護衛艦くらま一般公開inサンポート高松
2016.12.04
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香川県高松市サンポート高松岸壁にて行われた、護衛艦くらま一般公開に参加してきました。DDH144
くらまは佐世保を定係港とし、1981年の就役以来36年もの長きに渡り第2護衛隊群の旗艦として海上防
衛の第一線で活躍して来た、海自屈指のベテラン艦であります。
そんな護衛艦くらまも、後継となるいずも型護衛艦2番艦かがの就役と入れ替わる形で、来年3月をもって
とうとう除籍。今回の一般公開がくらまの最後の晴れ舞台とあっては、何かと慌ただしくなる12月と言えど
も見に行かざるをえません。という訳で0630に前夜の車中泊地となった瀬戸大橋の与島PAを出発し、高
松へと向かいます。
高松西ICから一般道に降り、しばらく走ってサンポート高松近くのコインパーキングに到着。静かな住宅
街を抜けると、おお、高松シンボルタワーの広場の向こうに護衛艦くらまのマストが見えてきました!
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目の前の護衛艦くらまは、曇天をバックに静かな佇まい。埠頭の人影はまばらですが、舷門前には既に40
人ほどの乗艦待ちの列が出来ていますね。慌てて私も最後尾につきます。
見上げた前甲板にそびえ立つのは、巨大な54口径5インチ単装速射砲。同型艦の護衛艦しらねもとうに除
籍され、この砲塔を背負い式で見る事が出来るのもこれが最後です。今後の展示訓練や観艦式での祝砲発射は、
同じ砲塔を持つ護衛艦はたかぜやしまかぜが担う事になるでしょうけど、蒸気タービンを推進方式とした艦は
このくらまが最後。これも喜ぶべき世代交代ではありますが、今まさに目の前で一つの時代が終わる感慨が、
何とも言えないなあ。
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12月という事で、甲板にいる海曹は黒の冬服。作業着姿の隊員さんも黒の上着を着用しています。この時
期の艦艇一般公開は滅多に無い事ですが、来年3月の除籍を目の前にしてただでさえ準備に忙殺される中、乗
員の休暇を消化しながらなんとか時間をやりくりしての一般公開開催であった事は想像に難くありません。既
に乗員の転出も始まり、日を追うごとに人手が少なくなるくらま。そして年末の業務で忙しい地本の人達も、
本当に大変だっただろうなあ。
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そろそろ0800の自衛艦旗掲揚の時刻。艦尾へ行ってみましょう。砲塔と艦橋の間には巨大なアスロック
発射機がありますが、ゆき型やきり型では大きな顔をしているアスロック発射機も、基準排水量5000㌧を
越えるくらまの甲板では妙に小さく見えます。今時の何を考えているのかわからないVLSとは違い、いかに
も対潜魚雷ぶっ放してやるぜ!と言わんばかりのデザインが実にカッコイイ。お尻にキレイに並んだ8つの丸
い黒カバーも、愛嬌を感じます。
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そしてしらね型護衛艦のもう一つの特色である、煙突とマストをひとまとめにしたマックと呼ばれる構造物。
前部煙突はレーダーマストと、後部煙突はレーダードームと構造を共有していて、後斜め上方にくちばし状に
突き出た部分が煙突の排気口です。
上部構造物の軽量化と単純化を目的とした構造ですが、これは排気温度が比較的低い蒸気タービンだからこ
そ可能な設計。現在の主流であるガスタービンエンジンは排気温度が非常に高く、レーダー機器への悪影響を
考慮した結果この設計は姿を消しています。
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艦尾にむかうと、旗竿についた海士が自衛艦旗掲揚の準備に取りかかっています。格納庫からは乗組員達が
ぞろぞろと出て来て、飛行甲板に整列開始。その中に1人、大きなあくびをしている隊員さんがいましたが、
昨夜は遅くまで上陸して羽を伸ばしていたんでしょうか(笑)。船乗りなんてオンオフを切り替えてなんぼで
すからね。遊ぶ時は大いに遊ばないと。
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そして0800。岸壁にラッパが響き渡り、当直の海士が勢いよく自衛艦旗を放ちます。すかさず海曹がロ
ープを引き、海自版『君が代』の音色に合わせて自衛艦旗がゆっくりと掲げられていきます。さっき大あくび
していた隊員さんも、別人のように引き締まった表情で敬礼。恐らくこれが、私が見る護衛艦くらまの最後の
自衛艦旗掲揚でしょう。厳粛な雰囲気に自然と身が引き締まる様。
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ぱぱっぱぱー、という締めの音色が鳴り響くと、岸壁から自衛艦旗掲揚を見守った沢山の人達の間にほっと
した空気が漂いました。さて、それでは乗艦待ちの列に戻るか。それにしても、いつの間にかもの凄い人数に
