豊川駐屯地創立65周年記念行事

2015.11.21



       愛知県に所在する豊川駐屯地の創立記念行事に参加して来ました。豊川駐屯地には第10特科連隊第10
      高射特科大隊を中核として第6施設群第49普通科連隊、各部隊の直接支援中隊(隊)会計隊基地通信
      中隊
警務隊業務隊の他に愛知地本の総合事務所までもが駐屯するという、非常にバラエティ豊かな顔ぶれ
      が揃っています。
       ちなみにこの豊川駐屯地、戦前は東洋最大規模とうたわれた旧豊川海軍工廠の跡地の一部を使って設立され
      たとの事。陸軍ではなく、海軍の敷地跡に作られた駐屯地というのは、随分珍しい気がしますね。
       また、49普通科連隊即応予備自衛官で構成されており、東日本大震災をはじめとした数多くの災害派遣
      任務
で大きな実績を挙げている事でも知られています。
       当日はまだ暗いうちに自宅を出発し、高速道路を目まぐるしく乗り継ぎつつ0740に豊川駅東立体駐車場
      に到着。今回は駐車スペースが用意されていないので、こちらに車を預けます。
       そこから少し歩いて、0800に駐屯地到着。豊川駐屯地は駐屯地と式典会場が国道を隔てた別の場所にあ
      る
為、正門前にいる開門待ちの人達は数える程。旧正門前には戦車体験搭乗の整理券を求める列が出来ていま
      すが、それには目もくれず式典会場となる訓練場目指して歩きます。

       ほどなく式典会場に到着。この時間から既に観閲スタンドに人が入っていて少し焦りましたが、広い一般席
      には20人程が散らばっているだけ。ホッとしながらそばにいた隊員さんに訓練展示の流れを確認し、観閲ス
      タンド左側
に場所を確保します。この駐屯地の主役である155㎜FH-70榴弾砲は会場右側に展開するそ
      うですが、初参加なので左側から全体を見渡す無難なポジショニングを選択。FH-70はでかいので、撮影
      は望遠レンズがあればなんとかなるでしょう。
       駐屯地の開門まではまだ時間があるので、式典会場を見て歩きます。それにしても、随分と長閑な雰囲気だ
      なあ。三重県の久居駐屯地にちょっと似ていますね。名古屋という大都市に近い立地なので、もっと混雑を予
      想していましたが、関西圏のイベントとは少し違った雰囲気。ここしばらく空模様の悪い日が続いたせいか地
      面はぬかるんで歩きづらく、これは観閲行進が大変そう。

       国道に面したところには松の木が沢山植えられていて、よく見ると木肌に直で赤スプレーを噴いた跡が幾つ
      もありますが、なんだろうこれは。何かの基準線かと思いましたが、高さが一定じゃないし・・・気になった
      ので近くにいた隊員さんに訊ねてみると、
       「ああこれは多分、剪定しなきゃいけない木の目印だと思いますよ。これら一本一本が国の財産なので、勝
      手に伐ると怒られるんです(笑)」

       なるほど、組織がこれだけの規模になると抱える物品の数も膨大になり、それらをきちんと管理するにはど
      うしても面倒な書類仕事が増えるんでしょうね。しかしその割にはスプレーで直に目印って(笑)。この微妙
      に矛盾した繊細さと豪快さ
が、なんとも陸自らしい気もします。

       右側一般席に行ってみます。こちらは訓練展示でFH-70榴弾砲の真横になるポジションなので、場所を
      確保している人達のマニア度がかなり濃い様な・・・。撮影機材も高価っぽいですし。
       しばらくすると、国道を挟んで向かい側にある駐屯地から国旗掲揚ラッパが鳴り響いてきました。そこら中
      にいる隊員さん達は国旗に向かって姿勢を正しますが、一部の隊員さんは座ったまま。現在進行形で何らかの
      配置についている隊員さんは、そのままでもいいんですね。

