護衛艦しまかぜ一般公開in大阪港天保山岸壁

2017.06.10


       大阪港天保山岸壁にて行われた、護衛艦しまかぜの一般公開に行ってきました。DDG172護衛艦しまか
      ぜ
はたかぜ型護衛艦の2番艦、定係港である佐世保地方隊からの参加であります。
       当日はお昼過ぎに大阪港に到着。天保山ハーバーランドの脇から岸壁に出ると、おお!いましたよ護衛艦し
      まかぜ!
後部飛行甲板の5インチ単装速射砲、左右にファランクスを従えたお皿状の射撃指揮装置、高校生の
      のヘアブラシみたいな対空レーダー・・・後ろ姿を一目見ただけではたかぜ型と分かる、古臭くごちゃごちゃ
      した独特のシルエットです。細部まで入り組んだこの魅力は、いつ見ても飽きないなあ。イマドキのすっきり
      した護衛艦にはない味わい
と言えますね。

       丸っこい煙突の前には前後に長い艦橋構造物、その上には複雑な形状のマストがそびえ立ち、パラボラアン
      テナ状の射撃指揮装置が2基、前後段違いに配置されています。このゴテゴテ感!うーん、たまらないカッコ
      よさだなあ。
       そしていかにも戦闘艦らしく日本刀の様に伸びた前甲板にはアスロック発射機、サイコロ型の5インチ単装
      速射砲
、そしてターターミサイルランチャーが一直線に並んでいます。さながら古臭い兵器見本市会場の如き
      いぶし銀の魅力ですね。

       それにしても、意外なほど人が少ないなあ。岸壁がだだっ広いせいもありますが、大混雑を覚悟して来たの
      で拍子抜け。多分いちばんいい時間に来たんだな・・・とほくそ笑みつつ、手荷物検査のテントに向かいます。
      ここではリュックの中を検査されましたが、急いで出て来たのでぐしゃぐしゃに丸めた仕事着を見られ、ちょ
      っと・・・いや、
かなり恥ずかしい思いをしてしまいました(笑)。隊員さんが見たら顔をしかめそうなズボ
      ラっぷり
。次から気をつけよう・・・。
       その手荷物検査ブースの片隅に、妙なものが置いてありました。これは放水ホースのバルブか何かかな?
      カールによる研磨前研磨後を比較した面白い試みです。艦の手入れを欠かさない乗組員の日常を切り取って
      見せたと思われますが、なんだかピカールの商品PRみたいになってますね(笑)。メーカーから広告費が出
      
ていたりして。

       舷門に向って進むと、艦橋見学ツアーのくじ引きをやっていました。箱の中に手を突っ込んで色のついたボ
      ールを引き当てる方式ですが、小さな子供を連れた家族には別のクジが準備されています。ははあ成程、子供
      にはアタリしかないクジを引かせているんですね。思った通り目の前の男の子は見事アタリくじを引き当て、
      家族で大喜び
。これはいい思い出になるだろうなあ。
       ちなみに私は見事外してしまいましたが、小さな子供を漏れなく優遇しながらも外れた方にもチャンスを与
      えて不公平感を抱かせない、実によく練られたスマートなやり方です。確かに艦橋に上がれないのはガッカリ
      と言えばガッカリですが、アタリくじを手にはしゃいでいる小さな子供を見ると、それはそれでいいか・・・
      
という気になりますね。エロマンガ島の本屋さんにはエロ漫画しか売っていないと信じていた小さい頃の自分
      を思い出しました。俺の分までしっかり見てきてくれよな!

       まずは艦首方向からの撮影を済ませ、久しぶりの護衛艦しまかぜに乗艦。おや、舷門前に妙な掲示物があり
      ますよ。しまかぜ給養員による野菜の飾り切りの写真展示で、ただの大根の輪切りやキュウリが繊細きわまる
      ガラス細工
の様にカットされ、これはお見事。普段の三度の食事でこんな手の込んだ真似はやりませんが、艦
      にゲストやVIPを招いての会食の際には、給養員達が腕によりをかけて食事を演出するのでしょう。一度で
      いいからご馳走になってみたいなあ。
       という訳で護衛艦しまかぜに乗艦。左舷舷側通路を通って前甲板に出ます。まず見えてくるのが、ちょっと
      した小屋位の大きさがあるアスロック発射機。甲板埋め込み式のVLS(垂直発射方式)にその役割を譲りつ
      つありますが、古い艦ではまだまだお馴染みの誘導魚雷を海域上空まで打ち上げる発射機です。

