信太山駐屯地創立59周年記念行事
2016・04.24
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大阪府和泉市に所在する、信太山駐屯地の創立記念行事に行って参りました。信太山は大阪南部および和歌
山の防衛警備・災害派遣を担任し、第37普通科連隊を中心に第3普通科直接支援中隊、会計隊、基地通信中
隊、警務隊、駐屯地業務隊が駐屯している南近畿の守りの要であります。
またこの信太山駐屯地、敷地内に旧軍時代から引き継がれた隊舎が多く、古い建物が大好きな私にとっては
タマラナイ駐屯地。小高い場所に作られた資料館は雰囲気がありますし、久々の参加という事で楽しみにして
いたのでした。
ただ大阪の中心部からほど近い立地という事もあり、年々見学に訪れる人が増える一方の信太山。あれもこ
れもと欲張っていては、とても満足できる見学にはなりません。という訳で今回はいつもとは少し趣向を変え
て、記念式典や訓練展示は思い切ってパス。むしろ人の流れとは逆方向に動く事で、のんびりと駐屯地を見て
歩こうと思います。
ちょうど開門時刻である0900にJR信太山駅に到着。駐屯地まではシャトルバスが出ていますが、駅か
らのだらだら歩きも楽しいもの。今回は特に急ぐ訳ではありませんからね。とは言えなんとなく早歩きになっ
てしまうのは、長年の自衛隊イベントめぐりで染み付いた習性でしょうか(笑)。
道中右手に見えてきたのは、ももちゃんヒルズ和泉。恐らくマンションだと思いますが、すごい名前だなあ。
書類に住所を書くのが躊躇われそうです。
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駅から15分ほどだらだら歩いて、信太山駐屯地に到着。少し前までの雨のお陰か、新緑がきらきらと光っ
ているのがいい感じ。暑くも寒くもなければ秋の様に台風に悩まされる事もなく、第3師団で一番いい時期に
行われる創立記念行事です。
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既に駐屯地内は人であふれかえっていて、体験試乗には長蛇の列が出来ています。売店が入っている厚生セ
ンターも大賑わいですが、ここは式典が始まってから見に来ればいいか。その頃には程良く空いているでしょ
う。
レンジャー教育を行っている信太山らしく、敷地内にはその様子を撮影した写真が展示されてありました。
近隣の槇尾山で行われる山地総合訓練では、目も眩まんばかりの断崖からロープ降下を行うレンジャーの姿が。
しかしこれ、撮影係の人も崖からぶら下がった状態なんだよなあ。まったくやる方もやる方ですが、撮る方も
撮る方です。
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また別の場所には、連隊で行われた競技会の結果が貼り出されてありました。射撃、持続走、銃剣道、炊事、
ラッパ、迫撃砲の部門毎に各中隊がしのぎを削っていますが、特に重要視される三戦技(射撃・持続走・銃剣
道)のうち2つを第4中隊が獲得。中隊長さんの鼻息の荒さが伝わってくる様です。
とは言え私的に最も気になるのは、やっぱり炊事部門で最優秀を獲得した重迫撃砲中隊かな(笑)。うーん、
一度御馳走になってみたい・・・。
ふと見ると、フォックスパレス信太という立派な木の看板が掲げられた隊舎がありました。入口の女性用ト
イレの案内板から察するに、女性自衛官が生活している隊舎でしょうか。それにしてもフォックスパレスって、
信太の森の白狐から来ているんでしょうけど、歴史と伝統のある信太山駐屯地にしては随分と垢抜けた名前で
す。民間のマンションですら『ももちゃんヒルズ和泉』なのに・・・。もしかして、女狐の如き女性自衛官が
いっぱいいるんでしょうか(笑)。
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隊舎の脇には小型ショベルドーザを筆頭として、ピストン式破壊工具やエンジンカッター、油圧式カッタ―、
探索用音響探知機といった装備品がずらりと展示してありました。これらと同じものが、今も熊本の被災地で
働いているんだなあ。それを考えると、もっと目立つ所に展示して現地での隊員さん達の働きぶりを告知して
ほしい気がしますが、その辺りで一歩後退してしまうのは如何にも陸自らしい慎み深さというか、一種の遠慮
