饗庭野分屯基地祭
2016.10.23
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滋賀県高島市に所在する航空自衛隊饗庭野(あいばの)分屯基地の創立記念行事に行ってきました。饗庭野
には第4高射群に属する第12高射隊が駐屯しており、敷地は陸自の饗庭野演習場に隣接しています。
この高射隊とは、我が国に進入してくる敵航空機を長射程から迎撃する部隊であり、大気圏内に再突入した
弾道ミサイルの最終段階での迎撃が可能になったPAC3ミサイルを発射できるペトリオットシステムを運用
している部隊のひとつが、ここ饗庭野の第12高射隊。最新鋭の防空システムの一角を担う、非常に重要な部
隊と言えます。
また全国にある航空自衛隊の施設の中でも、特に読みづらい名前の一つと当の基地司令が自負しているとい
う、極めてどうでもいい小ネタを持つ部隊でもあります(笑)。確かに普通は読めないよなあ・・・8710
中古車センターも目じゃないですね。
まあそんな事はどうでもいいとして、当日は朝ゆっくりめに自宅を出発。饗庭野は1000からの開門なの
で、大阪からの参加でもそれほど早起きしなくていいのが有難いなあ。それでも途中の道の駅で時間を潰しな
がら、0915に琵琶湖畔の臨時駐車場に到着。この時間でも車の数はまばらで、早くものんびりとした雰囲
気が漂います。
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その後乗り込んだシャトルバスは曲がりくねった山道を進みますが、こんなところを高射隊の巨大な車両群
が行き来するのか・・・。ゆっくり走っていても怖そうです。
という訳で、1010に饗庭野分屯基地に到着。お、さっそく屋台群を発見。数はささやかなもので、それ
ほど混み合う記念行事ではないのかな。その広場の片隅には、今や骨董品と言ってもいいナイキが雨ざらし展
示されていました。近くで見ると意外と小さいのですが、今時のシュッとしたミサイルに比べて遥かにミサイ
ルらしい見た目ゆえか、結構な存在感がありますね。
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同じ高射隊が所在する三重県の白山分屯基地と同様に、敷地内は勾配がきつく坂道が多いなあ。普段から駅
前までのバスが出ている訳もなく、山の中に閉じ込められた感はそこらの陸自駐屯地の比ではなさそう。その
分週末は町へ降りて羽を伸ばすんでしょうけど、そういう意味では営内居住の隊員さんは、陸自よりもむしろ
海自の艦艇乗組員に近い生活感覚になるのかも。
ライトグリーンの微妙にお洒落な隊舎、そして整備工場らしき建物の前はちょっとした広場になっていて、
ここが式典会場。開門から10分以上過ぎたのに、まだ閑散としています。
おっ、空包射撃展示を行うVADSがいますね。どの辺りにいれば撮影し易いかな・・・とウロウロしてい
ると、
「空包発射中はVADSの周囲はクローズされます。この辺りなら途中で移動せずに見る事が出来ますよ」
と、親切な隊員さんがわざわざ教えてくれました。
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さて、拠点も確保しましたし、まずは屋台行っときますか!まだ人気のない屋台広場ですが、ざっと見たと
ころ焼きいも、焼きそば、琵琶湖ラーメン、広島風お好み焼き、フランクフルト、唐揚げ、フライドポテト、
あと自衛隊グッズ販売。どれも外部からの屋台ですね。部隊の規模的に、これは仕方ないか・・・。
よく見るとココイチからの移動販売車両も来ていますが、さすがに外で普通に食べる事が出来るカレーをこ
こで食べたいとは思わないなあ。まずはご当地感のある琵琶湖ラーメンから行ってみましょう。
しかし琵琶湖ラーメン、店は開いているのに店員さんがいません。朝イチからお客さんは来ないだろうと踏
んだのかなあ。近江牛スープというのが興味深いし、近江牛すじ肉味噌煮込みもそそられますが、まさか勝手
に作ってお金を置いて行く訳にもいかないし・・・。
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さてどうしたものか・・・ん?鹿カレー?先程のココイチの移動販売の周囲に、『鹿カレー』の幟がはため
いていました。しかも天然?近江日野産?なんじゃそれは?