       5インチ単装速射砲の基部に『本日のイベントスケジュール』が貼り出されてあり、よくある武器操法展示
      以外にも色々やってくれるみたいですが・・・えっ、最初のイベントまであと5分!しかも一発目は窓拭き!
      窓拭きっていったい何をやるんだ?いやまあ、窓を拭くんでしょうけど。
       まずは艦番号172にちなんで本日1172番目の乗艦者となった小さな子供へのしまかぜ賞授与式が執り
      行われたあと、いよいよイベント開始。出て来たのはしまかぜミサイル長の一等海尉さんで、なかなか堂に入
      った司会っぷりを見せています。

       ちなみに護衛艦しまかぜ、このたび大阪府担当の広報艦として認定されたそうです。これは昨年末からスタ
      ートした企画で、全国都道府県に一隻ずつご当地艦が割り振られ、おらが国の艦として積極的に広報活動を行
      うとの事。一体どういう基準でこの艦が大阪担当になったのかは分かりませんが、この実に味わい深いしまか
      ぜが大阪担当とは嬉しい限り

       ミサイル長さんからの挨拶と護衛艦しまかぜの紹介が終わったところで、まずは『窓拭き』が始まりました。
      また珍しい展示だな・・・と思っていると、艦橋右側の外の手すりにとりついた隊員さんが、司令席前の窓を
      きゅっきゅと拭き始めました。

       安全帯命綱をつけているとはいえ、真下は固い鋼鉄の甲板。見ているこっちの方が恐ろしいなあ。金属磨
      き展示といい飾り切り展示といい、せっかくだから余所の艦では見せないものを見せよう!という姿勢が素晴
      らしい。
       続いてはターターランチャーの装填展示。静かな唸り音が響いたあと、真っ青なSM-1の模擬弾がシュカ
      ッと装填されました。今でこそ旧式の部類に入ってしまった装備品ですが、このターターが導入された頃は
      隊防空の希望の星
だったんだろうなあ。

       そして居酒屋の本日のおすすめ黒板みたいな三次元レーダーが、マスト上で目標の捜索を開始。探知された
      2つの目標は射撃指揮装置追尾され、艦首の51番砲塔ターターランチャーによる迎撃準備が整えられま
      した。おお、2基の射撃指揮装置がぎゅんぎゅん動いています!
       「発射用ー意!(撃)てっ!」
       ミサイル長さんの号令を合図に、まずはターターランチャーのSM-1が発射。模擬弾のお尻に仕込まれた
      赤ランプ
がピカッと光ったのが発射成功の印だそうです。

       発射を終えたターターランチャーはすぐに中立位に戻り、すかさず次弾を装填。続いては51番砲塔が、ぎ
      ゅいんと砲身を旋回させます。
       「撃ち方、始め!」
       「目標、撃墜しました。攻撃やめ!」

       いやあ、見応えがありましたね、しまかぜの武器操法展示。単にミサイルを装填したり砲塔を動かすだけで
      はなく、レーダーや射撃指揮装置と連動して見せてくれたので、戦闘訓練展示っぽくなっていたのが実に興味
      深かったです。

       続いては艦橋前に移動して、アスロック発射機の操法展示を見学。そもそもアスロックとは何なのか?とい
      う説明から、発射後のアスロックが潜水艦を追い詰めるまでの流れがミサイル長さんから分かりやすく説明さ
      れ、見学者の皆さんも真剣に聞き入っています。着水した魚雷は、搭載された電池が海水に反応する事でエン
      ジンに点火される
とは知りませんでした。
       発射機は最初から左に向いていますが、
       「最初は左側で、そのあと反対側に向けて同じ様に動かします。右側にいる皆さんもちゃんと撮影できます
      から、心配しないでくださいね(笑)」

