護衛艦たかなみ・おおなみ一般公開in敦賀港
2017.07.22
福井県敦賀港にて行われた、護衛艦たかなみとおおなみの一般公開に参加してきました。DD110護衛艦
たかなみとDD111護衛艦おおなみは、第2世代汎用護衛艦むらさめ型の改良版として2003年より就役
したたかなみ型護衛艦の1・2番艦です。むらさめ型の76mm単装速射砲から127mm砲にグレードアッ
プし、2ヶ所に分散していたVLS(垂直発射装置)も前甲板の1ヶ所に集約する等、海上防衛の第一線での
存在感をさらに増した艦と言えますね。
ちなみにこの2隻は横須賀地方隊にて第2護衛隊群第6護衛隊を構成しており、今回は忙しい訓練の最中に
2隻揃って敦賀港にやって来る事となりました。
当日は早朝に自宅を出発、名神自動車道から北陸自動車道と車を走らせ、敦賀ICから一般道に入ります。
おお、埠頭に2隻横並びになっている護衛艦の姿が見えて来ました!0800の自衛艦旗掲揚には間に合いま
せんでしたが、久しぶりのたかなみ型に心が躍ります。特にDD111護衛艦おおなみは今回初乗艦なのでそ
れもなおさら。
いかにも今時の護衛艦らしい、カクカクのシルエットでかっちりまとまった後ろ姿。個人的に一番好きな護
衛艦はゆき型ですが、こうしてみるとやっぱりたかなみ型もいいなあ。
公園のウッドデッキからの撮影を手早く済ませて駐車場に車を乗り入れ、既に5~60人は並んでいる埠頭
の開門待ちにつきます。フェンス越しに眺めるたかなみ型護衛艦2隻。エッジがシャープな煙突、複雑に入り
組んだラティスマスト・・・むらさめ型からあきづき型へと進化していく、第2世代DDの過渡期的な印象で
すね。ちなみに下の画像の手前に居るのがたかなみですが、2007年の横須賀マリンフェスタのプチ展示訓
練以来、実に10年ぶりの再会であります。
そのまましばらく時間を潰していると、0845、開門待ちの行列が動き始めました。0900からの一般
公開の前に、書面での手続きが必要との事。テントの中で名簿に記入して、いざ埠頭へ。まずは手前に停泊し
ているDD110護衛艦たかなみに向かいます。
むらさめ型からの小改良で100㌧増えて、基準排水量4650㌧となったたかなみ型護衛艦1番艦。流石
に3000㌧以下のゆき型やきり型護衛艦に比べると、乾舷の高さが際立ちます。艦橋後方に聳え立つマスト
もお城の如き威容で、現代の護衛艦隊を支えるワークホースとしての迫力を感じます。
思った程の混雑ではないので、まずは艦首側から撮影したいところですが、残念ながら艦首から先の埠頭は
立入禁止。うーん、これは仕方ないなあ。
という訳で、さっさと乗ってしまいましょう。ラッタルを上がってすぐのところには、甲板から一層高い位
置にあるVLSが待ち構えていました。むらさめ型では2ヶ所に分かれていたVLSを前甲板に一元化した為、
艦内容積確保の為に甲板一層分突き出た形になりました。
そしてその前に聳え立っているのが、54口径127mm速射砲。むらさめ型の76mm単装速射砲に比べ
て格段に打撃力を増しています。角の丸い一世代前の砲塔ですが、これでもある程度のステルス性能はあるん
でしょうね。
そのVLSにしても127mm砲にしても、あまりにデカイのでファインダーに収まってくれないのが難点。
とはいえ隣に居るのが全く同型艦のおおなみなので、こっちを撮影すればいいか。幸いまだ誰も乗艦していま
せんし。
127mm砲のすぐ横に置いてあったのが、教練用の練習弾。装薬包部だけで16kg、弾頭部に至っては
32kgとかなりの重量があります。艦への搭載はクレーンを使いますし(たまに人力で運び込む事もあるそ
うです)、装填後は自動給弾なので大した問題ではありませんが、昔の軍艦ではこれ以上の重さの弾頭をえっ
ちらおっちら人力で装填していたんですよねえ。
命中精度が低かった昔の艦砲は、一定時間内に数を撃ちまくる発射速度、つまりは装填速度が生死を分けた
為、力持ちな砲員は周囲から一目も二目も置かれる存在で、艦内生活の色んな面でも特に優遇されていた・・・
というのも納得です。
艦橋の真正面に控えているのが、近接防御兵器であるファランクス。127mm砲や対空ミサイルをかいく
