護衛艦あさぎり一般公開in大阪港桜島岸壁

2016.03.21



       地元大阪港で行われた、練習艦隊の一般公開に行って参りました。今回寄港したのはTV3508練習艦か
      しま
TV3518練習艦せとゆきDD151護衛艦あさぎりの3隻。そのうち護衛艦あさぎりにて、一般
      公開が行われました。
       ちなみに練習艦隊とは、海上自衛隊幹部候補生学校を卒業した初級幹部に対して、部隊への配属前に国内外
      への遠洋航海
を通じて実際の航海の中でしか学べない知識と経験、幹部自衛官に相応しい国際感覚を身につけ
      
させるためのもので、昭和32年から毎年実施されている非常に厳しい修学旅行みたいなものであります。
       一年間に渡って鍛えられてきた初級幹部約180名が、江田島を羽ばたいた後にまず最初に寄港してくれた
      のが地元大阪港という事で、祝日だったにも関わらず仕事を入れていた真面目な私も昼休みに無理矢理時間を
      作っての参加
となりました。いや、だって、寄港を知ったのが当日の朝でしたし。仕事場に糧食試食レポ用の
      コンデジを置いていて大正解でした(笑)。



 お昼休みにやってきました桜島埠頭。遅い時間
でピークは過ぎたのか、予想以上に空いています。
この方向だと逆光が厳しいですが、晴れてくれた
のは有難いなあ。
 ちなみに阪神基地隊HPでの告知では、当日の
公開艦は画像の練習艦せとゆきでしたが、急遽護
衛艦あさぎりに変更
になった模様です。
 大好きなゆき型に乗れなかったのは残念ですが、
こうしてあさぎりの優美で力強い姿を見れるだけ
でも嬉しいです。


 せっかくなので、まずはせとゆきから見て行き
ます。古い艦から退役が進み、年々顔ぶれが淋し
くなるゆき型護衛艦ですが、マストを頂点として
キレイな三角形を描く富士山の様なシルエット

精悍さと優美さを兼ね備え、今時の最新鋭の艦に
はない種類の美しさがありますね。
 現在はむらさめ型やあきづき型等の頼もしい後
続達
にその座を譲ってはいますが、ゆき型好きと
してはまだまだ頑張って貰いたいものです。


 練習艦せとゆきの部隊章。大きな翼を広げた鷲
が、小さな雛を守り育てています。
 このせとゆき、先代の東良子二等海佐(当時)
からバトンを受け継ぐ形で、昨年3月から川嶋潤
子二等海佐
艦長として指揮をとっています。
 なお今年初級幹部として乗り込んでくる193
名の幹部自衛官のタマゴ
のうち、今年は19名が
女性
との事。2代続けて女性艦長が指揮をとる艦
となった練習艦せとゆき、この鷲が逞しい母鷲
見える気がします。


 斜め後方から眺めた練習艦せとゆき。やはりゆ
き型はこの角度が一番映えますね。
 こうして見ても腰高なスタイルですが、基準排
水量3000㌧という小さな船体に、重武装
リコプター格納庫
を強引に盛り込んだ設計。今時
のすっきりした艦に比べると異様にゴテゴテして
見えますが、そういうところがたまりません。
 格納庫内に見える四角いものは、初級幹部の学
び舎となる実習講堂
。小さなプレハブ小屋です。   


 練習艦せとゆきの後方に佇む練習艦かしま。護
衛艦から艦種変更されたせとゆきとは異なり、
めから練習艦として建造された艦です。
 艦内には大きな実習講堂をはじめとした様々な
教育設備
が整い、艦橋やCIC、機関室は実習員
の収容を前提に最初からかなり広く設計
され、ま
海上の学校と呼ぶに相応しい内容。
 殆どの国の海軍では使い古しの艦を改修して練
習艦として使う為、いかに海自が幹部教育に力を
入れているかの表れですね。


 練習艦かしまの招待客用の舷梯木目調の歩板
と手すり
はピカピカに磨きあげられ、むしろ乗組
員用の舷梯よりも滑り易そう(笑)

 ちなみにこの練習艦かしま、様々な国を訪問し
ては現地のVIPを招待する外交の場として使わ
れる事も多い為、艦内の一部は高級ホテルと見間
違えそうな内装
になっています。
 また寄港先の要人を招いての会食の機会も多く、
かしまの給養員は海自でも指折りの腕利きが集め
られる
とか。ご馳走になってみたいなあ(笑)。


 大阪地本が誇るイメージキャラクターまもる君
この日の大阪港は快晴ながらも風が冷たく結構冷
えましたが、中の人は暖かそうでいいなあ(笑)。
 その分真夏の艦艇イベントでは相当な苦労を強
いられる様で、ラッタルしがみついて必死に乗艦
する姿は涙ぐましいものがあります(笑)。
 護衛艦には重量物を搭載する為のクレーンがあ
るので、あれで吊り上げて乗艦させてあげればい
いのに。絶対ウケると思いますね(笑)。