店員さんにお話を伺ってみると、どうやら琵琶湖周囲で増えすぎた鹿による作物や森林への食害を防ぐため
に、県内の猟師さん達が駆除した野生の鹿をジビエとして購入し、滋賀県内の幾つかの店舗でカレーにして提
供しているとの事。
へー、それは面白そうだなあ。地域性も十分ですし、地元大阪ではまず見る事のない食材です。これは試し
てみないと。
店員さんは色々喰いついてきた私に興味を持ったのか、鹿肉と福神漬てんこもりの特製カレーをサービスし
てくれました(笑)。ああ、ありがとうございますありがとうございます。という訳で初めての鹿肉カレー、
まずはひと口。
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ほほう、これはなかなか。みっしり詰まった赤身の肉質がスパイシーなカレーによく合って、食べ応えはか
なりのものですね。よく言えばクセのない味、悪く言えば個性に乏しい風味ですが、牛肉のそれとはひと味違
う、地味ながらも優しく穏やかで気立てのよさを感じる赤身の旨味。
もっと煮込みに時間をかければとろけるような口当たりになりそうですが、むしろこれぐらい噛み締め味を
残した方が、いかにも野生の鹿肉を食べている!という満足感があっていいですね。さすがココイチ。分かっ
てるなあ。
でかい鹿肉がゴロゴロ入って700円は破格です。この珍しいものを食べたヨロコビは、今日のこのイベン
トを一層思い出深いものにしてくれそうだなあ。それにしても、戦争遺跡を探して山の中を歩いていると野生
の鹿と遭遇する事がありますが、彼らは結構美味しかったんですね(笑)。
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店員さんのご厚意のお肉特盛りカレーでかなりお腹いっぱいになってしまいましたが、せっかくなのでもう
一品行っときたいなあ。という訳で、地元新旭町商工会からの焼きそばを購入。前回の徳島航空基地とは正反
対のさっぱりドライタイプですが、豚肉もキャベツもどっさりで、これもなかなかのお味。吹きつける強風に
かつおぶしをかなり持って行かれましたが(笑)、大いに満足して式典会場へ戻ります。
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まずは先程のVADS(バッズ)から見に行きましょう。このVADSとは、基地防空の最終ラインにあた
る対空機関砲で、20㎜機銃弾を毎分3000発もの速度で撒き散らし、低空侵入してくる敵航空機を追い散
らす守りの要であります。
操作は2名の隊員によって行われ、測距レーダーや弾道計算機、赤外線カメラを組み合わせた管制システム
により、高速接近してくる目標の未来位置を割り出して射撃する事が出来るというスグレモノ。
会場にでんと座りこんだVADSはてるてる坊主みたいなスカートを履いていますが、これは撒き散らす空
薬莢を回収し易くするためのもの。そう言えば、小松の航空祭ではこれがブブブブブって空包射撃してたなあ。
あの時は随分と離れていたので音しか聞こえませんでしたが、今日はかなり近い距離から見る事が出来るのが
楽しみ。
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6本の砲身がひとまとめになっていますが、正面からよく見ると微妙に崩れた六角形になっているのが分か
ります。砲身の長さも少しずつ違って見えますが、これは発射する機銃弾を一点に集中させるのではなく、あ
えてばらばらに飛び散らせて広範囲に弾幕を張るためにこうなっています。飛んでいる蚊をやっつける為の殺
虫スプレーと同じですね。レーザービームでは蚊を落とせませんし。
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工場内に展示されていたのは、空自の誇る待機車1号。現地展開後の待機が非常に長くなる高射隊には今や
欠かす事の出来ない、隊員さんの寝泊まり車両です。一見して地味なコンテナ付きトラックですが、内部の両
側には三段ベッドがずらりと並び、最大24名の長期間の宿泊が可能。跳ね上げ式のベッドや安っぽいカーテ
ン、殺風景なステンレス製の窓枠がまるで昔の寝台車を彷彿とさせて、ちょっと懐かしい気分です。
