舞鶴地方隊サマーフェスタ2015
2015.07.26
京都府の舞鶴地方隊にて行われたサマーフェスタに行って参りました。たまたま前日まで富山県に所用があ
った為、サマーフェスタ当日は宿泊地である敦賀を早朝に出発。交通量の少ない舞鶴若狭自動車道をひた走り、
舞鶴東ICから一般道に入ります。信号待ちで何気なく開けた窓からは、むわっとした真夏の熱気とセミの声
がなだれ込んで着ます。この時間から既にこの気温という事は、今日も一日暑くなりそう。
0740、舞鶴地方隊に程近い赤れんがパーク駐車場に到着。うはあ、なんだこりゃ。舞鶴造修補給処側の入り
口には既に200人近い開門待ちが出来ています。今日は早い者勝ち的なイベントではありませんが、また凄
い事になってるなあ・・・。
空いたスペースに車を入れ、行列の最後尾につきます。ここでぱかぱかぱーとらっぱの音が。ああ、0800か
らの自衛艦旗掲揚ですね。北吸桟橋に停泊している補給艦ましゅうのマストに、自衛艦旗がゆっくりと掲げら
れていくのが見えます。それとペースをを合わせる様に、艦首と艦尾からは国際信号旗による満艦飾が。へー、
満艦飾もこのタイミングで掲げるのか。補給艦ましゅうの広大な露天艦橋の上では、何人もの隊員さんがくる
くると円を描いて走りまわっていますね。国際信号旗を掲げたロープを引っ張ってるんでしょう。
その後しばらくして開門。簡単な手荷物検査をパスし、パンフレットとうちわを頂いて基地内に入ります。
広い道路を歩いて行くと、おお、目の前にはAOE425補給艦ましゅうの巨体が!
そして桟橋に出て驚いたのが、係留されていたDDH143護衛艦しらね!今年の3月に除籍されたしらね
に、まさか今日会えるとは・・・と嬉しく思ったのもつかの間、よく見ると51番砲塔の砲身は取り外され、
背負い式の52番砲塔も完全に撤去済み。ハルナンバーは塗りつぶされ、主錨やレーダー類の幾つかも無くな
っています。うーん、なんか複雑な気分・・・。舞鶴地方隊をあげてのお祭りであるこの日に、しらねのこん
な姿を見る事になろうとは。これ、展示しない方がよかったんじゃないのかなあ・・・。
これは後で知った事ですが、つい先日通過した台風によるシケを避けるため、舞鶴湾内のブイに係留されて
いたしらねを一時的に桟橋に戻していたそうです。台風が過ぎたからといって、そう簡単に戻せるものではな
いでしょうし、これは仕方ないですね。
しらねの後方にいるのは、DDG117護衛艦あたごとDDG175護衛艦みょうこう。どちらも現役バリ
バリのイージス艦です。全ての役割を終え、海上防衛の最前線から消えて行く艦。強大な抑止力として、今も
存在感を見せつける艦。こうしていると、お祭り騒ぎの周囲から私としらねだけがぽつんと置いて行かれた様
な、不思議な気分になってしまいます。
気分を取り直し、桟橋を見て歩くとしましょう。目の前には、見上げる様な大きさのAOE425補給艦ま
しゅう。そしてその向こうにはAMS4301多用途支援艦ひうち!いつもはなかなか近寄れない艦ですが、
今年は何かやってるみたいですよ。
おお、ましゅうは艦内も公開されるのか。先々週に富山県の伏木港にて同型艦のおうみを見たばかりですが、
ましゅうは未乗艦なののでこれは見逃せません。それにしても補給艦ましゅう、この角度から見る艦首部分が
何かに似てるなあ・・・と以前から思っていたのですが、深くえぐれ込んだナックルラインと高いブルワーク
がマジンガーZの頭のハチのところにそっくりなんですね。加齢臭ぷんぷんな上に、極めてどうでもいい話で
はありますが(笑)。
ましゅうと桟橋を繋ぐ舫綱にはネズミ返しが取り付けられています。たまたま隣にいた幹部の方に質問して
みると、
「ええ、あれは仰る通りネズミ返しです。国内の港に入る時はあまり使いませんが、この艦は海外に行く事
が多いので、その際は防疫上の問題でネズミを入れない為に取り付けてるんですよ」
ましゅう艦内に入る前に、桟橋の東端を棲み家としているAMS4301多用途支援艦ひうちを見に行きま
しょう。このひうち、護衛艦隊の射撃訓練支援から離島や遠隔地への物資輸送、さらには動けなくなった艦艇
