舞鶴グリーンフェスタ2019

2019.05.18


       京都府の舞鶴地方隊で行われた、舞鶴グリーンフェスタに参加してきました。舞鶴グリーンフェスタは毎年
      7月に行われていたサマーフェスタを前倒しする形で今年から行われるイベントで、まだそれほど暑くもなく
      梅雨の時期でもなく、気候的にベストなタイミング。また艦艇イベントが集中する夏場から外れてくれるとい
      う意味でも、艦艇ファンにとってはとてもありがたい変更となりました。
       当日は出だしでいきなりつまづいてしまい、大阪市内の自宅を出発したのは朝7時。開門には間に合わない
      な・・・と思いながら舞鶴若狭自動車道をひた走っていると、先行して現着した富山県のSAA水兵さんから
       『赤レンガパーク駐車場は既に満車』
       とのメールあり。ええええええ、まだ0800なのに!?混雑は予想していましたが、まさかここまでとは
      ・・・と思いつつ0850に舞鶴西ICから一般道へ。北吸桟橋周辺にも駐車場は沢山用意されていますが、
      恐らく既に満車だろうと判断し、最も遠い舞鶴航空基地の駐車場へ向かいます。
       という訳で、第23航空隊の本拠地である舞鶴航空基地に到着。ここもいっぱいだったらどうしようと思い
      ましたが、幸い駐車場はまだ空いていました。隊員さんの誘導に従って車を停めて、シャトルバスで北吸桟橋
      へ移動・・・の前に、舞鶴航空基地名物のレトルトカレーの屋台を覗いてみましょう。

       手荷物検査をパスして、屋台通りへ。おお、あった!レトルトカレーがずらりと並ぶ屋台!今回も未入手の
      カレーが沢山あり、海自レトルトカレーマニアとしてはお宝の山の様です(笑)。もうこれだけでも舞鶴まで
      やって来た甲斐があるというもの。
       まずは呼吸を整えて、未入手のカレーを2つずつ選んでいきます。へー、おおみなと海自カレーなんてのも
      あるのか。あれ?呉海自カレーのK08番が見当たりません。フルコンプを目指す私としては、これは由々し
      き問題
です。開店したばかりで陳列がまだなのかな?と思いつつ店員さんに尋ねてみると、
       「ああ、これはですね、商品化寸前まで進んでたんですけど、艦の認定がもらえるギリギリのところで急に
      出港してしまったので、08番だけ商品化が間に合わなかったんですよ(笑)」

       なるほど。艦のカレーを再現してきちんとお墨付きを貰おうとすると、そういう事もあるんですねえ(笑)。
      普通のレストランや観光地のカレーではまずあり得ない、実に海上自衛隊の艦艇のカレーらしいイイ話であり
      ます。まあこれはいずれ入手できる日を楽しみに待ちましょう。それにしても、どの艦艇だったんだろう。

       あと、空母いぶきカレーなんてものまであって驚きました(笑)。もうなんでもアリだな海自カレー。実在
      しない艦のカレーが果たして海上自衛隊カレーと言えるのか、それってもう普通のレトルトカレーと一緒なの
      では・・・
と一瞬購入を躊躇いました。そもそも私、空母いぶきを読んだ事がないですし。
       しかし、空母いぶきを読んだ事のない予備知識ゼロな私が、このレトルトカレーを食べただけで解釈する空
      母いぶき
というのも、それはそれで確信犯的な面白さがありそうです。一つ間違えば原作ファンから袋叩きに
      されそうな気もしますが(笑)、想像しただけで変な笑いがでたのでこれはこれでアリ、と2つ購入。
       開門して早々に10種類×2つずつの20個もまとめ買いした私を面白がってか、店員さんはおまけのポス
      トカードを3枚も選ばせてくれました。
       いやあ今回ものっけから大漁大漁、とホクホク顔で紙袋2つ分のカレーを車に仕舞い込み、シャトルバス
      乗り込んで北吸桟橋を目指します。

       お、今年もジャパンマリンユナイテッドの敷地内を通って北吸桟橋へ向かうんですね。昨年の台風被害で土
      砂崩れを起こした道路が、まだ完全に復旧していない所為でしょうか。それでも普段はJMU関係者しか通れ
      ないトンネル
を通れたり、巨大な工場が立ち並ぶ敷地内を走れるのはちょっと得した気分。ブロック工法で組
      み上げられる巨大な船体があちこちに並び、天井が高い工場内では溶接作業が行われているのか、時々白い光
      が瞬いています。
       という訳で、曇天の北吸桟橋に到着。目の前にはDDG177護衛艦あたごの巨大な艦橋構造物が。イージ
      ス艦を見るのも久しぶりですが、やっぱりデカいなあ。