       その後は駐屯地正門前へ移動。駐屯地内ではハッピ姿の隊員さん達が忙しげに動き回り、見ているだけで腹
      が減ってきます(笑)
。0900の開門と同時に駐屯地に突入し、素早く屋台を攻めた後は部隊の整列が始ま
      る0930までに式典会場に戻る予定なので、屋台で使える時間は20分位か。まずは午前のうちに2品程、
      訓練展示終了後にもう1品・・・ってところかな。
       それにしても滅茶苦茶広いですね、豊川駐屯地。とは言え、これでも旧豊川海軍工廠の敷地の1/6にも満
      たない
らしいのですから、その規模の巨大さが偲ばれます。往時を偲ばせる古い建物とか、残っていたらいい
      なあ。
       そうこうしているうちに開門10分前。ああ、このワクワク感がほんと久しぶり。陸自駐屯地は昨年11月
      の山口駐屯地以来一年ぶり
なので、ちょっと緊張してきましたよ(笑)。

       そんな事を考えつつ、まるで巨大な極秘レーダー施設の様な隣接するコニカミノルタの工場を眺めていると、
      0900開門。初めての豊川入りです。まずは屋台広場に向かいますが、広大な敷地面積を誇る豊川らしく、
       屋台広場も実に広々。ざっと見たところ射的輪投げメリカンドッグ焼きそばセセリ炭火焼ポッ
      プコーン
ラーメンフランクフルト焼きラーメン。あと地元豊川観光協会から出店の稲荷寿司ういろう
      のお店、近隣の道の駅からは地元野菜の即売所が出ていました。
       稲荷寿司はすぐ近くにある豊川稲荷にあやかったらしく、地方色がいい感じですが、隊員さんの屋台じゃな
      かったのが残念。まずは第10特科連隊第4科が出している焼きラーメンから行ってみましょう!

       300円払って受領した焼きラーメンですが、ほほう、これはなかなか。パッと見でシンプルな塩胡椒味か
      と思いきや、とんこつスープっぽい味わいがあって美味しいなあ。僅かにカツオ出汁の様なテイストも感じら
      れますが、もしかしたら沖縄そばのタレを使っているのかも。
       鉄板で焼かれた豚肉は香ばしく、その脂を浴びて炒められたキャベツもしゃきしゃきの歯応え。中華麺はパ
      リッと焼かれた部分と柔らかく蒸し上げた様な部分があり、一口ごとに口の中でモザイク模様を描いている様。
      ああ、これはビールが欲しくなる・・・
       テント内では野外炊具2号(改)が3台連結され、それぞれを受け持つ隊員さん達が流れる様に焼きラーメ
      ンを作っています。しかしこの野外炊具2号(改)、よく見ると3台それぞれの空気取り入れ口の開き具合が
      違っている
んですね。燃料供給コック以外にも、この部分の開放加減で酸素供給量を変えて火力を調節してい
      る
様ですが、これは作る人それぞれのこだわりなんでしょうか。

       向かって左側の隊員さんは開口部をぐっと絞り、弱火で蒸し上げた様な滑らかな食感を作り出しているのか
      もしれません。対照的に右側の人はほぼ全開で、最初から最後まで火力にものを言わせた豪快な作り方なのか
      なあ。
       そして最もこだわりを感じたのは、中央の隊員さん。開口部の半分を全開に、もう半分を絞っていて、一枚
      の鉄板を高温部と低温部に使い分けている様です。
       一見して全員同じ材料で同じ焼きラーメンを作っている様で、実はそれぞれに個性が異なった三者三様の味
      わい
を展開しているんですね。凄いぞ第10特科連隊第4科!ちなみに私が食べているのはどれなんだろう。
      これは是非3つ並べて食べ比べてみたかったなあ。

       続いては焼きそばの屋台へ突入です。うーん、駐屯地焼きそばも一年ぶりか・・・。そんな感慨に浸ってい
      ると、売り子のWACがマヨネーズのあるなしを聞いてきました。ほほう、そんな細やかな対応をするとは。
      これは嬉しい気遣いですね。
       で、出てきた焼きそばですが、これも豚肉は香ばしくカリッと焼かれ、緑色も鮮やかなキャベツは脂を浴び
      てツヤツヤテカテカ
の炒め上がり。べたつきの無いさらっとしたソースはやや甘めで、細切り紅ショウガが
      と口毎のアクセントに濃淡
をつけています。みじん切りの紅ショウガも均一感があっていいですが、私的には
      細切り紅ショウガならではの不規則的な味の変化が好み。青ノリの香りもよろしく、これも実にビールが合い
      そうな一品でした。

       さて、お腹も落ち着きましたし、そろそろ式典会場へ戻るか・・・と思ったら、第49普通科連隊第5中隊
      の屋台から、炭火でセセリが焼かれるたまンない香りが。小さなコンロ4つでセセリを焼いていますが、この
      ささやかな火力で押し寄せるお客さんに対応出来るのか不安
になります。よく見るとテントの奥の方にも焼き
      場がありましたが、これは訓練展示が終了する昼以降は修羅場になるな・・・。よし、空いている今のうちに
      これも食べちゃえ(笑)!