       と、ミサイル長さんも細かく気を配っています。
       8つのセルを持つアスロック発射機は、低い作動音を立てながらスムーズに旋回。射撃位置についたところ
      でプシューンと前扉を開放し、中からはレールがにゅっと伸びてきました。もう古臭い部類に入ったこの発射
      方式ですが、個人的には『国鉄のニオイ』がして好きなんですよねえ。

       今時のVLSが『何事にも緻密で隙がなく、すごく優秀なJR』なのに対し、このアスロック発射機は『無
      駄やロスが多く融通も利かないけど、他に代え難い味わいを持っていた国鉄』
という印象。もっとも私は鉄道
      関係はさっぱりなので、見当違いな見解かもしれませんが・・・。
       その後は後甲板へぞろぞろと移動。しまかぜ艦尾の守りを引き受ける52番砲塔による、空薬莢の蹴り出し
      
(排出)を見せてくれるそうです。

       電力が供給された52番砲塔はブイーンと低く唸り声をあげ始め、一斗缶を蹴り転がす様なガラガラガラと
      いう音
とともに砲身真下の排莢口から金色の空薬莢が飛び出してきて、バスケット部に落下。本来は発射時の
      ガス圧で自動排莢されますが、今回は展示の為に砲塔内部から手動で行ったとの事。これもなかなか見る機会
      のない展示でした。

       次は『とう中手入れ』と呼ばれる、発射後の砲身の清掃作業の展示。いわゆる火薬カスの煤落としです。展
      示訓練終了後の護衛艦しらねで、実際の作業の様子を遠くから眺めた事がありますが、通常の一般公開で見る
      のは初めて
。ほんと色々やってくれるなあ、護衛艦しまかぜ。
       「それじゃあ、砲身を下げます」
       ミサイル長の号令とともに、5インチ単装速射砲の長大な砲身がぐいんと下がります。おお、この角度とこ
      の位置から砲身を見ると、何もないとは分かっていても流石にちょっと怯みますね(笑)。砲口の周囲には
      印
が入っていますが、確認できるのは砲の種類2003年9月の日付ぐらいで、あとはよく分かりません。
      花子ちゃん・・・
もとい花輪先生にお願いして修復してもらうか。

       「砲身を長持ちさせる為に、例え上陸が遅れても手入れはキッチリと行います。射撃員の宿命ですね(笑)」
       と、ミサイル長さん。ここで本日とう中手入れを行う6名の若手射撃員の紹介が行われ、見守る見学者から
      拍手が送られます。
       「彼らが今着ているのは戦闘服と言いまして、軽くて燃えにくく、動きやすい様に出来ています。今日は暑
      いって文句言ってますんで・・・じゃあ脱げ!」

       一斉に上着を脱ぎ、下に着ていた揃いの黒Tシャツを披露する射撃員達。

       「このTシャツは、今回の大阪広報の直前に完成した新作です!さっき売店に確認したら、あとはLLサイ
      ズが少し残ってるだけって言ってましたが」

       と、しまかぜグッズの宣伝もきっちりとねじ込んでくるミサイル長さん(笑)。なかなかやりますね。
       そして始まったとう中手入れ。先端に黒い布を巻きつけた長竿を砲身に突っ込んだ6名の射撃員は、
       「いち!エイッ!に!エイッ!さん!エイッ!よん!エイッ!」
       と大声を上げながら砲身内部をクリーニング。やっぱりこの辺りは、体育会系のノリなんだなあ。20回の
      往復作業
を終え、射撃員によるとう中手入れは終了。続いては見学者の中から希望者を募って、実際に作業を
      体験
させてもらえるとの事。

       「月曜日の朝、あっちが痛いこっちが痛いって、自衛隊に苦情を入れないでくださいね(笑)」
       とミサイル長さん。あー、やっぱり慣れないうちは結構キツイ作業なんですねぇ。そして2回目は女性の見
      学者を中心
に行われ、3回目は小さな子供も参加。
       「えー、誰か、やってみたい!というお子さんはいませんかー?」
       というミサイル長さんの背後で、一生懸命手を挙げているちびっこがいますが、ミサイル長さんは後方の警
      戒
を怠って気がついていない様子。慌てて射撃員達が
       「ミサイル長!うしろ!うしろー!」
       てっきりおっさん向けにドリフのネタをやっているのかと思いましたが、ミサイル長さんは本当に気づいて
      いない模様
です(笑)。
       「ミサイル長ー!後ろで手を挙げている子供がいまーす!」
       無事発見された小さな子供を交えて、3回目のとう中手入れが始まりました。しかし清掃竿の激しい前後運
      動
についていけず、竿に掴まったままぶらんぶらんとワカメの様に揺れ動くちびっこ(笑)。ほのぼのとした
      笑いが甲板に広がります(笑)。

