中部方面隊創隊58周年伊丹駐屯地創立67周年記念行事

2018.10.07


       兵庫県伊丹市に所在する、伊丹駐屯地の創立記念行事に行ってきました。伊丹駐屯地には中部方面総監部
      中核とした中部方面隊直轄諸部隊が駐屯し、東は富山県西は山口県までの2府19県の防衛警備を担任する西
      日本の守りの要
であります。
       当日は早朝にJR北伊丹駅に到着。徒歩で駐屯地西門へ移動します。門左側に出来た行列は早くも打ち止め
      状態らしく、右側の行列の最後尾につきます。開門までまだ1時間近くありますが、一体何番手なんだろう。
      とは言え伊丹は一般見学者用に大きな雛壇席を準備してくれるので、見学場所に困る事はないでしょう。
       それにしても、先程からやけにいい匂いが漂ってくるなあ。これは屋台の唐揚げの香りと見ましたが、屋台
      が居並ぶさくら通りは駐屯地の中の方にあったはず。こんなところまで香りが漂ってくるかな?私が伊丹に来
      なかったしばらくの間に屋台の場所が移動したのか、それとも朝食を抜いてきた所為で嗅覚が異様に敏感にな
      っているのか(笑)
。いずれにしてもお腹が減りました(笑)。

       その後しばらくして、0840に左側の列に動きが。ああ、あまりに人が多いせいで開門を早めたんですね。
      ややあって、私のいる右列も駐屯地内へ。手荷物検査をクリアして、式典会場へ向かいます。出遅れた焦りか
      らか駐屯地内を走る人が多いですが、転んでケガをすると隊員さんの迷惑になるし、見学場所は十分あります
      から落ち着いて

       という訳で、会場東側にある一般見学者用の雛壇席に到着。最上段から一段下に場所を確保します。ここで
      脅威となるのが目の前で差される日傘ですが、前の人の荷物に日傘はないっぽいですね。さて、見学場所は確
      保しました。部隊入場まで時間に余裕があるので、まずは屋台巡りからいきましょう。
       お、中距離多目的誘導弾。日本原の第13高射特科隊からの参加です。その向かいにあるのは、千僧の第3
      後方支援連隊
からの野外入浴セット『六甲の湯』
       74式戦車の隣にいるのは16式機動戦闘車!善通寺の第15即応機動連隊から、瀬戸内海を越えての参加
      です。やっぱりカッコイイなあ、プラモデルが欲しくなります。上手く作る自信はありませんが・・・(笑)。

       駐屯地の真ん中を南北に貫くさくら通りには、たくさんの屋台がひしめき合っていました。まずは何か食べ
      たいところですが、その前に全容を把握せねば。ざっと見たところ食べ物系の屋台はうどん、焼き鳥丼、焼き
      そば、ホットドッグ、フランクフルト、くるみもち、鶏唐揚げ、フライドポテト、たこ焼き、牛串焼き、たま
      ごせんべい、焼き鳥・・・
といったところ。外部業者の割合が多く隊員さんの屋台は半分以下ですが、昨今の
      自衛隊イベントの混雑事情を考えるとこれでもかなり頑張ってくれた方でしょう。

       それよりも、例の第36普通科連隊のトウモロコシ軍団の姿がなかったのがちょっと残念。私の伊丹参加も
      かれこれ4年ぶりで、その間にあちらも人の入れ替えがあったでしょう。挨拶して誰も私の事を知らなかった
      らちょっと気まずいなあ・・・
と、正直ちょっと避ける気持ちもあったのですが、あの異様に元気な人達と会
      えないとなるとやっぱり寂しいものがあります。
       また、これは日程が被っている陸上自衛隊観閲式の影響もあったのかもしれません。3年に1度の大きな記
      念行事、トウモロコシの人達はあっちの方に駆り出されたのかも。
       少しの寂しさと少しの安堵感、あと大きな空腹を抱えつつ屋台通りを歩いて行くと、雪だるまみたいなゆる
      キャラ
が子供たちに愛嬌を振りまいていました。なんだこりゃ、カワイイな(笑)!広げた両腕の下に丸い筒
      を抱えているところから察するに、旅客機をモチーフにした伊丹空港のゆるキャラでしょうか。