の曳航まで何でもこなす、文字通り海自の縁の下の力持ち的な艦であります。今日は残念ながら艦内の公開は
行われませんでしたが、その分様々な装備品を桟橋狭しと展示して、いかにも多用途支援艦らしい職務の多様
性をアピールしています。
大きなところでは自走式水上標的バラクーダや、高速水上標的Ⅰ型が目立ちましたが、ここで面白いものを
発見。小型水上標的01・02って、なんだこりゃ。形そのものは高速水上標的とそっくりですが、サイズは
三胴船部分が1m四方、マストの高さは1.5m程という、まさにオモチャの様な可愛らしさ。
手作りっぽさに溢れているので、てっきり乗組員の人達がイベント用に作ったネタ的なものかと思いました
が、実際の訓練で使用するれっきとした装備品だそうです。へー、こんなの初めて見たなあ。
ゴムボートよりも遥かに小さいのですが、果たして洋上のこれを狙って当てる事が出来るんでしょうか?不
躾な質問ですが、傍にいた隊員さんに尋ねてみると、
「ええ、普通に命中させてますよ。数を撃つという事もありますけど、的が大きいと撃つ方に緊張感なくな
りますからねえ(笑)」
と、隊員さんは事もなげ。なるほど、このサイズの標的に命中出来ると言う事は、小型船のエンジン部分や
艦橋、甲板上の固定武装のみをピンポイントで狙えるのと同じですからね。
木製なので修理が簡単ですし、なにより非常に低コストなのも売り。ちなみにこのちび標的ですが、自走式
水上標的バラクーダによる曳航にて運用されるそうです。遠隔操縦される無人のバラクーダが小さな標的船を
引っ張ってるとか、なんかカワイイなあ(笑)。もっとも実弾射撃訓練に臨む隊員さん達は、そんな呑気な気
分ではないでしょうけど・・・。
その隣には、実弾射撃訓練で実際に被弾した高速水上標的1型のマスト部分が展示してありました。おお、
頑丈そうなアルミ製のパイプがものの見事にまっぷたつ。ちなみにこの水上標的、意外と高価な上に実際に命
中させるといくら数があっても足りないので、わざと数m離れた海面を狙って撃つと聞いた事があるのですが、
それにモロに命中させてしまったという事は、その・・・うーん(笑)。
説明書きには壊された日付と海域、命中させてしまった第14護衛隊護衛艦あさぎりの名前が記されていて、
本展示終了後には記念としてあさぎりに寄贈する予定だそうですが、一見してあさぎりの射撃能力の高さを称
賛しつつも、
「だから命中させんなっていつも言ってるだろ!うちが面倒見てる装備品をどうしてくれるんだこの野郎!」
と、こめかみの血管をビキビキさせている舞鶴造修補給処の人達の顔が思い浮かぶ様。日付や海域、艦名
まで細かく記入している所なんかも、読めば読むほど告訴状みたいに見えてきます(笑)。見事ぶっ壊してし
まったあさぎりとしては、
「あっちゃー、本気出しちゃった・・・てへっ」
で済ませたかったでしょうけど・・・まあ、命中おめでとうと言っておきましょうか(笑)。
続いては補給艦ましゅうへ向かいます。高い舷梯を上がって、初めてのましゅう艦内へ。基本的に2週間前
に見たおうみと全く同じなのですが、説明書きが違うのでこれはこれで新たな発見がありますね。ちなみに艦
内の両舷通路を動く黄色いリフトは、正しくはサイドフォークと呼ぶそうです。
また、そのサイドフォークが沿って動く床面のレールですが、単純に凹状になっているだけで、内部から固
定したり動かしたりするような装置はありませんでした。このレールに凸状の棒を引っ掛けて、タイヤで自力
走行してるんですね。
格納庫の脇には、前中後の3つに分割された長いベルトコンベアーが。真ん中のベルトコンベアーだけが上
の甲板までエレベーター状に稼動して、艦内に運び込まれた物資を左右のベルトコンベアーに振り分け、格納
庫内の所定の位置に収納する・・・という、非常に効率的な仕組みになっています。
その格納庫内には、何故か畳が敷き詰められていました。艦内で柔道の大会でもやってるのかな?と傍にい
た隊員さんに尋ねると、
「はい、この艦は近々フィリピンに向けて出港する予定がありまして、現地で日本文化を紹介する為、柔道
の練習の真っ最中なんですよ(笑)」
との事。ははあ、いろんな仕事があるもんだなあ。補給艦という性格上、海外への長期航海は珍しい事では