ぐって艦に迫りくる対艦ミサイルに対して最終的な迎撃を担当する、高性能20mm機関砲です。目標の捜索、
探知、捕捉、追尾を単独で行う事が出来、さらに自分が発射した機銃弾の追尾も出来る為、高速で接近する目
標に対しての素早い弾道修正が可能。対艦ミサイルをタングステン製の弾芯で木端微塵にしてくれる、超過激
なオバQであります。
これらの前甲板にある装備品には丁寧な説明板が用意されていますが、要所要所に程良く語感が硬い専門用
語を織り交ぜて、いかにも自衛隊らしいもの言いになっているのが面白いなあ。その片隅にはたかなみのステ
ッカーが貼ってありましたが、CREST RIDER・・・波乗りとかサーフィンって意味かな?いかにも
護衛艦たかなみに相応しい、俊敏な即応性と力強さが感じられるニックネームです。
その後は左舷舷側通路を通って後甲板へ向かいます。ゆき型きり型とは異なるすっきりしたデザインが、な
るほど第2世代DDですね。よく言えばスマートな、悪く言えば愛想に欠ける雰囲気。
通路の途中に鎮座しているのは、三連装短魚雷発射管。前甲板のVLSに装填されているアスロックのブー
スター無しバージョン、より近距離に潜んでいる潜水艦に対して一撃を加える装備品です。ゆき型きり型では
手動で旋回させて発射していましたが、たかなみ型のこれは艦内CICからの遠隔操作で動きます。
その頭上に聳え立っているのが90式艦対艦誘導弾。射程100km超を誇る、国産日の丸対艦ミサイルで
す。残念ながら逆光位置にあるので、隣のおおなみのものを撮影。
通路の途中にはたかなみとおおなみを繋ぐラッタルが掛け渡してありますが、なんと本日の公開艦はたかな
みだけで、おおなみは非公開との事。えええええ、発表ではおおなみの名前もあったのに・・・。見るとおお
なみの舷側には落下物防止ネットが張られ、見学者を迎え入れる準備は出来ています。本当は2隻とも公開す
るはずが、直前で何かあったのかな?未乗艦のおおなみには未練が残りますが、これは仕方ないですね。
という訳で、後甲板へ移動。伸び伸びとブレードを広げたSH-60K哨戒ヘリが、沢山の見学者に囲まれ
ています。背後では艦尾の自衛艦旗が海風にはためき、抜けるような青空と相まって実にいい風景。
格納庫内は陽射しを避けて来た人でいっぱいで、スタンプコーナーや売店には長蛇の列が出来ています。壁
面には赤フィルターが入った非常灯がありますが、たかなみのものは豆電球なんですねえ。最近の艦はどれも
LED化しているのですが。新世代汎用護衛艦として華々しく誕生したこのたかなみも、既にこんなところか
ら時代に取り残されつつあるのか・・・。世の中すごい速度でどんどん変わっていくんだなあ。
ちなみにこの非常灯、艦内の電源がダウンする様な非常時には自動的に点灯するそうです。いざという時に
役に立ってくれる存在ですが、きっと一度もその真価を発揮しないまま、艦とともに用途廃止された非常灯も
数多いんだろうなあ。
シャツや識別帽、タオルといった定番商品以外に、ジッポーやマグカップ、ペン、ピンバッジ、メダル、ス
テッカー等の小物が異様に充実したグッズ売り場は、記念品を求める見学者でごったかえしています。グッズ
派の人にとってはたまンないラインナップですね。その背後には何故かおおなみの巨大な旗が掲げられていま
したが、なるほど、おおなみグッズも混ざっていたのか。乗艦こそ叶いませんでしたが、せめてグッズだけで
もという人は多いのでしょう。
飛行甲板の隅にあったのが、イチゴのパックを伏せた様なLSO(Landing Signal Off
icer)。艦載ヘリの発着艦を管制する小部屋です。視界を確保する為の全面ガラス張りがこの時期は仇と
なり、いくら空調を効かせても蒸し風呂状態・・という地獄の様な部署であります(笑)。
他の艦では天井に青フィルムを貼ったりヨシズを乗せたり、中にはかき氷の小旗を吊るしたりと涼をとる為
の涙ぐましい工夫を重ねていますが、実際のところは気休めにもなっていないとの事。
ふと目に入ったこれについて、ヘリパイの人に質問してみます。この飛行甲板の外周にある赤と緑の表示灯
は何に使うものなんですか?