なのかも。
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その後は屋台広場へ向かいます。大声でTシャツを売っている威勢のいい集団は、持続走訓練隊。いわゆる
駅伝やマラソン、長距離走の同好会ですね。富士登山駅伝出場の為の資金稼ぎでお店を出しているそうですが、
富士登山駅伝と言えば御殿場の陸上競技場から富士山頂までの標高差3199mというコースを走破する、恐
怖のキ〇ガイレースです。
各駐屯地から参加した自衛隊チームが長年にわたって上位を独占(主に滝ヶ原と第一空挺団)し続けたため、
途中からは一般部門と自衛隊部門に分けられてしまったという逸話が有名ですが、そもそも基礎体力が桁外れ
ですからねえ。
銃剣道訓練隊からはフランクフルト。第3中隊が出しているのはミルクせんべい聞き慣れない食べ物ですが、
屋台の中を覗くと薄いせんべいみたいなものに缶入り練乳をぺたぺた塗っていました。うーん、これは甘そう
だからパス。
本部管理中隊からはかき氷。第4中隊ははじめちゃんのコロッケ、第5中隊はくじ引き、第3普通科直接支
援中隊はわた菓子、第2中隊からは自衛隊グッズ販売の屋台が出ています。
それにしても、以前に比べると食べ物系屋台が随分軽くなった様な。地域性を感じさせるかすうどんや、美
味しかったつくね串焼きがなくなっているのは残念だなあ。とりあえず4中隊のはじめちゃんのコロッケから
行ってみまますが、んん~、なんか屋台に訳の分からない事が書いてありますよ。
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『コロッケは逃げない 逃げるのはいつも自分だ』
『人の一生はコロッケを背負って遠き道を行くが如し』
うーん、一見して深い含蓄が込められている様な気がしますが、よくよく読んでみると全然そんな事はない
ですね。コロッケを背負って行く人生・・・いくらなんでも軽過ぎです(笑)。何十キロもの重量物を背負っ
て山道を延々歩き続ける陸自隊員の言葉とは思えません。
その訳のわからない事を考えている人達が揚げたコロッケですが、揚げたてなので猛烈に熱い!いやあ、こ
の熱さだけでも味3割増しです。なるほど、一人一人は小さなコロッケの様な存在ですが、その内に秘めた熱
さは本物だぜ!と言いたい訳ですね。いや、多分違うんだろうなあ・・・。
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厚生センター内の売店は既に黒山の人だかりですが、喫茶店はけっこう空いていますね。この喫茶サンパー
ル、本日は創立記念行事に合わせてトリマヨ丼、ビッグカツ丼の他に、自家製手打ちうどんを出すとの事。へ
ー、これは面白そう。食べ物系屋台はどれも軽めだったので、ちょっと食べてみましょう。
という訳で、冷たいぶっかけうどんを注文。ほほう、この太く角ばったうどんがいい感じ。天カスをひとか
けして頂きます。
おお、これはなかなか。フワフワした優しい口当たりの大阪風うどんではなく、がっちりどっしりの逞しい
うどんです。随分昔の話ですが、香川県であちこち食べ歩いたのを思い出すなあ。
如何にも手打ちらしい切り口の程良いヨレ具合も、ダシの絡みがよくていい塩梅。よく冷えたダシは思った
よりもあっさりで、冷涼な青ネギの香りとともにさっぱりとした初夏に相応しい味わい。うどんには一家言あ
りそうな善通寺の隊員さん達をも唸らせそうな、美味しい手打ちうどんでありました。
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ええい、もう一品。銃剣道訓練隊の出しているフランクフルトの屋台へ向かいます。フランクフルトはどの
駐屯地で食べても似た様なものなので、これまであまり縁がありませんでしたが、どうせ今日はイレギュラー
な動き方をするんですから、たまにはいいでしょう。
屋台を覗くと、ほほう、てっきり陸自印の固形燃料を使っているのかと思いきや、予想外に本格的なロース
ターを持ち込んでいますよ。しかも2枚ある鉄板のうち1枚にはステンレスの焼き網を乗せ、保温用にしてあ
ります。
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なるほど、これなら火を通し過ぎる事も冷める事もなく、丁度いい焼き加減を保つ事が出来そう。一番美味