 岸壁には陸自の高機動車も展示されていました。
よく見るとバンパーに『大阪地本』とありますが、
地本にも高機動車ってあったんですか?と傍にい
た隊員さんに質問すると、
 「ああ、これは信太山駐屯地の車両なんですが、
今日は地本が借りる形で参加してますので(笑)。」

 との事でした。ちなみにこの車両、車幅はトラ
ック並
にあるのに目線は普通乗用車よりもちょっ
と高い程度
なので、慣れるまでは変な感じだそう
です。


 岸壁から見上げる練習艦かしま乾舷高いなあ。
基準排水量4050㌧ですが、5000㌧超のあ
きづき型より大きく感じます

 画面中央に写っている青い小船将官艇雨や
陽射しをよける為の
屋根つきで、文字通り海将
諸外国軍隊の将官国家元首といったVIP
艦に招待する際に活躍します。
 車で言えば社長が乗る日産センチュリーたい
なものですが、艦長は普通に作業艇を使います。


 かしまを通リ抜けてあさぎりに乗艦します。飛
行甲板にいるのはSH-60J哨戒ヘリ。主に
潜水艦・水上艦索敵
を任務としています。
 現在はより高性能なSH-60Kへの更新が進
められていますが、予算不足でなかなか数が揃わ
ず、J型の機齢延伸措置がとられています。
 ぱっと見でJ型とK型の区別がつきにくいです
が、ローターブレード先端が真っ直ぐなのがJ、
ウネってるのがK、機体左の窓が丸いのがJ、四
角いのがK、が目安でしょうか。


 飛行甲板に半埋め込み式のLSO(発着艦管制
室)。ガラス張りの小部屋で、ここで艦載ヘリの
発着艦をサポートしています。
 通常ここの椅子は一つだけですが、二つあるの
実習員の為のものでしょうか。
 気休め程度の空調はありますが陽射しを遮るも
のは無いに等しく、夏場は地獄の暑さに苛まれ、
冬場は鋼鉄製の甲板に囲まれるお陰で寒くて寒く
て仕方ない・・・
という大変な場所だそうです。


 あさぎり右舷に横付けされた民間の水船。甲板
をまたいでかしまに給水中です。ここ桜島岸壁に
は給水設備が無い為、こうして専門の船を呼んで
真水を補給します。
 思ったよりも径の小さなホースを使っていて、
巨大なかしまの真水タンクを満たすにはかなりの
時間がかかりそう
ですが、乗組員の人達は舷側に
腰掛けて、日向ぼっこがてらの雑談中。この日は
あさぎりの撮影ついでにカメラのレンズを向けら
れる事が多く、落ち着かなかったのでは(笑)。


 あさぎり艦首にそびえ立つ、76㎜単装速射砲
最近の汎用護衛艦のスタンダードとなった5イン
チ速射砲
に比べて威力的には見劣りしますが、最
大で100発/分もの発射速度を誇っています。
 陸上目標に向けて射撃する事はまずありません
が、そこそこの建物や装甲車を一発で木端微塵に
する砲弾が、100発/分もの速度で発射される事
を考えると、可愛らしい見た目とは裏腹にかなり
の実力を秘めた装備品であると言えますね。


 ふと海面を見ると、右舷喫水線下に装備された
バウスラスターが、ごんごんと回っておりました。
あれ?なんで?と傍にいた若い隊員さんに尋ねて
みると、
 「ほんとですね、何で今動いてるんだろ・・・」
これは隊員さんの勉強不足でも何でもなく、艦内
業務は各部署毎に高度に専門化
されているので、
余所が今何をやっているのか分からない・・・

いうのはごく普通の話。ある意味仕方のない事で
すね。


☆後日訂正:護衛艦にはバウスラスターはありません!管理人の世迷言です!☆


 艦橋手前のアスロック発射機。内部に8発の魚
があり、目標潜水艦が潜んでいる海面上空まで
ロケットブースターで打ち上げ、パラシュート
開いて着水した後は切り離された魚雷が海中を航
走し、自動追尾で目標潜水艦を追いかけ回します。
 発射機内のアスロックを撃ち尽くした後は艦橋
下部の弾庫から全自動で次弾が装填
されますが、
その装填ギミックも特撮っぽく実に味わい深いも
があります。