       以上でとう中手入れは終了。いやあなかなか面白い展示でしたよ、パチパチパチ。ここで射撃員の一人が
      ムアップすると、俯角まで降りていた砲身がスッと上昇。あ、砲塔上部のバブルドーム内の操作員に合図を送
      っていたのか。この5インチ単装速射砲が、今はもう数少なくなった有人砲塔という事をすっかり忘れていま
      した。最近の砲塔は基本的に無人運用で、艦内のCICから遠隔操作されますからね。
       続いて本日2172番目の乗艦者へのしまかぜ賞授与式が行われ、その間クローズされた後甲板右舷側に
      ンジン付きの放水ポンプが運び込まれました。CBA着用による放水展示が披露されますが、まずは応急工作
      担当の荒木士長
により、消火作業時に使用される防火着酸素ボンベ等の装備品の紹介が行われます。荒
      木士長は一つ一つをてきぱきとチェックし、司会の『よーい、テッ!』の号令とともに着用開始。

       「10秒・・・・・・20秒・・・・・・30秒・・・・・・」
       とストップウォッチ片手の計測係がプレッシャーをかける中、荒木士長は重くてかさ張るツナギの防火着
      両足を通し、上半身部分を背負い上げるようにして着用。ブーツをはいてチャックを締めあげ、酸素ボンベ
      背負った後はヘルメットを被ってグローブに手を通し、わずか55秒で着用完了。すぐに舷側に駆け寄っ
      て消火ホースのバルブを構えます。そしてエンジンを始動させたポンプからは海水が供給され、舷側にて放水
      作業を開始。一分以内が合格ラインのところを55秒という好成績でクリアした荒木士長に、大きな拍手が送
      られました。

       さらにイベントはまだまだ続きます。今度はしまかぜ衛生員を務める井上一曹がやってきて、救急蘇生法の
      実演展示
についての説明が始まりました。艦艇乗り組みなら誰もが身につけている、自衛隊員のイロハですね。
      私もずいぶん昔習った事がありますが、幸い使う機会もないまま忘れかけていたので、復習のつもりでしっか
      りと見せて貰いましょう。
       本日の負傷者役を務めるのは大門みちこさんの弟、大根みちお君との事。何人かの見学者が笑っていますが、
      何かのネタなのかな?個人的に大門と言えば、アストロ球団に出て来た陣流拳法の変な人しか思いあたりませ
      んが・・・(笑)。

       という訳で、救急蘇生法の展示が始まりました。甲板で倒れている大根君をたまたま通りかかったしまかぜ
      補給科の高木3曹
が発見し、まずは周囲に大声で知らせます。
       「おーい、誰かー!人が倒れているぞー!」
       すかさず周囲の安全を確認し、感染症予防の手袋を着用する高木3曹。
       「周囲の安全、確認!感染防御!」

       大根君に駆け寄り、意識と呼吸、心拍を確認。
       「おーい、大門!大丈夫かー?誰か来てくださーい!」
       大声を聞きつけてやってきた3名の隊員に対し、高木3曹はてきぱきと指示を行います。
       「あなたは胸骨圧迫!あなたは当直士官と衛生員に報告!あなたはAEDを持ってきてください!」
       そして呼吸の有無を確認したのちに、高木3曹は胸骨圧迫係の隊員と一緒に心肺蘇生法を実施します。
       「呼吸確認・・・呼吸、無し!圧迫用ー意!」
       まずは一分間に100回のペースで胸骨圧迫を30回実施。肺の空気がきちんと鼻に抜けている事を確認し
      た後、大根君の額を押さえて気道を確保しつつ人工呼吸を2度実施。しかし自律呼吸と心拍は回復せず、改め
      て30回の胸骨圧迫を行います。
       当直士官と衛生員への報告を入れた隊員が戻ってきて、すかさず他の負傷個所や出血の有無を確認。続いて
      大根君の下半身を毛布で覆い、保温に努めます。