       そのあたごの前には、珍しい船が。ASY91特務艇はしだてです。特務艇とはこれまた物々しい響きです
      が、国内外のVIPを招いての式典懇親会の舞台となる迎賓艇、いわば海上のパーティー会場。その為はし
      だての影の主役は給養員
と言っても過言ではなく、選ばれる給養員は海自では三ツ星シェフとして認められた
      も同然
という、実に誉れ高いフネであります。

       また医療支援設備通信機器も充実し、大規模災害の現場では対策本部機能を併せ持つ医療船としても活躍
      可能。普段はめったに一般公開されないフネですが、こういうお役立ち船が海自にもありますよ、と広く知っ
      てもらうのはとてもいい事です。
       ここで先に現地入りしていたSAA水兵さんと合流。まずはDDG177護衛艦あたごに向かいます。背の
      高い舷梯を上り、右舷通路へ。三連装短魚雷発射管を眺めながら、艦橋構造物内の通路に入ります。

       まず目についたのが、船体の塗り直しや水先案内人の乗り降りに使用するジャコップ、いわゆる縄梯子です。
      ぐるぐる巻きにしてバスケット状のフレーム内に収まっていますが、度重なる使用で表面のニスが剥がれ落ち、
      角が丸くなっています

       初めてあたごに乗艦した時はこのジャコップもピカピカで、やっぱり新しいフネは違うなあ・・・と思った
      記憶があるだけに、就役してから今までの10年間であたごが乗り越えて来たいろんなものが見えてくる様。

       続いて現れたのが、溺者救助訓練で使用する等身大のお人形。これを海に放り込んで、救助要領を体に叩き
      込む訳ですが、こんなお人形一つにも各艦それぞれの個性というか気風がにじみ出るので、見ていて結構楽し
      いんですよね。
       ちなみに護衛艦あたごのお人形は、メガネを外した勉三さんみたいな顔になっていました(笑)。これでは
      救助する方も力が抜けてしまいそうだなあ。ちなみにこの勉三さ・・・もといお人形は壁面にロープでぐるぐ
      る巻きに縛り付けられてあったので、まるで何か大きなヘマをしてお仕置きされてるみたいなのが哀れ。

       その後は前甲板へ。おお、さすがに広い!最近は大型護衛艦の一般公開の機会も少なくなったので、この風
      景も久しぶりな気がします。
       振り返って見上げた艦橋の左右に張り付いている八角形は、イージスシステムのキモであるSPY-1Dレ
      ーダー
。艦の全周360°を監視する強力無比な対空レーダーですが、位置的になんだかほっぺを赤くしてい
      る子供
みたいに見えるのが微笑ましい。
       あたごの隣に係留されているのは、DD118護衛艦ふゆづき。こうして並ぶと艦橋構造物のボリュームの
      違い
がよく分かりますね。ふゆづきも単艦で見れば十分立派な艦ですが、イージス艦が隣にいるとさすがに小
      さく見えます。

       前甲板に聳え立つのは、面構成のシールドが施された62口径5インチ砲。発射後は砲身上の蓋が開いて
      莢を排出
する仕組みですが、甲板のかなり遠くまで薬莢が飛んだ跡が残っています。隊員さんにお話を伺うと、
      発射後の薬莢は持ち帰りますが、やはり海に落ちて回収できなくなるものもあるとか。
       あとこの、砲身の付け根右側にある四角いお弁当箱みたいなものは何なんでしょう。別の隊員さんに尋ねて
      みると、その人は砲術の隊員さんではなかったらしく、すぐに別の隊員さんに問い合わせてくれました。その
      時の聞き方が
       「なあなあ、あの砲身の根元についてる四角いお弁当箱みたいなのって何?」
       だったのが笑ってしまいました。艦内の仕事は各部署ごとに高度に専門化されているので、知らない部署に
      ついての質問は私と同じ素人レベルの聞き方になっちゃうんですね(笑)。