ないんでしょうけど、その間に留守を預かるご家族の負担は大変だろうなあ・・・。ご安航をお祈りします。
広々とした通路のコーナー部分にて、妙なものを発見。小さかったのでつい見落としそうになりましたが、
これってカーブミラー・・・ですよね?傍にいた隊員さんに尋ねると、やはり艦内で重量物や嵩張るものを移
動させる事が多いので、安全上取り付けられているそうです。護衛艦じゃ見たことないなあ。これも補給艦な
らでは。
おうみ一般公開の時と同じルートを辿り、上甲板へ。見上げんばかりの高さを誇る6機の補給ステーション、
まるでK2東南壁を思わせる艦橋。一つ一つの大きさが半端無いので、つい上ばかりを向いて歩いてしまうの
が補給艦の一般公開です(笑)。
巨大なクレーンの基部に張り付いている電話ボックスみたいなのは、操縦席ですね。視界を確保する為の総
ガラス張りなので、作業中はLSO同様に蒸し風呂状態なんだろうなあ。危険な作業中に暑さで集中力を切ら
せる訳にはいかないので、ここも結構な体力仕事なのでしょう。よく見ると扇風機が置いてありますが、気休
めみたいなもんなんだろうなあ。
広い広い飛行甲板。艦そのものがとにかく巨大なので、前甲板からぐるっと回るだけで結構な距離になりま
す。小さなはつゆき型と比べると、艦上体育は走り甲斐がありそう。もっとも炎天下では、甲板からの照り返
しの方がキツそうではありますが。甲板にいた隊員さん曰く、
「あ、陽射しが強い時は、艦内の通路を走ってますよ。内部だけでもかなり距離がありますし。うちの艦長
なんか3時間ぐらい走りっぱなしです(笑)」
凄いなましゅう艦長。陸上勤務の隊員さんよりも体力ありそうです。
艦尾を見ると、35年にわたる海上防衛の任務から解かれ、今はただ桟橋に佇む護衛艦しらね。そしてその
後方には、あたごとみょうこう。大事なバトンは、頼もしい後輩たちに確かに渡した・・・そんな雰囲気が漂
います。
がらんとした格納庫内には、黄色いフォークリフトが固定されてありました。このリフトもほんとピカピカ
で、汚れや擦れ、油染み一つありません。手入れの行き届き具合が見事ですが、そもそも艦内が清潔な上にき
ちんと整理整頓されているので、普通に使っていれば汚れる事も少ないんでしょう。
その背後には、艦に搭載された高速艇が。シュラウドに覆われた船外機のスクリューがボロボロです。もっ
ともこれは手入れ不足ではなく、水中で高速回転するスクリュー表面に発生する気泡によるキャビテーション
現象のせい。なるほど、こんな具合になるのか・・・と、思わず見入ってしまいました。
格納庫内の壁面には、火災消火時の防火服が展示してありました。1500度もの炎にも耐える事が出来る
特殊素材で出来ていますが、説明してくれた隊員さんによると、
「火災っていうか、普通に着るだけで暑いんですよこれ(笑)。空調ついてたらいいんですけどねえ(笑)」
以上で補給艦ましゅうの見学は終了です。舷梯を降りたところでやっていた艦橋特別公開の抽選に挑戦しま
すが、見事にハズレ(泣)。私の前にいた人が当選していたので、もうちょっと早く降りていたら当たってい
たのかなあ・・・。まあ、幸運は観艦式まで取っておきましょう。
桟橋の片隅に、妙なものを発見。護衛艦ひゅうがをかたどったお神輿・・・なのかこれは(笑)。甲板上に
はちゃんと発着スポットが4つ描かれ、これまたコミカルにディフォルメされたSH-60K(J?)哨戒ヘ
リが乗っかっています。白波を蹴立てて突き進む躍動感もあり、よく出来てるなあ。とても素人の作品とは思
えませんが、そもそも自衛隊には色んな職種があるので、モノ作りなんてお家芸みたいなもんなのでしょう。
ちなみにこの護衛艦ひゅうが神輿、みなと舞鶴ちゃった祭りの手作り神輿部門で最優秀作品賞を受賞したと
の事。残念ながら柵で囲ってあって触れる事は出来ませんでしたが、桟橋中を賑やかに担いで回る様子も見た
かったなあ。
DDG177護衛艦あたごの一般公開は、朝から長蛇の列が出来ています。人気のある最新鋭艦ですからね。
ここはもう少しあとで、人気が落ち着いてからにしましょう。
