阪神基地隊サマーフェスタ2016

2016.07.10


       阪神基地隊サマーフェスタに行って参りました。阪神基地隊には第42掃海隊(つのしま・なおしま)が配
      置され、大阪湾及び紀伊水道の防衛警備及び周辺地区への災害派遣を担任しています。
       神戸市東灘区の埋め立て地という都市部に近く交通至便な立地である事や、近隣に陸自第3師団の駐屯地
      多い事から、入港した海自の輸送艦陸自の車両を積みこんで演習に協力する事も珍しくない、海と陸とをつ
      なぐ役割も果たしている関西の重要拠点であります。

       当日は早朝に自宅を出発し、阪神基地隊には9時前に到着。開門待ちの最後尾が運よく隊舎の日陰だった事
      
にホッとしつつ、1000の開門をじっと待ちます。
       その後も行列はどんどんと伸びて行き、開門10分前に列が動き始めました。お、ちょっとだけ開門が早ま
      ったみたいですね。正門入ってすぐのテントで金属探知機を華麗にパスし、手荷物検査を受けてから二日ぶり
      の阪神基地隊
へ足を踏み入れます(金曜日にカレーを食べに来たので・・・)。

       本日公開されるのはAOE423補給艦ときわと、DD158護衛艦うみぎり。ここで行列が二手に分かれ
      ますが、やはり護衛艦だけあってうみぎりの方へ向かう人が多い様ですね。私はうみぎりには妙に縁があるの
      で、先に未乗艦のときわへ向かうとしましょう。
       おお、さすがにデカいな補給艦ときわ。基準排水量8150㌧は最新のましゅう型補給艦に比べてふた回り
      以上小さい
ものの、それでもこの巨体は圧倒的です。頭上にのしかかる様な艦首のブルワーク、天を衝くが如
      き2対3基の補給ステーション。お腹をすかせた艦が、洋上で合流する補給艦を『おふくろさん』と呼ぶ気持
      ちがよく分かります。

       燃料や真水、食料、武器、その他様々な物資を洋上で補給する事で、艦隊のより機動的効率的な運用を下支
      えする
という非常に重要な役割を任された艦ですが、それだけに一度の航海が長期間にわたる事が多く、乗組
      員やそのご家族の負担も大きくなります。課せられた重責の割にあまり目立たない艦ではありますが、こうい
      った縁の下の力持ち的な部隊は、もっともっとスポットライトを当てて評価されないとなあ。

       舷梯前で少し待ち、1000をもって乗艦開始。このやたらと長い舷梯が、艦の大きさ乾舷の高さの証で
      すねえ。
       まずは左舷の舷側通路を歩き、艦首へ向かいます。頭上には見上げんばかりの補給ステーション。甲板には
      沢山の機器類が備え付けられています。

       大きな滑車に支えられたケーブルの中央には、トロリーと呼ばれるゴンドラ状のものがぶら下がっています
      が、これは洋上補給の際に物資を吊り下げる装置。うーん、流石にデカイな。お話を伺った隊員さんによると、
      1.5㌧までの物資を吊り下げる事が出来るそうです。ちょっとした車一台分ですね。

       一見してごちゃごちゃした印象の前甲板ですが、要所要所に広い空間がとってあり、少ない人数で効率的な
      作業が行える様
になっています。
       燃料補給用の蛇管(ホース)の先端部は重そうな金属製で、これをスパンワイヤ伝いに並走する艦艇のプロ
      ーブ・レシーバー
にがっしょんと接続し、給油を行う訳ですね。
       その蛇管の先端部は太いロープでしっかりと甲板に固定されていますが、これも相当な重量があるんだろう
      なあ。強風や波浪で万が一固定が外れた際には大事故を引き起こしかねないので、周囲を頑丈そうなフレーム
      
で囲ってありました。

       ちなみに給油を終えた蛇管は再び補給ステーションに引き戻されますが、PKO等で外国の艦艇に給油した
      際は、お礼として手作りのお菓子が先端部に括りつけられて返ってくる事もあるとか。外人さんはなかなか
      な真似
をしますね。
       その蛇管の先端部は傷まない様に木材にはめ込む形で固定されていますが、蛇管から浸み出た残り燃料を吸
      ったのか、木材はコテコテに油光りしていました。

       結構歩いて艦首部に到着。甲板から巨大な空調ダクトが突き出ていますが、それでもこの開放感は格別です。
      艦首にぶつかってくる波しぶきから甲板上の機器を守るブルワークは結構な急角度で、密に入れられた補強材
      が外洋での波涛の圧力の凄さを物語っている様。

