阪神基地隊ウィンターフェスタ2017
2017.12.10
兵庫県に所在する、阪神基地隊のウィンターフェスタに参加してきました。阪神基地隊は近畿地方における
海上自衛隊の守りの要で、大阪湾一帯の防衛警備を担任しつつ艦艇への補給および整備を行い、人員物資輸送
の拠点としても活躍している部隊であります。近年は特に広報活動に力を入れていて、イベントのたびに沢山
沢山の家族連れが押し寄せる事でも知られています。
当日は0853にJR摂津本山駅に到着。魚崎浜まではバスで行けますが、今日は特に急ぐ気分でもないの
で、徒歩で阪神基地隊に向かいましょう。
水路を超えて埋立地に入ると、時折若い男性ばかりの集団とすれ違います。日曜日のこの時間に反対方向か
らやってくるのは、ほぼ間違いなく上陸組の隊員さんでしょう。基地前からタクシーに乗っても割り勘すれば
大した金額ではありませんが、わざわざ歩くのは立派。究極の運動不足に悩む潜水艦乗組員かな?
そんな事を考えながら、0930に阪神基地隊前に到着。正門前は既に長蛇の列で、南側の岸壁から折り返
しの列が出来ています。私の後にもどんどん人が集まってきますし、いったい何百人いるんだろう。おっ、東
側の岸壁に大きなマストが見えますよ。背負い式の射撃指揮装置という事は、はたかぜかしまかぜですね。
最後尾についてしばらくすると、開門が前倒しになったのかすぐに行列が動き出しました。有り難いですが、
少し申し訳ない気もします。手荷物検査を華麗にクリアして東側の岸壁に向かうと、おおっ、艦番号172!
護衛艦しまかぜでありました!
そのしまかぜの舷門も長蛇の列。今から並んだところで甲板上は大渋滞でしょう。よし、今回もいつもとは
逆の流れで動くとするか。
という訳でしまかぜ見学は後回しにして、まずは売店の入った厚生センターへ向かいます。休憩所に特に変
わったものはなく、売店も開いてはいますが商品棚はスカスカ。きっと屋台広場に臨時売店を出しているんだ
ろうなあ。建物外の通路から光る神戸の海をバックに護衛艦しまかぜを撮影し、その屋台広場へ向かいます。
テニスコートに作られた屋台群は、ホビーショップ、牛肉串焼き、フライドポテト、移動カフェ、豚まん、
ソーセージ、サメカツサンド、神戸焼きそば、ネパール料理、ケバブサンド、識別帽ショップ、佐世保バーガ
ー、アメリカンロングポテト、富士宮焼きそば、神戸ブラックカレー、肉巻きおにぎり、そして自衛隊グッズ
という陣容。いくつか新顔が見られますが、概ねいつもの顔ぶれです。この国際色の豊かさが神戸らしさです
ね。
まずはトルコのケバブサンドに突入。巨大な鶏肉の塊が縦型ロースターに焙られ、トルコ人シェフが焼けた
ところを包丁でゾリゾリと削り落とします。削られたチキンは千切りキャベツと一緒にピタパンに詰め込まれ、
ケバブサンドの出来上がり。
おお、美味しい!じっくり焙られて余分な脂肪を落とした鶏肉は細切れながらも実に筋肉質な味わいで、微
かなスパイスが鶏肉特有の臭みをきれいに消しています。サウザンアイランド風のまろやかなドレッシングも
冷たいキャベツによく合い、見た事のないホットソースも爽やかに全体を引き締めています。
美味しいケバブサンドをパクつきながら目の前の護衛艦しまかぜを眺めると、見学者ですし詰めになった前
甲板にて武器操法展示が始まりました。さすがしまかぜ、朝イチから色々やる気だな。残念ながら見逃してし
まいましたが、まあ後からでも色々やってくれるでしょう。
続いては、宮城県気仙沼のアンテナショップまただいんが出しているサメカツサンドです。さっくり揚った