なっていますね。ざっと見て300人はいる上に、あとからあとからどんどん行列が伸びて行きます。
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そして0822、岸壁の混雑を考慮してか、予定を少し繰り上げて一般公開開始。手荷物検査をクリアして
パンフレットを貰い、舷門にいる隊員さんの敬礼を受けながら3年ぶりとなる護衛艦くらまに乗艦します。
まずは人の流れに乗って、前甲板へ。それにしても54口径5インチ単装速射砲、改めて見てもほんとデカ
イなあ。今や護衛艦隊を見渡しても数えるほどしか残っていない、内部に人が入って操作する有人砲塔です。
たっぷりと取られた縦横、上部にちょこんと突き出た照準手ドーム・・・ああ、この古臭いニオイがたまらな
いな。
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長大な砲身にはテーパーがかかっていて、砲口よりも根元の方が太くなっています。砲身自体に相当な重量
があり、発射時の衝撃にも耐えられるよう取付部を太くして強度を確保している訳ですが、これよりもずっと
砲身が長い62口径5インチ砲は、もっとシュッとしている気がしますが・・・と、傍にいた隊員さんに訊ね
てみると、
「ええ、新しい砲の砲身はこれよりも軽くて丈夫な素材になっていますから、ほっそりしてますね。でも、
スリムな砲身よりもやっぱり根元ががっしりしている方が、断然カッコイイですよね(笑)!」
ああ、なんかこの隊員さんとすごく話が合いそう(笑)。もしかして砲術の隊員さんだったのかな?
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ちなみにこの5インチ砲、重量32kgもの弾頭を1分間に35発もの速度で発射可能。その際に出る強烈
な熱から砲塔内の電子機器を守るため、夏場はおろか冬場でもクーラーで内部をガンガンに冷やしているとの
事。お陰で砲塔内で操作する隊員さんは寒くて寒くて大変だそうです。
続いて現れたのがアスロック発射機。パラシュート付きの魚雷をロケットで打ち上げ、敵潜水艦がひそんで
いる海域まで飛ばす装置です。艦から直接魚雷を発射するのに比べて、遥かに遠い距離から大幅に時間を短縮
させて攻撃する事が可能になっています。
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こんごう型イージス艦以降は甲板埋め込みの垂直発射方式(VLS)が主流なので、これもいずれ消え行く
装備品ですが、ゆき型やきり型、あぶくま型では依然として現役。独特のメカニカルなギミックの渋さが味わ
える、昭和の香り漂う貴重な装備品の一つと言えるでしょう。
垂直に切り立った艦橋の下部には、丸いブローアウトパッチが沢山並んでいます。この内部が弾薬庫になっ
ていて、万が一の誘爆による被害を最小限に抑えるため、爆風を外に逃がす通風孔ですね。これがないと、上
部の艦橋や艦内のCICがまるごと吹っ飛んでしまうのでしょう。
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舷側にあったのは三連装魚雷発射管。先程のアスロック発射機と同様に魚雷を発射する装備品ですが、こち
らはアスロックに比べて近距離の目標に対して使用されます。圧縮空気を使ってポンと撃ち出される姿はどこ
かユーモラスで、ちょっとカワイイ奴であります。
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魚雷そのものは当然完全防水仕様ですが、季節によっては発射管内に発生した結露が発射システム自体の故
障の原因になりかねないので、ときどき点検孔や発射口の蓋を開けては内部の換気を行うとの事。うーん、変
なところで手がかかるのが、やっぱりカワイイな(笑)。
ここからは艦内に入ります。ハッチを抜けた艦内通路には、赤絨毯が敷き詰められていました。一般公開の
お客さん用に準備したレッドカーペットですが、なんかVIPになった様な気分(笑)。くらま最後の一般公
開という事での隊員さんからの乗艦者への気遣いであると同時に、36年間働き続けてきたくらまへのはなむ
けなのかもしれません。
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通路を曲がったところには護衛艦くらまの来歴と歴代艦長、そして石川島播磨重工業東京第一工場で産声を
あげた際の銘盤が。現在の艦長は第22代となる水田秀幹一等海佐。くらまに預けられた自衛艦旗を返納する
大役を任された人ですね。
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艦内の狭いラッタルを3層上がると、艦橋に出ました。あ、天井が白いまんまだ。新しい艦は電子機器画面
への映り込みを防ぐために建造時から天井は黒く塗ってあり、既存艦も順次塗り替えが進んでいる筈ですが、
くらまは最後まで塗り替えられないままか。もっとも古いくらまは艦橋の電子機器もさほど多くはないので、
運用時は機器の上から黒い覆いをかけて対処していたのかも。
窓から甲板を見下ろすと、うわっ、先程よりもさらに凄い行列になってます。岸壁どころか、隣のフェリー