ここでやたらといい匂いが漂ってきました。ああ、あそこに並んでいるのは食べ物屋台か・・・と、公開艦そ
そっちのけでフラフラと吸い寄せられます(笑)。この後見学する予定だったあたご、うみたか、あさぎり。
弱い俺を許してくれ・・・朝ごはん食べてないし・・・。
桟橋にずらりと並んだ屋台群は、いずれも舞鶴市内の飲食店による出店。流石にこの規模の人出となると、
外部から業者を呼ばないと間に合いません。本当は隊員さんの屋台が好きなのですが、これはこれで海自イベ
ントを楽しみつつ同時に地元グルメも・・・というお得感があります。
まず突入したのは、市内のダイニングバーJOKEが出している、『水を一滴も使わずに作ったカレー』。
金曜日はカレーの日!と銘打った『金カレグランプリ』にて、栄えある初代王者に輝いた名店だそうです。
タマネギから出た水分のみで作っただけあって、この密度の濃い味わいが素晴らしい。使っているのは豚ひ
き肉かな?野菜はニンジン、タマネギ、あとこの酸味はトマトでしょうか。僅かにスモーキーな風味があり、
まろやか&スパイシーで美味しいなあ。辛さも程々で、あっという間に一皿平らげてしまいました。うむむ、
もう少し味わって食べるべきであったか・・・。
続いては、レトルトでも販売されている『日本海まるごとカレー』行ってみましょう。地元舞鶴湾で揚がっ
た魚介類を使用しているそうで、地元色も満点。周囲にぷんぷん漂うエビイカ系の香りがもうたまンないです
ね。さっそく一口。
ほほう、ドミグラスソースを隠し味にしたごく標準的なカレーですが、かなり熱くそれなりに辛く、一口食
べるたびに汗が吹き出ます。しかしその汗をぬぐった時のひんやりした清涼感が、そもそも暑い日のカレーと
はこういうものだ!と、改めて気付かせてくれる様。
それにしても、エビイカ系の香りが強いのに、入っているのは魚ばかり。たまたま魚ばかりが入ってしまっ
たのかな?またその魚ですが、どうやら青魚の様です。サバにしては優しい味ですが・・・サワラかな?サワ
ラは一匹で沢山の切り身がとれる魚なので、コスト的にもレトルトカレーの具材には向いていますが、この辺
でもサワラって獲れるのか。
いやあ、どちらも実に美味しいカレーでした。ふと足元を見ると、桟橋には引き込み線の跡が。赤レンガ倉
庫の方から続いていますが、旧海軍時代に貨車やトロッコで艦艇に物資を運び込んだ名残でしょうか。
その後はDD151護衛艦あさぎりへ。ひさしぶりのあさぎり型護衛艦、この通路の狭さになんとなくホッ
としてしまいます(笑)。なにぶん3000㌧に満たない艦なので少し歩けばもう前甲板ですが、艦橋下部に
押し込められた様なアスロック発射機、そのすぐ前にある丸っこい72㎜単装速射砲。この、狭い甲板にぎゅ
っと凝縮された感じがいいですねえ。個人的にははつゆき型の方が好みですが、初めて体験航海に乗せてもら
ったのが護衛艦ゆうぎりだったので、あさぎり型も思い入れのある艦です。
一段高い飛行甲板をもつあさぎり型。甲板強度を保つための支柱や洋上給油時のプローブ・レシーバーの配
置の絡みから、上甲板の舷側通路の一部が回り込む形になっています。小さな船体にいろんなものを盛り込ん
だ設計段階の苦労の一端や、ソ連と対峙していた当時の時代背景的なものも察する事が出来ますね。
短SAM甲板に出ると、港内クルーズの曳船が乗船者を鈴なりにして出港するところでした。うーん、いつ
見てもカッコイイなあタグボートは。船底部の全周回転が可能なゼットペラのお陰で、斜め前方に流される様
に出港する様子がカッコいいんだかキモいのかよく分からないのも味わいです。
残念ながら艦橋には上がれませんでしたが、久々のあさぎり型、よかったなあ。
その後は富山県から遠征して来たSAA水兵さん&RSさんと艦隊合流すべく、補給艦ましゅうへ戻ります。
その途中にあったテントを見ると、舞鶴地方隊のマスコットキャラであるマイチ君がいました。たまたま知り
合いの隊員さんを見つけたのか、マイチ君はパタパタと羽ばたいて愛想を振りまいていますが、傍にいた別の
隊員さんが
「身内に手ェ振ってどないするんじゃ!」
と、マイチ君の頭にグーパンチ(笑)。ちょ、お客さんが多いのに突っ込みキツすぎです(笑)。思わず噴
