補給艦おうみ一般公開in伏木港

2015.07.11


       富山県伏木港にて行われた、AOE426補給艦おうみの一般公開に参加してきました。おうみはましゅう
      型補給艦の2番艦
として2004年に進水し、第一海上補給隊の一員として佐世保を定係港にしています。
       燃料や真水、様々な補給物資を搭載してこれまで行われた数多くの海外派遣任務を下支えし、効率的な海上
      部隊の運用
には今や欠かす事の出来ない、文字通り縁の下の力持ちとして働いているフネであります。
       基準排水量13500㌧と、とわだ型補給艦をさらに大型化させたましゅう型、現在ではいずも型に次いで
      海自で2番目に大きな艦
となりました。また設計段階から女性自衛官専用区画を準備し、海自における女性自
      衛官の現場への進出
という観点からも大きな意味を持った艦と言えます。
       当日は深夜2時に自宅を出発し、早朝から富山県南砺市にある戦争遺跡を見て歩いた後、一路伏木港へ移動。
      一般公開が行われる伏木港万葉埠頭3号岸壁には9時前に到着しましたが、この時間から既に20台近い車列
      
が。陽射しはどんどんきつくなり、今日も一日暑くなりそうです。

       しばらくして車列は岸壁内に入って行き、舷門の乗艦待ちについた時は60番手ぐらい。その後も入ってく
      る車は途切れることがなく、一般公開開始10分前には200人以上の行列となりました。
       近年は小さな子供や若い女性が本当に増えた自衛隊イベントですが、北陸に限ってはオジイチャン軍団が実
      に元気
。子供よりもテンションが高いのですから、頼もしいなあ(笑)。

       それにしても、もうあと少しで補給艦おうみに乗艦か・・・。初めての艦はやはりワクワクです。高く聳え
      立つデリックポスト、深くえぐれ込んだナックルライン、見上げる様な乾舷の高さ・・・実に補給艦らしい。
       ふと見ると、艦橋の手前に手動のクレーンが設置してありました。上甲板までの高さが半端ではないので、
      重い物資を腕力だけで引っ張り上げるのは大変そう。

       という訳で0930、補給艦おうみの一般公開が開始です。テントにて手荷物検査を済ませ、艦内に続くラッ
      タル
を登ります。
       艦内に入ってすぐの所には、巨大な金属扉が3つ並んでいます。これは冷凍冷蔵庫ですね。以前乗艦した補
      給艦とわだも同様の構造になっていましたが、やっぱりデカイなあ。内部は立体駐車場を横倒しにした様な造
      りで、天井部から吊り下げられた沢山のケージに大量の生鮮食品や冷凍食品を収納する仕組み。通常は冷凍庫
      が1つ、冷蔵庫は2つという割り振りになっているそうです。

       各扉の上部には『上・下』と描かれた表示がありますが、これは何なんだろう。隊員さんに尋ねると、
       「ああ、これはですね、庫内のケージは上下二段に分けて物資を収納する作りになっていまして、今から運
      び出す物資はどっちなのかひと目で分かる様にしてるんですよ」

       なるほど。開口部があまりにデカイので、扉の開閉は出来るだけ短時間で行わないと庫内温度が上がってし
      まいます
からね。ちなみに画像の状態は、上の段の物資を運び出せという意味。

       中央部の倉庫を挟む様に作られた左右の艦内通路は、天井の高さも含めてとても広々。通路の中央部には
      フト用のレールがあり、武器弾薬等の危険な重量物を安全かつスムーズに移動させる工夫が施されているのは
      とわだ型補給艦と同じです。

       お、通路の一部が、動く歩道状のベルトコンベアーになっています。3分割されたベルトコンベアーの中央
      部が上甲板まで通じるエレベーターになっていて、天井部のハッチから艦内に運び込まれた補給物資を左右の
      ベルトコンベアーに振り分け、効率的に格納庫内に運び込む
事が出来ます。上手い人が操作すればエレベータ
      ーの上げ下げを全く途切れさせる事なく、大量の物資を驚くような速さで艦に搭載する事が出来るとか。

       ちなみにこの補給艦おうみ、基準排水量13500トンという巨体にもかかわらず乗組員は僅か145名
      約半分の排水量の護衛艦こんごうでも300名乗っている事を考えると、僅かな人数でこれだけの巨艦を維持
      しないといけないのですから大変です。
       もちろん護衛艦と補給艦では要求される役割はまるで異なりますが、艦の内外をチリひとつなく磨き上げ、
      いつ何時でも全力を発揮出来る為のメンテナンスを行う
のは同じ事。単純計算でこんごうの4倍近い作業量が、
      おうみ乗組員に圧し掛かっている訳です。艦が大型化し省人力化が図られても、海上勤務は大変。

       艦中央部の格納庫は立ち入り禁止でしたが、お陰で人のいない広々とした格納庫を撮影する事ができました。
      天井が低い分だけ、ひゅうが型護衛艦の艦内格納庫よりもワイドに見えます。
       その後は艦首方向へ移動して、上甲板に出ます。おおお、空が青い!甲板の広さもあって、実に開放的な気
      分です。これぞ夏の海自イベント!ですね。

       それにしても、実際に近くで見る補給ステーションの高さ燃料補給管の巨大さには驚かされます。岸壁か
      らは6本の補給ステーションばかりが目立ちましたが、それ以外にも沢山のクレーン類があるんですね。どれ
      もこれも見上げる様な大きさなので、見学者の皆さんが全員上を向いて歩いているのが面白い。
       お、足元にあるこれが、艦内への物資積み込み口ですね。このハッチが開放されて、下の甲板から先程のベ
      ルトコンベアー
がせり上がって来るのでしょう。