       あと、なんだこりゃ。健康相談テント?すぐ近くにある川西駐屯地の自衛隊阪神病院の人達が出店している
      様です。先日の健康診断で色々と耳に痛い結果を見せつけられたばかりなので、今回はザリガニの様に後ずさ
      りしつつ遠慮させて頂こう・・・。
       さて、どれから食べようか・・・と屋台通りをさまよっていると、開場直後とあって緊張気味の若い隊員さ
      んに、先輩格の隊員さんが
       「何ボーっとしとるんじゃー!声出して呼び込みせんかい!」
       するとハッパをかけられた若い隊員さんは
      「うぇおぼぼぼぼぼえごげびぃぃぃぃぃ!」
       と突然シャウト。一瞬度肝を抜かれた先輩は
       「・・・お前、なんやねんソレ・・・」
       うーん、こういうノリの会話を耳にすると、つくづく伊丹に来たなあ・・・という実感。どうせ36普連で
      しょう(笑)
。ハイテンションとうもろこし屋台はなくても、部隊のテイストは全然変わってないらしく嬉し
      くなってしまいます(笑)。
       果たしてこの壊れかけの隊員さんが何を売ろうとしたのかさっぱり理解不能ですが、ここまでされたら買わ
      ない訳にはいきません。見ると焼きそばの屋台でした。250円払って一つ購入。

       「有難うございましたー!!」
       と、最後まで威勢のいい売り子の隊員さんに部隊名を伺うと、
       「36普通科連隊の5中隊です!」
       ああやっぱり(笑)
       その5中隊特製焼きそばですが、酸味の効いたソースを使っているのが実にいい塩梅。昔は甘みの強いオタ
      フク系
が好みでしたが、最近はすっきり系のオリバー派になりつつある私にはどストライクの味でした。
       続いては、今治名物焼き鳥丼。ここも隊員さんの屋台の様ですが、今治という事は松山駐屯地の人達かな?
      以前はじゃこ天を出していた松山駐屯地ですが、いつの間にやら重量級のメニューを持ってきた模様。試しに
      一つ購入です。マヨネーズの有り無しを聞かれましたが、私は無しで。確かに合いそうですが、最初はマヨな
      しで味の真価を確かめます。手早く撮影を済ませ、まずは一口。
       おお、小ぶりの一口サイズに切ってもこの歯ごたえ!しっかりした鶏肉を、大きな鉄板大火力で固く焼き
      締めてあるんですね。タレの焦げた風味も香ばしく、なによりこの鶏肉の脂肪を浴びてツヤツヤに炒め上がっ
      た白ネギの甘さ
がたまりません。セコンドにいる丹下段平の静止を振り切って最後まで一気に食べてしまいそ
      うな、100点満点の屋台グルメであります。

       以前の熱々じゃこ天も良かったですが、このド迫力には勝てませんね。鉄板の前で大量の鶏肉と格闘してい
      る隊員さんは慣れた手つきで、とてもイベント限定の一品とは思えませんが・・・。もしかして松山駐屯地に
      代々受け継がれている、野外演習の打ち上げ等で振舞われる名物メニュー
だったりするんでしょうか。そうだ
      としたら、これは貴重な部隊の味だなあ。駐屯地屋台グルメでは久しぶりの場外ホームランでありました。
       いやあ、満足満足。とは言え、折角屋台の充実度が高い伊丹に来たんですから、もう一品食べておきたいな
      あ。という訳で、最も呼び込みの声がデカかったうどんの屋台へ向かいます。きつね天ぷらがありますが、
      ええい、天ぷら行っちゃえ。すると
       「はい天ぷらいっちょー!!」
       「天ぷらいっちょー!!」
       「天ぷらいっちょー!!」