き出してしまった私に気付いたのか、マイチ君は照れ隠しにポーズを決めてくれました(笑)。
どうやらお二人はましゅうの飛行甲板にいる様で、私は桟橋にて待つ事に。背後のイベント会場では、幼稚
園児一個中隊によるステージダンスの真っ最中です。うーん、なんというか、最後までがんばれ!と周囲で園
児達を見守る大人達の背中の方に感情移入してしまいますね。私もいい加減歳を喰ったという事か・・・と、
半ば自嘲気味に撮影していると、いつの間にか舷梯から降りて来たRSさんが
「ダメですよ!ロリ撮っちゃ!通報されますよ!」
小さな子供を見守る大人を見守るおっさんの心境だった私も、彼にかかれば一瞬にして変質者扱いとは。あ
まりの理不尽に半泣きになりますが、世間的にはやはりそう見えるのか。うん、わかってたよ・・・(泣)。
SAA水兵さんとも合流し、近況報告などを交わしつつ護衛艦あたごの一般公開に向かいます。舷側から艦
内通路を通り、前甲板へ。おお、圧し掛かって来る巨大な艦橋構造物。先程見たましゅうの艦橋よりも遥かに
小さいのですが、あたごの方がみっしりと中身が詰まった密度感があり、戦闘艦としての威圧感は十分。
前甲板の足元には前部VLS発射口があり、全32セルとこれだけでも相当な火力です。大部分は甲板下に
埋め込まれていますが、やはり基準排水量で軽く7000㌧を越える艦内容積の賜物でしょう。
VLSの前から艦橋を撮影。やはりイージス艦は、真正面から見るのが絵になる気がします。周囲に睨みを
効かせる様な巨体とほっぺを赤くした子供みたいな見た目とのギャップが、いつ見ても印象的だなあ。
甲板にそびえ立つのは、62口径5インチ速射砲。何度見てもその迫力に圧倒されますが、私が気になった
のはここ。砲塔前のウォークエリアが、ものすごくキレイに塗装されています。真夏の照り返しもあって、も
う目が痛くなる程のきっちり具合。感動したので側にいた隊員さんにその旨を伝えると、
「はい、実は今日の一般公開のために、みんなで塗り直したんですよ、ここ」
でもこれって、古い塗装の剥離と幾重にも及ぶ重ね塗りで、結構な手間がかかる仕事です。この暑いのに大
変でしたねえ・・・と労をねぎらうと、
「いやあ、分かって頂けますか(笑)!」
と、ニカッと笑っておられました。うーん、私の安い靴で踏んづけるのが申し訳ない気分。
ここでたまたま乗り合わせた知り合いのマニアの人も混じって、2隻並んだ新旧イージス艦の違いや共通点
についてディスカッションが始まりますが、半分ぐらいは何を言っているのか分かりません(笑)。でも普通
マニアって、こういう話をするんだよなあ・・・。
ふと見ると、港内警備の高速艇に乗った警備の隊員さんが、しらねの陰で陽射しを避けて一休みの最中。な
るほど、乾舷の部分にある小さな輪っかってこんな時に使うのか。ただ、オーバーハングのかかった護衛艦の
横っ腹は僅かなうねりでも意外なほどの水しぶきが舞い上がり、小さな高速艇は木の葉の様に揺れています。
一休みするのも大変とは、なんたる矛盾・・・。
飛行甲板へ移動すると、対岸のジャパンマリンユナイテッドの岸壁に、標的艦の塗装が施されたはつゆき型
護衛艦の姿が。あれは・・・はまゆきかな?新旧の入れ替わりは世の常ではありますが、よく考えたら航空機
や戦車が除籍後に射撃標的になるという話は聞いた事がありません。艦の最後というものは、何とも切なく壮
絶としか言い様がないですね。どうか最後まで、艦としての職務を全うしてほしいものです・・・。
その後は再び護衛艦あさぎりへ。私は先程見て回ったのでまあ流し気味に・・・と思ったら、舷門の脇に不
思議なブツを発見。かなりトゲトゲしい、巨大な四本足の釣り針みたいなものが転がっていました。
「どうやらこの艦には、忍者がいるようですね」
と、RSさん。いや私はまた、全裸のホモ4人をひとまとめに吊るしておく世にも恐ろしい道具かと・・・。
そんな極めてマニアっぽくないディスカッションで盛り上がっていると、桟橋では舞鶴音楽隊によるミニコ
ンサートが始まり、同時にあさぎり甲板上では航海科員による手旗信号の実演展示が披露されました。
その後、桟橋に展示してある陸自車両群を先程からうつろな眼差しで眺めていたRSさんが、