       ふと見ると、錨の揚げ降ろしをする艦首の揚錨装置の脇に不思議なものが。ごく短い鎖の先端にフックの様
      なものがありますが、これは錨鎖を途中で固定する器具でしょうか。小さなゴム製座布団を敷いてあるのが
      ょっとカワイイ
な(笑)。恐らく甲板を保護する為と思われますが、端についている短いロープが律儀に丸め
      てある
のも実に海自らしい

       ちなみに2対3基、合計6ヶ所ある補給ステーションですが、前と後は船舶燃料と航空燃料、真水を補給す
      るためのもので、中央は物資補給用。また甲板先端部には波除けの衝立があり、ブルワークを乗り越えて甲板
      になだれ込んでくる高波から背後の補給機器を守っています。
       それにしても、海面から7~8mはありそうな甲板までなだれ込んでくる波って・・・想像すると寒気がし
      ます。8000㌧を超す排水量とはいえ、外洋のシケの中では木の葉みたいなもんなんでしょう。

       お、よく見ると物資移送用のトロリー、右舷と左舷で形状が違うんですね。右舷の方は随分とシンプルとい
      うか、
軽そうに見えます。傍にいた隊員さんに訊ねてみると、
       「はい、これは艦によって物資を受け取る側の装置の形状が違うので、それぞれに合ったトロリーを使える
      様にしています」

       との事。最新鋭艦や古い艦、大きな艦や小さな艇と、多種多様な艦艇に対してスムーズに補給作業が行える
      様になっているそうです。

       あと先程から気になっていたのが、甲板に沢山並んでいる灰色の巨大な魚肉ソーセージみたいなの。何かの
      ボンベかな?
       「あ、あれは補給ステーションを動かす時に必要な、窒素ボンベですよ」
       これが護衛艦の甲板にあったらさぞかし邪魔でしょうけど、広い補給艦の上では小さく見えます。
       お、右舷側の給油管がカバーを外されてむき出しになっています。なるほどこういう形状なのか。両方見せ
      てくれるのはなかなか気が効いていますね。また給油管の先端部をはめ込んである木材は、先端部の形状にピ
      ッタリ合う様にくり抜かれてありました

       その後はラッタルを上がって艦橋へ向かいます。おお、今日は艦橋も公開しているとは。てっきり艦内の冷
      凍冷蔵庫や倉庫区画を見て終わりかと思っていたのに、これはラッキーです
       幾層ものラッタルを上って艦橋に向かいますが、途中あちこちにベンチが置いてあるのが不思議な感じ。と
      きわのお家芸である補給作業は長時間に渡る事が多く、その間見張りの集中力を切らさない様、合間に休憩を
      とれるように置いてある
そうです。

       また、内火艇の脇にあるベンチがロールケージで覆われていましたが、
       「ああ、あれはベンチを囲っている訳ではなく、内火艇の屋根になる幌を支えるフレームを纏めてあるだけ
      ですよ(笑)」

       との事。普段はめったに使いませんが、エライさん外部からのゲストが乗艦する際は、日よけ雨よけの幌
      を張る事もあるそうです。

       つづら折れのラッタルを上りきると、艦橋後部の旗甲板に出ました。おおお、こんな広い旗甲板は初めて
      キャッチボールぐらいはできそうだなあ。
       その外側にはM2重機関銃が銃架に乗せられ、実包付きで展示されていました。当然近寄れませんが、ぶ厚
      い防弾板
がものものしい雰囲気を漂わせています。水上小型標的への対処が主な目的ですが、話を伺った隊員
      さん曰く
       「いやこれ、全然当たんないんですよ(笑)。その代わりにめちゃくちゃ頑丈で滅多に壊れませんし、整備
      するのも楽なので(笑)」

       近くには洋上で行われた実弾射撃訓練の様子を撮影した画像が展示してありましたが、結構なうねりが出て
      いて、この状況で小さな目標に命中させるのは確かに大変そう
       またその手前には、2基のチャフロケット発射装置が。上空に微細なアルミ箔を大量に撒き散らし、迫って
      くるミサイルの電子センサーにエラーを発生させて艦を守る防御兵器です。一基につき6本の発射筒がひとま
      とめになっていますが、それぞれ微妙に角度をずらしてあるのは、広範囲に効率よくアルミ箔を撒き散らす為。