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出動命令が出た後は、いつ飛んでくるかわからない弾道ミサイルを24時間体制でひたすら待つ仕事なので、
この車両には常に誰かが横になって体を休めている訳です。地味な装備品ですが、ミサイルとの我慢比べで体
力負けしないよう、少しでも寝心地のいいベッドにしてもらいたいなあ。
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ちなみにこの待機車、当然のことながら冷暖房もばっちり完備。ただ作る方も気合いを入れ過ぎたのか空調
のパワーは強力で、隊員さん曰く
「夏は冷え過ぎて寒いですし、冬はもう汗かく位ですよ(笑)」
との事でした。
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他には大きなテント内で行われていた暗視眼鏡体験コーナーや、電源を必要としない磁石式電話を使った通
信体験コーナーがあり、多くの人が興味深そうに見入っています。
ふと見ると、迷彩服姿のでかいタヌキが子供達に愛想を振りまいています。なんだこりゃ、カワイイな(笑)。
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基地周囲は野生のタヌキが多そうですし、饗庭野分屯基地のマスコットキャラですか?と撮影係の広報の隊
員さんに訊ねると、
「いえ、これは滋賀地本のキャラクターなんですよ、ほら」
とタヌキくんの帽子をひょいとめくると、なるほど『滋賀地本』と書いてありました。あわてて帽子を押さ
えようとしているタヌキくんですが、頭がデカすぎて手が届いてません(笑)。
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このタヌキくん、正式にはしがぽん3兄弟の長男である陸ぽん。他に次男の海ぽん、三男の空ぽんがいるそ
うです。空自の分屯基地だから本来は空ぽんがいて然るべきですが、空ぽんの着ぐるみは現在鋭意制作中との
事。
ちなみにこの陸ぽん、欠点は『足が遅い』そうです(笑)。さらに海ぽんは『泳げない』、空ぽんは『高いと
ころが怖い』って・・・。うーん・・・まあカワイイから許そう(笑)。
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時刻は11時前。拠点に戻るとちょうど式典が始まりました。まずは本式典の執行者である第12高射隊長
兼ねて饗庭野分屯基地司令田中2等空佐が、開会のご挨拶。
やはり2等空佐がトップだけあり、部隊の雰囲気は若々しいなあ。それにしてもなんか変だなと思ったら、
会場に隊員さんは一人も整列しておらず、司令は100%見学者に向かって話しかけているんですね。
お立ち台もなければ黒塗り業務車両もなく、部隊の敬礼もなし。万事格式ばった陸自の式典に比べると肩の
力が抜けそうな風景ですが、お陰で全体的に明るくくだけた雰囲気に満ちていて、まるで司令主催の大きなホ
ームパーティーに招かれた気分。巨大な航空基地で行われる航空祭とはまた違った、これも空自らしいカラー
のひとつなんでしょう。
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「装備品の前には、説明役の隊員を配置しています。敬礼やって見せて!とかでも結構ですので、気軽にお
声をかけて下さいね。ただ、ちょっとミサイル撃ってみて!だけは無理ですので、宜しくお願いします(笑)」
なんて、陸の連隊長は言わないもんなあ・・・。そんなフランクな司令ですが、やはりこれはあくまでも見
学者向けの姿であり、普段隊員達の前では厳しい表情を忘れないに違いありません。むしろこんなニコニコ顔
の司令を見た饗庭野の隊員さん達は
「うわっ、うちの隊長あんな笑顔できたんだ・・・別の意味で怖ぇ・・・」
とか思っていたりして(笑)。明るい爽やかお兄さんみたいな基地司令の挨拶に、拍手が送られました。
その後は来賓の祝辞が続きますが、ある議員さんは、国防という崇高な任務に体を張る隊員達に対し、毀め
る様な事を平気で言う人がいる事について、いたく嘆いておられました。ああ、全くその通りです。
現状は少しずつマシになりつつあるとはいえ、まだまだ先は遠いなあ。私がHPでアホな事を書くのと同じ
