変そうですが、大きなソファにかけられた純白のシーツにはシミ一つ見当た
      らず
。この辺はさすがだなあ。

       他にも艦内を色々と見て回れた様ですが、一般公開終了時刻が近づいているらしくこのあたりで降りる事に。
      うーん、やっぱりもう少し早くから並んでおくべきであったか。美味しいところを見逃してしまいました。
       主な催し物はおおむね終了したのか、ずいぶんと人が少なくなった展示会場。さて、私もそろそろ退散しよ
      うかな・・・と、会場の隅の方で何気なく撮影画像を見直したところ、ん?んん~?んんんんん~?なにこれ
      ・・・なんで前半の陸自車両展示の画像データがきれいさっぱり消えてるの?
       頭の中が真っ白になりながら、なんとか事態の把握に努めます。今回は近場のイベントだったので、いつも
      のデジタル一眼ではなく手を抜いてコンパクトデジカメを持ってきたのですが、移動中にカメラを突っ込んで
      いたポケットの中でスイッチが入ってしまい、気がつかないうちに撮影画像が消去されてしまった模様。
      あああああああああ、なんてこった。初めて見る広域監視装置災害派遣用のドローン等、興味深い装備品を
      沢山撮影したのですが・・・まったくトホホであります(泣)。

       レポを書いている今はもううっかりミスの笑い話ですが、初っ端から著しくテンションが下がってしまった
      2019年の開幕戦でありました・・・。




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