護衛艦むらさめ一般公開in大阪港

2018.07.22


       大阪港中央突堤にて行われた、護衛艦むらさめの一般公開に参加してきました。DD101護衛艦むらさめ
      はむらさめ型護衛艦の栄えある一番艦として1996年に就役し、基準排水量は4550㌧は従来のゆき型き
      り型の5割増し。対空・対水上・対潜装備を一新し、現在はDDH183護衛艦いずも、DDG171護衛艦
      はたかぜ
、DD107護衛艦いかづちとともに横須賀地方隊にて第一護衛隊群第一護衛隊を構成している護衛
      艦隊のワークホースであります。
       むらさめ型は昨年結構見学の機会に恵まれましたが、ネームシップであるむらさめは久しぶりです。現地に
      はお昼過ぎに到着しましたが、待っていたのは昨日の舞鶴を超える暑さ・・・。もっとも、こんな時期のこん
      な時間に来る方がおかしい
のですが(笑)、逆に言えば一番空いている時間とも言えます。一様に茹で上がっ
      た様な表情のむらさめ帰りらしき人達とすれ違いつつ、しばらく歩いて中央突堤に到着。おおお、むらさめの
      後ろ姿
が見えてきました。

       傾斜をつけたカクカクの後部格納庫、その上に対角線上に配置された20mm高性能機関砲射撃指揮装置
      マストはラティス形状ながらも電波吸収措置が施され、船体の大型化もあって同じ汎用護衛艦でもゆき型やき
      り型とはずいぶん印象が異なりますね。

       そのゆき型ときり型では艦橋の左右にあった高性能20mm機関砲ですが、むらさめ型からは艦の前後に配
      置されています。こっちの方が射角が広く取れ、効率的なんだろうなあ。
       鋭く突き出た艦首の形状は、見るからに凌波性が高そう。水中雑音を抑える目的以外にも、艦首喫水線下の
      水中ソナーに錨を干渉させないための設計でもあります。

       それにしても、さすがにこの気温と直射日光では突堤にも甲板にも人の数はまばら。とても大阪港で行われ
      る艦艇一般公開とは思えません(笑)。さて、私もさっさと乗艦させてもらうとしましょうか。
       舷門に立つ隊員さんの敬礼を受けながら、久しぶりの護衛艦むらさめの上甲板へ。まず見えてくるのが、広
      い前甲板にちょこんと鎮座した76mm単装速射砲です。こんごう型イージス艦と同等の127mm砲を採用
      した後続のたかなみ型に比べると打撃力不足は否めませんが、こちらは軽量級ゆえの発射速度の高さで勝負。
      丸っこいシールドも海坊主みたいでカワイイですし、甲板が広々と見えるのもいいですね。

       その後方、艦橋構造物との間にあるのがVLS(垂直射出装置)。対空ミサイルは煙突近くのVLSに配置
      されているので、前甲板のVLSには対潜魚雷が収納されています。
       隊員さんにお話を伺ったところ、対空ミサイルとは違って対潜魚雷はVLSであっても複数同時発射は行わ
      ず、一発ずつ撃つのが原則だそうです。
       「撃とうと思えば撃てますが、対潜魚雷は魚雷そのものが潜水艦の音波を探したり、自分から音波を出して
      潜水艦を追尾しますので、複数の魚雷を撃つとお互いに干渉して、エラーを起こしやすいんです。魚雷自体の
      スクリューも音を発生させますし」

       ふと見ると、VLSの扉になにやら怪しげな掲示物が。この中の魚雷の整備を担当している住吉海士長、趣
      味は筋トレ世界の魚雷収集か・・・(笑)。筋肉はともかく、自慢の魚雷コレクションは一度拝ませて頂き
      たいですね(笑)。
       『焦げとススが付着しているのは、訓練用ミサイルを本当に発射したからなんだからネ!』
       と、コワモテの割に妙に語尾がキュートなところが不気味な住吉海士長ですが、VLSのどこを見ても焦げ
      もススも見当たらず
。大事な魚雷を撃ちあげてくれるVLSを、日夜丁寧にメンテナンスしている様です。

       揚錨機から先の前甲板はクローズされていましたが、そこから振り返ると76mm単装速射砲、VLS、高性
      能20mm機関砲、艦橋、そしてマストが全部ファインダーに収まります。これは小型軽量砲ならではの有難
      さ
ですね。127mm砲だと、広角レンズでもないと収まりませんし。真正面から撮影しても、艦橋と砲塔と
      の絵的なバランス
がちょうどいい塩梅。

       艦橋手前のCIWS甲板下部には、高性能20mm機関砲ファランクスの説明パネルが。赤外線カメラを装
      備し砲身長を延長したブロック1B型が奢られている様です。説明書きはちょっとお堅い感じですが、よく見
      ると小さな萌えキャラが描かれているところが今どきの海自ですねえ。

       その後は右舷を通って後甲板へ向かいますが、途中にあった艦内入り口には護衛艦むらさめの厳めしい木製
      看板
が掲げてあり、なんだか武術道場の様な佇まい。こんなの他の艦では見た事ありませんが、新世代汎用護
      衛艦の一番艦
として華々しくデビューした護衛艦むらさめ、初代乗組員として選抜された隊員さん達の気合の
      入り様
は、相当なものだったでしょう。かれこれ20年以上昔の話ですが、なんとなく重みを感じてしまいま
      す。

       少し離れたところにあったのは3連装短魚雷発射管ですが、うーん、なんじゃこりゃ・・・。前扉一面に隊
      員さんの顔
が貼り付けてあります。中には変顔の人もいますが、これは微笑ましいというよりも正直ちょっと
      キモい
というか・・・。確かデビルマンにこんなのいましたよね。ジンメンでしたっけ?