位、議員の先生方には頑張ってもらわないと・・・いや、それじゃダメだろ(笑)。
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やはり空自の気風なのか、式典は至極あっさりと終了。すぐにオープニングラッパの吹奏と祝砲射撃が始ま
りました。
濃紺の制服に身を包んだ8名の隊員さんがやってきて、キビキビとした動きで会場中央に整列。ラッパが高
らかに吹き鳴らされた後に、3挺の64式小銃が3発ずつ祝砲を発射。見事オープニングを飾ったラッパ隊は、
拍手を浴びながら退場です。
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さて、この後はVADSによる空包射撃・・・というところで、富山県からやってきたSAA水兵さんと合
流。5月の新発田駐屯地以来の挨拶もそこそこに、動き始めたVADSにカメラを向けます。稼動音は意外と
静かで、電源を供給する発電機の方がうるさいぐらいですね。
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まずは砲身を上空に向けながらウイーンと旋回したあと、ブオーと大きな音を立てて砲身が回転。白煙を噴
き上げました。そして排出口から滝の様に吐き出される、金色の空薬莢。
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凄い迫力ですが、思っていたよりも発射音は小さいなあ。その後もVADSはくるくると動き回り、全部で
5回、計500発もの空包を発射して展示は終了。いやはや、流石毎分3000発。空薬莢が列をなして吐き
出されるのが凄かったですね。小銃の様にピンピン跳ね飛ぶのではなく、ざらざらざーっと滝の様に流れ落ち
る感じ。
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その後は偵察部隊による進入が始まりました。どうやらこのあと行われる高射隊の機動展開訓練の準備とし
て、展開予定地域周辺の安全を確保する様子を展示する様。
まずは第12高射隊の軽装甲機動車が、ゆっくりと前進してきました。停車した車内から降りてきたボディ
アーマー姿の隊員さん達は、すぐに周囲の安全を確認。厳しく警戒の目を光らせつつ、本隊に現着の報告を入
れています。
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そして後部ドアから飛び出してきたのが、饗庭野分屯基地の誇る警備犬ラブ号!力強く跳ね降りたあとはハ
ンドラー(取扱員)の指示に従って、一帯に潜んでいるかもしれない不審者や不審物の捜索を開始します。い
やー、カッコイイなあ。うちのだらしない三等猫曹とはえらい違います(笑)。
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しかしこの警備犬、普段基地にいる筈がない沢山の見学者が珍しいのか、
「ねえねえ!今日はどうして人がいっぱいいるの?」
と周囲が気になって仕方ないご様子(笑)。まあこれは警備犬として当然の反応ですね。車から降りたら周
囲が怪しい人だらけだったんですから。わんこに警備する演技をしろ、という方が無理な話です。
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とは言えハンドラーの傍にぴたりとついたラブ号は、すぐに落ち着きを取り戻して一帯の捜索を無事完了。
本隊に安全確保の報告が行われます。颯爽と引き上げて行く偵察隊と警備犬に拍手が送られました。パチパチ
パチ。
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続いては安全が確保された地域に高射隊の本隊が進入し、射撃陣地の構築を開始。大きな気合いとともに高
射隊の隊員さん達が駆け足で配置につき、まずは巨大なレーダー装置がやってきました。フェイズドアレイレ
ーダーを中心とした4つのレーダーを装備して、同時に多数目標の捜索・追尾及びミサイルの誘導を行える、
高射隊の目の役割を担う装置です。システム作動中は周囲が強力な電磁波で包まれるので、半径120m内の
立ち入りが禁止というのだから凄いなあ。