サメカツは実に軽やかな味わいで、たっぷりのタルタルソースも相性ばっちり。そしてこの、微妙に食べづら
いコロコロのロールパンも御愛嬌だなあ(笑)。私にとってはすっかり阪神基地隊の味と化してしまったサメ
カツサンド。また来年も食べたいですね。
南側の岸壁に停泊しているのはそうりゅう型潜水艦の4番艦、SS504潜水艦けんりゅうです。おおお、
初めましてですね、潜水艦けんりゅう。呉地方隊からの参加です。
2009年に華々しくデビューしたそうりゅう型潜水艦も、今や8隻を数える規模になりました。来春には
9番艦のせいりゅうが就役予定ですし、時代はどんどん変わっていくんだなあ。
しかしこの潜水艦けんりゅう、喫水線下はずいぶんと藻に覆われています。艦尾の一部は鮮やかな緑色にな
っていて、ドック入りが近いのかな?通常動力型潜水艦としては群を抜いて静かなので発見されにくいと言わ
れるそうりゅう型ですが、やっぱり表面に藻が生えると吸音タイルの性能も低下するんだろうか。まあ潜水艦
の性能にかかわる事はあまり教えてもらえないので、質問は避けた方がいいかな。
また、これは潜水艦に限った事ではありませんが、隊員さんに質問しても
「すみません、私は別の部署の者なので、ちょっとよくわからないんですよ・・・(笑)」
と言われる事が時々あります。これは別に隊員さんの怠慢でも勉強不足でもなく、知る必要のある者だけに
情報が知らされるという機密保持の考え方、『need to know』が徹底されているだけの事。いわ
ばプロ集団の証であります。
とは言え話しても差し支えない内容なら色々教えてもらえるので、見学で初めて艦艇を訪れた方は、素朴な
疑問を隊員さんにぜひぶつけてみてください。
上甲板見学の行列は結構長かったですが、基本的に歩いて通るだけなので行列はさくさく消化。ちなみに今
回の一般公開は、上甲板からの撮影はOKでした。へー、意外ですね。以前は禁止だったのに。この手の規制
は年々厳しくなるのが普通なので、珍しいな。
念のため傍にいた隊員さんに、甲板上での撮影は本当にいいんですか?と尋ねると、大丈夫ですよ(笑)と
の事。という訳でX舵をバックに自衛艦旗を撮影しますが、なんか落ち着きませんね。今にもコラーッ!って
怒られそうな気がして・・・(笑)。
ちなみに以前から疑問だった甲板上に伸びる長いスリットについて、傍にいた見学者が隊員さんに質問して
いまいた。どうやらこれは、洋上での作業中に使用する安全索用の取付部だった模様。なるほど、ここに命綱
を固定すれば、甲板上を自由に動き回れるんですね。
目の前に聳え立つマストは、上方向にぎゅっと絞られたマッチョな印象。リアルタイム『沈黙の艦隊』世代
な私にとっての潜水艦のマストとは、テーパーのかかっていないはるしお型がスタンダードなので(もう残り
数隻ですが・・・)、根元が図太いマストは未だに不思議な感じがします。このマストと潜舵が、深度数百メ
ートルの漆黒の深海を無音で潜航しているのか・・・。想像するとなんだかゾッとします。
上陸したところに赤十字の腕章をつけた隊員さんがいたので、潜水艦乗りの職業病について聞いてみます。
「そうですね、やっぱりみんな腰に来ますね(笑)。出港後は全くと言っていいほど運動出来ませんし、座
りっ放しも多いですから・・・(笑)」
海自の人は多いみたいですね、腰痛。鋼鉄の床を硬い革靴で歩くダメージもあるんでしょうか。
「あ、潜水艦は水上艦と違って、出港したらスニーカーに履き替えるんです。底が硬い革靴だと、余計な音
がしますから」