しい状態で焼き置きが出来るのでお客さんを必要以上に待たせる事もなく、しかも保温中に余分な油まで落と
せるという一石二鳥三鳥の工夫です。
フランクフルトなんてどこで食べても一緒だろ、と思っていた私が間違っていた様ですね。という訳で一本
頂きましたが、表面は丁度いいパリパリの焼き加減。中からは程良く安っぽいフランクフルト特有の香りが立
ちのぼり、うん、これが焼き置きとは思えないなあ。
しゃばしゃばマスタードの緩い辛味も心地よく、安価な材料であってもちょっとした心遣い次第でバカに出
来ない味になる・・・といういい見本でした。
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時刻は既に10時を過ぎ、式典が始まったのか屋台広場は結構空いてきました。その屋台広場の前には、白
塗りのペンキが剥げかけた古い木造隊舎が。そうそうこれこれ、信太山にはこれがあるんですよね。古い建物
好きとしては、うっとりしていまう物件です。
もしかしてこれが、野砲兵第四聯隊時代に使用されていた厩舎でしょうか。当時は400騎もの軍馬を世話
していたそうですが、それだけでも相当な作業量だったんだろうなあ。
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少し歩いたところにも古い木造隊舎が沢山あって、嬉しくなります。時間を忘れて心ゆくまで眺めていたい
気分ですが、この隊舎の前は招待者用の駐車場になっていて、先程から警衛の隊員さんが不審げな眼差しで私
を見ているのが気になります。自分で言うのも何ですが、普通に考えてマイルドな不審者なんだろうなあ。古
い建物が好きで、ただ眺めていたいだけなんです・・・と言い訳すればするほど怪しまれそう。
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という訳で、周囲に人が多い先程の古隊舎に戻ります。ここなら建物を眺めていてもさほど目立ちませんが、
どうも雰囲気がガサガサして落ち着かないなあ。しかしこの朽ちかけて斜めに歪んだ木造扉といい、割れた窓
ガラスに板を打ち付けただけの補修痕といい、味わい深すぎる・・・。
ちなみにこの隊舎ですが、南側の壁面は上下二段のガラス窓で、内部の採光は非常に良さそう。おまけに天
井部にも明かり取りらしき突き出た窓があり、ボロボロに古びてはいますが旧陸軍の兵舎にしては随分と気の
の効いた造りです。やっぱりこれが、昔の厩舎なのかな。
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また、その屋根窓の隣には、赤レンガ造りの小さな煙突がありました。何でこんな所に煙突が・・・と思い
ましたが、冬場はここで火を焚いて厩舎内を暖め、冷え込みで軍馬が弱らない様にしていたのかも。当時の軍
馬の管理については、兵士をないがしろにしてもいい位に相当気を使っていたと聞きますからね(笑)。
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ちなみにこの建物、現在は格闘訓練隊や信太山菊水太鼓の練習場、あと資材置き場として活用されているそ
うです。うーん、この内部も一般公開してくれないかなあ。
その後は信太山駐屯地の資料館である修史館へ。この黒松と竹藪に囲まれた静かな登り坂も、なかなかに味
わい深く私のお気に入りです。絶妙な薄暗さもいい感じで、敷地内の緩やかな高低差を上手く利用しています
ね。
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久しぶりに訪れた修史館。屋根が葺き換えられて随分とこざっぱりした印象ですが、西部劇に出て来る馬車
駅みたいな雰囲気は相変わらず。ちなみのこの修史館ですが、野砲兵第四聯隊が大阪城から移駐してきた時に
新築された大正8年の建築物。当時は将校集会所でしたが、現在は建物右半分を幹部集会所、左半分を駐屯地
資料館として活用しています。こういう古い建物を手入れして大事に使っているのは、見ていて嬉しくなりま
す。
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入り口前のマットで靴の汚れを落とし、館内へ。左右に広がるテラス状の廊下、真っ白いペンキ塗りの柱と