       400円払って受領したセセリ炭火焼は、残念ながら保温容器から出てきた焼き置きでしたが、それでもパ
      ックを素手で持つのがキツイ程の熱々さ。炭火で焙られた表面はパリっと、内部は噛みしめるほどに肉汁が溢
      れ出るジューシー加減で、強めの塩胡椒が全体をぎゅっと引き締めているのもたまりません。

       そしてパックの底にも黄金色の肉汁がたまっていて、人目もはばからずすすってしまいます(笑)。いやー、
      この肉汁だけで缶ビール一本いけますね(笑)。ほんと美味かった!それにしてもこの、焼いた後に保温容器
      で少し寝かせた味わいが絶妙
です。炭火による強火でカリカリに焼かれた後に、自身の熱で軽く蒸した状態
      
なっていて、これは心憎い仕事ぶりだと言えるでしょう。豊川の屋台のレベルはかなりのものでした。
       この頃になると、普通科の人達があちこちで整列準備を開始。続々と式典会場に移動して行きます。さて、
      私も観閲スタンドに戻るとしましょうか。

       0930、式典会場に戻ります。さすがにそれなりの人が集まっていますが、観閲スタンドのあちこちにま
      だ空席がありますし、階段通路の立ち見もいません。本当にのんびりなんだなあ、豊川。
       私の左隣も空席でしたが、そこに入りたそうな人がいたので少し右にずれて場所をあけると、右隣のオジサ
      ンもちょっとだけ右に移動。お礼を言うと、
       「いやいや、お互い様お互い様」
       どの駐屯地も見学者が押し寄せて人で溢れる様になったここ数年ですが、やってきた人達が一人でも多くイ
      ベントを楽しめる様、心はこのオジサンの様にありたい
ものです。
       そうこうしている間にも、式典会場奥の車両の周囲に戦闘服姿の隊員さんが続々と集まってきました。さら
      に音楽隊が会場中央に移動してきて、いよいよ部隊の入場。普通科の特科・高射特科の山吹マフラーが、
      この時期だと紅葉を思わせるのが面白いなあ。

       続いて各部隊の指揮官が入場し、さらに観閲部隊指揮官を務める第10特科副連隊長がパジェロで登場。部
      隊は敬礼を執り行います。
       その後は第10師団長と豊川駐屯地司令からの感謝状受賞者の紹介が行われ、続いて式典参加部隊の紹介が
      始まりました。会場向かって左から第10音楽隊(守山)第49普通科連隊第10特科連隊第10高射
      特科大隊
第6施設群、各科の直接支援中隊駐屯地業務隊基地通信中隊会計隊

       その後は少しが空きます。整列した後は何もない展開に、観閲スタンドのあちこちから
       「なんで式典止まってるの?」
       という不満げな声が聞こえますが、これは整列した状態で微動だにしない部隊の規律の厳しさと練度の高さ
      
を表しているのであり、運営の段取りが悪くて無駄に間が空いている訳ではないので、何卒ご理解頂きたいも
      のです。
       ややあって、本式典の執行者を務める第10特科連隊長兼ねて豊川駐屯地司令上田俊博一等陸佐が黒塗りの
      業務車で到着。執行者は登壇し、部隊は敬礼

       部隊が小銃への着け剣を行った後は、国旗が入場。来場者も脱帽と起立で迎えます。もちろん体の弱いお年
      寄りや小さな子供を抱えたお母さんはその限りではありませんので、心の中での起立、脱帽で十分。
       ちなみに本式典で旗手を務めるのは、第10特科連隊第1大隊第1中隊の鈴木2曹。凛としたまなざしで前
      方を見据え、キビキビと登壇しますが、この大役を任される以上は基幹隊員のエースというか、部隊では誰か
      らも一目置かれる存在
なのでしょう。