       ちなみの問題のお弁当箱は、弾速測定器でした。発射された砲弾がきちんと要求を満たす性能を出している
      かどうかをチェックするとの事。
       その後は艦橋真下の高性能20mm機関砲ファランクスチャフロケット発射機を見てから、左舷の艦橋内
      通路へ。見学コースはここから隣りにいるDD118護衛艦ふゆづきに向かいます。それにしてもこの隣り合
      った舷側通路の、独特の圧迫感。いかにも今時の大型艦ですね。これがゆき型やきり型だったら、もっと風通
      しの良さそうなスカスカした感じになるのですが。

       「ふゆづきはこの辺がバリアフリーになってますね」
       とSAA水兵さん。あ、ほんとだ。艦橋内通路の入り口、甲板に敷居の段差がないんですね。そのバリアフ
      リー化の原因になったと思われるのがこれ、デコイランチャー。やけに細かい凹凸のあるデザインが、もう2
      世代も前になってしまった昭和のニオイを感じさせて好きな装備品です。

       別の場所にある静止式ジャマーが艦に迫りくる魚雷の音響センサーにエラーを起こして目標を失探させ、そ
      こにこのランチャーから発射したデコイが現れて、魚雷を遠く離れた場所まで引っ張って行って爆破させる訳
      です。
       側面の大きな扉が閉まった艦橋内舷側通路はほぼ真っ暗で、天井に灯ったオレンジ色の電球がなんだか怪し
      い雰囲気。昨年広島で立ち寄った、狂気の喫茶店『伴天連』を思い出すなあ(笑)。
       その後は舷側通路を抜けて、ふゆづきの前甲板へ。艦内容積確保のために甲板から一段上がったVLSのお
      陰で、前甲板は実際よりも狭く感じます。とは言えこれはこれでメリハリが効いてカッコイイなあ。

       艦首にはあたごと同様に62口径5インチ砲が奢られていますが、こちらはあたごに比べて甲板が一回り狭
      いせいか、大きさは同じでも存在感を増している感じ。米軍が使用している全ての5インチ砲弾の供用が可能
      なので、作戦行動時の一体感がより増したと言えます。
       艦橋上部に貼られた絆創膏みたいなのは、ひゅうが型護衛艦から採用された国産多機能レーダーFCS-3
      A
。複数の目標に対して素早い同時対処を行う事で、このふゆづき以外の艦まで守る事が可能。弾道ミサイル
      対処も行えるようになったイージス艦を守る、護衛艦の護衛艦。まさに最強の用心棒です。

       お、ふゆづきは艦首先端部まで公開しているんですね。お陰で砲身と艦橋を一直線に纏めた構図で撮影でき
      るのが有難い。どうしても左右に人が入ってしまいますが、これは凌波性を高めた鋭い艦首形状なので仕方あ
      りません。
       お、対岸のJMUの岸壁にDDH181護衛艦ひゅうがの姿が。艦橋には足場が組まれ、飛行甲板には大き
      な白テント
が並んでいます。次の一般公開ではピカピカになって戻ってくるんだろうなあ。DDG175護衛
      艦みょうこう
もドック入りしていますが、こちらは錨が外されただけ。ドック入り直後なのか、それとも退院
      間近かな?

       その後はふゆづきの左舷艦橋内通路へ。出口近くには溺者救助訓練用のお人形、ふゆづきのアイドルみゆき
      ちゃん
がボースンチェアに収まっていました。あたごの勉三さんに比べればまだ扱いはいいと言えますが、内
      股で手足を縛られているのが人質っぽくてなんともはや(笑)。

       通路を出て頭上に見えてくるのが、先程のデコイランチャーとバディを組むジャマーランチャー。ここから
      発射されたジャマーが海中で音波を発生させ、魚雷の音響センサーを狂わせる訳ですが、ぱっと見は小さな発
      射機ながら、安全性を考えてけっこう遠くまで飛ばせるんでしょうね。

       その後は後部の通路を抜けて、格納庫へ。大型のMCH-101掃海・輸送ヘリも楽々収容する事が出来る
      ので、さすがに天井が高く感じます。なぜかソーセージパンみたいな香りが漂って来ますが(笑)、給養室で
      は今頃お昼の準備中かな?お腹減ってきたなあ(笑)。

       飛行甲板に出てみると、ところどころ滑り止め塗装が剥がれた跡があり、錆止めの赤い下地が塗ってありま
      した。航海中に損傷して応急処置を施したのかな?と傍にいた隊員さんに尋ねてみると、
       「ええ、仰る通りこれは錆止めの下地です。実はこの艦は本当はドック入りしてたんですが、今日のイベン
      トの為に途中で桟橋に戻したんですよ(笑)」