「あ、それは正横灯っていいまして、ヘリが着艦する時に副操縦士が前後の位置の目安にする表示灯です。
右席に座る副操縦士から見て、肩のちょうど真横に緑があればそのまま着艦、赤まで来ていたらもう少しバッ
クして着艦せよ、という感じで使ってます」
へー、機長ではなく、副操縦士が前後の位置を決めるんですか。
「はい、着艦時の機長は前しか見ちゃダメなんですよ。甲板中央の白い縦ラインを注視して、機体が左右に
ブレていないか確認します。前後のブレに関しては副操縦士の責任になってまして、常に正面を向いている機
長に対して、『もうちょい前、前、前、ちょっと後』って感じで口頭で伝えてます」
てっきり機長が首を回して、前後OK、左右OKって、車の車庫入れみたいに確認するのかと思ってました。
「ヘリの操縦は非常にデリケートなので、横を向いて前後確認してる間に簡単に左右にズレてしまうんです
よね。だから左右は機長、前後は副操縦士と、完全に分業制になってます。実際赤ラインからちょっとぐらい
はみ出しても問題ないんですけど、十分な安全マージンをとってこの位置になってます」
なるほどなあ。じゃあ、あの後の方の黄色い表示灯は何なんですか?
「ああ、あれはこの位置まで機体を持って来た時に、ヘリから着艦用のワイヤーを降ろせ、という目印です。
降ろしたワイヤーを甲板員の人が着艦装置に固定して、そこから改めて前後左右の着艦位置調整を行うんです」
との事でした。ちなみに夜間の着艦では、この表示灯以外に甲板に設置された着艦灯がついて目印になりま
すが、基本的に目立たない為の赤色灯なので、甲板の白ラインがかろうじて視認できる程度・・・との事。
「まあ、こんなものでもないよりマシ、ってとこですね(笑)。夜間の着艦はやっぱり怖いというか、今で
もほんと緊張しますよ」
無事着艦に成功した時は、さぞかしほっとした気分になるんでしょうね。自分達が知らないところで、日夜
命を削るようにして海上防衛に携わっている人が沢山いる・・・。縁あってイベントに参加出来たからこそ聞
けた、隊員さんの生の言葉です。
たかなみ型の飛行甲板ですが、外周が緩やかな坂道状に一段低くなっています。これはオランダ坂と呼ばれ
る設計で、舫を固定するボラードという突起物が、ヘリの着艦時に邪魔にならない様に一段低くしてあります。
なぜ坂状なのかというと、甲板に垂直な段差を作るとその部分が船体構造上の弱点になる為、こうしてなだ
らかな坂道にしてあるとか。また、その語源については諸説あるそうですが、このオランダ坂を初めて採用し
た船が長崎の造船所で作られた事から、その近くにあった観光名所オランダ坂にちなんで名づけられた・・・
という説が有力だそうです。
以上で、護衛艦たかなみの一般公開は終了。うーん、結局艦内も艦橋も公開されず。それほど人が多かった
訳でもないので、ちょっと物足りない印象が残りました。おおなみが公開されなかった事とも、何か関係あっ
たのかな?場所が場所だけに朝鮮半島でまた何か・・・とも思いましたが、それならたかなみだけ一般公開、
なんて中途半端な事にはならないでしょうし。
ちなみに今回私は富山県に行く用事があり、その途中で立ち寄れたので大したダメージではありませんでし
たが、おおなみ目当てで来ていたら、結構ショックだっただろうなあ。
いや待てよ、確か護衛艦おおなみ、来週末は富山県の伏木港で一般公開が予定されていた筈。その週末は私
は舞鶴サマーフェスタに参加予定ですが、土曜日の舞鶴のあと富山県までちょっと寄り道して、翌日おおなみ
一般公開に参加・・・うん、アリだな・・・。
はっきり言って寄り道というレベルではありませんが、来月は特にこれといって動く予定はないですし・・・
ええい、こうなったら舞鶴のあと、来週も富山まで行っちゃえ(笑)!思いつきのニヤニヤ笑いを噛み殺しつ
つ、北陸自動車を北に向けて車を走らせました。
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