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レーダー装置が会場内を一周して所定の位置についたところで、電源車がやってきました。こちらは高射隊
の射撃陣地全体に電力を供給する車両で、人体で言えば心臓にあたります。150KWのガスタービンエンジ
ンを2基搭載していますが、150KWって、単位がデカすぎていまいちピンとこないな・・・と思っている
と、アナウンス係の女性自衛官が
「150KWとは、家庭用ドライヤーで約15万台ぶんに相当します」
と、実に生活臭い説明を入れてくれました。なかなか気が利いていますが、正直こちらも単位がデカすぎて
よく分かりません(笑)。
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続いては管制装置。一見してトラックの荷台にシェルターを搭載しただけの地味な装備品ですが、高射隊の
システム全般を遠隔操作で管制する、人体で言えば脳、護衛艦で言えばCICにあたる司令部区画。他の高射
隊や上級部隊と連絡をとりつつ最大8基もの発射機をコントロールする事が可能で、作戦中に唯一人が乗り込
む装置でもあります。
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と、ここで私の目の前に管制装置が停車。式典会場はそこそこ広いのですが、なにぶん一台一台の車両が非
常に大きいので、この場所にとどまっていては全体の様子が掴めません。よし、この後は機動的に撮影して回
るとするか!なんかこんなの久しぶりですね、ワクワクして来ましたよ!
電源車からは太いケーブルが引き延ばされ、各車両に接続。システムの立ち上げがテキパキと進められてい
ます。ちなみにこの電源ケーブル、一本で100㎏以上の重さがあるとか。それを操る隊員さんの様子から、
部内では『蛇(じゃ)踊り』と呼ばれているそうです。
さらにアンテナ・マスト・グループが進入開始。4基のアンテナを装備し、全長30mにもなるマストを5
段階に伸展させながら他部隊との音声及び高速大容量データ通信を行う、神経網にあたる装備品です。
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そしてペトリオットシステムの花形とも言うべき、発射機がやってきました。これは人体で言えば拳ですね。
それにしても凄い事になってきましたよ。6畳間にお相撲さんが6人ぐらい乱入して来たような感じで、広い
はずの式典会場が狭苦しくて仕方ありません。
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停車した車両からは隊員さん達が一斉に飛び出してきて、でかいタイヤに車止めを噛ませたりアウトリガー
を展長させたり、てきぱきと 発射準備を進めて行きます。
さらにその後方からは、ミサイル運搬車と重レッカが登場。ああ、なるほど。キャニスターを3本だけ搭載
した発射機に、もう1本搭載するんですね。
各装置があげる作動音にかき消されない様、隊員さん達は大声を張り上げて作業確認を行います。その様子
を撮影しようと、会場の周囲ではカメラを抱えた人達が右往左往。人が少なく訓練展示中にあちらへこちらへ
と場所を移動しながら見る事が出来た、昔の駐屯地創立記念行事を思い出すなあ。
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ミサイル運搬車上のキャニスターにとりついた隊員さんが荷台に固定するボルトを素早く外し、重レッカが
作業機を展開。慎重かつ迅速にキャニスターへの玉がけが行われます。ちなみにこのキャニスター1基で、弾
道ミサイルを迎撃できるPAC3ミサイルを4発搭載可能。一基あたり2トンもの重量があるそうです。
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ここでミサイル搭載指揮官である3等空尉の紹介が行われ、名前と防大の出身期、出身地がアナウンスされ、
最後は
「独身です!」
で締め括られました。緊迫感あふれる訓練展示の最中にどさくさ紛れに婚活要素を取り入れるあたりは面倒
見がいいというか抜け目ないというか、実に空自らしいなあ。どうせなら鉄帽も外して、素顔をアピールすれ
ばいいのに(笑)。