       「天ぷらいっちょー!!」
       と、超大声の確認及び復唱伝達が始まってびっくり。普通にしゃべっても十分聞こえる距離ですが、砲弾の
      炸裂音が鳴り響く最前線で寸毫のミスもなく任務を完遂するには、これ位の大声とチームワークが必須なので
      しょう。なんか迫撃砲の装填発射場面を見てるみたい。
       流れるような動きでうどんが茹でられる中、客席係の隊員さんは
       「こちらの席にどうぞ!」
       と、びしっと椅子まで引いてくれました。優雅さには欠けますが、なんというか超体育会系のホテルマンみ
      たい
。そもそも若い隊員さんには連隊長やエライさんの付き人的な当番をする仕事があるので、こういう気づ
      かいや気配り
も叩き込まれるんだろうなあ。もちろん頻繁にある仕事ではないでしょうけど、身に沁みついた
      躾
がなんでもない場面で出てしまう事は珍しくないのかも。
       どの隊員さんも、イベントのお店屋さんごっこを仕事を超えて楽しんでいる様に見えますが、そんな中でふ
      と垣間見える自衛隊さんらしさ。実に興味深く頼もしい気がします。そんな事を考えていると、
       「お待たせしました!天ぷらうどんです!!」

       やってきた天ぷらうどんは、あっさりダシの関西風。青ネギのしゃりしゃりした涼し気な風味も瑞々しく、
      なんともホッとする味わいです。
       「きつねうどん、美味しいですよー!!いかがっすかー!!」
       と、屋台前ではもはや怒声に近い懸命の呼び込みが行われていますが、これが大規模災害の現場では
       「ケガしている人、いませんかー!!」
       になるのでしょう。街中でこんなやかましいうどん屋はまず見られませんが(笑)、この大声、そして濛々
      と湯気をあげる大鍋を前に流される汗こそが尊い
のだ・・・。
       一杯のうどんから、こんなにも色々な事が語りかけられる。市販の出汁を使っていようと冷凍うどんを使っ
      ていようと、これこそが自衛隊にしか出せないうどんなんでしょうね。
       いやあ、さすがに朝から腹いっぱいになってしまいました。既に大賑わいの厚生センターに向かうと、売店
      もコンビニもお土産を買い求めるお客さんでいっぱい。ふと見ると本棚の隣にカワイイ子猫が印刷された箱テ
      ィッシュ
が並んでいました。そういえば何かの本に、現役女性自衛官の悩みで『猫を飼いたい・・・』という
      のがあったなあ。

       さすがに営内暮らしではどうにもなりませんが、猫好きな隊員さんはこんな箱ティッシュを買って気分を紛
      らわせているんでしょうか。同じ猫好きとしては身につまされるというか、なんとも切ない話です。猫を飼い
      たくても飼えない隊員さんの為に、駐屯地の売店はもっと猫グッズを充実してほしいものです。
       外部食堂の前には『伊丹総監部特製牛煮込みカレー』のポスターがあってそそられましたが、さすがにもう
      入りません。初めて伊丹に来た10年前の私なら、何の躊躇もなく4品目に突入してましたが・・・(笑)。

       その後は駐屯地内をぶらぶらと歩き、再び屋台通りへ。あ、春日井駐屯地のサボテン屋台がありました。伊
      丹に来るたびにぽちぽちと買い集めているので、今年も一つ購入。また仕事場の窓辺が賑やかになりそう。
       さて、式典会場に戻ります。大きな雛壇席は9割8分埋まっていて、さすが伊丹。会場外のあちこちで隊員
      さんの整列が始まり、いよいよ感が盛り上がります。

       そして1010、部隊が続々と入場を開始。さすが方面隊の記念行事、実に色とりどりの部隊旗です。続い
      て整列した部隊の紹介が行われますが、ここで伊丹空港を離陸した旅客機が頭上をゴオオオオオと通過してい
      ったため、アナウンスがろくに聞き取れず。おかげでどこの部隊なのかさっぱり分かりませんが、陸自駐屯地
      なのに空自の基地にいるみたいな気分になるのが伊丹の面白いところ。
       続いて観閲部隊指揮官を務める第3師団副師団長兼ねて千僧駐屯地司令大内田陸将補が入場。部隊は観閲部
      隊指揮官に敬礼。