       音楽隊が国歌『君が代』を厳かに演奏する中、部隊は国旗に対して捧げ銃(ささげつつ)。その後国旗が降
      壇し、部隊は取れ剣。アナウンスが来場者の着席を告げ、なんとなくホッとした空気が会場に漂います。
       続いて執行者による巡閲が行われ、国旗とともにパジェロに乗り込んだ上田一等陸佐が隊員達の前を粛々と
      巡閲開始。合わせて各中隊旗が高く掲げられ、大きな号令とともに切れる様な敬礼を交わして行きます。

       登壇した執行者による式辞が披露されたあとは、来賓による祝辞が始まりました。その中に、
       「われわれ三河の人間にとって、隊員さん達は誇りです」
       という言葉がありましたが、そうか、この辺は三河っていうんですね。余所の地方の駐屯地に遠征すると、
      こういうのが新鮮だなあ。そして来賓祝辞3番手は佐藤正久参議院議員。おお、豊川まで来ているとは。
       現状では国民の生命や財産が失われるまで、自衛隊は手を打つ事ができません。万が一の時にはもっと自衛
      隊員がその持てる力を発揮できる様、私は政治を変えて行きます・・・
という熱い祝辞は、やはり来賓の中で
      も群を抜いて聞かせるものがありました。

       「私は私の分野で、しっかりと汗をかいて行きます!」
       といういつもの熱い締め括りに、会場からは拍手が贈られました。ちなみに佐藤議員が紹介された時、小さ
      な子供を連れた若いお母さんが
       「あっ、ヒゲの隊長さん来てるよ!」
       と言っていたのが印象的。見たところマニアでも何でもなさそうな普通の若いママさんですが、佐藤議員も
      すっかり有名になりましたね。自民党国防部会長防衛大臣政務官と、これまで要職を歴任して来た佐藤議員
      を見ていると、
       『栄達しか頭にない侍はダメだが、栄達を全く考えない侍も同じぐらいダメである』
       という葉隠(だったかな?)の一節を思い出します。本当に能力のある人が出世して高い立場に立てば、こ
      れまでよりも大きな仕事を通じてさらに社会貢献を果たす事が出来る・・・
という内容です。佐藤議員にとっ
      て出世して有名になる事に大した意味はないかもしれませんが、もっと大きくもっと高い場所で顔と名前を売
      って、日本の為にその力を発揮して頂きたいものです。

       その後は4人目5人目の来賓祝辞が披露され、会場には『えー、まだ続くの・・・』というざわついた空気
      が漂います。その気持ちは分かりますが、記念式典とはそもそもそういったものであり、我々はあくまでもそ
      れを見せてもらっている立場。派手な観閲行進や訓練展示が待ち遠しいのは当然ですが、祝辞を披露している
      来賓に対して不快な思いをさせるのは、来賓を招いた豊川駐屯地の顔に泥を塗り、恥をかかせる結果になって
      しまいます。

       折角多くの人達が自衛隊のイベントに足を運ぶようになったのですから、一般見学者も、招かれてやってき
      た人も、そして受け入れる駐屯地も『式典に来てよかった』『式典を行ってよかった』と思える様な一日にし
      たいものです・・・とまあ、たまにはまともな事も言ってみましょう(笑)。あまりいつもの調子だと、その
      うちアホだと思われそうだからなあ(もう手遅れか?)。

       その後は寄せられた祝電の一部が披露され、部隊は一旦退場。観閲行進の準備に入ります。まずは第10音
      楽隊
が先頭を切り、観閲壇正面についたところで観閲部隊指揮官が座乗する第10特科連隊の指揮通信車が通
      過。続いては第49普通科連隊がやってきましたが、いずれの中隊もパジェロ、高機動車、軽装甲機動車に乗
      車した状態で徒歩行進はなし。これが49普連のいつものスタイルなんですね。重迫撃砲中隊からは120㎜
      迫撃砲RT
を牽引した高機動車が続きます。

       第10特科連隊からは情報中隊のパジェロ偵察オート、通信関連のシェルターを乗せたトラック対砲レ
      ーダ装置
。そして各大隊からの155㎜FH-70榴弾砲を牽引した7tトラックが延々と続きます。やはり
      特科連隊の駐屯地、これだけ数が揃うと迫力ありますねえ。

       そのFH-70ですが、よく見ると脚部に龍城碧南岡崎といった愛知県下の地名が書かれています。各
      中隊が担任している防衛警備区でしょうか。こういうのを見ると、やっぱり地元の人は心強く感じるんだろう
      なあ。駐屯地と地域との繋がりを深めるいいアイデアだと思いました。

