練習艦しまゆき一般公開in阪神基地隊

2017.09.09


       兵庫県の阪神基地隊にて行われた、練習艦隊の一般公開に行ってきました。当日は午前に仕事があったため
      ため昼からの参加となりましたが、幸い午前に来た人達が帰るタイミングと重なったのか、到着した阪神基地
      隊は予想外に空いています。ホッとしたような寂しい様な、ちょっと複雑な気分ですね(笑)。
       東側の岸壁に停泊しているのは、TV3518練習艦せとゆき。せとゆきは本日一般公開を行わないので埠
      頭には人もおらず、光線状態のいい午後とあって撮影コンディションは申し分なし。

       そして南側の岸壁に佇んでいたのが、本日の公開艦であるTV3513練習艦しまゆき。はつゆき型護衛艦
      は古い艦から順次退役が進み、護衛艦隊の中でもすっかり影が薄くなりつつあるのが残念ですが、これも戦力
      の若返り
の為には仕方のない事。それより、大好きなはつゆき型を2隻まとめて見る事が出来るのが嬉しいな
      あ。
       しかし改めて見ると、テニスコートの向こうに見える護衛艦ってなんだか不思議な感じです。海自の基地は
      舞鶴佐世保、あとこの阪神基地ぐらいしか知りませんが、割と珍しい光景では。

       さて、まずは本日公開される練習艦しまゆきに向かいましょう。乗艦受付で住所氏名を名簿に記入し、73
      番の乗艦章
ウェットティッシュを貰います。時々貰えるこのウェットティッシュですが、勿体ないので取っ
      ておこうとしていつも乾燥させてしまうんですよね(笑)。今回は有効に使おう・・・。

       まずは岸壁の端によって、しまゆきを艦首側から撮影です。うーん、ぎりぎりで艦首が入らない・・・。航
      海実習の締めくくりとして、約5ヶ月に及ぶ諸外国歴訪をこなす練習艦隊。外交的な役割も課せられているだ
      けに、艦齢を重ねていてもキレイな状態だなあ。もっとも、手入れの真面目さ律儀さにおいて、海自の右に出
      る海軍はそうそう無い
と思いますが。

       甲板に人はまばらなので、まずは舷門脇にあったテントに寄ってみます。この後の吹奏展示で使用する金ピ
      カのラッパ
が展示してありますが、お、時鐘と一緒に珍しいものが吊るしてありますよ。すき焼き鍋みたいで
      お腹が減ってきますが、これは銅鑼かな?隊員さんに訊ねてみると、
       「はい、銅鑼です。海上で天候が悪化して、視界が効かなくなった時に鳴らすんです」
       警笛としてではなく、艦内の乗組員への注意喚起的な使い方なんでしょうね。それにしても艦内にゴワーン
      ゴワーンと鳴り響く銅鑼の音
って、想像すると変な感じだなあ。

       という訳で、練習艦しまゆきに乗艦。右舷の通路を進んで行くと、まずは艦橋真下に聳え立つアスロック発
      射機
の横に出ました。今やアスロック発射機を持つ護衛艦も本当に少なくなってしまいました。あぶくま型は
      まだ頑張りますが、はつゆき型の甲板でこれを見るのもあと僅かだろうなあ。
       甲板下に埋まり込んだVLSは何を考えているのかさっぱり分かりませんが、このアスロック発射機はその
      日その日の機嫌の良し悪し
が伝わってくる雰囲気があって好きですね。まあ、実際そんな事がある訳ないので
      すが(笑)。

       そのアスロック発射機の前に鎮座しているのは、76mm単装速射砲。つるりと丸い海坊主の如き砲塔シー
      ルドがカワイイですが、最大で毎分80発もの発射速度を誇る小さな暴れん坊です。
       その76mm単装速射砲、今日は随分と砲身を下げていますね。普段は斜め上に向けている事が殆どなので、
      珍しいなあ。

       試しに砲口内部を覗いてみると、おおお、こんな風になってたのか。砲塔内部にはちゃんと照明が設置され、
      砲身内部のライフリングがキレイに反射して見えます。なんというか、『2001年宇宙の旅』でスターゲー
      トに飲み込まれていくボーマン船長になった気分。なんてこった!☆でいっぱいだ!