       来賓を乗せたマイクロバスが続々とやってきて、本日の観閲官を務める中部方面隊総監岸川陸将が黒の業務
      車で入場。おお、黒の新制服です。見慣れないズボンのサイドラインが若々しいというか軽いというか。部隊
      は観閲官に敬礼、栄誉礼捧げ銃(ささげつつ)を執り行います。
       その後部隊は着剣。国旗入場の準備を整えますが、あれ?音楽隊の制服を着た女性自衛官が正面に立ちまし
      た。演奏ではなく、君が代を独唱するのか。
       式典参加者が起立で迎える中、パジェロに乗って国旗が入場。部隊は捧げ銃。陸自初の声楽要員として自衛
      官候補生からキャリアをスタートさせた、中部方面音楽隊の鶫真衣3等陸曹による見事な君が代が披露されま
      した。

       それにしても、こういう時は独唱後の拍手をしていいんでしょうか。周囲の人達もどうしていいのか分から
      ずちょっと戸惑った雰囲気。音楽演奏の君が代の時は拍手無しでしたが・・・。ここで拍手お願いしますのア
      ナウンスを入れるのも、それはそれで変な感じなのかなあ。正式なマナーとしてはどうするのが正解なんだろ
      う・・・
と考えているうちに、アナウンスに促されて着席してしまいました。

       続いて観閲官による部隊巡閲が行われましたが、観閲官以外に2名のスーツ姿の人も混じっているんですね。
      兵庫県知事と、もう一人はどこかの偉いさんかな?伊丹は久しぶりなので、いろんなところが変わってるんだ
      なあ。
       その後は登壇した観閲官による式辞来賓祝辞来賓紹介祝電披露と記念式典は粛々と進行。続いて観閲
      行進の準備のために部隊はいったん退場します。まずは4両の除染車がやってきて、グラウンドに砂ぼこりが
      立たないように散水開始・・・と思いきや、本日は散水が必要ない程度の地面が湿っているので、除染車の紹
      介だけを行うとの事。

       散水しない除染車が、お互いにペースを合わせながらゆっくりゆっくり動いているだけの様子は変な感じで、
       『これ、べつにやらなくていいんじゃ・・・』
       という微妙な空気が漂いますが、除染車に乗る隊員さんのご両親やお子さん、出来たばかりの彼女が今日の
      晴れ姿を見るためにやってきているかもしれません。そこに
       『今日は十分地面湿ってるから、君らの出番なしで』
       なんて訳にはいかんわなあ。また、ここ伊丹駐屯地は伊丹空港の近くにあるので、航空観閲部隊の通過時刻
      にも相当な制限
があるはず。頻繁に行われ離発着の隙間を縫う形で駐屯地上空を通過するので、
       『散水は省略するから、予定よりもちょっと早めに来てね♪』
       なんてお願いが通じる訳もないでしょう。すべてはミリミリ、式典進行役の隊員さんは胃に穴があきそう。
       そんな事をぼんやりと考えていると、いよいよ観閲行進が始まりました。まずは中部方面音楽隊及び第3音
      楽隊による合同部隊
が、行進曲『大空』を高らかに演奏しながら入場。

       続いて中部方面隊の防衛警備区にあたる2府19県の県旗が、パジェロにのってやってきました。先頭を切
      るのは富山県旗ですが、各府県出身の女性自衛官が旗手を務めているとの事。たくさんの旗が拍手に迎えられ
      てやってきますが、個人的に一番気に入っているのは愛媛県旗ですね。鮮やかな黄色と緑、そして純白のミカ
      ンの花が実に愛媛らしいデザイン。ちょっと南米テイスト入ってるところもカッコイイなあ。
       ここで演奏が『抜刀隊』に切り替わり、やってきたのは中部方面警務隊。パジェロ、白バイ、白の捜査車両
      による行進です。
       続いては観閲部隊指揮官とその幕僚が座乗する第3師団司令部付隊の指揮通信車。まるで甲虫を思わせる、
      見るからに頑丈そうな見た目が素敵です。