       そしてAEDが到着。心肺蘇生法の邪魔にならないように、大根君の右鎖骨下左脇部に電極パッドを装着
      します。今日は陽射しが強く汗をかいているので、装着個所を丁寧に拭く事も重要との事。
       「よし、離れて!」
       準備が出来たところで、すかさずAEDを作動させます。

       「大門!がんばれ!」
       あれ?途中から大根君が大門君になっていますね(笑)。まあそれはいいとして、もう一度AEDを作動。
       「あっ!手が少し動きました!目も開きました!」
       「大門!大丈夫か!」
       「大門、よかったなー!」

       仲間の大門君を見事死の淵から救出した隊員達が喜びあうという、実に感動的な幕切れ。しまかぜ補給科一
      同による名演技に、見学者からは大きな拍手が送られました・・・と思いきや、役目を終えた途端に乱暴に2
      つに折りたたまれる大門君(笑)
。さっきまでの熱い友情は一体どこへ・・・。大門君の悲しげなまななざし
      
が何ともやりきれなく後味の悪さが残った救急蘇生法展示に、改めて大きな拍手が送られました(笑)。パチ
      パチパチパチパチ。

       お次はしまかぜ航海科員によるラッパ吹奏展示。司会役の2曹と3名の隊員が後甲板に整列し、総員起こし、
      君が代(海自版)、巡検、出港用意
の4曲が披露されました。最後の出港用意ラッパは、本来艦長が担当する
      号令を見学者にかけてもらい、それに合わせてラッパを吹き鳴らす・・・という徹底した見学者参加型のイベ
      ント精神
を貫いていて、実にしまかぜらしい創意工夫を感じさせました。いやはや、お見事。

       お、今度はやけに物々しい黒ずくめの一団がやってきて、甲板に分厚いマットを敷き始めました。しまかぜ
      立入検査隊による訓練展示
が始まる模様です。
       まずはしまかぜ立入検査隊の隊長補佐を務める出羽隊員が挨拶。立入検査隊とは、洋上にて発見した不審な
      船舶に乗り込んで積荷等の検査を行う部隊です。続いて立入検査隊一のイケメンである白濱隊員をモデルにし、
      実際の立入検査で使用する個人装備が一つずつ紹介されました。
       ライフジャケットを兼ねた防弾ベスト無線機手錠伸縮式警棒、訓練用の模擬銃(通称ブルーガン)、
      予備弾倉ポーチダンプポーチなど。当の白濱隊員は照れた様な怒ったような表情で、ちょっと緊張気味。あ
      とで皆に冷やかされますね、これは(笑)。

       続いては、検査中の隊員が船員に襲われた際の制止及び施錠の訓練展示。後ろから襲い掛られた隊員はすぐ
      に体を捻って相手の体勢を崩し、すかさず別の隊員が引きずり降ろして甲板に押さえつけます。相手の肩に体
      重を乗せながら手首と肘を極めて動けなくした状態から、両膝で完全に上半身を固めながら手錠をかけ、あっ
      というまに船員を捕縛

       引き倒してから手錠をかけるまでの一連の動作はシステマティックに定められている様で、右側の隊員が手
      錠をかける瞬間は左側の隊員がバックアップ。お互いの動きと状況を常に把握した動きになっているのが、日
      常の訓練の賜物なんでしょうね。
       最後は隊員一人一人の紹介が行われましたが、今回やられ役の船員を務めた隊員さんが腰の後ろで腕を組ん
      で挨拶していたので、まだ施錠されているみたいでなんだか気の毒(笑)。もちろんこの時点では既に手錠は
      外されていますが(笑)。

       甲板のマットが取り払われたあとは、先程のミサイル長さんが再び登場。しまかぜファッションショーの始
      まりです。退場する立入検査隊を撮影したかったらしい人が残念そうな顔をしていると、
       「大丈夫ですよ、ファッションショーが終わったら立入検査隊も残しますから、存分に撮影してください。
      午前中に彼らだけ先に戻したら、ブーイングされてしまいまして・・・(笑)」