なるほど、そういえばそんな話を聞いた事がありました。あと、別の意味での職業病としては、食事を右手
だけで食べる癖がついてしまうとか。
「食事は一枚のプレートに盛り付けますので、左手で食器を持つという動作が殆どないんですよね。そもそ
も食堂が非常に狭いので、肘を張れませんし(笑)。だから上陸して誰かと食事をしても、自然に左手はおろ
していつの間にか右手だけで食べてしまうんです。行儀悪い!ってよく怒られますけど(笑)」
との事。食堂の回転を上げるために自然に早食いにもなってしまうとも聞きますし、色々大変だなあ。
さて、そろそろしまかぜに向かいます。乗艦待ちの行列はまだ続いていますが、前甲板はさっきよりも空い
ている感じ。乗艦規制で少々待つ事になっても、余裕をもって見て回れる方が断然有り難い話です。
岸壁の乗艦待ちは艦首まで伸びていましたが、おかげでしまかぜの特徴でもある艦首のブルワークをじっく
り眺める事が出来ました。艦番号を横一直線に貫くナックルラインもあって、いかにも波しぶきを外に弾き返
しそうな印象。その分見た目がちょっと重い感じになりますが、4500㌧を超える大型艦なので、むしろこ
れぐらいの方が強そうに見えます。
岸壁には乗艦待ちの列に沿って折りたたみ椅子が並べられ、そこには護衛艦しまかぜの概要や訓練風景、艦
内生活の様子が写真入りで展示してありました。待ち時間を退屈させない嬉しい配慮です。
真水の使用が制限される航海中に、バケツで洗濯物を手洗いする隊員さんの様子が紹介されていましたが、
よく見ると洗濯中の隊員さんの向こうに風呂あがりなのか腰バスタオル一丁の隊員さんが(笑)。こういう隊
員さんのさりげない遊び心というかネタ仕込み、いいですねえ(笑)。
また、科員食堂での食事の様子も展示してありましたが、そうそう、はたかぜ型護衛艦って、食堂が不自然
なL字型だったなあ。最近は体験航海のチャンスも途絶え、一般公開で艦内に入れることも少なくなったので、
とても懐かしい気がします。
という訳で護衛艦しまかぜに乗艦。まず目に入ったのは、舷側の外側にクレーンで吊るしてあった溺者救助
訓練用のお人形です。ちゃんと担架に乗せ、落水しないようにベルトで固定してありますね。普通は壁面に縛
りつけて展示する程度なのに、わざわざ担架に乗せて吊るしてしまうとは。この辺りの一歩も二歩も踏み込ん
でいく感じ・・・しまかぜらしいなあ。
前甲板に並んでいるのは、手前からアスロック発射機、5インチ単装速射砲、そして艦首に聳え立つタータ
ーミサイルランチャー。どれも今時の護衛艦には見られないもはやレトロと言っても差し支えない装備品で、
こうして見ているとさながら中古兵器の見本市会場みたい。
どれも図体でかく融通は効かず、ちょっとした事で機嫌を損ねる気難しい奴らですが(笑)、纏う古臭い男
臭さは、今時のよく出来たVLSや62口径127mm砲にはないもの。俳優で言えば田中邦衛や三国連太郎、
名古屋章が並んでいる様なものでしょうか。全く味わい深いの一言に尽きる・・・。
そのアスロック発射機の前には、見慣れないものが。これは・・・アスロックの訓練弾か!外に展示してあ
るのは初めて見ました。ちなみにこのアスロックですが、探知した潜水艦が潜む海域に向けてロケットで打ち
上げ、上空で切り離された誘導魚雷がパラシュートを使って着水し、その後はひたすら潜水艦を追い回すとい
う面白いギミックを誇る代物。長大な飛翔体のうち前2/5が誘導魚雷、後3/5がロケット部です。
艦から直接発射する魚雷に比べて即応性が高く、目標潜水艦に逃げる時間を与えないという長所があり、発