       次は徒歩部隊。まずは伊丹ご当地部隊である第36普通科連隊。ボディーアーマーとゴーグルを着用、89
      式小銃を抱えての行進です。
       続いては第14普通科連隊(金沢)。こちらは鉄帽に暗視ゴーグルを装着していますね。胸元の赤マフラー
      が実に色鮮やか。おっ、よく見ると最後列はギリースーツ姿の狙撃手です。

       ここで上空に、八尾駐屯地と明野駐屯地からの航空観閲部隊がやってきました。UH‐1J多用途ヘリが4機、
      AH‐1S対戦車ヘリコブラが3機、CH‐47輸送ヘリが1機、そしてUH‐60JA多用途ヘリが1機の合計
      9機。方面隊の記念行事に相応しい豪華な面々です。

       ヘリ部隊が爆音を響かせながら南の空に消えて行ったあとは、再び車両行進。第46普通科連隊(海田市)
      からのパジェロ、軽装甲機動車、高機動車。
       第15即応機動連隊(善通寺)からはパジェロ、96式装輪装甲車、そして16式機動戦闘車。おおおお、
      自走している16を見たのは初めてです。当たり前ですが、やっぱり滑らかに動いてるなあ

       次は第3偵察隊(千僧)の指揮通信車、高機動車、偵察オート、87式偵察警戒車。
       さらに第13特科隊(日本原)からのパジェロ、あと155mmFH-70榴弾砲を牽引した7㌧トラック。
       第8高射特科群(青野原)からはパジェロ、03式中距離地対空誘導弾の射撃指揮装置、発射装置、運搬装
      填装置。
       第3高射特科大隊(姫路)からは93式近距離地対空誘導弾、81式短距離地対空誘導弾。
       ここで空自から参加の部隊がやって来ました。航空自衛隊岐阜基地第13高射隊のペトリオットです。先程
      の03式中距離地対空誘導弾と同様に射撃管制装置や発電機、アンテナマストグループ等の複数の大型車両か
      らなる装備品ですが、本日は発射装置のみ参加。

       中部方面通信群(伊丹)からはパジェロ、あと通信関連の機器を搭載したトラックが何両も。
       第10特殊武器防護隊(守山)からはパジェロ、NBC偵察車、除染車。
       中部方面情報隊(伊丹)からはパジェロ、あと通信群と同様に通信関連の機器を搭載したトラックが沢山。
       中部方面後方支援隊(桂)からはパジェロ、重レッカ、浄水セット、重装輪回収車、特大型トラック、不発
      弾処理車。
       中部方面衛生隊(伊丹)からはパジェロ、救急車、野外手術システム。
       中部方面会計隊(伊丹)からはパジェロ。

       第6施設群(豊川)からはパジェロ。第304水際障害中隊(和歌山)からは94式水際地雷敷設装置。
      102施設機材隊(大久保)
からは92式浮橋。第3施設大隊(大久保)からは07式機動支援橋の架設車と
      橋節運搬車。第371施設中隊(豊川)からは92式地雷原処理車。

       最後は第3戦車大隊(今津)からの74式戦車4両がやってきて、怒濤の観閲行進を締め括りました。
       その後は合同音楽隊が退場し、観閲部隊指揮官が観閲行進の終了を報告。国旗の退場を参加者は起立で見送
      り、以上で中部方面隊創隊記念行事は終了。引き続き戦闘訓練展示の準備が始まります。
       最初に7㌧トラックに牽引されてやってきたのは、なんと155mm榴弾砲M1!第13特科隊(松山)か
      ら引っ張り出してきた退役装備品です。すごいな、10年ぐらい前に日本原駐屯地で見て以来です。