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あっという間にキャニスターが発射機に搭載され、群がった隊員さん達が固定作業を開始。重レッカと運搬
車、そして発射機から切り離されたトラックが撤収すると、発射機は4本のキャニスターをぐいんと持ち上げ
始めます。各部署からは大声で確認の号令が次々と入ってきました。
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管制装置からの指令を受けたレーダー装置とアンテナ・マスト・グループ、そして発射機がぎゅいーんと指
向し、さあ航空機でも弾道ミサイルでも来るなら来やがれ状態が完成。最後は部隊指揮官が機動展開の完了を
報告し、司令の返礼で機動展開訓練は終了。大迫力の展示に、会場からは大きな拍手が送られました。
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いやはや、陸自の青野原駐屯地のペトリオットシステムの展示に比べて会場の大きさの制約がキツそうでし
たが、会場周囲に立ち入り禁止区画がなく、人が少ないお陰であちこち動き回りながらいろんな角度から機動
展開の様子を見る事ができたのはよかったなあ。
おっと、この後は饗庭野分屯基地特製カレーの配布です!SAA水兵さんと配布場所目指して移動しますが、
辿り着いた時には既に長蛇の列が。あちゃー、出遅れた・・・。先着200名までとの事ですが、これはちょ
っと厳しそう。まあダメ元で並んでみますか。
しかしあと15人ほど・・・というところで残念ながら配布終了。隊員さんも一人分の盛りを少なくして出
来るだけ多くの人に行きわたる様頑張ってくれましたが、これは仕方ないなあ。またの機会を狙いましょう。
ただ、整理券を配布する等のひと工夫があっても良かった気がしますね。
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敷地の一角には、巨大なブルーインパルスT-4のエアドームがありました。へー、こんなのもあるのか。
よく見るとあちこちにサインが書いてあり、『#1』とあるのは一番機のパイロットかな?何故か岐阜地本部
長のサインまでありますが、恐らく元ブルーインパルスのパイロットかと思われます。おっちょこちょいな地
本部長がついサインしてしまった・・・とかだったらステキですが、さすがにそんな私みたいな地本部長はい
ないと思いたいなあ(笑)。
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その後は屋台広場に移動して、朝食べ損ねた近江牛ラーメンを。近江牛でとったスープはしっかりとしたコ
クがありながらもさっぱりとしたあと口で、細めの中華麺とも相性いいですね。鶏ガラ醤油味の伝統的なラー
メンとはまた違う、地味でシンプルな中にも「おっ?」と思わせる味わいでした。
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その後は式典会場に展示されている高射隊の車両を見て回ります。レーダー部を展開したレーダー装置です
が、大きなフェイズドアレイレーダーを近くで見ると、小さなレーダー素子が5000個以上も集まったイボ
イボレーダー群なのがよく分かりますね。この上で寝転がったら気持ちよさそうですが、多分怒られる程度で
は済まないだろうなあ・・・。
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機動展開訓練が終了した時点で多くの人が帰ってしまったのか、閑散とした会場は撮影し易くて有難いなあ
・・・と思っていると、んんんん~?なんか変なのがいますよ?変色したマヨネーズみたいな被りものをした
人がウロウロしていますが、何だありゃ。
傍にいた隊員さんに訊ねてみると、この基地内をうろついている謎の人物びわこさんとの事。
「いやあ、どこから来たのか普段何してるのか、私もよく分からないんですよ・・・」
おおらか過ぎるぜ饗庭野分屯基地・・・。よく見ると、顔が楽器の琵琶の形をしています。となると、縦に
走っているのは弦なのか。てっきり福知山駐屯地のあの人達(2010年の福知山駐屯地創立60周年記念行
事のレポを参照。リンクはあえて設定しません(笑))みたいに、鼻フックをしているのかと(笑)。しかも