射方式は異なるものの最新鋭艦にも搭載されている強力な潜水艦キラーです。
一段上がったお立ち台の上にいるのは、54口径5インチ単装速射砲。今時の海自艦艇ではすっかり珍しく
なった、内部に人が入って操作する有人砲塔です。派手に祝砲をぶっ放せるのも、今やこのタイプの砲塔のみ。
数年後の展示訓練や艦観式は、ちょっと寂しい風景になるんだろうなあ。
そして艦首にて睨みを利かせているのは、ターターミサイルランチャー。艦の対空防衛を担う重責を負った、
対空ミサイル発射機です。デビュー当時は時代の最先端を行く花形兵器でしたが、今や旧式の代名詞みたいに
なっているのが切ないなあ。このターターも、そう遠くないうちに過去の遺物となってしまうのか・・・。
そのターターですが、よく見ると装填された訓練弾になにか描いてありますね。真っ赤なシャークティース
かなと思いましたが、近寄ってよく見ると、んん~?これってもしかして・・・タコ?隊員さんに尋ねると
「はい、タコです(笑)。今回兵庫県に行くという事で、何か兵庫っぽいものをと考えまして・・・(笑)」
なるほど。それにしても、よく見ると結構凝ってますね。怒り顔で銛まで持ってるし(笑)。こんな風に寄
港地ごとに色々やるんですか?と尋ねると、
「いえ、今回はたまたま(笑)。あそこにいる隊員が一人で作ったんですけど、『もうやらない(泣)!』
って言ってました(笑)」
自分で余計な仕事を増やしたお陰で、かなり余暇を削る羽目になったんでしょうか(笑)。ほんとお茶目と
いうか、面白い隊員さんが多いなあ、護衛艦しまかぜ(笑)。
その後は右舷の舷側通路を通って、後甲板へ。途中に本日のイベントスケジュールが貼ってありましたが、
この『ト:スラ、セムシ/フト:ホシ、キシA』という暗号みたいなのは何なんだろう。通りかかった幹部の
人に質問してみると、
「ああ、これは今回の一般公開の当直士官(ト)は水雷士と船務士、副当直士官(フト)は砲術士と機関士
Aっていう意味ですよ(笑)」
との事。いわゆる仕切り役ですね。
その先には、ボースンチェアが展示してありました。これ自体は珍しい物ではありませんが、実際に座る事
が出来るのは面白いなあ。ちなみにボースンチェアとは、航行中の2隻の艦の間にロープを張り渡し、ゴンド
ラ状に動かして人員を移動させる為のトリカゴみたいなもの。実際に使用する事は少ないそうですが、高さ数
mに宙づりになるのであまり積極的に乗りたい代物でもなさそう(笑)。座面の下には小物入れっぽい空間が
ありましたが、
「ええ、確かに小さなものなら入りますが、実際は重りを入れてます。下が重い方が安定しますから(笑)」
との事でした。
三連装短魚雷発射管のそばでは、着剣した64式小銃を持った水兵さん達が整列しています。おお、儀仗ま
で披露してくれるのか!海自艦艇でこれを見る事が出来るとは思わなかったので、ちょっと驚き。前甲板は黒
山の人だかりですが、前の人の頭の間からどうにか見るこ事はできますね。
まずは海自制服ファッションショーから始まるらしく、前回の一般公開同様にしまかぜミサイル長の竹ノ内一
等海尉が見事な司会っぷりを見せています。ほんと芸達者が多いなあ、護衛艦しまかぜ。っていうかこういう
役割って、普通はお調子者の若手海曹や着任間もないルーキー幹部に、冷やかし半分で押しつけられるものの
様な気がしますが・・・(笑)。
きっと最初はその予定だったのに、若手隊員の不甲斐ない司会っぷりに満足出来ず、
「ええい、お前達には任せておけん!マイクを寄こせ!俺が本物の司会ってやつを見せてやる!」