「ああ、僕も87式になりたいなあ・・・」
と言いだしました。この暑さで彼もとうとう頭が沸いたか・・・と思ってよく見ると、87式偵察警戒車の
上に何人もの若い女性が乗って、記念撮影の真っ最中。なるほど、彼女達に踏みつけられたり、お尻を乗せら
れたりしたい訳ですね。この暑さにも関わらず、彼はいつもの自分を少しも見失っていない様でホッとしまし
た。なりたい自分になれよ・・・(すごくイイ事を言っている顔で)。
ちなみにその論法だと、私は陸自の後方支援隊が出している野外入浴セットの足湯になりたいなあ。
余計な事ばかり考えていた気がしますが、以上で護衛艦あさぎりの見学を終了。それにしても、随分気温が
上がって来ました。キツイ陽射しを避けて国道沿いの日陰に逃げ込むと、SAA水兵さんが妙なものを発見。
あれ?これって87式偵察警戒車の運転席の風防?あまりに無造作に転がしてあったので、一瞬なんだか分か
りませんでした。
時刻は間もなくお昼時。さて、この後は舞鶴航空基地へ移動です。桟橋から出ているシャトルバスに乗り、
ものの10分程で少し離れたところにある舞鶴航空基地に到着。しかしこのバス内の快適な冷房を味わうと、
灼熱の車外に出るのが嫌になりますね(笑)。
バスから降りたとたんに襲ってくる真夏の強烈な陽射しにくらくらしていると、体験搭乗のSH-60Kが
戻ってきたところでした。エンジンからの排気で対岸の緑の山々がゆらゆらと揺れて見えるのが、暑苦しさ倍
増だなあ。
着陸したヘリがエンジンを切ると、途端に静寂に包まれる舞鶴航空基地。やたらとがらんとしているので人
が少ない気がしますが、恐らくみなさん陽射しを避けて格納庫内に逃げ込んでいるのでしょう。
それにしても、舞鶴航空基地名物だった23航空隊によるカレーと焼きそばの屋台が見当たりません。毎年
格納庫裏手にテントが出ていたのですが、今年はないのかなあ。
格納庫内には沢山のテーブルと椅子が並べられ、大型の扇風機がぶんぶん音を立てて空気をかき回していま
す。やっぱり皆さんここに引っ込んでいたんですね(笑)。それにしても、この場所から見る舞鶴湾の風景は
何度見ても素晴らしい。超横長の映画館のスクリーンみたいです。
青い空に白い雲、緑の山々、紺碧の海、そして真っ白なクレインブリッジ。自衛隊の航空基地は片手で足り
る程度しか知らない私ですが、これだけ風光明美な場所にある基地も珍しいんじゃないかなあ。出来すぎた絵
ハガキみたいな風景です。
外部業者の屋台にて焼きそば分を補給した後は、エプロンに出ます。おお、丁度今から離陸が始まる模様。
フライトスーツとヘルメット姿の乗組員が機体の各部をテキパキとチェックし、整備の隊員さんも忙しそうに
動き回っています。朝から太陽に焙られた地面は相当熱を持っていて、まるで濡れた様にゆらゆらと反射して
います。
すぐに黄色い燃料タンク車がやってきて、給油開始。ヘリの爆音が響く航空基地もいいですが、このしんと
静まり返った独特の緊張感も悪くありません。
ここで、手前に駐機してある機体を使った緊急発進展示が始まりました。とある海域にて所属不明船舶が発
見されたとの通報が入り、整備員と乗組員が一斉にSH-60K哨戒ヘリに駆け付けます。機内の乗組員は地
上の整備員と連携を取りつつ、てきぱきとヘリの発進準備を開始。エンジン始動時の万が一の火災に備えて、
吸気口の前には消火器を構えた整備員が待機します。
すぐにローターブレードがびゅんびゅんと音を立てながら回り始め、エンジンの回転数が安定したところで
整備員が車輪止めを解除。機内のパイロットにハンドサインで合図を送ります。
準備が整ったSH-60Kは、整備員の見送りを受けながらタキシング開始。スクランブルのピリピリとし
た雰囲気に緊張感が高まりますが、機内の乗組員が来場者に向けて呑気に手を振っているのがなんだか拍子抜
け(笑)。
そして滑走路に出たSH-60Kはお尻をふわりと持ち上げ、鼻先を滑走路に擦りつける様にしてテイクオ
フ。爆音を響かせながら、一気に西の空に向けて飛び立って行きました。
いやー、戦闘機の離陸も迫力ありますが、SH-60K哨戒ヘリもいいですね。何と言うか、ネコ科の猛獣