       2門の155mm榴弾砲M1は敵対抗部隊側らしく、5名の隊員さんがてきぱきと射撃陣地を構築。その周
      囲には鉄条網軽装甲機動車が配置され、敵役を務める赤テープの隊員さん達が障害物を配置して各々の射撃
      位置
に散らばります。
       ここでアナウンスによる戦闘訓練展示の概要が説明されました。会場向かって左手、敵対抗部隊が占拠した
      一帯は伊丹の台と呼称され、陸自部隊が会場右側から攻め込んで伊丹の台の奪還を図るとの事。訓練展示部隊
      長を務める第7普通科連隊(福知山)第4中隊長が訓練展示開始を報告し、状況開始ラッパが鳴り響きます。

       まずはレンジャー隊員による敵陣地後方への侵入から。なんだか防波堤で呑気に釣りをしているみたいな風
      情のレンジャー隊員ですが、あの場所は4階建て隊舎の屋上。想像するだけでお尻のあたりがざわざわします。
       「レンジャー、こちら中隊長。潜入を開始せよ」
       「レンジャー、了解!」

       防波堤・・・もとい隊舎屋上でよいしょと腰を浮かせたレンジャーはいとも簡単そうに壁面を駆け下りて、
      会場からは大きなどよめきが沸き上がります。ちょっとトイレ行ってきまーすみたいな感じで本当に普通に降
      りてくるレンジャー
ですが、右手で構えた小銃で降下地点を警戒しているので、自分の体重と降下速度を左手
      だけで支えている
のがいつ見ても驚き。

       音もなく着地を決めたレンジャーは、すぐに敵陣地の後方に回り込んで偵察行動を開始します。
       「中隊長、こちらレンジャー。敵陣地及び敵警戒員を確認!」
       「レンジャー、こちら中隊長。敵警戒員を制圧せよ」

       会場を埋めた見学者達が固唾をのんで見守る中、レンジャーは小銃を持った警戒員に背後から飛び掛かりま
      す。すぐに関節を極めて地面に叩きつけ、見事敵警戒員を仕留めたレンジャー。その後はさらに敵陣地への
      報収集、攪乱、襲撃
を行うべくその場から離脱します。

       ここで敵対抗部隊の斥候が現れ、陸自の攻撃部隊に接近。それを発見した陸自狙撃班の観測手は、すぐに本
      隊に報告します。
       「中隊長、こちら狙撃!敵斥候を確認!狙撃する!」

       茂みから出て来た斥候に対し、隊舎屋上に展開した狙撃手が狙いを定めます。そしてパーンと乾いた音が鳴
      り響き、ばたりとその場に倒れ込む斥候。見事任務を成功させた狙撃班は、次の狙撃ポイントへと移動開始。
       それにしても、今回はまたずいぶんと芸のない敵斥候だったなあ。伊丹の隊員さんなら芝居っ気たっぷりに
      やられてくれる
のですが、今回は別の部隊の隊員さんだったのかな?

       とは言え、こんなところにまで遊び心サービス精神を期待されてしまうのは、中部方面隊広しといえども
      伊丹と姫路と福知山ぐらい
のものでしょう・・・いや、結構多いな(笑)
       続いては敵航空機からの攻撃に備えるべく、陸自の高射部隊が前進開始。81式短距離地対空誘導弾03
      式中距離地対空誘導弾
、そして93式近距離地対空誘導弾が次々と会場に飛び込んできました。

       射撃地点に到着した高射部隊が陣地を構築する中、偵察命令を受けて出撃したOH‐6D観測ヘリが上空から
      敵陣地を確認します。報告を受けた中隊長は、第3偵察隊に地上からの偵察を指示。
       「偵察隊、こちら中隊長。伊丹の台一帯の敵状を解明せよ!」
       会場に飛び込んできた2両の偵察オートは、見学者の前で高いジャンプを決めてから敵陣深くに一気に切り
      込んで、倒したオートを盾に敵陣地に向けて小銃射撃を浴びせます。すぐに敵陣地から反撃が始まりますが、
      偵察隊員は銃撃に晒されながらも敵の陣地形状や大まかな員数、保有火器の種類や数といった詳細な情報を収
      集します。