手すり、廊下に敷かれた赤絨毯、ほのかな湿り気を感じさせる真っ白な塗り壁、古びた金属製のドアノブ、清
掃が行き届いている筈なのに、どこからか漂ってくるホコリのニオイ・・・実に味わい深い。訓練展示が終わ
った後は、ここにも沢山の人がやってきます。静かなこの建物の雰囲気を味わえただけでも、記念式典をフイ
にした甲斐があったというもの。
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室内入ってすぐの所には、ひと抱えもある大きな砲筒が。これは明治前半まで大阪城で使われた、一日三度
の時刻を知らせる大砲だそうです。お寺の鐘みたいなもんですね。当時は野砲兵第四聯隊がその発射を担当し
ていたそうですが、昔の兵隊さんもいろんな事をやっていたんだなあ。
その時刻を知らせる空包発射ですが、火薬節約の為に大正12年頃に廃止になってしまったそうです。展示
されているこれは模型で、本物は大阪城に展示してあるそうですが、たまには復活させればいいのに。
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信太山駐屯地の歩みについての展示も、なかなか興味深いなあ。明治初期に砲兵隊の射撃場および演習場と
して拓かれたこの土地に、野砲兵第四聯隊が大正8年に大阪城から移駐。人員600名、軍馬400騎、砲車
26門という規模でしたが、軍馬の多さに驚きです。当時は自動車化されていませんでしたから、物資を運ぶ
のも大砲を牽引するのも全部馬の仕事だったんだなあ。
他にも当時の兵隊さん達の制服や馬具、軍刀、日用品といった様々な物品が展示され、皆さん静かに見入っ
ています。この古い建物独特のニオイに酔ってしまいそうですね。いやあ、たまンないな。
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旧軍時代の様々な資料が展示された修史館ですが、それに比べると自衛隊コーナーはごく僅か。その中に何
故かキツネの剥製が置いてありましたが、これは京都府の祝園(ほうその)分屯地を走っていた37普連の車
両に単身突撃を敢行し、見事散華したキツネだったとの事。その敢闘精神を称えられ、のちに英霊としてこの
修史館に祀られるに至ったそうですが、うーん、キツネの人生もいろいろだなあ。最後にもう一度建物正面の
テラス廊下を撮影し、修史館を後にします。
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修史館の裏手は、穏やかな登り坂になっていました。少し歩いて行くと、地面に掘り込まれた塹壕を発見。
合計3つありましたが、地面を細長く掘り込んでその縁だけを土嚢で補強したもの、地面を丸く掘り抜いたも
の、掘り込んだ壁面をコンクリ板と丸太で強固に固めたものと、それぞれにタイプが異なっています。すぐ近
くの演習場では、これをスコップと人力だけで実際に構築するんだろうなあ。
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そこから坂道を下ったところに、先程の厩舎に比べてかなり手入れの行き届いた木造隊舎を発見。傍にいた
隊員さんに尋ねると、他の駐屯地から一時的にやってきた隊員や、外部の人間を泊めるための外来宿舎との事。
ああ、一度でいいから泊ってみたい・・・。
敷地のあちこちには、レンジャー訓練に参加している中隊の仲間を応援する立て札がありました。レンジャ
ー向井中、レンジャー田嶋、レンジャー小椋の3名が現在奮闘中だそうです。
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それにしてもこうして見ると、式典に参加せず売店や屋台広場をうろうろしている人が結構いるもんですね。
信太山は混雑する上に見学場所が限られるので、どうしても会場に入りきれない人が多くなるのかな。
お、連隊旗を掲げた指揮通信車がやってきましたよ。という事は、観閲行進が始まった様ですね。駐屯地内
はひと通り歩いたので、次は式典会場を覗きに行きますか。まあこの時間にいい場所が空いているとは思えな
いので、式典ではなく式典を見ている人混みを見るという感じになりそうですが。
会場に向かうと、やっぱりかなりの混雑ぶりです。パイプ椅子席の後方にはまだ空席がありますが、前の人