とか張り切ってしまったのでは・・・是非ともそうあってほしいなあ(笑)。
そして始まった海自制服ファッションショー。トップを切るのはしまかぜ通信士の2等海尉さんが着用する
幹部冬礼装。
「まあ礼装っていっても、手袋するだけなんですけどね(笑)。あとこの背の高さと甘いマスクに騙されち
ゃいけませんよ!海上自衛官は制服を着ると、みんな格好よく見えますから!(笑)」
と、すかさず茶々を入れる竹ノ内ミサイル長(笑)。
続いてやってきたのは、幹部夏礼装に身を包んだ掌砲術士の准尉さん。黒のダブルもカッコイイですが、や
っぱり海自の制服は白が映えるなあ。ちょっと寒そうなのが気の毒ですが(笑)。
次は海曹冬服。きりっと敬礼を見せる電信長の曹長さんを紹介しつつ、竹ノ内ミサイル長は幹部冬服と海曹
冬服の違いを分かりやすく説明。若手隊員は、この見事な仕切りっぷりをよく見て勉強して欲しいものです。
さらに3等海曹さんが海曹夏服を、士長さんが海士冬服を披露。こういうイベントで人前に出た経験が少な
いせいか、つい早足になってしまう士長さんに対して竹ノ内ミサイル長は
「ゆっくり歩くんぞ!ゆっくり!」
とツッコミ入れまくり(笑)。海千山千のベテランである竹ノ内ミサイル長から見れば、若手の海士長なん
てヒヨッコ同然なんでしょうねえ(笑)。海士夏服姿の別の士長さんも緊張しているのか、明らかに早足。す
るとヤキモキした竹ノ内ミサイル長が
「早か!」
慌てて元の位置に戻ってやり直そうとする士長さんに対し、
「戻らんでいい!(笑)」
焦り顔で甲板上を右往左往する士長さん・・・(笑)。しまかぜ艦内の日常の様子が思い浮かぶような一幕
に、甲板を埋めた見学者からは微笑ましい失笑が湧きあがりました(笑)。ちなみにこの士長さん、近々入校
の為にしまかぜを離れることになるそう。もしかして超難関の海曹試験に見事合格し、プロの海上自衛官とし
て第一歩を踏み出すのかな?是非とも頑張ってほしいですね。今日の竹ノ内ミサイル長の弄りが、しまかぜ勤
務時代のいい思い出になればいいのですが(笑)。
最後は全員が整列し、改めて一人ずつの紹介が行われました。それにしても護衛艦しまかぜ、こういう時は
後部の52番砲塔がほんと絵になりますね。普通の護衛艦だと、バックは殺風景な格納庫ですし。こういう個
性的な艦が少なくなっていくのは寂しい限りだ・・・。
それにしても、整列した2人の海士さんの表情が硬いなあ。まだ緊張しているのかな?と思いましたが、よ
く考えたら水兵帽には鍔の部分がないので、眩しくて仕方ないんですね(笑)。なるほどなるほど。
と、ここでしまかぜ艦長の前久保一等海佐が颯爽と登場。まずは挨拶が始まります。そして艦番号172番
にちなみ、本日172番目と1172番目の乗艦者となったお子さんへのしまかぜ賞授賞式が始まりました。
拍手を浴びながら出てきた2人の子供に対して賞状を読み上げた艦長は、直々に識別帽をかぶせてあげて記
念品をプレゼント。会場からは大きな拍手が送られました。
「お父さん、お酒が進みますよ~(笑)」
とにこやかな艦長さんですが、中身はしまかぜの母港である佐世保の名産品詰め合わせかな?っていうか、
子供のプレゼントじゃないの(笑)?さすが酒飲みが多そうな九州から来たフネだ(笑)。
「この護衛艦しまかぜは4日前に佐世保を出港しまして、この一般公開の後はまた佐世保に戻ります。ちな
みに本艦乗員の実に9割が九州出身者です。その中で本日乗艦している第4護衛隊群司令が大阪出身、艦長の
私は京都出身でありまして、僅か数名しかいない関西出身者は日々アウェイ気分でいる訳ですが・・・うわっ!