       第10高射特科大隊からはパジェロ79式対空レーダ装置93式近距離地対空誘導弾81式短距離地
      対空誘導弾

       続いては、臙脂色の隊旗をはためかせた第6施設群の登場です。部隊長がのったパジェロが先頭を切り、
      路障害作業車83式地雷敷設装置を牽引した7tトラックが続きます。同じく第6施設群第370施設中隊
      からは油圧ショベルを搭載した中型セミトレーラが、ぬかるんだ地面を堂々と行進。今にもスタックしないか
      とひやひやしますが、極太トルクと18本もの大型タイヤのお陰か、中型セミトレーラは泥の海を悠然と泳ぐ
      巨鯨
の様に威風堂々と通り過ぎていきました。その強烈な存在感に、会場からは低いどよめきが沸き起こりま
      す。

       371施設中隊からは作業機付き7tトラックと、牽引された動力ボート。さらに大物がやってきました、
      地雷原処理車
75式ドーザ!どちらもキャタピラのお陰で、荒れた地面もなんのその
       ちなみに後ろ向きで走っている様に見える75式ドーザですが、巨大なドーザブレードを構えている方が実
      は後側。運転席の前後2箇所に操縦装置があり、シートの背もたれを倒すだけで素早い前後操縦の入れ替えが
      可能
な仕組みになっています。怒り狂った甲殻類みたいな見た目といいシンプルなギミックといい、施設科の
      中でも特に気に入っている車両
です。一度でいいから内部に入ってみたいなあ。

       各部隊の直接支援中隊からのパジェロシェルター付きトラック重レッカが続いた後は、地上部隊のトリ
      を務める74式戦車がやってきました。
       いやー、久々の観閲行進、やっぱり迫力が凄いですね!それにしてもこれだけの種類と数の車両を見せなが
      ら、豊川ご当地部隊ではないのは第10戦車大隊(今津)の74式戦車だけというのが地味に驚き。豊川が抱
      える任務の多様さ
が伺えます。
       そして上空に目をやると、明野の第10飛行隊からやってきたUH-1J多用途ヘリが、逆光に機体をきら
      めかせつつ通過。以上で観閲行進は終了し、第10音楽隊は拍手を浴びながら退場。来場者は起立脱帽にて、
      国旗の退場を見送ります。

       それにしても、大型車両が荒らしまくった地面がもの凄い事になっています。同様の状態になった演習場の
      後片付けは施設科の重要な仕事の一つですが、このボコボコになった訓練場も、あとで施設科のみなさんが
      するのかなあ。なるほど、機甲科は施設科に足を向けて寝られない・・・と言われるのも納得です。

       続いては格闘訓練展示。フェイスペイント姿の隊員さん達が、着剣した小銃を掲げてものものしく登場です。
      和太鼓の大きな音とともに各自所定の位置についたあとは、小銃や銃剣、徒手空拳による基本動作を披露。さ
      らに二人一組になった約束組手を行いますが、体勢を崩された隊員さんが投げ飛ばされる度に、生真面目にア
      イロンを当てた戦闘服が見る見る泥まみれ
に。ああ、なんか勿体ない・・・(笑)。

       その後は防弾ベストと防具を着用した状態で、より実戦に近い模擬格闘が披露されました。太い格闘用訓練
      銃や軟素材で出来た棒を使い、ボコボコと派手に殴り合い投げ飛ばしていました。

       さて、この後はいよいよ訓練展示です。先程の格闘訓練展示の間に舞台の設営は滞りなく進められ、会場東
      側を占拠した敵対抗部隊の陣地に対して陸自部隊が西側から攻め込み、地雷原と鉄条網を突破して陣地奪還を
      図る・・・
というシナリオです。

       まずは対抗部隊の陣地形状と戦力規模を探るべく、第49普通科連隊本部管理中隊情報小隊からの偵察オー
      ト
が2両出撃。会場中央で華麗にジャンプを決め、一気に敵陣地手前へと斬り込んで行きます。偵察オートを
      盾にした隊員は敵陣地に小銃射撃を浴びせ、反撃の様子から対抗部隊に関する情報を収集します。
       同じく情報小隊からやってきた軽装甲機動車が敵陣地に攻撃を加え、防御力の弱い偵察オートを支援。必要
      な情報を集めた偵察隊員は、その隙をついて素早くオートを反転させて最前線から離脱します。