       さて、いよいよときわ艦橋へ。室内には家庭用エアコンが3機もついていて、なかなか快適。室内容積に比
      べると随分オーバースペックな気がしますが、灼熱のインド洋では冷やし過ぎ位に冷やさないと、隊員さんが
      もたない
んだろうなあ。
       おお、小さな子供が舵輪をぐるぐる回しています。普通はロープで固定してあるものですが、やっぱり回し
      たいよなあ、子供としては
。諸外国の海軍艦艇では今やトラックボールで操舵する艦も珍しくないそうですが、
      やっぱりいいですね、舵輪。

       航海中に当直士官が立つ位置につくと、目の前には巨大な補給ステーションが立ちふさがっています。かろ
      うじて隙間から艦首が見えますが、これは慣れるまで航海中の見張りが大変そう。
       よく見ると天井部には手すりがついていますが、
       「まあこの艦は殆ど揺れませんけどね(笑)。一応念のために」
       と隊員さん。さすが全長167m、頼もしい。

       左ウイングも気持ちいい位に広々。眼下に見下ろす前甲板は、まるで台風に屋根を吹き飛ばされた工場の様
      です。
       見張りが立つ位置には大きな天幕が張ってあり、これは護衛艦ではまず見ない装備品。大型艦相手の補給作
      業
では8時間を越える長丁場も珍しくないらしく、やはり日陰を作らないと危険ですね。
       「これ、インド洋派遣をきっかけに追加してもらえたんですよ(笑)」
       との事ですが、これは国内でもあった方がいい・・・。

       ちなみに給油作業の最中は、主機(エンジン)を除いて艦内は火気厳禁。調理作業も制限され、食事時間帯
      に作業がかかっている場合は予めお弁当を作っておくとの事。
       またこのテント、よく見ると中央が高くなる様にちゃんと角度がついていて、雨天の際にテントの真ん中に
      水が溜まって垂れさがる事はなさそう。インド洋のスコールとか、相当酷いでしょうからねえ。

       続いてはトップ、露天艦橋に上がってみます。おお、ここも広々!すぐ目の前には補給ステーションの先端
      部
が迫っていますが、よく見ると外側に向かってツノ状に突き出た部分にも、手すりステップがあります。
      メンテナンス等で一番上まで登る事もあるのか・・・ほとんど鳶職ですね。命綱があっても脚が竦みそう

       露天艦橋後部からは、南側の岸壁に停泊している護衛艦うみぎりを見下ろす事が出来ました。あの場所にい
      る艦艇をこの角度から見る事が出来るのは、でかい補給艦ならでは。ちょっと得した気がします(笑)。

       その後は、艦橋後部の通路から艦内へと降りて行きます。ラッタル真上には艦内神社があり、艦名を頂いた
      山口県宇部市の常盤湖近くにある常盤神社から頂いた、航海安全のお札が奉納されているそうです。
       お、途中にある司令室が公開されていますよ!これは珍しい。早速中を見てみると、まずは清潔な白カバー
      がかけられた応接ソファ冷蔵庫テレビモニターオーディオ機器が揃った司令公室。いかにもVIP区画
      らしく、簡素ながらも落ち着いた雰囲気です。ここで賓客をもてなす訳ですね。

       壁面には趣味のいい絵画も飾られていますが、何よりも有難いのは開いた丸窓から差し込んでくる太陽光
      こればかりは、艦長と司令だけの特権でしょう。
       その隣は司令居室で、木目調の内装と赤絨毯は公室と同様ですが、ベッドも机もぐっと質実剛健な雰囲気。
      海上補給隊の司令を務める一等海佐ともなれば、隊内でもかなり上位の役職です。もうちょっとそれに相応し
      い雰囲気
があってもいい気がしますが、これで贅沢を言ってはいけないんだろうなあ

       両袖の机の脇には大きな金庫があり、機密書類等が納められてあるのでしょう。あと、固定電話が3つもあ
      る
んですね。それだけ各方面への連絡や確認事項が多いのかなあ。
       居室の奥は、トイレと浴室の区画。司令専用の洗濯機もありますが、やはり司令といえども洗濯は自分で行
      う
様です。立派な一等海佐の階級章をつけた司令が、自分で洗ったパンツをちまちま室内干ししているところ
      を想像してしまいました(すみません)。