来た!」
と、ここで突然乱入してきた一人の幹部自衛官。えっ、袖がベタ金?って事はまさか・・・。
「第4護衛隊群司令の、福田です!」
まるで芸人の様な軽快すぎる登場に、度肝を抜かれる見学者一同。えええええ、この人が護衛隊群の司令な
の!?テレビ収録でやってきたタレントさんが制服借りた風にしか見えないんですが(笑)。
「えー、私は大阪府八尾市の出身でして、防衛大学では落語同好会におりましたので、しゃべくりの方は得
意です!でもあんまりやり過ぎますと、海自の海将補はアホやと思われそうなんで、この辺でやめときま
す(笑)!」
護衛艦8隻からなる第4護衛隊群を統べる立場にいる司令のイメージとはあまりにかけ離れた福田司令に、
スタジオの観客・・・もとい甲板上の見学者達は大喜び(笑)。これでいいのか?いいんだよこれで(笑)!
「・・・えー、司令は大阪出身なのでこんな感じですが(笑)、私は京都出身なので、まあもう
ちょっと品があって大阪とは違うといいますか・・・(笑)」
と、フォローするフリをしながらとんでもない事を言い出す前久保艦長(笑)。いや、これ、笑ってもいい
の?いいんだよこれで(笑)!
すると福田司令が再びやってきて、
「こんなん言いよったんで、艦長クビにします!」
とたたみ掛ける様に爆弾発言(笑)。なにこれ(笑)。もうなにこれ(笑)。
「えー、という訳でしまかぜ艦長をクビになった私ですが(笑)、15日付で補給艦ましゅうの艦長として、
舞鶴に異動します。皆様、舞鶴にも是非お越しください!」
大きな拍手を浴びながら、福田司令と前久保艦長は退場。いやー、こんな艦長挨拶初めて見ました(笑)。
見学者どころか乗組員の人達まで大笑いです(笑)。
「・・・もう、いっつまでも喋ってますから・・・(笑)」
と、トホホ顔の竹ノ内ミサイル長も楽しそうだなあ。凄すぎるぜ、護衛艦しまかぜ・・・。
その後はいよいよ艦上での儀仗の披露。再び前久保艦長が現れて、海上自衛隊で行われる儀仗について解説
を行います。
「外国の大統領や首相が訪日した時に、空港で行われる儀仗をテレビでご覧になった方もおられると思いま
すが、海上自衛隊でも艦にVIPを招いた際に行う時があります。司令であるさっきの面白い
おっさん・・・あ、いやいや、階級章が金色の方が乗って来た時もやります(笑)」
と、またしてもにこやかな表情で恐ろしい事を口走る前久保艦長(笑)。悲鳴の様な笑いに湧きかえる甲板。
きっと目の前で福田司令に大ウケされてカッとなって、つい対抗心をむき出しにしてしまったんだろうなあ、
艦長さん・・・(笑)。これ、本当にいいのか?もう俺知らない!
「えー、準備が出来るまでもうちょっと繋いどきます(笑)。司会の竹ノ内一尉ですが、来年定年で退官と
なります。これが最後の広報という事で、こっちの訓練ばっかりやってきました(笑)。その成果をどうぞご
覧ください(笑)!」
前回の大阪での広報では大活躍したものの、今回は司令と艦長に完全に食われてしまった竹ノ内ミサイル長
は、わしもう知らんわというトホホ顔で儀仗展示の説明を開始。そして儀仗隊の入場が始まりました。必要以
上に暖まった場の空気を引き締める様に、冬服組9名&夏服組9名を率いる儀仗隊長がサーベルを掲げながら
キビキビと入場。
「整れーつ!休め!」
パパパパーとラッパが吹き鳴らされ、
「捧ァげェー!銃(つつ)!」
再びラッパが鳴り響くと同時に部隊は小銃を胸の前でキリッと構え、栄誉礼を執り行います。壇上の福田司
令は答礼を行い、先ほどまでの空気とは大違いの厳粛な雰囲気が漂います。
「立ァてェー!銃(つつ)!」
ガシャ!と大きな音を立てて、部隊は一斉に銃床を甲板に打ちつけます。土のグラウンドで見る事が多い陸
自の捧げ銃(ささげつつ)とは異なり、艦上は鋼鉄製の甲板なので迫力あるなあ。惚れ惚れするような見事な
儀仗に、見学者からは大きな拍手が沸き起こりました。
その後は儀仗隊一人ずつの紹介が。今回儀仗隊長を務めたのは、しまかぜのミサイル士である桜井2等海尉。
防衛大学では儀仗部に所属していたという、まさに筋金入りです。
私のいる場所からはよく見えませんでしたが、紹介を受けた時に何かを甲板に落としてしまった一等海士さ
んにどっと笑い声が沸き起こります。ミサイル長さんは苦笑いを浮かべながら呟く様に
「あーあー、死刑だ死刑」
み、ミサイル長!マイクが思いっきり拾ってます(笑)!