       続いては陸自本隊から出撃して来たUH-1J多用途ヘリが上空に展開し、開け放したカーゴドアから4名
      のレンジャー隊員がロープ降下を開始
。滑る様に降りて来たレンジャー隊員はすぐにその場で散開し、周囲を
      警戒して安全を確認
。すかさず側方に回り込み、情報収集及び撹乱、奇襲を行うべく敵陣地後方に展開します。

       そして4名のレンジャー隊員を無事降下させたUH-1J多用途ヘリは、その運動性能を見せつける様に機
      体をひるがえし、あっという間に飛び去って行きました。
       情報小隊とレンジャー隊員からの情報をもとに、陸自本隊は陣地奪還作戦を実行に移します。まずは対抗部
      隊による航空攻撃に対処すべく、第10高射特科大隊から93式近距離地対空誘導弾が前進開始。第49普通
      科連隊
重迫撃砲中隊も展開し、射撃位置についた120㎜迫撃砲RT81㎜迫撃砲L16が着々と準備を
      整えます。

       その後方には、普通科部隊の前進を支援すべく第10特科連隊の155㎜FH-70榴弾砲が3門展開。そ
      れぞれスピードを競う様に射撃準備を進めて行きますが、6名の隊員のうち誰か一人がもたついただけで全体
      のバランスが崩れそうな、まさに精密機械の如きチームワークです。うーん、これはやっぱり会場西側から見
      たかったかも・・・。

       その間にも、上空には対抗部隊のヘリが接近。前線に展開した陸自部隊に攻撃を開始しますが、すかさず
      射特科93式近距離地対空誘導弾が反撃開始。発射誘導を担当する射手の鉄帽に装着された目視誘導装置
      より、射手の顔が向いた方向に合わせて発射機がぎゅんぎゅん動くのが興味深いなあ。

       見事敵のヘリを追い散らした93式近距離地対空誘導弾は、派手に泥をはね飛ばしつつその場を離脱。おお、
      後輪に取り付けたマッドフラップがラリーカーみたいでカッコイイなあ。戦車や装輪装甲車は流石に無理です
      が、これなら自分でも運転出来るかも・・・と思わせてしまうのが93式近距離地対空誘導弾の魅力と言えま
      すね。しかしバックミラーもバックモニターもないので、車庫入れはちょっと慣れが必要かも。
      

       その間に射撃準備を完了させた3門のFH-70は、対抗部隊の陣地に向けてドカドカと砲撃開始。内臓に
      響く砲撃音と砲口から噴き出す発射炎に、会場を埋めた観客から大きなどよめきが湧き上がります。
       3門並んだFH-70ですが、よく見るとペレット状の巨大な炸薬の並べ方が横倒し派立て並べ派に分か
      れています。こういうところは教本で統一していそうなものですが、恐らくどちら方法にも一長一短があり、
      各小隊ごとに職人技的なこだわりがあるんでしょう。

       さらに49普連重迫撃砲中隊も敵陣地に攻撃を開始し、側面から飛び出してきた第10戦車大隊74式戦
      車
も砲撃を始めます。ひときわ大きな戦車砲の空包音も、そして会場からの驚きの声も、なんだかすごく久し
      ぶりな気がします。
       敵陣地に砲撃を浴びせた74式戦車は、すぐに移動して敵陣地からの反撃を回避しますが、砲身から白煙
      たなびかせつつ砲塔を旋回させているその様子は、
       「オラオラ、次にぶっとばされたいのはどいつだ!?」
       と威嚇しているみたい。

       FH-70榴弾砲74式戦車は連携をとりながら砲撃を続け、対抗部隊が動けなくなったその隙をついて
      本隊から地雷原処理車75式ドーザがやってきました。おおお、私の好きな施設科の出番です!白煙を噴き
      上げて猛然と前進して来た75式ドーザが、惚れ惚れする位にカッコイイなあ。

       まずは地雷原処理車発射機をぐいんと持ち上げ、前扉を開放。すると対抗部隊の陣地手前に敷設された鉄
      条網と地雷原から派手な煙が噴き上がり、仕掛け花火が地雷原処理シーンを演出します。
       本来は発射されたロケット弾が牽引するケーブルに仕込まれた爆薬が、着地と同時に一斉に爆発して埋設さ
      れた地雷を爆破処理し、幅5mの突撃通路を開啓するギミックですが、訓練展示では演出の都合か、楔型に爆
      薬が仕掛けられていました。