が頭を低くした姿勢から一気に飛びかかる様な、しなやかな力強さを感じます。
再び静かになった舞鶴航空基地。この後は管制塔一般公開の整理券を確保してから、展示されている消防車
を見に行きます。うーん、何だこの特撮ヒーローものに出てきそうな異様にカッコイイ消防車は。救難消防車
ⅠB型というそうで、まるでおもちゃ化を前提にしたみたいなデザインが異彩を放っています。
この消防車に乗る隊員さんは、もしかしたらヘリパイや戦闘機乗りよりも子供達からの熱い視線を浴びてる
かも。
車内はまさに近未来のマシンといった感じで、メーターの類が殆どない多機能ディスプレイ方式のグラスコ
ックピットそのもの。ギヤの選択もボタン方式ですし、かろうじて車らしいのはステアリングぐらい。ここだ
けはこれ以上進化しないんだな・・・と、変に納得してしまいました。
シートの背中部分も特殊な形状で、恐らくこれは背負い式の酸素ボンベや消火剤を装着した状態で座れる様
になっているんでしょう。
説明係の隊員さんによると、この車両は指揮官と操縦手、消火ホースの操作係が左右に各1人、あと装置全
体を管理するオペレーターの計5名で運用していて、車両はオーストリア製、調達価格はなんと8000万円
との事。凄いなあ。
この車両は基本的に基地の外に出る事はなく、仮に出るとしてもそれなりの幅がある道路でないと通れない
そうです。まあ、この図体ですからねえ。
ちなみにRSさんですが、『なんだかチャラついている』という変な理由でこの車両を気に入らないらしく、
隣にある古びた方の消防車の肩をしきりに持っています。どれどれ・・・とそちらの方を見てみると、フロア
から突き出た昔の市バスみたいなシフトレバー、ずらりと並んだ丸メーター、押したらポチっと言いそうなス
トローク感満点のスイッチ、安っぽいゴムペダル、スカスカの足元、合皮が割れて中のスポンジが丸見えにな
ったシート・・・。なるほど、彼はなかなかいいセンスをしています。
その後は陸自からやってきたAH-1S対戦車ヘリコブラやUH-1J多用途ヘリを見ていると、先程飛び
立って行った3機のSH-60Kが戻って来ました。滑走路真上で揃って華麗なターンを決めたあとは、一機
ずつ急上昇したり滑走路を舐める様な低空飛行を披露したり、機首を持ち上げた状態で通過したりと、様々な
機動飛行を見せつけます。戦闘機の様なスピード感はありませんが、この不思議な浮遊感を伴った重量感こそ
が、回転翼機の魅力でしょう。
続いては救難展示。滑走路手前の芝生の辺りから発煙筒の煙が上がり、どうやらあそこに要救助者がいる模
様。すぐに駆け付けたSH-60Kは上空にてホバリングを開始し、カーゴドアからは救難員がロープ降下。
オレンジ色の古い飛行服を着た要救助者を確保した後は、救助ホイストを使って二人を機内に収容します。
カーゴドア手前まで二人を引き上げたところで、機内にいる隊員が要救助者を背中向きにし、ドアの縁を掴
んだ救難員が腰を使って要救助者を機内に押し込んでいました。なるほど、ああやって要救助者を機内に収容
するのか。
要救助者が目立つオレンジ色の飛行服を着ていたので、救難員が機内の乗組員と呼吸を合わせて要救助者を
スムーズに収容する様子がよく分かりましたが、中には錯乱して暴れ出す人や、大怪我で動けない人もいるで
しょうから、収容する側は毎回大変そうだなあ。
機動飛行を終えたSH-60Kも合流して観客の前を1機ずつゆっくり通過した後は、4機揃って無事着陸。
次々と滑走路のコーナーを曲がって近づいてきます。おおお、絵になるなあ。
ここで1機が寄り道して、ウォッシュラックにて水浴び開始。海上で低空飛行を繰り返すうちに機体各部に
こびりついた塩分を、着陸直後にこうやって洗い流す訳ですね。見た目が何とも涼しげで、夏向きであります。
エプロンに戻ってきたSH-60Kに整備員が車止めを噛ませ、パイロットはエンジンをカット。機体には
すぐに整備員が取り付き、あちこちのパネルを開けて整備作業にかかります。今日みたいな暑い日は、油温や
水温が下がるまで時間がかかりそうだなあ。
その後は陽射しを避けるべく格納庫に逃げ込み、かき氷の冷たさに頭をやられながら体を内部から冷却。さ