       その偵察オート部隊を支援すべく87式偵察警戒車がやってきて、敵陣地に機関砲を射撃。その隙に偵察オ
      ートを引き起こし、偵察隊員は脱兎のごとく撤退開始。偵察警戒車はその盾になる様に回り込みますが、回転
      砲塔だけは敵陣地をギッと睨み据えている
のが迫力あるなあ。
       地上偵察部隊からの詳細な報告を受けた中隊長は、続いて特科部隊に前進を指示。まずは6名の隊員が飛び
      込んで来て、続いて155mmFH-70榴弾砲が自走でやってきました。先行した隊員は周囲の安全を確認
      し、すぐに榴弾砲にとりついて射撃準備に取り掛かります。さらにやってきた重迫撃砲部隊も、高機動車から
      切り離した120mm迫撃砲RTをてきぱきと展開させています。

       続いて中隊長は先遣小隊に突入を指示。上部ハッチからMINIMIを撃ちまくる軽装甲機動車が4両突っ
      込んで来て、敵陣地と激しい銃撃戦を繰り広げます。それを支援すべくやってきた16式機動戦闘車も、敵陣
      地に向けて空砲を発射。16式の空砲発射を見るのは今回が初めてですが、揺れらしい揺れが殆どないんです
      ね。すごいなあ。

       その間に射撃準備を整えた特科部隊の155mmFH-70榴弾砲に、中隊長から射撃命令が下ります。
       「方位角、3230!射角、300!」
       射撃データの復唱と確認が行われたあと、
       「てーっ!」

       の号令とともに方向から真っ赤な火球が膨れ上がり、会場に轟音が鳴り響きます。敵陣地周辺に次々と着弾
      煙が上がる中、敵対抗部隊はしぶとく反撃。前線の部隊と陸自本隊の間で緊迫した通信が交わされますが、こ
      こでも頭上を行きかう旅客機のエンジン音で何を言っているのかさっぱりわからず。しかしこの戦闘訓練展示、
      離陸中の飛行機内から見たらさぞかしすごい眺めなんでしょうね。ある意味最高の特等席かも(笑)。
       そんな中、敵対抗部隊の155mm榴弾砲M1による反撃で先遣小隊に負傷者が発生。しまった、せっかく
      の珍しい退役装備品の空砲発射を撮影し損ねてしまいました。射撃のタイミングはアナウンスが教えてくれま
      すが、旅客機の轟音の所為で聞こえませんでした。

       すぐに別の隊員が駆け寄り、負傷者を車両の後方まで引きずって退避。16式機動戦闘車もやってきて救護
      を支援します。先遣小隊からの報告を受けた中隊長は、すぐさま衛生隊に出動を指示。
       「衛生、こちら中隊長。先遣小隊に負傷者一名発生!」
       「衛生、了解!」

       後方から一気に飛び込んできた救急車は、軽装甲機動車と16式機動戦闘車の背後に回り込んで急停車。
      生隊員
によって負傷者は車内に収容され、後方へと搬送されて行きました。

       ここで高射特科部隊の対空レーダーが、敵航空機の接近を探知。
       「中隊長、こちら高射!敵航空機を確認、撃墜する!」
       「中隊長了解、撃墜せよ!」
       「目標、2つ!・・・・・・ロックオンよし!対空ミサイル、発射!」

       ブシュー、というミサイルの発射音が鳴り響いたあと、
       「こちら高射、敵航空機、撃墜!」
       すると敵陣地からは装甲車が飛び出してきました。
       「中隊長、こちら先遣小隊!伊丹の台に敵装甲車を発見、射撃する!」