       それにしても、ベッドがやけに小さいのが気になります。これはキツイ姿勢を余儀なくされる司令もいるの
      では・・・。
       「確かにそうですねえ、今の司令は背の高い方なので、もしかしたらツライかもしれないです(笑)」
       と、説明係の隊員さん。ちなみに艦長室は、ここと全く同じ内容だそうです。

       最後は飛行甲板へ。大型輸送ヘリも楽々着艦できる広大な甲板の隅では、ときわグッズ販売テントが出てい
      ました。こうして見ると結構な人数が乗艦していますが、なにぶん艦がでかいので混雑した感じはありません。

       という訳で、一通りの見学を終えて上陸。いやあ、面白かったなあ。しかしよく考えると、もっとも補給艦
      らしい区画
である艦内の冷凍冷蔵庫や倉庫、サイドフォークが動く通路は公開してなかったなあ。
       そういう意味では、補給艦の個性を十分にアピールしたとは言い難いですが、普段その辺りはしょっちゅう
      公開しているので、たまには違うところも見せましょう!というときわの計らいだったのかも。艦橋や司令室
      を見る事が出来るとは思わなかったので、嬉しいサプライズでありました。


       時刻は11時少し前。テニスコートに設営された屋台広場はまだ空いていて、全体的に落ち着いた雰囲気。
      もっと混雑するかと思っていたのでちょっと拍子抜けです。今週末と来週末、計4回に渡って開催される阪神
      基地隊サマーフェスタ、いい感じに人出が分散されている模様です。
       のんびりゆっくりと見て回れるのは有難いのですが、例年の4倍もの仕事量を抱える事となった隊員さん達
      は大変だったのでは・・・。とは言え、正直言ってあまり空いているのも人気が無いみたいでちょっと残念
      気がするんですから我ながら勝手な言い分だなあ。
       続いては屋台を見て回ります。例によって朝食を抜いてきたのでお腹も減りましたし。ざっと広場を見て歩
      くと、鶏もも肉の炭火焼、オランダワッフル、牛串焼き、刀削麺、焼きそば、たこ焼き、鶏唐揚げ、フライド
      ポテト、サメサンド、カレーソーセージ、かき氷
といった陣容です。

       ・・・って、なんか一つ、おすまし顔で変なのが混ざっていましたよ。サメサンド?なんじゃそりゃ?吸い
      寄せられる様にサメサンドの屋台に向かうと、どうやらサメの切り身のフライロールパンにはさみ、たっぷ
      りのタルタルソースをかけたシロモノだそうです。
       サメ肉とはまた珍しい・・・と店員さんにお話を伺うと、どうやらこの屋台は先の東日本大震災で大きな被
      害をうけた宮城県気仙沼からの出店で、他にもフカヒレの加工品や海産物を販売しているとの事。
       試しにサメサンドを一つ購入してみますが、おおお、これはちょっと驚きの美味!さっぱりしているのにジ
      ューシーで、それでいて脂っぽさはまるでなく、ものすごく美味しい白身魚のフライです。これがサメとか、
      黙って出されたら分からないだろうなあ。

       個人的にフライにして一番おいしい魚は水質のいい海域で獲れた沖ボラだと思っていましたが、これは沖ボ
      ラに匹敵する味わいです。気仙沼は学生時代に一度だけ行った事があり、さんまのお造りの美味しさに目から
      鱗を落とされましたが、こんな隠し球を持っていたとは。もしかして、地元だけでこっそり楽しんでいた美味
      なんでしょうか?
       「いえいえ、気仙沼でサメの食べ方と言えばサメ100%のソーセージが一般的で、フライにする事はあま
      りないんですよ」

       へー、そんなものなのか。ちなみにこのサメ肉は、フカヒレを取った後のサメの肉を使っているとの事。ち
      ゃんとしたフカヒレ料理というものを食べた事がありませんが、このサメフライの味を知ってしまうと、果た
      してどっちがメインなのか分からなくなるなあ。
       たっぷりとかけられた自家製タルタルソースもサメフライによく合いますが、敢えて一言いわせて貰えれば、
      ウスターソース&カラシも用意してどちらか好きな方を選べる方が、より一層魅力的な商品としてアピール出
      来ると思いますね。私みたいな人間なら二つ買って両方食べると思いますし(笑)。

       ちなみにサメ肉には特有のアンモニア臭があり、生食には向かないとの事。また、放っておくとあっという
      間にニオイがきつくなるので、獲れた直後に船の上ですぐに解体、加工を済ませてしまうそうです。
       いやあ、ほんと美味しかったなあ。近年来場者の急増により、隊員さんの素人屋台が姿を消しているのが残
      念な阪神基地隊サマーフェスタですが、こういう珍しいものを食べる事が出来るのは、外部業者の屋台の強み
      