 煙突の間に設置された、ハープーン対艦ミサイ
。発射時の固体ロケット燃料による噴射を逃が
す為、お尻を外側に向けています。
 性能がほぼ同じ国産の90式艦対艦誘導弾(ハ
ープーンは米国製)との混載運用が可能で、キャ
ニスター(発射筒)の形状も同じなのが紛らわし
いですが、先端のフタにポッチがついている方が
90式艦対艦誘導弾
ですね。
 ちなみにハープーンとは、『捕鯨用の銛』を意
味します。


 左舷通路の三連装魚雷発射管。同じ魚雷でも、
こちらはアスロックより近距離にいる目標を攻撃
対象としています。
 充填された圧搾空気によって「あらよっと」
言わんばかりに波間に飛び込むその様子は、どこ
かユーモラスな雰囲気
を漂わせていますね
 時々発射筒側面の点検窓が開いたままになって
いる事がありますが、これは筒内の結露を防ぐ為。
チャック全開のまま歩いている迂闊なおっさん
たいで、妙な親近感を覚えてしまいます(笑)。


 あさぎりから見たかしま飛行甲板下のフロア
航海中に発生したゴミでいっぱいになっています。
寄港地毎にゴミの収集方法が異なるので、艦内に
は各地のゴミ分別方法リストが完備されています。
 生ごみはディスポーザーと呼ばれる大型ミキサ
でドロドロになるまですり潰し、水分は浄水処
理して投棄
する為、残りかすはごく僅かとの事。
 転じて味オンチゲテモノ喰いの隊員は、ディ
スポーザーというあだ名で呼ばれる
とか(笑)。


 飛行甲板の一層下にあるのはシースパロー発射
。潜水艦相手のアスロックとは違い、敵航空機
を迎撃すべく対空ミサイルを発射します。
 現在は甲板埋設式のVLSにとって変わられ、
護衛艦から姿を消しつつあります。
 夏場の体験航海では甲板に大きな日陰を作る
で、紫外線を気にする女性にモテモテ(笑)。さ
りげない気遣いが出来る渋いロマンスグレーと言
えるでしょう。先程の三連装短魚雷発射管とは随
分違うなあ・・・。


 甲板に延びた舫綱。ホーサと呼ばれています。
真っ白なホーサ
使いこまれたベテランホーサ
一緒にいるその様子は、多くの実習員が乗り込む
練習艦隊
を象徴している様。
 ちなみに『ホーサはエンド』という言葉が旧海
軍時代にありました。艦を係留する為にホーサを
引っ張る時は、列のエンド(後方)にいれば引く
フリだけでいいので楽ちん
、という意味(笑)。
この手の悪知恵は、やはり時代と洋の東西を問い
ませんね(笑)。


 飛行甲板に展示されていた、SH-60J哨戒
ヘリ
MAD(磁気探知機)のパイロン部に貼ら
れていた注意書きです。
 さわらないでください、(笑)
 後から来た若い女性二人が、
 「そのまんまやん(笑)!」
と突っ込みを入れていました(笑)。


 あさぎり飛行甲板から見た、かしま飛行甲板
低い屋根の庇が二重になって見えますが、これは
引き込み式の天幕。飛行甲板で来賓を招いてのレ
セプション
を行う際は、強い陽射しや雨を避ける
為にこの天幕を引っぱり出します。
 また飛行甲板の左右の通路が傾斜していますが、
これはオランダ坂と呼ばれる構造。甲板上に大き
な段差
があると構造上の弱点になってしまうので、
こんな風に坂道状にするそうです。



       あさぎりを一通り見終わる頃には、甲板におでんのいい香りが漂っていました。艦内の夕食は1630から
      と随分早いので、乗組員の皆さんはそろそろお腹が減ってくる頃でしょうか。さて、私も仕事に戻らなきゃ。
       それにしても、一般公開が行われたあさぎりは巨大なかしまの隣にいたので、岸壁からまともな画像を撮る
      事が出来なかった
のは残念だったなあ。ここ桜島岸壁と対岸の天保山岸壁を結ぶ連絡船に乗れば、海上からあ
      さぎりの姿を撮影出来たのですが、残念ながら時間が無く断念。
       って、後になって気付いたのですが、JRを乗り継がずに連絡船で撮影しながら天保山岸壁に渡り、そこか
      ら地下鉄で戻る方がよっぽど早かった
んですよね。とほほ。
       江田島での幹部候補生課程を無事乗り切った初級幹部の皆さんは、卒業と旅立ちの高揚感も冷めないうちに
      大阪で大いに羽を伸ばされたと思いますが、この後は国内各地を巡り、その後はいよいよ海外一周の長旅、遠
      洋練習航海
が待っています。そこでしか味わう事の出来ない様々な経験をたくさん積んで、全員ひと回りもふ
      た回りも大きく逞しくなって無事戻ってくる事
を期待しつつ、桜島岸壁を後にしました。




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