       軽装甲機動車の上部ハッチから身を乗り出した隊員が、今度は01式軽対戦車誘導弾を発射。見事敵装甲車
      を撃破します。
       そして16式機動戦闘車の後方から74式戦車がやってきました。もうすっかりお古になった74式ですが、
      エンジン音と履帯を響かせながら突入してくる様子はさすがに迫力ありますね。2両並んで急停止した74式
      戦車は、すぐに敵陣地に向けて空砲を発射。

       さらに上空にはAH‐1S対戦車ヘリコブラが進入してきました。
       「対戦車ヘリ、こちら中隊長。敵装甲車を撃破せよ!」
       「対戦車ヘリ、了解!」

       機首を下げたコブラは一気に急降下、敵対抗部隊の装甲車に襲い掛かります。上空からの急襲に慌てふため
      く敵対抗部隊に対し、地上からはすかさず74式戦車が射撃を浴びせます。
       その間に先遣小隊はさらに敵陣地へと距離を詰めていきますが、直前に埋設された地雷原と鉄条網に行く手
      を阻まれました。報告を受けた中隊長は、施設小隊に地雷原と鉄条網の処理を指示。合わせて火力戦闘部隊に
      対し、前線に丸腰で身を晒す事になる施設部隊への射撃支援を命令します。
       「戦車、特科、重泊、こちら中隊長。障害処理を射撃支援せよ!施設、障害処理を開始せよ!」
       火力戦闘部隊がドカドカと砲弾の雨を降らせて敵の反撃を封じ込める中、後方からは92式地雷原処理車
      前進開始。射撃位置についたあとは巨大な発射機をぐいんと立ち上げ、ロケット弾を発射します。

       鉄条網を越えて着弾したロケット弾に牽引された爆薬が一斉に爆発し、地雷原を一直線に吹き飛ばして突撃
      経路の開啓
に成功。そこに飛び込んできたのは同じく施設科の75式ドーザ。爆薬がボコボコに掘り返した地
      面を一気に整地して、小銃小隊の突撃通路を確保します。いやあ、いいなあ75式ドーザ。施設科好きの私と
      しては、資材運搬車と並んでああもうたまンない!な車両です。一度でいいからあの特殊な操縦席を見てみた
      いものです。
       さらに特科の155mmFH-70榴弾砲が次々と轟音をあげ、重迫撃砲部隊の120mm迫撃砲RTもメ
      トロノームの様な正確な動きで砲弾を発射し続けます。

       そして突撃支援射撃の最終弾の弾着と同時に、部隊は敵陣地に向けて一斉に突撃。まずは74式戦車が唸り
      をあげて敵陣地に突っ込み、小銃小隊を乗せた96式装輪装甲車と軽装甲機動車群がそれに続きます。
       敵陣地手前で急停車した96式装輪装甲車の後部ハッチからは、完全武装の小銃小隊が次々と飛び出してき
      て、敵陣地に向けて一気呵成の突撃をかけます。

       上空からはAH‐1S対戦車ヘリコブラが支援射撃を行い、激しい空砲音が鳴り響き白煙が立ち込める中、小
      銃小隊は見事敵陣地を制圧。
       「中隊長、こちら小銃小隊!突撃、成功!」
       「中隊長、了解!」

       状況終了のラッパが鳴り響き、各部隊の魅力を余すところなく詰め込んだいかにも方面隊創隊記念行事らし
      い戦闘訓練展示は終了。見学者からは大きな拍手が送られました。
       式典会場では後片付けが始まり、見学者はぞろぞろと移動。いやあ、ものすごい人混みですね伊丹駐屯地。
      私が初めて伊丹に来たのはかれこれ10年前、あれから色んな事があって、今こうして沢山の人が創立記念行
      事に来る様になったとは。実に感慨深いものがあります。
       外部食堂の『伊丹総監部特製牛煮込みカレー』を食べ損ねたのは心残りですが、私の胃袋もいつまでも暴れ
      ん坊将軍ではいられない
という事か・・・。最後は駐屯地資料館を見学して、久々の伊丹駐屯地を後にしまし
      た。




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