       ほほう、こんなイベントでもその都度評価のフィードバックを行っているんですね。この辺りもしまかぜら
      しい、柔軟な生真面目さだなあ。
       という訳で、しまかぜファッションショーが始まりました。先頭を切るのはまぶしい純白がインパクト満点
      の部夏礼装。この時期の詰襟なのに、実に涼しげに見えるのがカッコイイなあ。モデルを務める通信士の3
      尉さんには失礼ですが、着る者を5割増しで男前に見せる魔法の制服です。

       「だいたいの女性は、この姿に騙されますね(笑)」
       と余計な事を言うミサイル長さん(笑)。もしかして、ミサイル長さんも結構騙したクチなのかな(笑)。
       続いては同じく幹部夏礼装ですが、モデル担当はベテラン准海尉さんで、現場叩き上げならではの迫力が伝
      わってきますね。表情はにこやかですが、きっと艦内ではめちゃくちゃ恐れられてるんだろうなあ。
       次は海曹冬服。ダブルの黒スーツで、モデルの海曹長さんはわざわざ上着の内側を見せてくれました。物品
      番号や管理元、氏名などを記入してあると思われる白の片布と、胸元の徽章防衛記念章を固定する金属製の
      留め具が、普通の会社員のスーツにはないもの。また表の飾りボタンは当然として、普段上着の下に隠れてい
      るベルトの金具までピカピカに磨かれているのが、実に自衛隊らしい。

       さらに海曹夏服。基本的に幹部夏服と似ていますが、肩の階級章がないのでぐっと軽やかな雰囲気。ちなみ
      にモデルの3曹さんは、つい先日ここ大阪で行われたボディビルの大会で10位以内に入ったとか。ここは是
      非上着を脱いで自慢の筋肉を披露してもらいたいところですが(笑)、このあたりはしまかぜのサービス精神
      
海自隊員としての品格のぎりぎりのラインなのかも。姫路駐屯地福知山駐屯地の隊員さんなら、それがま
      るで義務であるかの様に率先して脱ぐと思われますが(笑)。
       さらに海士夏服。先程までの幹部や海曹に比べると一気に初々しさが増しますが、モデルは兵卒のトップに
      あたる海士長。旧海軍なら兵長と呼ばれる人なのかな?これは海士長さんが初々しいというよりも、先程まで
      の准海尉さんや曹長さんが潮がききまくった海の男の顔だったんだろうなあ。

       最後は海士冬服が登場して、しまかぜファッションショーは終了。先程の立入検査隊もやってきて、甲板上
      にて撮影会が始まりました。
       以上で午後一回目のイベントは終了。いやー、実に見応えがありましたね。しまかぜ乗組員がああでもない
      こうでもないと工夫を重ねた跡が随所に見られ、上甲板だけの一般公開だったとは思えない位の充実度。むし
      ろ艦橋見学ツアーよりも美味しかったんでは・・・と思ってしまう位の満足感でした。

       あと、以前から少し気になっていた事を立入検査隊の人に質問してみます。立入検査隊への選抜の際には、
      やっぱり入隊前の格闘技歴なんかが考慮されるんでしょうか?
       「いえ、そんな事はありませんよ。私も自衛隊に入る前は、特に何かをやっていた訳ではありませんし。む
      しろそういった訓練よりも、法令に関する判断を迫られる事の方が大変ですねえ」

       法令ですか?
       「ええ、検査で船舶に乗り込んで先程ご覧になった様な状況になった場合、どの時点から拳銃を抜いていい
      か、どの時点でどこまで何をしていいか・・・そういう判断を法令に基づいて行うという意味です。私達は警
      察の人ではありませんので、普段の生活では緊急時を除いて逮捕権等はないんですけど、仕事で一度海に出れ
      ば、法令に基づいてそれを執行する立場になりますから・・・」

       もちろん様々な状況に応じた適切な判断が行えるよう、日常の訓練を重ねているんでしょうけど、実際の立
      入検査の現場では、次々と変化する状況に個人の瞬時の判断で対応しないといけないんだろうなあ。