       との事。なるほどなあ。DDH181ひゅうが、DDG175みょうこうと見栄えのする大型護衛艦が相次
      いでドック入り
している中、桟橋が寂しい顔ぶれでは来場者が残念だろうと修理の途中にもかかわらず北吸桟
      橋に戻ってきてくれたのか。

       ドック入り中も乗組員は普段できない細かな整備作業に追われますし、溜まった代休もローテを組んで消化
      していかねばなりません。色んなやりくりで調整役の隊員さんは大変でしょうに、こうして一般公開に参加し
      てくれたのはいち艦艇ファンとして頭が下がります。
       「今の人、艦長さんでしたよ」
       とSAA水兵さん。えっ、今の人が?にこやかで物腰の柔らかい人でしたが、きっと海の上では全然違う顔
      
になっているんだろうなあ・・・。

       続いて見に行ったのは、甲板に半埋め込み式になっているLSO。ヘリの発着艦を管制する小部屋です。
       「新しい艦はLSOの椅子もピッカピカですねえ」
       とSAA水兵さん。ほんとだ、古い艦はどこもボロボロの椅子を使っていますが、ふゆづきはまだ新品同然
      とは言えここは常に紫外線を浴び続ける場所なので、大事に使っていても合皮の劣化は早いんでしょう。
       その後はあたごの飛行甲板を通り、上陸。桟橋に並んだ白テント内では、イベント参加記念カードドッグ
      タグ
の作製コーナーが大賑わいでした。

       その向こうに停泊している潜水艦は、SS596くろしお。甲板見学に沢山の行列が出来ていますが、キリ
      のいい乗艦番号
ごとにいろんなプレゼントが用意されています。これは子供は喜ぶだろうなあ。
       また、航海中の勤務シフト給与や手当の仕組み、潜水艦要員になるまでの教育の流れ艦内生活紹介が分
      かり易い掲示物で纏められ、小ネタもあってなかなか面白い内容。へー、潜水艦内にシャワー室が3つもある
      とは知りませんでした。あと意外な事に、シャワー室では真水が使われるとの事。海水じゃなかったのか。傍
      にいた乗組員の方にお話を伺うと、
       「貴重な真水を70人近くで使いますから、まあ出てくるのはちょぼちょぼ・・・ぐらいですね(笑)」
       周囲に幾らでもある海水なら好きなだけ使えますが、使った海水は排水タンクに溜めてからブロー(排出)
      せねばならず、その際に発生する水中雑音は潜水艦にとって極めてデリケートな問題。結局海水だろうが真水
      だろうが、ちょぼちょぼとしか使えないのは一緒なんだろうなあ。

       とは言え、他国の艦艇では水上艦ですら満足な風呂はなく、通路をカーテンで仕切って壁面から突き出たカ
      ランのシャワー程度で済ませる事も多いみたいですからねえ。
       「確かにそれに比べれば、まだ海上自衛隊は人間性が保たれている方だと言えますね」
       と、真顔で答える隊員さんに、思わず吹き出しそうになりました。人間性が保たれている、か・・・。私達
      にとっては究極の非日常である潜水艦生活が日常なサブマリナーでないと、なかなかパッと出てこないフレー
      ズです。

       その後はAOE425補給艦ましゅうに向かいます。それにしても、意外と混雑していませんね、舞鶴グリ
      ーンフェスタ。開門一時間前から赤れんがパーク駐車場が満車と聞いた時は、一体どんな地獄絵図になるかと
      思いましたが、北吸桟橋自体がだだっ広いせいかな?そんな事を考えながら、補給艦ましゅうの行列最後尾に
      つきます。ここは結構な人数になっていますが、甲板面積が広大な補給艦だけに、思ったよりも行列はさくさ
      く消化しています。お、AMS4301多用途支援艦ひうちが入港してきました。青少年対象の体験航海に出
      ていた模様です。

       そして大した待ち時間もなく補給艦ましゅうに乗艦。高いラッタルを上って行くと、物資を運搬するための
      補給通路
に出ました。この広さがすごいなあ。海自の艦艇というよりも、どこかの工場の見学に来ているみた
      い。補給艦から別の種類の艦に異動したら、最初は狭苦しいというかすごい圧迫感に悩まされそう。

