コインスナック御所24

2015.06.07



       徳島県阿波市に所在する、コインスナック御所(ごしょ)24に行って参りました。このコインスナック御所24
      は、今や日本で唯一となってしまったカレーライスの自販機が、現役で稼動している一部では非常に有名な
      ドライブインで、以前からずっと気になっていたんですよね。なにやらレトルトカレーとパック入り白ご飯が熱々
      の状態で自販機から出て来る
との事で、昔はわりと日本のあちこちにあったそうです。
       当日は明石海峡大橋を渡って徳島入りし、鳴門JCTから徳島自動車道に乗り継いで、土成ICから一般道
      に降ります。そこからしばらく走ると、ああ、あれだ!右手に見えて来たのが、コインスナック御所24!うーん、
      とうとう来てしまいましたよ。大阪から、レトルトカレーを食べに(笑)

       まずは建物全体を撮影です。L字型の建物の長辺が自販機スペースで、短辺はゲームセンターになってい
      る模様。こののほほんとした野放図な雰囲気が、いかにも徳島に来た!という感じがあっていいなあ。
       建物自体は予想以上にキレイで新しいですね。古い自販機があるとは思えない位に小ざっぱりしています
      が、途中で塗装をやり直したんでしょうか。もっと見るからに怪しいところかと身構えていたので、なんだか拍
      子抜け。


       建物内部には20台近い自販機がずらりと並んでいて、ちょっとした壮観です。多くは缶飲料の自販機です
      が、お菓子カップめん、ガム、うどん・・・さらに変なところでは、作業用手袋の自販機までありました。
       そう言えばさっき白い軽トラが駐車場に止まっていましたし、農作業の行き帰りで立ち寄る人達からの需要
      もあるんでしょうか。それにしても、アトム手袋という名前が気になります。パンツと長靴だけで平日のまっ昼
      間から街中をウロついている鉄腕アトム、手袋以前に色々着用すべきものがある気がするのですが・・・。

       そして建物の奥まった部分にあったのが、日本にただ一台のみ現存しているカレーライス自販機!おおお、
      本物を目の当たりにすると、ちょっとした感動です。それにしても笑福亭仁鶴氏が若い!なんともいえない味
      わいのある古びた自販機ですが、メンテナンスがきちんと行き届いているお陰で、汚さやボロさはまったく感
      じられません。

       ふと見ると、窓際のカウンター席に吸い殻が入ったベコベコのアルミ灰皿があり、独特の匂いを放っていま
      す。私はタバコは吸いませんが、こういう所に漂っているタバコの匂いは嫌いじゃありませんね。
       さて、とにかくまずは自販機カレーを体感してみましょう。カレーは中辛辛口の2種類があり、経年劣化で
      茶色く変色した透明プラスチック製のスイッチ
が歴史を感じさせます。また、スイッチ内部に印字されたカレー
      の文字の前に2文字分のスペースがあり、そこがで塗りつぶされています。まるで昔のエロ本の無慈悲な
      修正
を彷彿とさせますが、ここには一体何が書かれていたんでしょう。カツカレーかな?

       また、こんな古びた自販機に『新発売』と堂々と書かれているのもいい感じ(笑)。まあ、カレー自販機初体
      験の私にとっては、新発売も同然です。何の問題もありません。
       緊張と興奮で指を震わせつつ財布をあけますが、ありゃ?小銭が足らないや。カレー自販機は500円硬貨
      どころか1000円札にも対応していない
ので、これではカレーが買えないぞ。仕方ないので、先にうどん自販
      機へ向かいます。

       自販機うどんですが、メニューはきつねうどん天ぷらうどん。蕎麦がないのが、流石うどん県のお隣です。
      自販機そのものをよく見ると、取り出し口のプラスチックのフタの奥にも、もう一つ金属製のフタがありました。
      へー、随分守りが固いんだなあ。こんなタイプを見たのは初めて。まるで堅固な要塞を見ている様です。
       とりあえず500円玉を投入し、250円のきつねうどんを購入。かろうじて聞こえて来る僅かな作動音から、
      自販機内部にてうどんの温め湯切りが行われている様子が伺えますが、金属製のフタの所為でその様子
      が見えません。決してすっぴんを見せようとしない、異様にガードの固い女の様であります。
       独特のメカニカルな湯切りギミックが見れないのは残念ではありますが、これはこれで一体どんな仕組みで
      うどんが出来るんだ?というミステリアスさが倍増
で、面白いかもしれません。

       そして金属製の内蓋を押しのける様にして、うどんが出てきました。とりあえずうどんは窓際のカウンターに
      おいて、いよいよカレーライス自販機と対峙です。早く早く、うどんがのびちゃう!と気を揉みながら300円入
      れてボタンを押すと、ボトンと音を立てて黄色い塊が取り出し口に落ちてきました。なんだかドアポストに乱暴
      に投げ込まれた小包
みたいですね。触ってみると、おおお、熱々ですよ

       はやる心を抑えつつ、まずは記念撮影。そして『カレーライス』と描かれたシンプルな黄色い包装紙を剥が
      すと、銀色のレトルトカレーパック入りの白ご飯が出てきました。レトルトカレーはハウスカリー屋のカレ
      ー
。パックご飯には薄いセロファンが貼られ、その上にプラスチックのスプーンが乗っています。