弦をとめる部分はミサイルの形をしているし、やけに芸が細かい不審者だなびわこさん・・・。
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記念撮影をお願いするとノリノリでピースしてくれましたが、不審人物のくせに立ち姿が妙に生真面目なの
が笑ってしまいます。すっかり自衛隊の水に馴染んでいる模様(笑)。
その後は再び屋台広場に戻って、警備犬の訓練展示を見学します。すぐ目の前でやるのかと思っていました
が、残念ながら金網越しの展示。カメラのピントが合わせづらくて大変ですが、万が一を考えるとこれは仕方
ないか。この金網がなかったら、不審者オーラ全開のさっきのびわこさんを追いかけ回しそうですし・・・。
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という訳で始まった航空自衛隊わんこショー。まずは司会者が、警備犬とハンドラー(取扱員)、助手2名
を紹介します。本日の警備犬はモモ号、3歳のメスのシェパードです。人間で言えば28歳ぐらいにあたり、
警備犬としてこれから脂の乗ってくる年齢だそうです。
それでは訓練展示開始。まずはハンドラーの左横にピタリとつき、ペースを合わせて一緒に歩く訓練。基地
周辺警備の基本ですね。
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続いては駆け足。普通に走れば人間が犬に叶う訳ありませんが、訓練されたモモ号はハンドラーのペースに
合わせて走っています。
その後はその場に座って待機させたり、待機の状態から遠くに移動したハンドラーのもとに号令一つで走ら
せたりと、様々な基本訓練を披露。沢山の見学者に囲まれながらもモモ号は常にハンドラーの次の命令を注視
し、まさに犬と人間だけの世界ですね。
また、ハンドラーはひと動作終わるたびにモモ号を呼び寄せてよく出来ましたの印である顔ぐりぐりを欠か
さず、モモ号はめちゃくちゃ嬉しそう。この辺りは犬も猫もいっしょなんだなあ。
![](2016aibano54.jpg)
続いてはその場に立ったまま待機。意外な事に、警備犬の訓練ではこれが最も難しいそうです。ハンドラー
がその場待機を命じると、モモ号は座ったまま微動だにせず。ハンドラーが歩いて遠くまで行ってしまっても、
追いかけることなくその場にじっと座り続けます。
そして戻ってこいの号令とともに、モモ号は一目散にハンドラーの元へ。凄いな、こんなのどうやって教え
込んだんだろう。うちの三等猫曹なんて、洗濯物干すから手伝えって言っても知らん顔して寝てるのに・・・。
会場からはパチパチと拍手が贈られました。
「いやあ、内心僕もドキドキしました。成功してよかった(笑)」
と、司会役の隊員さん。
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次はハンドラーが投げたものを取りに行く訓練。さらに三本立てたカラーコーンの中に隠した不審物を探す
訓練。これは爆発物捜索の他に、被災地での人命救助でも活用されるそうです。どのカラーコーンに隠したの
か分からない様、ハンドラーとモモ号を一旦退場させた司会者ですが、隠すコーンを見学者のお子さんに選ん
でもらった時に、
「それでは、緑色のコーンに隠しまーす!・・・あ、しまった、マイクで言っちゃった・・・」
とやらかしてしまったうっかり者の司会者に、会場からは失笑が沸き起こりました(笑)。
その後解き放たれたモモ号は、それぞれのコーンの匂いを嗅ぎながらくるくると歩きまわり、緑色のコーン
を蹴り倒して見事不審物を発見。今度は会場からは称賛の拍手が送られました(笑)。
さらに続いて、障害物の中に隠れた人を探す訓練。
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「本日は、不審者を隠す為の鋼鉄製の箱を用意しましたー!」
と得意げに自慢する司会者ですが、凄いな、どう見ても段ボール箱にしか見えない鋼鉄の箱です。しかも折
からの強風で片っ端からバタバタ倒されてるし(笑)。必死に錘を噛ませて鋼鉄の箱を支える隊員さん達に、
再び失笑が沸き起こります。ああ、いい感じだなあ、この緩さ(笑)。