       艦中央に位置する巨大な冷凍冷蔵庫はゴンドラ式の立体駐車場を横倒しにした様な形状で、庫内にはたくさ
      んの大きなフレームがレールに沿って吊り下げられています。内部はオレンジ色の明かりが灯っていますが、
      ところどころに青く光っているのは殺菌灯でしょうか。

       続いてここもだだっ広い倉庫スペース。物資の出し入れと保管がし易い様、とにかくがらんとした殺風景な
      区画
ですが、耐火服酸素ボンベ赤外線カメラなどのいろんなものが展示してありました。甲板作業で着用
      する青色作業着の顔の部分には、カワイイ女性自衛官の写真が貼り付けられてありますが、膝のところにある
      怪しい笑顔の隊員さん
は一体なんなんでしょう(笑)。女性自衛官を怒らせてお膝蹴りを喰らってしまったの
      か、それともましゅうを代表する脚フェチなのか・・・。

       さらに日常の訓練や作業風景の写真が展示してありますが、なんか変な被り物をした人がちらほら・・・。
      補給艦の性質上、海外への長期派遣は当たり前。そんな中で乗組員の心身を常にベストな状態に保つには、緩
      める時はしっかり緩めて気持ちにメリハリをつけるのが大切なんでしょう。みんな楽しそうないい笑顔だし、
      雰囲気良さそうな艦ですね、補給艦ましゅう。

       最後は補給艦ましゅうの牛すじカレーの詳しい作り方が紹介されてありました。へえ、金曜カレーについて
      の展示はよくありますが、レシピまで具体的に詳しく教えてくれるのは有難いなあ。通常数十人分で作るレシ
      ピをちゃんと4人分に換算してあり、実に丁寧な仕事です。
       しかし『ましゅうカレーと言ってますが市販の調味料であっさり簡単に作れます(笑)』と真っ先に書いて
      あるのはどうなんだろう(笑)。確かに予算的な枠があるので特別な食材は使えませんが、我々一般国民が海
      自の金曜カレーに抱くロマンや幻想を、しょっぱなからぶち壊してしまうのは感心しない気が・・・(笑)。
       とは言え、野菜くずを捨てずに煮込んでスープストックにしたり、牛スジを3時間も下茹でしてこまめにア
      クを取ったりと、要所要所できちんと手間をかけているのは流石。使う材料は市販のものと同じでも、こうい
      うところで味の差が表れるんだろうなあ。うーん、食べてみたいですね、補給艦ましゅうカレー。

       牛スジ以外の具はジャガイモ、ニンジン、タマネギ、という正統派な顔ぶれですが、ジャガイモではなく
      齢
という書き方に海軍カレーの伝統を感じます。また和風だし福神漬けの汁シュレッドチーズの他に、隠
      し味として良京漬けの汁を使っているとの事。良京漬け?京都名産のお漬物でしょうか。今度探してみようか
      な。
       海自艦艇の一般公開を回るようになると、同じタイプの艦艇でも艦内の雰囲気が各艦で驚くほど違う事に気
      づかされますが、補給艦ましゅうはいい塩梅に楽しそうな雰囲気ですね。ただ、時々それが裏目に出るという
      か(笑)、容赦なく言えば
       「それ思いっきりスベってるで、キミ・・・」
       と言いたくなる掲示物もちらほらあるのがなんともはや(笑)。何この冷やしストレートパーマって・・・。

       おまけにましゅう艦長を命ぜられた沖田艦長が、それに対して実にらしくないツッコミを入れてるし・・・。
       「乗員の超~寒いギャグ、お許しくださいませ・・・」
       「寒すぎて、懲罰もんです・・・」

       って、沖田艦長はこんな事言わないと思う・・・。
       続いて見えてきたのは、補給艦名物である甲板からのエレベーター。さらに搬入された物資を通路の左右に
      振り分ける巨大なベルトコンベアーや倉庫内を走り回るフォークリフト、通路をレールに沿って走るサイドフ
      ォーク
が展示してありました。

       それにしてもこの、フォークリフトの横っ腹に描かれたMASHUのマークって・・・。サ〇トリーに見つ
      かったら怒られそう(笑)。ほんと遊び好きだな、ましゅうの人は。でもこれ位シャレっ気のある人でないと、
      タフな長距離航海
には向かないんでしょうねえ。

       先ほどから色々と唸らされるましゅうの掲示物ですが、くだらな・・・いや面白い中にもちょっとした小物
      の使い方がいちいちカワイイ
というか、雰囲気が柔らかいのが印象的。空気がギスギスした職場環境ではこん
      な掲示物にはならないと思います。日々の厳しい任務の中にあっても和気藹々とした空気が保たれているのは、
      実に好印象。