       その奥に展示してあったのは、溺者救助訓練用のお人形。これを海に放り込んで、救助までの手順を正確に
      体に叩き込む訳です。艦によっては膝や肩から先が省略されているものも多いのに、むらさめのお人形はちゃ
      んと手足の先まである
のか。

       ちなみにゴルゴ13みたいな顔が描かれてありましたが、本家の鋭く冷徹な表情とは違い、こっちは普段か
      ら腹の中でエロい事を考えてそう
なのが好感持てますね。隊員さんに尋ねてみると、
       「以前は別の顔が描いてあったんですが、訓練を指導する人達がやって来た時に、もっと緊迫感のある顔に
      しろ!と言われたのでこんな風になりまして・・・(笑)」

       なるほど、確かによく見るとへのへのもへじがうっすらと残っています。それにしても、訓練を指導する人
      達ってFTG(海上訓練指導隊群)の事かな?艦に乗り込んで来て、日常生活から訓練の一挙手一投足まで一
      切見逃してくれない恐怖の粗探し集団と聞いた事がありますが、そんな指導までしていたとは驚きです。
       逆に言うと、こんなところにケチをつけるしかないほどむらさめの訓練はしっかり出来ていた、という事か
      もしれませんね。
       ちなみにこのスケベ顔ゴルゴ、胴体よりも手足の先端部をより重く作ってあるとの事。海に落ちた人間の浮
      力のバランス
を正確に再現するためだそうですが、こういう細部にまでこだわった仕様だからこそ、実際の万
      が一の場面で日常の訓練が生きてくるんでしょう。

       頭上にある90式艦隊艦誘導弾を眺めていると、壁面の排気口から涼しい風が吹いている事に気がつきまし
      た。新幹線の車内の匂いがして、なんか面白いなあ。傍にいた隊員さんにそう話すと、
       「はあー、新幹線の匂いですか(笑)。でもそれ一応排気口なので、あまりキレイな空気でもないと思いま
      すよ(笑)」
 

       煙突構造物の脇には射撃訓練で使用する高速水上標的Ⅰ型が、プレイ感漂う緊縛状態で展示してありました。
      係の隊員さんが小さな子供相手に一生懸命説明していましたが、子供目線の分かりやすい説明を心がけるあま
      り、普通に説明するよりも余計にややこしい説明になっていたのがなんともはや(笑)。大人相手だったら簡
      単なんですけどね(笑)。隊員さんの真面目さと律義さ、不器用さがなんとなく感じられた微笑ましい一幕で
      した(笑)。

       飛行甲板にはSH-60K哨戒ヘリが展示してあり、たくさんの人達がスマホ片手に撮影中。側面のドアに
      はパッチをいっぱいつけたツナギやフライトジャケットが吊るしてあり、まるでどこかのミリタリーショップ
      の店先みたい。
       格納庫内に入ると、日陰になるだけでもかなり楽だなあ。奥の方には訓練用魚雷が展示してあり、隊員さん
      達によるロープ結索体験教室にたくさんのちびっ子が集まっていました。

       その隣には、つい先日発生した広島県の豪雨災害に派遣された海自の部隊の活動の様子が、写真で展示して
      ありました。とわだ、しもきた、おおすみ、いなづま、かが、さみだれ、さらにはLCACと、呉在籍部隊あ
      げての救援活動
が今も繰り広げられているとの事。
       多くの人達がその展示に見入っていましたが、こういう所にこそ募金箱を設置して、海上自衛隊から被災地
      に送ってはいかがでしょう。もちろん他にいくつも募金方法はありますが、こうして現地で汗を流している隊
      員さんの様子
を知ったからこそ、今すぐ自分にも何か出来る事はないか・・・と考える人は多いと思います。

       その格納庫の片隅には、護衛艦むらさめの部隊旗(とはちょっと違うのかな)が自衛艦旗と一緒に掲げられ
      てありました。2か所のVLSから射出されたアスロックシースパローが艦の真上で交差して、勝利のⅤ
      描いているなかなかよくできたデザイン。

       そして力強く『闘魂』と書かれてありますが、私世代にとって闘魂と言えばアントニオ猪木、そしてアント
      ニオ猪木と言えば真っ先に人間的に全く信用できないイメージが浮かんでしまうのが如何ともしがたいところ
      (笑)。ここまで読んでうんうんと頷いてしまうのは、間違いなく40代半ば以上でしょう。むらさめの行き
      足
を表すのに、ちょうどいい言葉なんですけどねえ・・・(笑)。 
       以上で久しぶりの護衛艦むらさめの見学を終了。上甲板だけの一般公開ではありましたが、なかなか充実し
      た内容でした。世界の魚雷収集が趣味の隊員さんや道場の如き厳めしい木製看板、不気味な装飾が施された
      連装短魚雷発射管
、子供への説明に四苦八苦していた隊員さん、スケベそうなゴルゴ・・・もとい溺者救助訓
      練のお人形・・・と、随所でむらさめ艦内の雰囲気に触れる事が出来た気がします。

       生真面目で熱心、時にはその微妙過ぎるセンス微妙に空回りする事もありますが、一致団結した時のマン
      パワー
には目を見張らされるものがある・・・そんな印象を受けましたね、護衛艦むらさめ。
       あまりの暑さで見学者が少なかったのがちょっと残念でしたが、夏休みのちびっ子たちのいい社会勉強にな
      ってたらいいなあ・・・
と思いつつ、大阪港中央突堤を後にしました。




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