ですねえ。
       その後は厚生センター2階の売店へ。あれ?KOBEカレー食堂阪神基地隊本部風カレーを出しています
      よ。二日前に掃海艇つのしま風カレーを食べたばかりですが、折角なのでいっときましょう!
       本日はデラックスプレートはなく、カレー単品のみの販売。400円払ってさっそく頂いてみると、ほほう、
      これもまた実にオーソドックスな、正統派かつ王道をゆく味わいのカレーライスです。
       ただ、全部で5種類もあるKOBEカレー食堂のカレー、出来るだけ同じ条件でそれぞれを食べ比べてみた
      い
ので、今回は試食レポは無し。またいつか日を改めて、金曜日にデラックスプレートで食べに来たいですね、
      阪神基地隊本部風カレー。

       ちなみにここ阪神基地隊は金曜カレーによる海上自衛隊PRに非常に力を入れていて、少し前には掃海艇の
      現役給養員が講師を務めるカレー教室
なる素敵な催し物もあったそうです。
       残念ながら女性限定という事で私は参加できませんでしたが、もし次の機会があれば、女装してでももぐり
      込む
事も検討(はい、私とイベント等で会った事のある皆様、その様子を想像してお楽しみ下さい)している
      ので、阪神基地隊の皆様はくれぐれもお気をつけ下さい
       売店の隣にある大きな講堂は、休憩スペースとして開放されていました。そう言えば以前ここに、
       『半裸でうろうろするな!外部の人も来るんだぞ(怒)!』
       という貼り紙があった事を思い出しました。流石海上自衛隊、スマート第一とか言いながらもやる時はやり
      ますね!
とその時は感心させられましたが、その貼り紙がもうないという事は、阪神基地隊の隊員さん達も
      分とジェントル
になってしまったんですねえ。

       海の男ならではの男臭さとか荒っぽさがちょっとぐらい残っていてもいい気がしますが、今は護衛艦にも女
      性自衛官が普通に乗り込む時代なので、やはり世相にあった柔軟な変化が求められるのでしょう。
       隊舎を出ると、兵庫県のマスコットであるはばタンがうろうろしているところを発見。今日はまだ薄曇りな
      のでマシな方ですが、炎天下だったら倒れるんじゃないのかなあ、中の人は。

       それにしてもはばタン、よく見ると左右の靴の色がバラバラです。間違えて違う靴を履いて来ちゃったのか。
      寝ぼけてスーツ姿にスニーカーを履いて来た事に、出社してから気がついてしまった会社員時代の自分を思い
      出してしまいました。はばタンも相当なうっかり者の様です。

       再び屋台広場へ。うーん、せっかくなのでもう一品食べておきたいなあ。よし、この炭火の上でたまらなく
      いい匂い
を漂わせているハワイアンBBQってやつを行ってみましょう!
       しかしこの、気色の悪い幟はなんなんでしょう。酷いセンスだなこりゃ・・・と店主さんらしき背の高い白
      人に聞いてみると、
       「ネットで拾った」
       との事。いいのかそれは(笑)。

       という訳で一本500円のハワイアンBBQ、阪神基地隊名物のハンキダケ(勝手に命名)と一緒に撮影で
      す。冷めないうちに豪快にかぶり付くと、おお、これも美味い!スパイスは意外にも程々で、あくまでも鶏も
      も肉の臭みを消して肉の旨味を引き立てる役割
に徹している感じ。
       そして素晴らしいのがこの細やかな包丁の入れ方で、ガブリと噛みつくたびに骨から身がきれいに剥がれ落
      ちて、口元も服も全然汚れません。食べやすいことこの上無しです。
       隊員さんの素人屋台も、あれはあれで独特の個性と荒っぽい味わいに満ちていていいものですが、やっぱり
      こういう細やかな気遣いやプロの技は、その道の専門家ならでは。いやあ、あまりに美味しかったので、勢い
      のままにアルミ箔まで齧ってしまいました(笑)。