乗り場の方まで乗艦待ちの行列が伸びてるし。最後尾の待ち時間は1時間以上かかるんじゃないかなあ。
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来年3月をもって除籍となるこのくらまですが、その後の処遇についてはまだはっきりと決まっていないと
の事。解体処分になるのか、もしくは実弾射撃訓練の標的艦として、最後の役割を終えるのか・・・。
それ以外にも、横須賀の戦艦三笠の様に展示艦として保存する選択肢もあるそうですが、なにぶん維持費が
莫大な額になるので、それも難しいでしょうね・・・との事。お話を聞かせてくれた隊員さん曰く、
「この艦も国有財産ですから、財産なりに金額としての数字が出るんですよね。それで維持費だのなんだの
を考慮すると、今の資産価値としては10万円ぐらいになってしまうそうです」
えええええ、くらま10万円!?なんかショッキングな数字だなあ。建造費、維持費、これまでかけた補修
費、さらには除籍後に必要な処分費、艦が果たした責任も効果もはっきり決まっているんですから、色んな条
件を考慮してお金に換算出来るんですね、護衛艦って・・・。それにしても10万円か・・・なんと言ってい
いのかわからない数字です。
ちなみにこの艦の面倒を最後まで見るのは、補給科の仕事になるそうです。
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ふと見ると、天井に伝声管が。ラッパ部はピカピカに磨き抜かれ、とても退役間近の艦とは思えません。ち
なみにこの伝声管、艦橋の屋上に当たる上部指揮所に繋がっていますが、ここで上部指揮所にいた見学者が面
白半分で喋りかけてきたところ、傍にいた隊員さんがすかさず返事。まさか返事がくるとは思わなかったのか、
上の人はびっくり(笑)。隊員さんはニヤリ(笑)。悪戯好きな隊員さんだなあ(笑)。
私もウイングに出て、上部指揮所へ行ってみましょう。それにしても、ちょっとしたところにいちいち小さ
な段差があったりするところが古い艦ならではの味わいですね。お陰で新造艦は、最初から動線や細かい効率
に配慮した設計になっているのがよく分かります。
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艦橋からの見張りや信号通信に使われるウイングですが、今回は左側が公開、右側が非公開になっていまし
た。通常はどちらもイケイケになっている事が多いのですが、多数の見学者が殺到する事を考慮して、出来る
だけ見学者の流れをシンプル&スムーズにしたかったんでしょうね。お陰で人が全く入らないウイングの様子
を撮影できたので、これは非常に有難い配慮。
旗甲板には、チャフロケット発射機が。チャフとは敵ミサイルが出すレーダー波を撹乱する為の防御兵器で、
艦上空に大量に撒き散らしたアルミ箔の小片で雲状の塊を作る事により、敵ミサイルのセンサーにエラーを発
生させて艦を守ります。言わば、外敵に襲われたイカが吐くスミみたいなものですね。
6本組のチャフ発射機をくらまは4基装備していますが、通常の護衛艦では2基どまりな事を考えると、や
はり艦隊の旗艦としての重責を担っていた事がよくわかります。
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その旗甲板からラッタルを降りたところにはちょっとした坂道があり、後部煙突構造物へと繋がっています。
行き当たりばったりにツギハギしたみたいな、不思議な形状。もちろん最初から何らかの意図があって設計さ
れたものだとは思いますが、どこか無理矢理間に合わせた様な人間臭い味わいが漂うところが、古い艦独特の
魅力。今の艦はあまりに最初から合理的過ぎて、こういう味わいというか隙がないんだよなあ・・・。
とは言え、最新鋭のあきづき型護衛艦がいつの日か退役する時には、その時の最新鋭艦と比べながら似たよ
うな事を言ってあきづき型を持ち上げてそうなのが、私のいい加減なところであります(笑)。
あと、このくらま除籍のもう一つの理由として、海自内に蒸気タービンを扱える人が殆どいなくなっている
事もあげられるそうです。そりゃそうでしょうね。ガスタービン全盛のこの時代、なくなるのが分かりきって
いる蒸気タービンのスペシャリストを育てる意味もないですし、今後のスキルアップに繋がらない事を学びた
がる隊員さんもいないでしょう。
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仮に蒸気タービンを志望しても、いずれ全くシステムの異なるガスタービンに乗り変えざるを得ず、その時
には他の機関科員よりも一周も二周も遅れた状態からキャリアが始まるのですから。当たり前と言えば当たり
前ですが、個人の趣味や思い入れで古い車に乗っているのとは、全く訳が違うんだろうなあ。
太い柱で支えられた高性能20㎜機関砲ファランクスの下を通過。そして見上げたところには後部煙突の排
気口が。うーん、何度見ても特殊な形状ですね、マック。縦長の電気ポットみたいというか、頭が黒いペンギ
ンみたいというか・・・。ちなみにマックは、マスト(MAST)と煙突(STACK)を組み合わせた造語
です。