       砲塔後部のハッチも開放されていて、薬室手前には白熱球が置いてありました。せっかく砲身を下げて内部
      も見せるんだから、ライフリングが映える様に照明も入れよう!というしまゆき砲雷科の計らいですね。説明
      係の隊員さんも、
       「砲身内まで公開するのは、結構珍しいですよ(笑)」
       ちなみにこの砲塔は、艦内のCIC(戦闘指揮所)からの遠隔操作で運用される無人砲塔。隊員さんが中に
      入るのはメンテナンスの時ぐらいなので、内部の隙間は結構ギリギリな感じです。整備作業が長引くと腰を痛
      めそう。

       それより気になったのが、ハッチに吊るされた76mm速射砲の説明パネルです。砲を擬人化させて喋らせ
      たり、一人でボケて一人で突っ込んだり・・・なんかどこかのイベントレポートを読んでいる様。こうして見
      ると、結構寒い事やってるんだな俺・・・(泣)
       そんな微妙な気分を噛みしめていると、メガホン片手の若い3等海尉さんがやってきました。どうやら今か
      ら武器操法展示が行われる様ですよ。
       「砲術士、機関士、配置につけ!」
       の号令で始まった武器操法展示。まずは司会担当の2人の3等海尉さんの自己紹介から始まりますが、どち
      らも防大を出たばかりとあって話し方はたどたどしく、帽子の顎紐と帽章のピカピカ加減も実に初々しい雰囲
      気。人前で分かりやすく理路整然と話す練習は学校で十分に積んでいる筈ですが、やっぱり顔見知りの学生同
      士ではなく、一般人相手だと勝手が違うんだろうなあ。

       途中冷やかし半分フォロー半分でツッコミを入れていた1等海尉さんが最後を締めくくりますが、流石にも
      の慣れた感じで弁舌滑らか。幹部として海の上で過ごしたキャリアの差ですね。役目を終えてホッとした表情
      の3等海尉さん2人も、早く追いつかないと。
       その1等海尉さんにより武器レーダー類の簡単な説明が行われましたが、水上レーダーは少しでも遠くま
      で把握できるようマスト上部に
、対空レーダーは低空目標も捕捉しやすいようマスト下部に・・・という位置
      の説明も非常に分かりやすい話し方。
       そしてけたたましい警報が鳴り響いたあと、アスロック発射機が動き始めました。低い駆動音をあげながら
      発射機を右に左に旋回させ、プシューンと前扉を開放。内部からはアスロックを発射させるためのレールがに
      ょきにょき伸びて来ました。
       実際はもっと機敏に動くそうですが、今のはテストモードか何かかな?とは言えこれぐらい勿体をつけた動
      き
の方が、かえって迫力が増しますね。最後は発射機を中立位置に戻し、武器操法展示は終了。

       その後は若手3等海尉さんへの質問タイム。しまゆきの愛称であるPOLAR BEAR(ホッキョクグマ)
      ですが、これは実際に艦同士での通信でも使われるそうです。
       「ちなみに先日就役したばかりの護衛艦かがなんですけど、ニックネームはホワイトベースなんですよ(笑)。
      私はガンダムの事はあまり詳しくないんですが、乗組員たちが話題で盛り上がってました(笑)」

       との事。やっぱり部内でも話題になってるんですね、ホワイトベース(笑)。あとちょっと変な話題ですが、
      防大で語り継がれる怪談、心霊現象の類について探りを入れてみます。大掃除の時に机の下に貼ってあったお
      札
を見つけたり、入口にが盛られている部屋は確かにあるとの事。

