護衛艦すずつき一般公開
in阪神基地隊サマーフェスタ
2015.07.18
![](2015suzutuki12.jpg)
兵庫県は阪神基地隊にて行われた、DD117護衛艦すずつきの一般公開に参加してきました。すずつきは
あきづき型護衛艦の3番艦で、第4護衛隊群第8護衛隊の一員として佐世保を定係港としています。
あきづき型護衛艦は4番艦のふゆづきの進水式に参加できたり、1番艦あきづきの体験航海に乗艦できたり
と、最新鋭艦の割に私と縁のある艦種ですが、まさか地元のイベントで見る事が出来るとは思いませんでした。
近年来場者が急増し、毎年大賑わいを見せる阪神基地隊サマーフェスタ。今年は随分と大物を引っ張って来て
くれたものです。
当日は午前中まで仕事があったのですが、すぱっと切り上げて1300少し前に阪神基地隊のある魚崎浜に
到着。コインパーキングで少々順番待ちがありましたが、朝イチからやってきた見学者が帰る頃合いという事
もあり、程なく車を預ける事が出来ました。それにしても今日も暑いなあ・・・。
5分ほどで阪神基地隊に到着。正門をくぐった所にある業務用テントにて手荷物検査を済ませると、目の前
には護衛艦すずつきの巨大な姿が。おおお、基準排水量5000㌧。昔のDDHに匹敵する巨体です。汎用護
衛艦もほんと立派になりましたね。まあ、小さなはつゆき型も大好きなんですけど。
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後からやってきた若い女性二人が、
「すごーい!」「かっこいいー!」
と驚きの声を上げています。私に向けて言っている訳ではないのは言うまでもありませんが、なんとなく嬉
しくなりますね(笑)。雰囲気から察するに、最近この手のイベントに来るようになった方達の様ですが、ど
うせならもっと隊員さん達に聞こえるように言って欲しいものです。
初めてのすずつきに私の心もはやりますが、今乗艦しても人、人、人。先にお祭りの雰囲気を満喫しておく
としましょう。
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テニスコートには沢山の屋台が並んでいて、ざっと見たところカステラ、かき氷、フライドポテト、たこ焼
き、鶏唐揚げ、スイートポテト、角煮バーガー。あと、ハワイアンフリフリチキンなる怪しげな屋台もありま
した。
それにしてもこれ、全部外部からの業者による出店か。以前は隊員さんお手製の阪基カレーや、焼きそばの
屋台もあったのですが。これだけ来場者が増えると、警備や運営に手を取られて屋台まで手が回らないのはど
このイベントも一緒の模様です。少しさびしい気もしますが、これも近年急速に高まりつつある自衛隊イベン
ト人気故。きっといい事なのでしょう。
ヘリポートでは車両展示が行われていました。陸自伊丹駐屯地からは軽装甲機動車と87式偵察警戒車、偵
察オート、姫路駐屯地からは93式近距離地対空誘導弾。あと、空自白山分屯基地からのペトリオット発射機
というなかなかの顔ぶれ。伊丹はここからすぐ近くですが、三重県の白山からは大変だっただろうなあ。土日
の泊りなら夜は神戸に繰り出して羽を伸ばす事もできますが、日帰りですからねえ。
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それにしても芝生の向こうに護衛艦が見えるのは、結構珍しい気がします。春先はシロツメクサの花が咲き
誇り、阪神高速5号湾岸線の白い橋や背後の山々とのコントラストがキレイなんですよね、ここ。
芝生広場から眺めた護衛艦すずつき。あきづき型独特の異形の顔立ちには当初結構な違和感を覚えましたが、
ステルス性能を追求したシャープなデザインはこれはこれで結構カッコイイ。射撃指揮装置FCS-3Aの配
置がまるでおばあちゃんがこめかみに膏薬を貼っているみたいですが、洗練された武骨さに一種ユーモラスな
ギャップを与えている様。
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艦幅いっぱいまでせり出した艦橋構造物にはピラミッドの如きどっしりとした安定感があり、艦全体が富士
山の様なシルエットを描いているはつゆき型護衛艦に通じる魅力を感じます。
基地内のあちこちから護衛艦すずつきを眺めた後は、さて、そろそろ乗艦させてもらおうかな。
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ラッタルを上がった所は、縦に二つ並んだ煙突構造物の間。全体がすっきりしたあきづき型護衛艦の中でも、
割とごちゃごちゃした場所です。頭上には90式艦対艦誘導弾、大型クレーン、洋上補給用のスライディング・
パッドアイ、あと甲板からは少し見えづらい場所に、投射式ジャマーランチャー(FAJ)が搭載されていま
す。このFAJは、海面に投射したジャマーによる音響妨害を行って、艦に迫ってくる魚雷の音響センサーに