       あと、少し失礼かもしれない質問を。立入検査隊の訓練は課業終了後の自由時間を削って行われる上に、危
      険な事もある任務なのにこれといった手当ても無し。少々語弊のある表現ですが、ボランティアに近い状況
      のでは・・・
       「ええ、でもそれが私達の仕事ですから(笑)」
       と、さらりと答える隊員さん。やはりこの人達は、普通の仕事とはまた異なった使命感があるからこそ海自
      の制服を着ているんだろうなあ。どんな仕事にも良い所悪い所が色々ありますが、とどのつまり職務に使命を
      感じる事ができるかどうか
。これに尽きると思いました。
       さて、そろそろ私も上陸するか・・・いや待てよ、もう一つイベントが残っていました。左舷にて行われる
      内火艇の揚げ降ろし作業
の展示です。
       舷門脇まで移動すると、ちょうど展示が始まったところ。内火艇を固定しているダビッドフレーム巻上機
      に電源が入り、係の隊員さんがてきぱきとチェック開始。そして固定ボルトが外され、フレーム上を内火艇が
      ゆっくりと滑り降りてきました。

       降り切ったところでアーム部分が展開して内火艇を艦の外に吊り下げ、左右からを引っ張った隊員さんが
      見守る中、内火艇がゆっくりと降りて来ました。
       しばらく宙吊りになった内火艇は再びアームに巻き上げられてダビッドフレーム沿いに引き上げられ、所定
      の位置に固定。以上で内火艇の揚げ降ろし作業が終了です。

       いやあ、色々と興味深い一般公開でしたね。人が集まり易い天保山岸壁でのイベントという事で、あまり多
      くは期待できないだろう
と割り切っての参加でしたが、予想を遥かに超える充実っぷりは嬉しい誤算でありま
      した。これだけ満足度の高い一般公開は、2年前の和歌山港での護衛艦あけぼの以来かも。
       様々な催し物も細かな気配りと工夫にあふれ、まさに一般公開の見本のような一般公開。ただ敢えて言わせ
      てもらえるなら、前甲板での武器操法展示についてはもう一歩踏み込んで、シナリオ形式にしても面白かった
      と思います。
       しまかぜに向かって飛んでくる敵航空機やミサイルを3次元レーダーが探知、2基の射撃式装置がそれを捜
      索追尾し、ターターランチャー51番砲塔が迎撃するまでの一連の流れを、ミサイル長さんの号令やCIC
      からの緊迫感のある応答も含めて映画の一場面の様に見せる、というのはどうでしょうか。

       また後甲板で3回行われたとう中手入れですが、子供だけで行う回があってもよかったですね。もちろん前
      後に隊員さんを配置して十分に安全を確保する必要がありますが、大勢の大人の中に小さな子供が混じる形に
      なっていたので、親御さんはちょっと撮影しづらかったと思います。
       そういう意味では隊員さんから最前列の見学者に声をかけて、撮影の時だけでも前を譲ってもらう気配り
      あってもいいでしょう。
       なんなら、子供用の細くて軽い清掃竿を別に作るのもいいですね。出入港作業で使用する旗竿をちょっと改
      造すれば、十分に使用に耐えるものが出来るはず。そういう工作は隊員さんならお手のものでしょうし、きっ
      と楽しい仕事だと思います。

       上甲板だけの一般公開でここまで見学者を楽しませるのは、間違いなく護衛艦しまかぜならではの美点。贅
      沢なお願いかもしれませんが、そこにさらなる磨きをかけて、1人でも多くの人に海上自衛隊について理解を
      深めてもらう機会
としたいところ。
       十数年後、本日のイベントに参加していた新入隊員がバリバリの中堅海曹として働いている艦に、今日のイ
      ベントがきっかけで入隊したあの子供
が新人としてやってくる・・・そんなドラマがあるかもしれません。
       「ええっ!お前、あの時の子供だったの!?俺憶えてるよ(笑)!」
       「はい、これからよろしくお願いします!」

       そしてその再会となる舞台は、是非ともこの護衛艦しまかぜであって欲しいところですが、既に艦齢30年
      近くなったこのしまかぜ
、第一線で頑張れるのはあと何年ぐらいか・・・。頑張ってほしいなあ。
       縁あって私の地元大阪担当の広報艦となった護衛艦しまかぜ、またの再会を心から楽しみにしつつ、天保山
      岸壁を後にしました。




トップページに戻る
イベントレポート目次に戻る