       その後は左舷の通路を通って、艦尾方向へ。角が丸い煙突の横にはハープーン艦対艦誘導弾が配置され、そ
      の真下には3連装短魚雷発射管が。比較的近距離にいる潜水艦を攻撃する為の装備品です。
       ちなみにこの3連装短魚雷発射管、魚雷はクレーンで運び込むものの、台車から発射管への装填はほぼ人力
      で行う
らしく、その様子は傍から見ていても気の毒な程の力仕事だそうです。説明してくれた隊員さんいわく、
       「私は武器に関係ない仕事なんですけど、その様子を見た時はつくづくこの部署でなくてよかった・・・と
      思いましたね(笑)」

       との事でした(笑)。

       飛行甲板真下にあたる天井には、ダメコン用の木材が吊り下げてありました。新しい艦では触れれば切れそ
      うな位にエッジが立った木材ですが、数えきれないほど繰り返した防水訓練のお陰か、しまゆきの木材は角が
      すり減って丸くなっています。練習艦として長い歴史を刻んだこのしまゆき、木材の一本一本に沢山の実習生
      達のいろんな思い出
が染み込んでいるに違いない・・・。

       通路を抜けると後部の短SAM甲板に出ました。対空ミサイルシースパローの発射機が、太陽と海風を浴び
      てのほほんとした雰囲気。
       それにしても、今回は飛行甲板の公開は無しか。SH-60哨戒ヘリ実習講堂も載せていないので、確か
      に見どころは無いかもしれませんが、艦内公開もなかっただけにちょっと残念・・・。

       ちなみにこの練習艦しまゆきははつゆき型護衛艦の12番艦、1987年の就役以来護衛艦隊のワークホー
      スとして働き続け、1999年に練習艦に転籍。2013年には海自初の女性練習艦艦長である大谷美穂2等
      海佐(同時期に練習艦せとゆきにも女性艦長が就任)を迎えたという記念すべき艦であります。
       ここで「えっ?」と思った閲覧者の方もおられると思いますが、確かに妙な話ですよね。通常30年ほどの
      現役期間を終え、第一線を退いた艦が担当する印象が強い練習艦なのに、僅か12年、護衛艦として脂が乗り
      切ったタイミングでの練習艦への転籍
。これはちょっともったいない話の様な・・・。

       しかしこれにはきちんとした訳があり、むらさめ型に始まった第3世代護衛艦のシステムが飛躍的な進歩を
      遂げ、それに合わせてより高度な教育を幹部候補生達に施す必要性があったが為に、まだまだ現役として十分
      働けるこのしまゆきに白羽の矢が立った
との事。言わばこれは、しまゆきだからこそ果たす事の出来た大任、
      大抜擢
と言えるでしょう。
       ちなみにはつゆき型護衛艦と言えば、基準排水量3050㌧という今となってはコンパクトな船体に、対空
      対艦対水中兵器
をてんこ盛りにした重武装が特徴。システム艦としての機能も備わっている上に、格納庫に
      設の実習講堂
を搭載するスペースもあります。ある意味器用貧乏の極みとも言えますが、これほど何でもバラ
      ンスよくこなす艦が色んな意味で頼られたのは、至極当然の話なんでしょうね。

       その後は岸壁で行われたラッパの吹奏展示手旗信号展示を見学し、隊舎2階の厚生センターへ向かいます。
      KOBEカレー食堂が営業していて、本日提供されるのは掃海艇つのしまカレー。この食堂もご無沙汰だなあ。
      また時間を作って食べに来たいものです。
       最後は建物外の通路から、岸壁に佇むせとゆきとしまゆきを撮影。内容的にはちょっと寂しい一般公開でし
      たが、76mm単装速射砲の砲口を見る事が出来たのは収穫でした。限られた時間内に幹部候補生を一人前に
      育て上げる練習艦
ですから、あまり色々と工夫を凝らす余裕はなかったんだろうなあ。
       部隊配属後はさらに大変な日々が続くと思いますが、頑張って一日も早く立派な幹部自衛官になってもらい
      たいものだ・・・
と思いつつ、阪神基地隊を後にしました。




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