エラーを起こさせる防御兵器です。
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合わせて別の場所に搭載された自走式デコイランチャー(MOD)から発射されたデコイが、目標をロスト
した魚雷を別方向におびき寄せ、艦から遠く離れた場所で誤爆させる仕組み。従来は艦尾から曳航したデコイ
がこの役割を果たしていましたが、即応性や安全性はこちらの方が高そう。
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その後は右舷舷側通路を通り、艦尾へと向かいます。途中から格納庫構造物が覆い被さる形になるので開放
感こそ少ないですが、暑さ寒さの厳しい時期や悪天候時はこちらの方が有難そう。
狭くて暗い通路を抜けると、広い飛行甲板に出ました。青い空、六甲の山並み、東西に延びた神戸の市街地、
白い橋。いいなあ、まさに夏の阪神基地隊!という風景です。
![](2015suzutuki9.jpg)
飛行甲板に出てまず目に入ったのが、甲板に半埋め込み式になったLSO。艦載ヘリの発着艦を管制する区
画ですが、天井まで総ガラス張りなのでこの時期は蒸し風呂の様になる場所です。
一応空調設備は整っていますが、直射日光だけはどうにも・・・。まさか外にパラソル立てる訳にもいきま
せんからねぇ、と説明係の隊員さんと談笑していると、
「あ、でも、一応ささやかな防暑対策はしてるんですよ(笑)」
と教えてくれたのが、これ。天井部のガラスには青フィルムが貼られ、よしずも取り付けられていました。
ちなみに効果のほどは?と尋ねると、
「まあ・・・無いよりマシ、ってとこですか(笑)」
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とはいえ、これだけでも見た目は随分涼しそうになります。この辺りからは各艦の工夫と言うか柔軟性みた
いなものが垣間見えて、面白いかも。私が飛行長なら、かき氷の小旗と風鈴、朝顔の鉢植えを配置して、とど
めに久石譲の『SUMMER』をBGMとして流しますね。間違いなく艦長に首を絞められると思いますが。
あきづき型は艦幅があるので格納庫もそれなりに広々ですが、ここにヘリコプターを2機格納するとなると、
もうギリギリ一杯だろうなあ。あくまで緊急時を考えての設計で、日常的にヘリ2機の同時運用はしていない
と思いますが、甲板に設置されたベアトラップのレールの曲線に設計段階での技術者の悪戦苦闘のあとが見え
る気がします。
![](2015suzutuki11.jpg)
また、就役してまだ1年ちょいというピカピカの新鋭艦だけに、艦内はどこもかしこもほんとキレイ。甲板
のライン引きも実に丁寧というか、もはや執念すら感じるレベルです。
艦尾部分をコの字型に囲むように、甲板が一段低くなっています。いわゆるオランダ坂ですね。この形状の
艦が三菱重工長崎造船所で多く作られた事から、造船所のすぐ近くにある観光名所『オランダ坂』にちなんで
名付けられたとの事。
もちろんこれは艦内のバリアフリー化ではなく、甲板の一部を低くしたい場合、構造上垂直段差を作るより
下り坂状にした方が甲板強度を保ちやすい為。出入港時のもやい作業を考えても、こちらの方が甲板を有効に
使えそうですし。
飛行甲板の真ん中にはベアトラップで固定されたSH-60K哨戒ヘリがどんと鎮座していて、沢山の人達
が珍しそうに機内を見学しています。飛行服姿の隊員さん達も質問に答えるのに大忙し。
ちなみにこのSH-60K、一応機内に空調装置の類はあるのですが、エンジンを始動させて回転数が安定
するまでは他の部分に電力を喰われるので殆ど冷房効果がなく、今日みたいに晴れた暑い日は、機内温度がな
んと50℃を越える事もあるとか・・・。
![](2015suzutuki13.jpg)
長袖のツナギとフライトジャケットに身を包み、そんな中で集中力を維持しなければならないヘリパイとい
う仕事は、やはり普通の体力精神力では勤まりそうにありません。先程から飛行服を着た隊員さんが子供達と
楽しそうに戯れていますが、凄い人達なんだろうなあ。
また、中には最初から空調の効きがあまりよろしくない機体もあるそうで、もうそんな時はハズレくじを引
いたと諦めるしかないんでしょうね(笑)。
左舷舷側通路に出ると、海上で警備にあたっていた海自の高速艇がお祭りイエーイ!とばかりに海面を飛ぶ
様に走りまくり、見学者から拍手を浴びています。見ているだけで目が回りそうな高機動ですが、操縦する隊
員さんは短パン&サンダル履き。おまけに座席にはお茶のペットボトルを突っ込んでいて、なんともラフで楽
しそう。
![](2015suzutuki14.jpg)
ちなみにこのサンダル履きは、万が一甲板から海に落ちた人が出た場合、一刻も早く海に飛び込む為。決し
て気を抜いている訳ではなく、むしろ常在戦場の心構えだと言えるでしょう。お、港内クルーズの交通船もや