       しかしこの、いかにも炊きたてをおしゃもじでぽてぽてと盛った感じがあるご飯がいいですね。市販の味気
      ないトレー方式のパックご飯に比べると、人の手が入った温かさの様なものを感じます。さっそくご飯を片方
      によせて、空いたスペースにレトルトカレーを入れましょう。

       おお、福神漬けこそありませんが、立派なカレーライスの出来上がり。うーん、これが日本に一台しかない、
      カレーライス自販機から出て来たカレー
か・・・。感慨にふけりつつしばし全体を愛でたのちに、まずは一口。

       大げさなもの言いや変な思い入れを排して、あくまでミもフタもなく言ってしまえば、結局はレトルトカレー以
      上でも以下でもないシロモノ
です。この場所に来て自販機から買って食べる直前までが味わいのピークとい
      うか、食べてしまえば
       「うん・・・レトルトカレーと、ご飯だね・・・」
       という感じ。うーん、決してがっかりでも失望でもありませんが、この微妙な感想を表現するのは難しい・・・。
       かといって、夢は夢のままにしておいた方がいいのかと言われれば決してそうではなく、この場所に来てこ
      の自販機で買って、この窓際のカウンターでこの固いベンチに座って食べる感動の為に、300円を支払う価
      値は十分ある・・・
と言えますね。

       もう一方のきつねうどんですが、まず上に乗っている油揚げの分厚さに驚かされました。なんだこりゃ。
      揚げ
稲荷寿司と見間違えそうな、もの凄いボリュームです。その油揚げの下には、湯切りの際に流されな
      い様に、小さなカマボコ青ネギが隠れていました。
       主役のうどんはいかにも香川県のお隣らしく、太く角ばった堂々たる体格。香川県には、以前何度か讃岐
      うどんを食べに来た事がありますが、四国の自販機のうどんはよく考えたら初めてだなあ。まずは一口。
       ほほう、これはなかなか。さすがに打ちたてという訳にはいきませんが、自販機から出て来たとは思えない
      しっかりしたうどん
です。出汁は思ったよりも薄味ですが、ぶ厚い油揚げから染み出てくる濃いめの煮汁との
      コントラストが絶妙ですよ。

       そしてこの油揚げ、驚くほど分厚いのに、ちゃんと中までスポンジ状に揚がっています。この厚さでは中央
      部が生の豆腐っぽくなりそうですが、中まで均等に揚がっているのがちょっと驚き。こちらでは、こういう油揚
      げが普通なんでしょうか。内部にたっぷりとため込んだ甘辛い煮汁のジューシーさがたまりません。
       普通の油揚げがスライスベーコンだとしたら、こちらはぶ厚いステーキの様。文字通り畑のお肉!といった
      感じですね。どちらがいいかは、単純に好みと慣れの問題出と思いますが、私は結構好きですよ、この極厚
      油揚げ

       夢中になってカレーライスきつねうどんを味わっていると、いきなり一羽の燕が低空飛行で侵入してきて驚
      かされました。よく見ると天井のあちこちに水平な板が取り付けられ、その上にはがありました。このドライ
      ブインの自販機コーナーは、燕にとっても憩いの場所なんですねえ。
       あ、よく見ると、カップめん自販機にカップ焼きそばがありました。あー、こっちも食べたかったなあ。買って
      帰ろうかとも思いましたが、やはりこういうのはその場で食べてこそ。このカレーだって、家に持ち帰ればただ
      の白ご飯とレトルトカレーですからね。またいつか来た時のお楽しみにしましょう。
       十分堪能した後は、改めてカレー自販機を眺めます。ん?自販機の正面にどんと描かれた『ライス』の文
      字がなんか不自然ですね。『カレーライス』じゃなくて『ライス』?よく見ると、ライスの上に『ボンカレー』の文字
      を消した跡
がうっすらと残っていました。ははあ、最初はボンカレー専用自販機だったのか、これ。

       さっき出て来たのは他社のカレーだったので、恐らく途中でレトルトカレーの仕入れ先を変えるにあたって、
      わざわざボンカレーの文字をオーナーさんが消したのでしょう。あ、スイッチのカレーの前を黒塗りにしていた
      のも、そこに『ボン』の字があったせいか。
       どのような理由があって他社のカレーに切り替えたのかはわかりませんが、これが私だったら、
       「まあ、どんなカレーが出てくるかは、お楽しみと言う事で・・・(笑)」
       とか面倒くさがって誤魔化してしまいそう。燕の巣作りを手伝ったり古い自販機を大事に維持したり・・・と、
      オーナーさんの人柄や心映えが伺える様なコインスナック御所24でありました。

       その後は国道318号線を北上し、何故かやたらとが飛んでいる宮川内ダムを見に行きました。いいです
      ねぇ、静かな山の中の人気のない小さなダム湖
。口の中に蛾が入らない様に気をつけながら、ぐっと深呼吸。
      四国には自衛隊イベント関連で年に1~2回は訪れているので、その折にでもまた寄りたいなあ、コインスナ
      ック御所24。眠気覚ましのストレッチを入念に行ってから、大阪に向けて車を走らせました。




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