       そう言えば先程から女性自衛官の姿を何人も見かけますし、その辺りも艦の雰囲気作りに影響しているのか
      なあ、とSAA水兵さんと話しながら補給通路を歩いていると、艦内放送で補給艦ましゅうの説明が始まりま
      した。その中で
       「この補給艦ましゅうは、長らく海上自衛隊最大のフネでしたが、その後就役した護衛艦いずもにより、そ
      の座を奪われてしまいました・・・」

       と、微妙に根に持っているというか恨みがましい言い方だったのにはちょっと笑ってしまいました。よっぽ
      ど悔しかったのかなあ(笑)。ある意味これも自分たちのフネに対する愛情ではありますが、護衛艦いずもの
      就役をハンカチを咥えながら涙目で見守ったんでしょうか、ましゅうの乗組員一同は・・・(笑)。

 

      その後はラッタルを上がって上甲板へ。目の前に聳え立つ巨大な補給ステーション。実に補給艦らしい光景で
      す。護衛艦とはまた違った頼もしさがありますね。
       舷側に展示されていたのは、もやい索発射機。金属製の巨大なスポイトみたいなもので、圧搾空気を使って
      発射するそうです。原理的にはエアガンみたいなものでしょう。
       頭上でぐるぐる回して遠心力で投げるのでは?と思いましたが、入港時はそれで間に合っても、洋上での補
      給作業で並走する艦に舫を投げ込むには、これを使わないと届かない
との事。そりゃそうか。

       少し触らせてもらいましたが、軽そうな見た目に反してずっしりした重量感に驚かされます。説明係の隊員
      さんはにこやかでしたが、赤道直下の炎天下、長袖長ズボンの作業着に救命胴衣をつけ、鉄帽を被った状態で
      何時間もかかる補給作業か・・・。どれだけ機械化や省人力化が進んでも、キツい体力勝負であることは変わ
      らないんだろうなあ。
       その後は艦橋直下の広いスペースへ。うーん、いつ見てもものすごい圧迫感。艦内容積を出来る限り物資搭
      載スペースに割こうとすると、その他の必要な区画が甲板上に押しあげられて、どうしても艦橋が巨大化する
      んだろうなあ。
       働くフネの醍醐味が味わえる補給艦は個人的にかなり好きな艦種ですが、この角度から見上げる補給艦の艦
      橋だけは、なんだか思いっきり怒られているみたいでちょっと苦手。やっぱり私、心にいろいろとやましいも
      の
があるんだろうなあ(笑)。

       その艦橋下部には、射撃訓練用の標的が展示されてありました。畳一枚分ぐらいあり、これまたえらくデカ
      い標的だなと思いましたが、訓練では200m先のこれを小銃で狙うとの事。ほとんど点にしか見えなさそう
      です。
       ちなみにその標的の脇には、紙に印刷された機関拳銃と9mm拳銃が貼り付けてありました。これでインス
      タ映えを狙えという事ですね(笑)。引鉄に指を掛ける事が出来る様、トリガーガード内をちゃんとくり抜い
      てある
のがいかにも自衛隊らしい律義な仕事。

       さらに舷側には、また謎の掲示物が。人形ワールドカップ?どうやら溺者救助訓練用のお人形の展示らしい
      ですが、アメリカ代表のバービーちゃんが『濃~い美人!』、日本代表のリカちゃんが『爽やか美人!』なの
      に対し、海自代表の溺者人形が『訓練のたび、海に投げられる!』というのはあまりにあまりではないでしょ
      うか(笑)。護衛艦あたごの勉三さんといい護衛艦ふゆづきのみゆきちゃんといい、海自の人は溺者人形で遊
      びすぎ(笑)!