その後は先に展示を行っていた立入検査隊もやってきて、甲板上で記念撮影会が始まりました。沢山の見学
者達が隊員さんを取り囲み、なんかすごい事に(笑)。
今回も素晴らしい司会を披露した竹ノ内ミサイル長に、最後は一言御苦労様でしたとお伝えしたい気分でし
たが、撮影係で忙しそう。邪魔しては悪いので、このイベントレポートにて代えさせて貰いましょう。
おっと、忘れるところでした。しまかぜ艦尾から、南側の岸壁にいる潜水艦けんりゅうを撮影しないと。し
まかぜは乾舷が高いので、まるでドローンからの空撮みたいになるのが面白い。こんな角度から潜水艦を撮影
する機会なんて、めったに無い事です。
以上で上陸。しまかぜを後にします。目の前では掃海艇なおしまが一般公開を行っていましたが、ここも人
でいっぱい。なおしまだけ見ずに帰るのは気がひけましたが、普段の日曜日の一般公開ならもっと余裕を持っ
て見る事が出来るので、今回はパス。
それにしても、今回も大満足の一般公開だっただけに、もう一品なにか食べて帰りたいなあ。よし、ネパー
ル料理の屋台に突入です(笑)!という訳で本日3品目のネパールカレーですが、鮮やかな黄色のターメリッ
クライスと野菜の旨味たっぷりのカレー。そしてスパイシーなタンドリーチキンがよく合っていて、これがも
う驚きの美味。ぐうううう、これはビールが欲しい・・・。
今回は福田司令と前久保艦長にとことんしてやられた感のある、見事な護衛艦しまかぜ一般公開でしたね。
正直あんな司令初めて見ましたが(笑)、高位の要職にありながらあの超柔らか頭は素晴らしいなあ。もちろ
ん全ての司令がああである必要はないと思いますが、伝統墨守の金太郎飴と揶揄されがちな海自特有の組織文
化の中でああいう方が上の方で実力を発揮できる人事の柔軟性、そしてそれに一歩も引かない艦長も、頼もし
い限りであります。
終始にこやかなお二人でしたが、それだけにその目が一瞬で本気の武人モードに切り替わる光景というのも、
個人的に見てみたいと思ってしまうのが我ながら困りもの(笑)。きっと背筋が凍りつくような感覚に違いあ
りませんが・・・やっぱりそんな瞬間が訪れないままであってほしいものです。
今年は例年とは違った意味で色々あった一年、行きたかったけど行けなかったイベントも沢山ありましたが、
締め括りとなった阪神基地隊ウィンターフェスタが素晴らしい内容だった事はまさに幸運でありました。
さてこの後は、来年春のイベント開始まで短い一休み。オフの間は発表が滞ったままの戦闘糧食だの日本海
食堂だのを順次更新していく予定です。前久保艦長の新天地でのご活躍と竹ノ内ミサイル長の第二の人生のご
多幸、あと今年一年S.A.Sにお付き合い頂いた閲覧者の皆様、そして日々厳しい訓練に汗を流している陸海
空全ての隊員さん達にとって素晴らしい2018年になる事を祈りつつ、今年の締めとしたいと思います。そ
れでは皆様、よいお年を。
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