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その後方にあるのは、シースパロー発射機を配置した短SAM甲板。格納庫の真上に当たるので結構な高さ
があり、お陰で周囲の見晴らしは非常に良好。ここに場所をとって展示訓練に参加してみたかったのですが、
結局それも叶わずじまいか・・・。
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その後は後部煙突をぐるりと回り込み、艦内へ。ラッタルを下った先は、格納庫を見降ろす中2階の通路で
した。
それにしても、つくづく特殊な形状の格納庫だなあ。縦長のL字状というか、ヘリ3機分の格納スペースを
無理矢理捻りだした感じ。これからの海上のヘリ運用は、全通甲板を持つひゅうが型やいずも型護衛艦が中核
となりますが、この特殊な艦が時代の花形だった時代があったんですね。
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格納庫の中央には、護衛艦くらまのスタンプコーナーが。へー、くらま固有のもの以外に、各科の分も合わ
せて6種類もあるんですね。機関科のスタンプがやかんの形をしているのが面白いなあ。
しかもよく見ると、それぞれに『LAST YEAR 2016』とありました。文字通り、最後の花道を
飾る色とりどりの記念スタンプです。
と、ここで以降の一般公開は上甲板のみになります、との艦内放送が。これだけの人数の見学者が押し寄せ
たんですから、一人でも多くの人にくらまを見てもらう為には仕方ありません。艦橋へ上がる通路とか、もう
身動き取れなくなってたんだろうなあ。
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2組の軌条が伸びる長大な飛行甲板。中央にはSH-60J哨戒ヘリがどんと鎮座していますが、見るから
に窮屈そうなゆき型やきり型の飛行甲板に比べると、ゆったりと羽を伸ばしている様に見えます。
その隣には、上空でホバリングするヘリから降ろしたケーブルをがっちりと固定して着艦させるベアトラッ
プが。いわゆるトラバサミみたいなものですが、シンプルながらもなかなか思いつかない工夫です。波の荒い
北の海での運用が前提となるカナダ海軍で開発されたというのも、頷ける話ですね。
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ヘリには沢山の見学者が群がり、飛行服姿の隊員さん達は対応に忙しそう。たまたま防水服に身を包んだパ
イロットの人がいたので、以前から気になっていた事を訊ねてみます。灯りも何もない真っ暗な夜の海上を低
空飛行する時って、どんな気分なんですか?想像しただけで足が震えそうなんですが・・・。
「うーん、最初の頃は、正直怖い・・・という感覚すらよく分からなかったですね(笑)。現実感がないと
いうか。基本的に何も見えない空間を飛んでいますから、高度は計器を見て判断するしかないんですけど」
車で言えば、路肩の照明もセンターラインも何もない深夜の高速道路を、ライトを消してカーナビだけを頼
りに時速200km以上で飛ばす様なものです。想像すると頭がおかしくなりそう・・・。自分の技量と機体、
同僚、整備員達への100%の信頼がないと成り立たない世界なんだろうなあ。
![](2016kurama35.jpg)
ふと見ると、コックピットの左右にサイドミラーがついています。これも前から気になっていたのですが、
普段これで何を見ているんだろう。
「あ、これはですね、機体の左右についているソノブイやMADのセンサーを降ろす時、機体に引っ掛かっ
たりせずちゃんと降りているかどうかを確認してます。バックする時は・・・あんまり使わないですね(笑)。
ちなみにバックで飛ぶ事は出来ますが、滑走路の上では前にしか進めないんですよ、これ」
との事でした。
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さて、人も増えている事ですし、この辺りでくらまを後にしましょうか。舷側ギリギリまで張り出した、ま
るでビルを横倒しにした様な巨大な格納庫。そして長く伸びた飛行甲板・・・。しらね型とはるな型特有のス
タイルですが、その中で最後まで残ったくらまもとうとうこれで見納めか。36年もの間海上防衛の第一線で
体を張って来た護衛艦くらまに、心の中で敬礼。本当に、長い間ご苦労様でした・・・。
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その後はフェリー乗り場の方に移動して、途切れる事のない見学者の列とくらまを撮影。艦内を見て回れな
かったのは残念でしたが、これだけの人数が押し寄せているなら仕方ないなあ。ああ、しらねの時の様に、展
示訓練で一日乗艦したかった・・・。もう2年も前の話ですが、つい先日の事の様に思い出してしまいます。
最後は高松シンボルタワー8階の展望広場から、サンポート高松に佇む護衛艦くらまを撮影。私にとっての
くらまの最後の雄姿をその目にしっかりと焼き付けてから、高松を後にしました。
![](2016kurama43.jpg)
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