       ちなみに思いっきりネタにされてる補給艦ましゅうのお人形ですが、舷側外に吊り下げられた担架に寝そべ
      ってなんか楽しそう。今日はあいにくの曇り空ですが、サングラスかけてサンオイルを塗って、ラジカセから
      TUBEを聞かせてあげたいなあ。
       ふと見ると、体験乗船に出ていた2隻の曳船が戻ってきました。2隻が並走しているのは割と珍しい気がし
      ます。アイススケートのペアみたいな優雅さがありますね。晴れていたらクレインブリッジの白さが一段と映
      えただろうなあ。

       その後は広い広い飛行甲板へ。ここでたまたま傍にいた幹部の方に、艦内の掲示物を見たところどれもとて
      も柔らかい雰囲気
でしたが、やはり女性の乗組員が多い事とも関連するんでしょうか?と質問してみました。
       「そうですね、女性自衛官の多い少ないも関係なくはないですが、やはり男女関係なくその艦特有の雰囲気
      というか、家族の様にまとまれるかどうかだと思いますよ(笑)」

       との事。艦内で働く女性自衛官についても色々お話を伺いましたが、やはり風呂やトイレ、居住区が全く別
      になるので、艦の設計段階でどれだけスペースに余裕があるかで受け入れ態勢が大きく変わるとの事。へー、
      居住区やトイレは当然として、浴室も完全に別になるんですね。
       「そりゃそうですよ(笑)!一緒だったら、うちの男どもはみんな喜んじゃいますよ(笑)!」
       と、幹部の人にツッコミを食らってしまいました(笑)。あ、いやいやいや、同じ浴室を日や時間帯によっ
      て男女で使い分ける
とか、そういうつもりで言ったんですけど(笑)。実に快活でユーモアのある幹部の人で
      した(笑)。するとSAA水兵さんが、
       「あの人、ましゅうの艦長さんでしたよ。艦内のイメージ通りの人でしたね(笑)」

       艦内の雰囲気や気風は、初代乗組員が作ってそのまま受け継がれていくものと聞いた事がありますが、艦長
      の交代
で雰囲気がガラッと変わったり、乗組員の出身地構成によるものが大きかったり、それ以外の要因もあ
      るのかもしれませんね。士官室の空気は副長が作るもの、という話も聞いた事がありますし。
       私が海上自衛官という人達を理解するために隊員さんにしばしばぶつける質問として、『船乗りの職業病は
      なんですか?』
があるのですが、『この艦の雰囲気は誰が作っていますか?』という質問も面白い気がします。
       ちょっと抽象的な質問なので、その意図が上手く伝わるかどうか難しくはありますが、返って来た答によっ
      て艦そのものの雰囲気だけでなく、答えてくれた隊員さんの人となりやこれまで経験してきた色んなものが見
      えてくるかも。

       艦尾に向かうと、並んで係留された護衛艦あたご護衛艦ふゆづきが、特務艇はしだてと向かい合っていま
      した。あたごの7700㌧にふゆづきの5100㌧。対するはしだてはわずか400㌧と、基準排水量で言え
      ば比べ物にもなりませんが、諸外国の首相や大統領、将官級のVIPを迎えるはしだてだけに、大きさではる
      かに勝るあたごとふゆづきが姿勢を正してかしこまっているみたい
に見えるのが面白いなあ。

       その手前には潜水艦くろしおがいますが、停泊中の潜水艦をこの角度から見るのはなかなか貴重な機会。こ
      ちらはなんだか箱座りしている黒猫みたいだなあ。首筋からしっぽの付け根までごしごししてやりたくなりま
      す。

       広い格納庫内では、ロープ結索展示金物手入れの様子が展示されていました。青サビや曇りがかかった真
      鍮製の部品をピカールで磨きまくる作業ですが、待ちに待った上陸を前に行われる『金物手入れ、始め!』は、
      面倒くさいながらも心が躍る作業なんでしょうねえ。
       また一角には、見学者が補給艦ましゅう一般公開の感想を書き込めるノートも置いてあり、沢山の人が普段
      言葉にする機会のない思いを書き綴っていました。その中には初めて海上自衛隊の艦艇を見に来た人がいまし
      たが、最初に乗ったのがこのましゅうとはいきなり大当たりというか、いいフネを引きましたね。おめでとう
      ございます。

       それにしても、絶妙に寒い掲示物のセンスはさておいて、ほんとコミュニケーション能力が高いですね、補
      給艦ましゅう
。質問に答えてくれる隊員さんも明るく親切ですし。先にも書きましたが、長期航海が多い艦ほ
      どこういう能力が必要になる
というか、嫌でも身につくスキルなんでしょう。
       その後は艦内へ。お、医療区画も公開されていますよ。全46床の病床以外に手術室集中治療室レント
      ゲン室
歯科治療室まで完備したましゅう型補給艦は、海上自衛隊でも最も高度な医療設備を誇る艦で、大規
      模災害時には医療支援でも活躍できる艦。あちこちに『黄』『黒』『赤』という張り紙があるのは、トリアー
      ジ
に対応するためのものでしょう。