の頭が邪魔でロクに見えないだろうなあ。
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最後列の立ち見客の背後を東側に進んで行くと、会場端の斜面に辿り着きました。お、斜面の途中に、一人
位なら立ってみる事が出来そうなテラス状のコブを発見。流石に会場西端までは遠いですが、250㎜あれば
撮影は出来ますね。という訳で急きょ予定を変更して、この場所から訓練展示を見る事に。
目の前を74式戦車が通り過ぎ、観閲行進は終了。音楽隊が退場した式典会場では訓練展示の準備が始まり
ます。それにしても信太山、グラウンドが芝生なので目に優しいなあ。敷地面積の広さもあって、ここにいる
だけで視力がよくなりそう。
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設営係の隊員さん達が鉄条網を構築する中、信太山駐屯地音楽隊と第37普連選抜ラッパ隊による合同ラッ
パドリルが披露されました。30名以上からなる混成部隊の一人一人についての紹介が行われ、それだけでも
結構な時間がかかりますが、我が子やお父さんの晴れ舞台を見に来たご家族にとっては、これはなかなか気の
利いた配慮。まずは地域住民、そして隊員さんのご家族の為の行事なんですから、こういう部分にもしっかり
と時間を使ってもらいたいですね。
その後は起床から始まる駐屯地の一日の流れを、様々なラッパ吹奏でリズミカルに紹介。きっちりと統制の
とれた溌剌としたドリルは、さすが自衛隊ならでは。飛ぶわ跳ねるわと、ミュージカルの如き工夫を凝らした
善通寺のドリルも圧巻でしたが、こういうシンプルなドリルも味わい深いなあ。
最後は、ちょっとメロウな消灯ラッパで締め括り。ああ、陸自のラッパではこれが一番好きかも。大きな拍
手に送られる様にして、合同ラッパドリル隊は退場です。
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続いては、信太山菊水太鼓。観閲壇正面に巨大な太鼓が運び込まれ、太い腕の隊員さん達がドコドコドコド
コと勇壮な和太鼓を披露です。5月の明るい空とキレイな新緑に、白青の鮮やかな法被が眩しいなあ。最後は
きっちりと締めて、こちらも拍手を浴びながら退場。
消防車による放水が行われた後は、訓練展示に先立っての注意事項がアナウンスされます。そして金色に磨
き抜かれたラッパを手にした4名の隊員が現れて、状況開始を宣言。もしかして先の競技会で最優秀表彰され
た、第2中隊の隊員さんかな?
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本訓練展示の概要が説明される中、敵対抗部隊役の隊員さんは小銃の最終チェックを行いますが、空薬莢受
けを取り付ける際のカシャンという金属音がここまで響いてきました。へー、結構大きな音がするもんなんで
すね。最近は装備品展示でも小銃に触れる機会はなくなりましたが、冷たく堅い89式小銃の感触が蘇ります。
という訳で、訓練展示の始まりです。対抗部隊が占拠した会場東側を奪還すべく、中隊長は本部管理中隊の
情報小隊に前進を命令。
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「情報小隊、こちら中隊長、敵陣地を解明せよ!」
「こちら情報小隊、了解!これより偵察を実施する!」
陸自本隊からは2両の偵察オートと軽装甲機動車が飛び出してきて、対抗部隊を挑発する様に一気に前進。
偵察隊員は地面に倒した偵察オートに隠れる様にして、敵陣地に対して小銃射撃を浴びせます。
対抗部隊からの反撃から陣地の形状や戦力規模に関する情報を得た偵察隊員は、軽装甲機動車の援護を受け
ながらその場でくるりとターン。一気に撤退します。
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続いて中隊長は、レンジャー小隊にさらなる情報収集を下命。駆け付けたレンジャー小隊は、低空でホバリ
ングするUH-1J多用途ヘリから一斉に飛び降り、周囲の安全を確保。素早く敵陣地側面へと回り込み、2
名一組になって情報収集と撹乱を開始します。
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それにしても4名のレンジャー、2mぐらいの高さから当たり前に飛び降りていましたね。幾ら下草の地面