       しかしボラードもでかいなあ。ゆき型やきり型のボラードはペンキ缶みたいな可愛らしいサイズですが、お
      うみの13500トンの巨体を固定するボラードはひと抱えぐらいあります。
       前、中央、後の3箇所に左右ひとつずつ装備された計6基の補給ステーションですが、それぞれに異なる役
      目が割り振られ、前の2基は燃料補給、中央の2基は食糧や弾薬、ミサイル用。後の2基は燃料及び真水の補
      給
に使用されるとの事。


       補給ステーションやクレーンが並ぶ前甲板艦橋の間は、ちょっとした広場になっています。それにしても、
      豆腐の表面みたいにとっかかりのない巨大な艦橋を眺めていると、なんだか静かに怒られている様な気分にな
      るのはなぜなんだろう。訳もなく
       「す、すみません・・・」
       と言いそうになります。

       艦橋のすぐ下には、まるで潜水艦の様に巨大な防舷物が2つ置いてありました。艦を岸壁に横付けさせる際
      に、これを挟み込む訳ですね。もっともここ伏木港万葉埠頭には最初から岸壁にクッション装置が備わってい
      るので、出番は無かった模様。

       ちなみにこの補給艦おうみ、文字通り他の艦艇に燃料や真水、食料、武器弾薬類を補給して艦隊の長期行動
      を支援していますが、意外な事に他の艦から補給を受ける事も珍しくないそうです。クレーンで運び込んだ物
      資を移動させる為に、舷側通路は広々。おうみから他の艦に異動になると、慣れないうちは狭苦しくて仕方な
      い
でしょうね(笑)。

       艦後部の飛行甲板へ。もう立っているだけで視力が良くなりそうな広さです。よく見るとベアトラップ(ヘ
      リコプターの強制着艦装置)が見当たりませんが、これだけ甲板が広いと特に必要ないのかな。
       お、先程から若手海曹と話しこんでいるのは、おうみの艦長さんの様です。艦長さんは最後に、
       「ん、了解、ありがとう!」
       と締め括って颯爽とその場を去って行きましたが、なかなか爽やかな人ですね。日常業務の報告で、艦の最
      最高責任者がいちいち乗組員に対してお礼を言う
のは少し変な感じがしましたが、海曹さんがよほど気の効い
      たイイ仕事
をしたんでしょうか。

       多数の乗組員を抱える大きな艦では、若手の曹士が艦長と言葉を交わす事など殆ど無いと聞いた事がありま
      すが、傍目にもごく自然な感じで出た
       「ありがとう」
       の一言は、逆にとても重い物の様に感じました。これはおうみ艦長としての指導方針というか、モットー
      様なものだったのかなあ。
       艦の性質上やたらと長期航海が多く、隊員個人個人の体調管理家族にかかる負担への対処、また、これだ
      け巨大な艦の日常のメンテナンスを僅か140人ぽっちでこなさないといけない乗組員の激務ぶりを考えると、
      指導方針云々ではなく艦長さんの口から自然にこぼれた部下に対する感謝の気持ちだったのかもしれません。

       格納庫は広々としていますが、艦載ヘリの整備運用に関する装備品の類は少ないですね。艦内スペースに余
      裕があるので、どこかに纏めて仕舞い込んでいるのかも。ちなみにおうみの格納庫は大型のMH‐53E掃海・
      輸送ヘリコプター
の運用も前提としていて、飛行甲板は陸海空自衛隊で運用している全てのヘリコプターの発
      着艦が可能
。いざという時の統合運用もしっかりと視野に入れた設計だと言えます。

       艦内通路に入ると、医療区画がありました。シンプルなベッド医療機器が整然と並び、様々な事態に対応
      できる準備が整っています。この他にも手術室集中治療室X線撮影室等も完備され、大規模災害時におけ
      る高度医療施設としての運用も可能

       右舷の艦内通路最後部に、黄色いリフトが停めてありました。これが床のレールに沿って動き、物資をあち
      こちに運んで回ります。操縦席は前を向いているのにリフト部分は真横から突き出ているという左右非対称の
      デザイン
が、いかにも特殊な役割に特化したメカっぽくてカッコイイなあ。陸自で言えば施設科に通じる魅力
      
を感じます。逆光気味なのも存在感を更に増していますね(笑)。

       以上で補給艦おうみの一般公開は終了。艦橋の公開がなかったのは少し残念でしたが、それでも特殊な用途
      の艦だけあって、非常に興味深い一般公開でありました。
       最後は艦首部から補給艦おうみの全景を撮影したかったのですが、巨大なガントリークレーンが立ち塞がり
      それも叶わず。うぬぬ。しかしこのクレーンもカッコイイなあ。まさに機能美の極致です。

       さて、次回は阪神基地隊サマーフェスタに参加です。やって来るのはなんと、就役したばかりの護衛艦すず
      つき!
いやー、今年は凄い大物が来てくれましたね!翌日は和歌山港にて護衛艦あけぼのの一般公開も行われ
      ますし、スタートこそ躓いたものの、いよいよ本格的になってきた海自イベントシーズンを感じながら、岸壁
      で太陽光に焙られて灼熱地獄と化した車
に乗り込みました。




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