       続いては75式ドーザが前進開始。この後の普通科小銃小隊の敵陣地への突撃を容易にすべく、先程地雷原
      処理車が吹き飛ばして荒らした大地を巨大なドーザブレードで一気に整地。ぶ厚い防弾装甲で固めているとは
      言え、銃弾砲弾が飛び交う最前線に単身突っ込む75式ドーザは丸腰同然です。それを援護すべく、後方から
      はFH-70榴弾砲がたたみかける様に支援射撃。そしてその間に、普通科小銃小隊はじりじりと敵陣地に対
      して距離を詰めて行きます。

       後方から駆け付けた高機動車からは普通科の増援部隊が飛び出して来て、先行する軽装甲機動車と合流。頑
      丈な車体を盾にして、爆破処理された鉄条網と地雷原の手前までじりじりと進みます。

       そして突撃支援射撃の最終弾である3門同時発射の直後に、小銃小隊は敵陣地に突撃開始。無力化された地
      雷原と鉄条網を乗り越えて、一気に敵陣地へと斬り込んで行きます

       3つの隊に分かれた小銃小隊は相互にカバーしながら前進を続け、最後は小隊長の合図で左側の隊から敵陣
      地に突入
。さらに右側からも一気になだれ込み、見事敵陣地の制圧に成功。銃撃音が止み一気に静かになった
      会場に、状況終了ラッパが鳴り響きました。

       いやー、久々の陸自の戦闘訓練展示。やっぱり迫力ありましたね。普通科も特科も高射特科も施設科も、
      て豊川駐屯地自前の部隊
なのが凄いなあ。戦車とヘリだけは余所の駐屯地の力を借りましたが、これだけの戦
      闘訓練展示をほぼ自前の部隊だけで出来るのは、豊川ならでは
でしょう。各部隊にちゃんと見せ場を用意した、
      まさに豊川豪華幕の内弁当と言える内容でした。

       さてこの後は、国道を隔てた駐屯地へと移動します。朝から屋台を攻めてもうお腹いっぱいなので、まずは
      混まないうちに売店でも覗きに行きますか。
       厚生センター内の売店は沢山の人で賑わっていましたが、糧食関連で特にこれと言ったものは無し。ただ、
      入っていたコンビニの一角に『男気コーナー』なるものがあり、何かと思ったら駄菓子の箱売りでした。この
      ダーとか言っている枯れた竜雷太みたいなのは、もしかして猪木なんでしょうか。それにしても駄菓子の大人
      買いで見せる男気って・・・
そのスピリットが極めてS.A.S的だったので、記念に一枚撮影です。

       通路の掲示板には隊員クラブ(厚生センター内の居酒屋)からのお知らせがあり、牛肉ガーリック焼き
      トロコチュジャン炒め
が新メニューに加わったとの事。他にも期間限定メニューとしてサーモンハラス塩焼き
      サンマ天ぷらブリカマ塩焼き(国産天然もの)がお勧めだそうです。うーん、食べてみたいなあ。
       喫茶店『美樹』の前にて、妙な掲示物を発見。日替わりランチのメニューの様ですが、隊こま・・・いや豚
      こま?
いかにも陸自らしい誤字に笑ってしまいましたが、陸自もとうとう養豚連隊を設立したんでしょうか。
      連隊長の階級は一豚陸佐で、創立記念行事では各中隊で肥育された子豚が整然と行進するんだろうか・・・想
      するとなんだかものすごくカワイイ光景になってしまいました。

       続いては作品展。隊員さんやそのご家族による書画や写真、工芸品等の展示ですが、いきなり目に飛び込ん
      で来たのがイカの絵。その強烈なインパクトに目を奪われますが、描いたのはなんと7歳の子供!すごいな、
      なんというか、将来性を感じさせる大胆不敵な筆致です。

       更に目を引いたのが、これ。寒々しい公衆浴場にてうなだれる人を描いた大きな絵で、タイトルは『汚れ』
      うーん、これも引き込まれるものがありますね。描いたのは19歳の女の子らしいですが、高校を出て就職し
      たら、そろそろいろんなものが見えて来る時期か。果たして彼女の身に何があってこの絵を描いて、さらにこ
      んなタイトルをつけたのか・・・妙に気になる一枚でした。