       艦内の補給通路を抜けて、上陸。護衛艦もいいですが、やっぱりこういう特殊な用途の艦は見ごたえがあり
      ますね。補給艦ましゅうならではの個性も存分に味わえましたし、久しぶりに大当たりの艦艇一般公開でした。
       その後はシャトルバスに乗り込み、JMUの敷地内を通って舞鶴航空基地へ移動。雲が低く垂れこめていま
      すが機動飛行展示は問題なく行えるらしく、ちょうど1機のSH‐60K哨戒ヘリが離陸するところ。
       SH‐60Kはローターの回転音を鳴り響かせながら滑走路まで進んだあと、10㌧という機体重量を感じさ
      せない軽やかな離陸でふわりと上昇。東の空へと飛び立って行きました。

       エプロンでは、岩国航空基地から参加のMCH-101掃海・輸送ヘリが展示してありました。昨年最後の
      1機が退役した、MH-53Eの後継機ですね。無骨だったMH-53に比べるとなんともすっきりスマート
      な印象
で、なるほど欧州機っぽいなあ。

       ここで先程飛び立ったSH‐60Kが戻ってきて、救難飛行展示を開始。要救助者を発見したSH‐60Kは
      上空でホバリングを行い、カーゴドアから出て来た救難員が救助ホイストでゆっくりと降下開始。要救助者を
      確保したあとは、無事機内へと収容します。
       次は機動飛行展示。低空で進入してきたSH-60Kが一気に機首を引き起こして急上昇。その後も滑走路
      上でホバリングした状態から前後左右へと滑るように機体を移動させ、最後はぺこりと機首を下げて来場者に
      お辞儀
を披露(笑)。器用ですねSH-60K。実際の救助や訓練の現場で機体にお辞儀をさせる場面がある
      のかどうかわかりませんが、これは日本人よりもむしろ外人さんにウケそう

       その後は格納庫へ。別のSH-60Kが展示してあり、子供たちが珍しそうにコックピットの中を見学中。
      よく見るとテイルローター基部のカバーが外され、内部のシャフトが丸見えになっていました。見るからに頑
      丈そうな太いシャフトですが、きっとすごい勢いで回転するんだろうなあ。機体の周囲には対潜模擬魚雷
      ムボート
フライトスーツダイバースーツ耐火服等が展示してありました。
       お、SH-60Kに搭載されているエンジンも展示されていますよ。それにしても、いつ見ても小さいエン
      ジン
だなあ。こんなものが2つだけで、あの巨大なSH-60Kを自由自在に飛ばしているんですねえ。

       説明係の隊員さんはなかなかのトークスキルの持ち主で、小型高出力を誇るジェットエンジンの特徴を分か
      りやすく説明しています。通常は航空燃料を使ってタービンを回していますが、緊急時には他の燃料でも動か
      すことが可能
との事。じゃあ、普通の車のガソリンでも大丈夫なんですか?
       「規定の出力は出ないかもしれませんが、問題なく燃焼はします。っていうか発火点が違うので、むしろガ
      ソリンの方が燃焼しやすいかもしれないですねえ(笑)」

       あれ?ターレが置いてありますよ?魚市場ではお馴染みの電動三輪車ですが、海自にも納入されていたとは。
      ちゃんと海自のマークが入っているのが妙な感じです。運転方法も全く一緒なのかな?

       ここで先程機動飛行展示を披露したSH-60Kが戻ってきました。ゆっくりと滑走路上空に進入したあと
      はふわりと着地を決めて見せ、ウォッシュラックにむけてしずしずと移動。ローターをぶんぶん回したまま、
      派手に水シャワーを浴び始めました。

       洋上での低空飛行中に機体にこびりついた塩の結晶を洗い流すための装置ですが、さすがに5月の曇天の下
      ではちょっと寒そう。昨年までは夏場に行われていたイベントなので、その時は実に涼しそうだったんですけ
      どね(笑)。
       さて、そろそろ時刻は14時。夕方から所用があるので、このあたりで舞鶴を後にします。夏の強烈な陽射
      し、セミの鳴き声が聞こえない舞鶴地方隊の一大イベントというのがなんか変な感じでしたが、来年からもこ
      の時期に開催で固定されるのかな?
       次はスカッと晴れた5月の青空の下だったらいいなあ・・・と思いつつ、舞鶴を後にしました。




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