が柔らかいとは言え、あんな高さから飛び降りた直後によくまあ走り回れるなあ。普通は足首や膝がおかしく
なりそうですが、やっぱり訓練の賜物です。
対抗部隊の後方陣地からは96式装輪装甲車がやってきましたが、急停車した時に車体下部から結構な量の
液体をぶちまけています。なんだかお漏らししたみたいですが(笑)、冷却水・・・じゃないよなあ。結露と
も思えませんし、なんなんだろう。
![](2016shinodayama38.jpg)
敵陣深くに喰い込んだレンジャーからの情報をもとに、中隊長は陣地を奪還すべく火力戦闘部隊の展開を指
示。陸自本隊からは高機動車が飛び出して来て、それぞれ120㎜迫撃砲RTと81㎜迫撃砲L16の射撃準
備を開始。各迫撃砲の特徴や到達距離がアナウンスされます。
本来はこの火力戦闘部隊の中核として、姫路の第3特科隊からの155㎜FH-70榴弾砲が参加する筈で
したが、第3特科隊は現在熊本県に展開して震災の救援活動に従事しているとの事。姫路レンジャーに代表さ
れる強烈なマンパワーが売りの姫路駐屯地です。きっと現地では、獅子奮迅の活躍を見せてくれているんでし
ょう。
「中隊長、こちら火力戦闘部隊!射撃準備、完了!」
中隊長からの射撃命令を受け、火力戦闘部隊は敵陣地に対して攻撃を開始。発射された砲弾が空気を切り裂
いて飛翔する効果音が流れると、対抗部隊の兵士達は一斉に低い姿勢を取り、着弾に対処します。
![](2016shinodayama40.jpg)
さらに中隊長は、戦車及び対戦車小隊に前進を指示。砲塔を後方に回した74式戦車が轟音を上げながら回
り込んできましたが、あれ?今なんか、訓練場脇の立ち木に突っ込んでなかったか?重迫撃砲中隊の隊員さん
達があーあ、やっちゃった・・・という感じでその様子を見守っていますが、操縦手が進入経路を間違えたの
かな?後でキツく怒られてなければいいのですが・・・。
![](2016shinodayama41.jpg)
74式戦車が会場に入って来ましたが、車体前面に木の枝が引っ掛かっています。あ、やっぱり(笑)。ま
あ大きな事故にはならなくてよかったですね。でも、これはこれで偽装してるみたいでちょっとカッコイイな
あ(笑)。
74式はまるで照れ隠しの様に白煙を派手に吹き上げつつ、射撃位置へと移動。敵陣地に砲口を向けたあと
は、八つ当たりの様にドカンと砲撃開始。会場からは大きなどよめきが上がりますが、とばっちりを食らう対
抗部隊の人達にとってはたまったもんじゃありません(笑)。
![](2016shinodayama42.jpg)
その隙を突く様にして、前進して来た対戦車誘導弾が射撃位置に展開。低い姿勢を保ちながら射撃準備を進
めて行きます。
対抗部隊が反撃を行う中、陸自本隊からは普通科小銃小隊が前進開始。ルーフ上から機関銃を射撃しながら、
高機動車と軽装甲機動車が突っ込んで来ました。へー、高機動車って、あんなふうに車体上部の幌を開いて射
撃出来る様になってるんですね。
![](2016shinodayama46.jpg)
![](2016shinodayama48.jpg)
双方が激しい銃撃戦を行う中、車両から飛び出してきた小銃小隊は3個の班に分かれ、互いに連携を取りな
がら敵陣地への距離を詰めて行きます。
と、ここで隊員の一人が被弾。すぐに同じ班の隊員が救助に向かい、本隊に救援を要請します。負傷した隊
員を素早く後方の安全な場所に引きずっていく隊員、その場に伏せて援護射撃を行う隊員と、各自の素早い判
断と連携で全体の戦力低下を最小限に食い止めるシステムが出来ているのがよく分かります。
![](2016shinodayama51.jpg)
小銃小隊が地面に伏せて反撃をやり過ごす中、会場正面にあるレンジャー訓練塔の上で青旗が振られました。
いつの間にか最上段に取り付いていた狙撃手が、対抗部隊指揮官の狙撃を行うとの事。
「中隊長、こちら狙撃組、敵陣地に指揮官を確認、狙撃する!」
![](2016shinodayama52.jpg)
すると敵陣地にて立ちあがった指揮官が、よせばいいのにオーバーアクションで兵士の士気を鼓舞します。
パン、という射撃音が鳴り響くと同時に、その場にひっくり返る指揮官。緊迫した状況とはあまりに不釣り合