ってきました。ああ、私も海の上からすずつきを見たかったなあ。朝イチから来ていれば、整理券を貰えたの
ですが・・・。
それにしても、今日の神戸の海はまっ茶色。これは少し前に通過した台風11号の影響でしょう。全国的に
かなり荒れた天候になったので、海自の人達も台風避泊で大変だったのでは。
艦橋構造物内の通路には三連装短魚雷発射管がありました。あきづき型では屋内通路に押し込められている
ので、どうにも陰気なイメージが漂いますね。つくづく住環境の大事さを感じます。もちろんこれはステルス
性能を考えての事ですが、暗い構造物内の通路ではメンテもやりづらそう。
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暗い通路を抜けて前甲板に出ると、再び夏の日差しが襲い掛かります。目の前には高く聳え立つマスト、周
囲を睥睨するかのような艦橋、そしてオバQみたいな高性能20㎜機関砲。少し高い場所には甲板埋め込み式
のVLSがあり、2年前に高知新港で乗艦した護衛艦あきづきを思い出しました。そうそう、あの時は前日が
舞鶴地方隊展示訓練だったので、日本海から瀬戸内海を渡って太平洋まで一気に450㎞近く移動したんでし
たっけ。
![](2015suzutuki18.jpg)
VLSの前方には、こんごう型以上にカクカクがシャープになった62口径5インチ砲が。殆ど小屋と言っ
ていいサイズです。ちなみにこの5インチ砲、発射後の排莢は砲身真上から行われ、排莢口には丸い蓋が取り
つけられています。
![](2015suzutuki20.jpg)
砲身の真上から排莢すると、薬莢は砲身に当たらないのかなあ・・・と心配になりますが、
「ああ、大丈夫です、ちゃんと斜め方向に飛ぶ様になってますから(笑)」
と隊員さん。そりゃそうですね(笑)。
砲身の根元には丸い穴が5つあいたプレートがありますが、これは射撃試験時の各種測定機器を取りつける
為のもので、通常ここにはなにも付いていないとの事。
![](2015suzutuki21.jpg)
いやー、やっぱり新しい艦は面白かったなあ。艦橋に上がれなかったのが少し残念でしたが、護衛艦すずつ
きを満喫して上陸です。
岸壁からすずつきを眺めていると、開放された扉越しに自走式デコイランチャー(MOD)が見えました。
先程の投射式ジャマーランチャー(FAJ)とタッグを組んで、この艦を魚雷から守っている装備品です。活
躍しないに越した事はありませんが、万が一の際はよろしく頼むぞ・・・と、念を送っておきましょう。
![](2015suzutuki23.jpg)
格納庫の上部には、射撃指揮装置FCS-3Aを搭載する為の構造物が。こんごう型やあたご型では、艦橋
構造物の四方にレーダー4セットをひとまとめにしていましたが、あきづき型は2枚ずつを前後に分割して配
置する事で、より効率的な設計になっています。
![](2015suzutuki25.jpg)
今回は業者の屋台ばかりが並んだ屋台群ですが、射的の屋台だけはその道のプロである陸自の隊員さんが出
していて、いかにも素人商売っぽい距離の近さがいい感じ。ちなみにこの屋台の看板ですが、裏面の方が面白
かったです。いつ見ても目の焦点があっていないピクルス王子と、国際救助隊サンダーバードのコラボレーシ
ョン(笑)。こんなポスター作ってたのか、兵庫地本は・・・。
![](2015suzutuki27.jpg)
ん?なんかパイナップルみたいな人達が歩いてますね・・・と思ったら、そのへんをウロついていたピクル
ス王子を捕まえて記念撮影が始まりました。そう言えば配布されたイベントスケジュールに、神戸出身のアイ
ドルグループがライブを行うとありましたっけ。でもこの人達、神戸と言うよりも大阪のノリの様な(笑)。
そんな事より、誰一人としてまともな海自式敬礼になっていないのは頂けません(笑)。デカ頭が邪魔なピ
クルス王子は仕方ありませんが、しっかり練習してまた来年来るように!
![](2015suzutuki28.jpg)
最後は体育館の外階段から、護衛艦すずつきを撮影です。それにしてもこうしてすずつきを見ていると、5
月に北九州港の若松地区で見た初代である駆逐艦涼月が埋もれていた防波堤を思い出してしまいます。ボロボ
ロになりながらも乗組員を生きて帰すべく最後の最後まで必死に後進し続け、ドックに入渠した瞬間に力尽き
た駆逐艦涼月。立派な艦がその名を継いでくれて、本当によかったなあ・・・。北九州に向かって、改めて心
の中で黙祷。
![](2015suzutuki29.jpg)
さて、明日は和歌山港にて行われる護衛艦あけぼのの一般公開に参加です。なんだかんだで、海自イベント
が続くと夏になったなあと感じますね。翌週は舞鶴地方隊サマーフェスタがありますし。宜しく頼むぞ・・・
と車に声をかけつつ、魚崎浜を後にしました。
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