       その後は駐屯地資料館へ移動。残念ながら館内は撮影禁止でしたが、内部は非常に立派でどこかの博物館
      美術館の様な雰囲気。恐らく途中でリニューアルされたんでしょう。古い建物が好きな私としては、建て換え
      前の古い資料館
を見てみたかったかも。
       それにしても、かなりの数の来場者がいる筈ですが、豊川駐屯地はほんと敷地が広大なので思った程の混雑
      感は無く、のんびりとした雰囲気。11月の屋外プールが寒々しいですが、やっぱり敢えて寒い時期に着衣水
      泳とかやるのかなあ。特に施設科には渡河機材小隊がありますし、普通科以上にそういう内容の訓練があって
      もおかしくない気がします。
       敷地の一角には155㎜榴弾砲M1105㎜榴弾砲35㎜2連装高射機関砲60式自走105㎜無反
      動砲
といったいにしえの装備品が展示されていました。どれもこれも、若い頃はブイブイ言わせていたお爺ち
      ゃんが日向ぼっこしているみたいな風情
で、桜の季節は絵になりそう。雨ざらし展示の割には手入れが行き届
      いており、ホコリも落ち葉もクモの巣も皆無。豊川の隊員さんに大事にしてもらっているみたいですね。

       お、道路の角の妙なものが。どうやら旧軍時代の歩哨舎らしく、昭和8年に豊橋市内に創設された陸軍教導
      学校
にあったものを移築したとの事。これも激動の昭和期を生き抜いた戦争遺跡の一つですが、今日はシャト
      ルバス乗り場の案内板をぺたりと貼り付けられ、日当たりのいい場所でニコニコ笑っている様

       大賑わいの屋台広場に向かいます。既に売り切れ御免の屋台がちらほらで、思った通りセセリ炭火焼きの屋
      台には長蛇の列が。先に食べておいて正解でした。来年はさらに火力を増強して臨んでもらいたいものです。
       アメリカンドッグを出していた屋台の前には、妙な看板が。ぽっちゃり体型の全裸の男が、両手にアメリカ
      ンドッグを握って珍妙なポーズ
をとっています。
       『大丈夫です、売ってます!』
       と書いてありますが、こんな風体の男に大丈夫ですとか言われても、全然大丈夫な気がしません・・・

       それにしても、梅ちゃんってのは隊員さんの名前なんでしょうか。梅ちゃんは普段からこんな格好なんでし
      ょうか。ヤバ過ぎるぜ梅ちゃん・・・。屋台の周囲を探してみましたが、残念ながら梅ちゃんらしき隊員さん
      は見当たらず。恐らく隊舎に軟禁されていたものと思われます。伊丹や福知山なら普通に放し飼いにされる可
      能性が高い
ので、是非とも梅ちゃんの転属を待ちたいところ。
       最後は特設ステージで披露された隊員さんのソーランを見て、豊川駐屯地を後にしました。


       以上で今年の私のイベントシーズンは終了です。今年の序盤戦はサイトを管理しているファイルの不具合
      から全く更新できない日々が続き、ようやく復旧したかと思ったら今度は数々の所用に振り回されて行きたか
      ったイベントにもまるで参加出来ず、さらにどうにか計画したいくつかの遠征は直前に襲い掛かってきた体調
      不良で断念せざるを得ず
、その上観艦式の抽選にはカスリもせず・・・まるで何かに呪われたような一年とな
      
ってしまいました。まあ長くやっていればこんなシーズンもあるでしょうけど、全くもって消化不良に終わっ
      た感がありました。
       その分来シーズンは、借りを返すつもりであちこち動き回りたいと考えています。オフの間は消化できない
      ままになっている戦闘糧食用語集自衛隊以外のおでかけ等の更新を進めるつもりですので、お手すきの時
      にでも笑ってご覧いただければ幸いです
。年内は・・・あと一回位更新しておきたいなあ。
       それでは今年一年お付き合い頂いた皆様へのお礼とともに、国民から見えないところで日々汗を流している
      隊員の皆様のご健康とご多幸
を祈りつつ、今年の締めにしたいと思います。皆様、よいお年をお迎え下さい。
      
来年も当S.A.Sをよろしくお願いします。




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