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なんだかんだでどうにか段ボ・・・もとい鋼鉄の箱を立てる事に成功し、隊員さんが緑色の箱に隠れます。
それまで見えない所にいたモモ号が戻って来て、捜索開始。
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ダッシュで駆け寄ったあと、それぞれの箱をクンクンと嗅ぎ回るモモ号。そして確信に満ちた表情で緑色の
箱にわんこタックル!見事不審者の発見に成功し、会場からはまたしても大きな拍手が送られました。
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モモ号はハンドラーのもとに駆け寄り、『ねえねえ、いたよ!いたよ!』とばかりにくるくる走りまわって
います。ハンドラーがご褒美に頬を撫でると、もうモモ号のテンションは上がりまくり。警備犬の訓練では上
手く出来た時はきちんと褒めて、達成感を覚えさせるのが大事だそうです。司会の隊員さんいわく、
「皆様の中に犬を飼っている方がいたら、いい時はとにかく褒めて、悪い事をした時はきちんと叱ってあげ
てくださいね!」
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そして最後は、警備犬の戦闘訓練展示とも言うべき『襲撃』の展示。ここで不審者役を務める片袖防護衣を
着用した助手がやって来て、
「オラオラオラオラー!かかって来いやオラオラー!」
と、モモ号とハンドラーを挑発。モモ号は姿勢を低くとり、今にも襲い掛かりそうな態勢です。
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「これまで楽しい楽しい!だったモモ号のスイッチを、今から入れまーす!人を襲う為のスイッチでーす!」
と、大変恐ろしい事をニコニコ顔で言う司会者。そしてハンドラーの号令とともにモモ号は一直線に走り出
し、不審者に飛びかかります。右手に噛みついたまま離そうとしないモモ号に、慣れている筈の助手も完全に
腰が引けた状態。そりゃそうだろうなあ。
ハンドラーが間に入り、不審者への襲撃は見事成功。いやー、さすが訓練されたシェパード。迫力ありまし
た。普通なら襲撃の前に警備犬が低く身構えた時点で、もうギブアップでしょう。
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その後は同じ状況をハンドラーのリード無しで行う、フリーと呼ばれるパターンの襲撃。こちらも見事に成
功させて、大きな拍手を浴びながらモモ号とハンドラーは退場・・・と思いきや、ここでナイフを持ったジャ
ージ姿の不審者が乱入!ハンドラーの命令を受けたモモ号がすかさず飛びかかり、噛みついた右手を振り回し
て不審者を確保します。
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「放せー!イテテ、や、やめてー(泣)!」
と半泣きになる不審者、決して許さないモモ号、さすまたを構えてニヤニヤ顔の助手・・・。饗庭野地獄絵
図が目の前で展開しております(笑)。
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結局不審者はなす術なくモモ号に引きずり倒され、助手がさすまたで地面に縫いつけます。ハンドラーの
「やめーい!」
の号令でモモ号は落ち着きを取り戻し、最後のおまけ劇場は終了。いやあ面白かった!パチパチパチ。
![](2016aibano66.jpg)
さて、なんだかんだで一般公開もあと30分ほど。饗庭野は1000~1400までなので、あっという間
ですね。もっともこの頃には気温はぐっと下がり、冷たい風が吹きすさぶ基地内にいる一般見学者の姿はまば
ら。さて、そろそろ撤収しますか。
以前訪れた三重県の白山分屯基地同様に、もの凄い山の中にある分屯基地は独特の神秘的な雰囲気がありま
した。普段から人里離れた場所にいる反動なのか空自のカラーなのか、隊員さん達も非常に親しみやすい雰囲
気でしたし、これからは各地の空自分屯基地も積極的に見て回りたいなあ。臨時駐車場までシャトルバスで戻
り、SAA水兵さんと来月の再会を約束して帰路につきました。
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