て、そろそろ管制塔の一般公開の時間です。
管制塔最上部の管制室は地上6階の高さにあり、そこまでは階段で上ります。私は比較的元気な部類のおっ
さんですが、朝からの暑さで参ってる人にはちょっとキツそう。それを見越してか、階段のあちこちに
『あと52段、半分まで来たよ』
『あと32段、あきらめないで』
という掲示物が貼ってありました。うーん、私が隊員なら、
『あと12段、もうすぐだよ!』
の後に、
『うっそー、まだ24段もありまーす』
とか書いちゃうな・・・とかそんな事を考えているうちに、最上階の管制室に到着です。うはー、エアコン
が涼しい!見晴らしが素晴らしい!この部署にいる人達は、間違いなくこの基地で一番いい場所にいる人達で
すね。今日は晴れて気持ちいいですが、吹雪や台風の時も、それはそれで迫力ある風景なんだろうなあ。
ここで管制室にいた隊員さんから、
「あれ?御同業ですか(笑)?」
と声をかけられました。ああ、私がいつも被っている海上自衛隊幹部候補生学校の識別帽をご覧になったん
ですね(笑)。
「いやあ、それを見ると、未だにドキッとするんですよ(笑)」
と隊員さん。そう言えば以前も、別の幹部の方にそんな事を言われたなあ・・・。やはり相当厳しくしごか
れるみたいですね、江田島の幹部候補生学校。識別帽を見ただけで当時の辛い思い出が甦るとは・・・。
現場の幹部自衛官にとって特別な場所である幹部候補生学校の識別帽を、私の様な者が普段使いしていいの
だろうかと思ってしまいますが、この識別帽はかれこれ10年以上にわたって代替わりしながら使い続けてい
ます。もはや私のトレードマークというか体の一部みたいなものなので、何卒ご容赦頂きたいなあ。これから
も幹部自衛官の皆様の辛い思い出をほじくり返す存在としてあり続けたいです(迷惑な)。
涼しく快適だった管制塔の見学を終え、再び酷暑の地上へ。15時を回り陽射しは僅かに柔らかくなったも
のの、気温はまだまだ高いまんま。
その後は再び北吸桟橋に戻り、富山への長い帰り道につくお二人とお別れ。次に会えるのは・・・観艦式で
ある事を祈りましょう。
赤れんがパークの駐車場に戻る道すがら、イベント会場の奥で陸自の高機動車体験試乗が行われていたのを
発見。高低差のある不整地をコースにしているので、細かい砂煙をまき上げて走る高機動車がラリーカーみた
いで実にカッコイイ。これは乗るよりも、むしろ撮影する方が楽しいかも。
少しずつ柔らかになる陽射し、青い空、白い雲、古びた赤レンガ倉庫、緑の山々、むせかえる様な雑草の匂
い、穏やかに響いてくるセミの鳴き声・・・。ああ、実に夏の舞鶴だなあ・・・。
この後は舞鶴のもう一つの名所、ドライブインダルマに向かいます。3つ並んだ自販機の中から今日は天ぷ
らうどんをチョイス。いやあこの湯切りギミック、何度見ても面白いですね。
久しぶりのダルマの天ぷらうどんは、桜エビのかきあげもサクサクで実に美味。前回よりもダシが少し塩っ
ぱく感じますが、これはこの季節の発汗を考慮しての味付けなのかも。いやあ今回も美味しかった。ごちそう
さまでした。
その後は大渋滞の国道175線を避けて、県道55号線で再び東舞鶴へ戻ります。かなり大回りなのであま
り有効な抜け道でもありませんが、途中にちょっとしたワインディングもあり、渋滞に捕るよりもこっちの方
が楽しいんですよね(笑)。
その後は、北吸桟橋を見下ろす文庫山学園に移動。ああ、この時間は逆光になる事を忘れていました。朝の
うちに来るべきだったか。でも、これはこれで夏の祭りが終わったやるせなさみたいな雰囲気があって、悪く
ないかも。
以上で今年の舞鶴サマーフェスタは終了です。いやあ、今年も楽しかったなあ。舞鶴は何とか都合をつけて、
年内にもう一度来たいものです。探したい戦争遺跡もありますし、福知山の櫻湯にも寄りたいですし。
中国自動車道の渋滞を避けて京都縦貫道ルートを選んだものの、そこでもきっちりと渋滞に巻き込まれつつ、
二日間1000㎞の遠征を終えて無事大阪に帰りつきました。
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