いなコミカルな演技に、会場からは失笑が湧き上がります(笑)。
![](2016shinodayama53.jpg)
![](2016shinodayama54.jpg)
狙撃されてしまった指揮官のもとにはすぐに兵士が駆け寄りますが、それを横から見ていた別の兵士が実に
いい笑顔だったのが違う意味で衝撃的(笑)。目の前で上司が狙撃されたにも関わらず、ニコニコ顔の部下っ
て・・・。狙撃組の人も命中させた甲斐がなさそうだなあ。対抗部隊の人間関係がなんとなく推し量られるひ
と幕でしたが、指揮官の人はあまり部下から好かれていない模様です・・・。
![](2016shinodayama55.jpg)
「中隊長、こちら狙撃組、狙撃、命中!」
狙撃手はすぐその場に伏せ、傍の観測手が低い姿勢で中隊長と通信を行っています。お客さん相手に見せる
為の訓練なんですから、むしろ狙撃成功をアピールする様な演出があってもよさそうですが、この辺の基本動
作は完全に身にしみついたものなんでしょうね。
ここで74式戦車がさらなる砲撃を浴びせ、敵装甲車後部に命中。真っ赤な煙を吹き上げつつ、装甲車は後
退を余儀なくされています。
![](2016shinodayama56.jpg)
この後の小銃小隊の突撃に向けて、火力戦闘部隊は攻撃準備射撃を敵陣地に畳みかけます。怯んだ対抗部隊
の反撃が弱まった隙を突き、小銃小隊は一斉に弾倉を交換。各員の突撃準備完了が小隊長に伝達され、号令と
ともに一気に敵陣地になだれ込みます。後方からは戦車をはじめとした車両群もやってきて、小銃小隊を援護。
![](2016shinodayama58.jpg)
![](2016shinodayama60.jpg)
敵陣地へと突入した小銃小隊の各班長は素早く指示を飛ばし、倒れ込んでいる敵兵士を確認させます。死ん
だふりをした敵兵士が、背後から襲いかかってくる事を想定しての事ですね。
別の隊員はその周囲をぬかりなく警戒し、確認作業をカバー。全員がカチカチと歯車の様に正確に行動し、
一分の隙も見せずにそれぞれの役割を果たしています。
![](2016shinodayama59.jpg)
車両群に続いて74式戦車も突入を開始。会場前の道路に出てきたあとは、見守る観客たちに特製排気ガス
をぶちまける様にして、先程の装甲車を追い詰めるべく目の前を一気に通過して行きました。
![](2016shinodayama61.jpg)
敵陣地を制圧した小銃小隊は素早く隊列を組み直し、突入班と援護班に分かれてさらに敵の後方の陣地へと
進入。陣地奪還成功と同時に状況終了のラッパが鳴り響き、会場からは大きな拍手が送られました。
いやー、普通科メインの訓練展示は久しぶりでしたが、なかなかの見応えでしたね。小銃小隊の班の連携や
敵陣地突入後の各員への指示の出し方などが、以前よりもはっきりと描かれていた様な気がしましたが、これ
は意図して行った事なのか、単にこれまで私がそういう細部を見落としていただけなのか・・・(笑)。
その後は人の流れに乗って、式典会場を後にします。見学場所は会場の東端だったので少し時間がかかりま
したが、たまにはこんな風にのんびり移動するのもいいなあ。
![](2016shinodayama62.jpg)
式典会場から溢れ出てきた人達で、屋台広場も厚生センターも混雑の極み。少し離れた場所には被服体験コ
ーナーがありました。要は子供用の制服を着て写真を撮ろう!コーナーですが、それなら自衛隊コスプレ体験
コーナーでいいんじゃないかなあ。被服体験といわれても、普通の人はピンとこない気がしますが・・・。で
も、逆にこっちの方が自衛隊らしい響きなのかもしれませんね、被服体験。
![](2016shinodayama63.jpg)
という訳で、いつもとは少し違う動き方をしてみた信太山駐屯地でしたが、うん、これはこれで結構楽しか
ったなあ。なんだかんだで訓練展示はいい場所から見る事ができましたし。会場の大混雑からなんとなく足が
遠ざかっている姫路や福知山あたりも、同様の方法で参加してみるのもいいかも。これまでとは違った何かが
見えて来る気がします。
一つの事を長くやるには、ある程度立ち位置を変えながら違う目線からアプローチするのが自分には向いて
いるのかも・・・等と思いつつ、信太山駐屯地を後にしました。
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