       ちなみにこの屋台、神戸市内のチキンキングというお店からの出店でした。これは是非一度お店の方にも伺
      ってみたいなあ。
       さて、お腹も落ち着いたところで護衛艦うみぎりに向かいます。うみぎりは妙に縁のある艦で、かれこれ5
      回目の乗艦
になるのかな?そろそろお昼時とあって皆さん屋台広場に集まっているのか、甲板上も程良く空い
      ています。
       近くまで寄って見たうみぎりは、ゴオオオオオという発電機の排気音を響かせています。先程のとわだに比
      べると遥かに小さい艦である分、排気音や振動が重量で殺されていないんだなあ。いかにもうみぎりが即応態
      をとっているみたいで、頼もしさを覚えます。

       という訳で、うみぎり乗艦。右舷の舷側通路を歩いて傾斜のかかった前甲板に出ます。振り返るとそこには、
      防弾板が施されたうみぎり艦橋が。
       海外派遣任務を機会に追加装備された防弾板ですが、お陰ですっきりしたきり型護衛艦の顔がやけにいかつ
      く見えます
ね。私が初めて体験航海で乗せてもらったのが同じくきり型の護衛艦ゆうぎりでしたが、あの頃は
      こんなのなかったんですよねえ。

       艦橋の手前にどんと構えているのはアスロック発射機。その前には、丸っこい76mm単装速射砲が睨みを
      効かせています。
       うみぎりの左隣には護衛艦とねが停泊していますが、こちらは主に国内の沿岸警備の任についている為、海
      賊対策の防弾板は施されていません。おかげでどこかすっきりと涼しげな顔に見えます。

       後部の短SAM甲板へ。シースパローが8発装填された巨大な発射機があり、その周囲の甲板が僅かにかさ
      上げされているのは、飛行甲板下部に配置された自動装填装置のレールが埋め込まれているため。8発全部撃
      ち尽くしたあとは、大きな扉部が開いて次の対空ミサイルを全自動で装填します。

       一層高い所にある飛行甲板には、SH-60J哨戒ヘリが展示されてありました。後継のK型が予算不足で
      なかなか数が揃わない中、まだまだJ型には現役で頑張ってもらわないと。

       整理整頓が行き届いた、がらんとした格納庫。艦幅はゆき型よりも僅かに広い程度ですが、きり型は艦幅ギ
      リギリまで格納庫を拡張させた
だけあって随分と広く感じます。その分天井が低い気がしますが、これぐらい
      の高さがあればSH-60の整備には十分なのでしょう。
       飛行甲板に半埋め込み状態になっているのは、ヘリコプターの発着艦を管制するLSO。イチゴのパックを
      逆さに伏せた様な、全面総ガラス張りの区画です。それだけにこの時期のLSO内部は地獄の蒸し風呂状態で、
      ささやかな空調設備も殆ど用をなしていないとの事。長時間ここで待機する事はないらしいのが救いですが、
      それでも大変だろうなあ。

       そのLSO内部には、天井から太いロープが吊り下げられていました。これは万が一の甲板での事故の際、
      床下のハッチをあけて一層下の艦内に逃げ込むためのもの。通常は横のドアから出入りしますが、変形して外
      に出れなくなった場合を想定しての設計だそうです。
       上空を覆っていた薄雲が切れ始め、夏らしい明るい陽射しが降りてきました。白い雲間から覗く真っ青な空、
      白い橋脚、青い海、緑の山並み・・・やっぱり阪神基地隊はいいですねえ
。都心部に近い基地で、これだけ美
      しい風景を誇るところはそうないでしょう。

       ここ阪神基地隊は阪神淡路大震災壊滅的なダメージを受けたあと、阪神圏の防災の拠点として生まれ変わ
      るべく大規模な改修工事を経て、現在は大型艦が入港できるようになりました。そういえば震災関連の写真や
      映像展示
を見ませんでしたが、見落としてたのかな?沢山の人を招いてのお祭りとはいえ、そういうところは
      きちっと押さえておいた方がいいと思うのですが・・・。
       「まあそういうのも確かに大事だけど、せっかく暑い中来てくれたんだから、今日は存分に楽しんでね!」
       という方針なのかもしれません。それはそれで明るい港町神戸らしくていいかもしれないなあ。大切な事は
      決して忘れず、そしていつまでも引きずらず・・・。

       例年なら一日で終わらせるサマーフェスタを週またぎで計4日間も開催したり、KOBEカレー食堂をオー
      プンしたり、金曜カレー教室を開催したり。阪神基地隊はあれこれと手を変え品を変え、いつも頑張っていま
      す
。そんな人達に触れる為、来年はさらに多くの人達がイベントに訪れる事を祈りつつ、阪神基地隊を後にし
      ました。




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