2014.05.25
京都府宇治市に所在する大久保駐屯地にて行われた、大久保駐屯地創立記念行事と第4施設団創隊記念行事
に参加して来ました。第4施設団とは、日本全土を大きく5つに分割した方面隊の中でも最大面積を誇る、中
部方面隊隷下の工兵部隊であり、東は富山県から西は山口県までの各部隊の施設構築支援や訓練支援、各地の
災害派遣、さらには世界各地における国連平和維持活動等でも大活躍している、中部方面隊が誇る武装建築屋
集団であります。
その第4施設団の総本山であるここ大久保駐屯地には団本部が駐屯し、毎年5月に行われる駐屯地と団の創
立記念行事は大いに盛り上がる事でも知られています。気候のいい時期ですし、私個人的にも施設科が大好き
という事もあり、今月はこれだけは外せないぜと鼻息荒く参加となりました。
当日は朝8時過ぎに京阪電鉄大久保駅に到着。富山県から遠征して来たSAA水兵さんとそのご友人と合流
し、しばらく待って駐屯地の中へ。駐車場すぐ横にある、施設科の駐屯地らしい広大な資材置き場を抜けて式
典会場に到着です。
滑走路の様に横長な大久保の式典会場。まだ開門直後とあって最前列は空いていますが、とりあえず会場正
面にあるクレーンの前に見学場所を確保です。ここなら大久保の訓練展示の目玉である地雷原処理ギミックを、
真正面から見る事が出来そう。
その後は部隊の入場が始まるまで、3人で駐屯地内を歩き回ります。第7施設群の隊舎の前には、『祈願南
スーダン派遣施設隊 任務完遂』という大きな掲示物が。昨年11月から行われている第五次南スーダン派遣
任務ですが、今も遠く離れたアフリカの地で、国際貢献活動に汗を流している隊員さん達がいるんですね。
PX(駐屯地売店)が入る厚生センターには、鯉が泳ぐ池を橋で渡って入ります。相変わらず微妙に薄暗
い店内ですが、この古びた文房具店みたいな雰囲気が素晴らしい。今は何処の駐屯地のPXも小奇麗なコンビ
ニみたいになっているので、このごちゃごちゃした棚の奥から得体の知れない掘り出し物が出てきそうな怪し
い感じがたまりません。
その奥にあるコンビニのお土産コーナーにて、『来るなら来い!』という勇ましい名前の自衛隊限定饅頭を
発見。うーん、微妙にもやもやする商品名だなあ。現場の隊員さん達が抑止力としての自分達の存在に自信と
誇りを抱いた上で、
「もしトチ狂ってウチに攻め込んで来やがったら、倍返しでボッコボコにしてやるぜ!それを覚悟の上なら
いくらでも相手してやるぜ!」
と胸を張る分には全く問題ないのですが、来るなら来いって、饅頭作ってるだけのメーカーがなあ・・・。
戦闘訓練にしても災害派遣にしても、自分達がこの国の守りの最後の砦であるという使命感と気概が隊員さん
達を奮い立たせているのだと思いますが、まさか自衛隊がこんな名前を指定したとは思えませんし、こういう
事を当事者以外が言ってしまうのはどうなんだろう・・・。
この辺りは、こんなHPを作っている自分を振り返って今一度戒めにしたい所ではありますが、2年前の海
田市駐屯地で見た、『俺達、甘くはないぜ!』という甘酒缶ぐらいのトンチにしておくのが、丁度いい塩梅な
んでしょうねえ。
厚生センターの掲示板には、隊員さん達から部隊への要望と思われる投書内容が掲示されていましたが、
その中に『時間を戻せ』という意見が幾つもあるのが気になりました。時間を戻せって、自らの黒歴史に煩悶
している隊員さんが多いのか、大久保は。私も身に憶えが沢山ありすぎるので、大いに親近感が湧くところで
す。
とは言え、いくら自衛隊でも出来る事と出来ないことが・・・そういう事はドラえもんにでも頼めよ!と思
いましたが、どうやら変更になった夕食時間を元に戻してほしいという意味の模様。服務指導の観点から、そ
れまで1630からだった夕食が1730になった事が、隊員さんからの不評を買っているみたいです。
また、『(朝食が毎日)パンなのはおかしい。日本人ならごはんを食べよう』という意見には、同じく親米
派(ちょっと意味が違う)の私としても、深く首肯させられるものがありました。
食堂の外には射撃や体力、TOEIC等の各種検定試験の上位入賞者を称える『第4施設団ナンバーワン戦
士』が発表されていました。普通は証明写真風にすました顔の隊員さんの写真が使われる事が多いですが、大
久保駐屯地はさらに一歩踏み込んで、小銃や拳銃を構えたりトレーニング中の隊員さんの写真を使っています。
ただ、点数だけしか書いてないのはちょっと分かりにくいなあ。年に一回とは言え、折角こうして外部の人
の眼にとまる事もある掲示物なんですから、何点が満点なのか、平均点はいくらだったのかも併記すれば、こ
の人達がいかに称賛に値する努力を日々重ねているかがさらにアピールできる気がします。
あと、TOEIC高得点の人達が非常に頭がよさそうな顔をしているのが、納得でありました。
隊舎の窓に妙なものを発見。どうやらレースカーテンの一部を切り抜いて、外からでも最低限室内の火の気
を点検できるようにしているみたいですが、場所が場所だけに銃眼みたいだなあ。
敷地内のあちこちでは、この後の部隊整列に備えて隊員さん達が集合し始めています。さて、そろそろ会場
に戻るとするか・・・とその前に、屋台の陣容をチェックせねば。まだどの店も準備中で閑散としていますが、
昼以降はここが戦場になる訳か・・・。フランクフルト、唐揚げ、ぶっかけうどん、磯辺揚げ、越前おろしそ
ば、五平餅、岐阜焼きそば、飲み物、かき氷、ポップコーン、大久保カレーと、第4施設団各駐屯地から集結
した屋台群がひしめき合っていました。
それにしても、大久保に来るたびに食べ損ねている焼きそばに関しては、結局無策なまま今年を迎えてしま
いました。今年は食べる事が出来るだろうか・・・と切ない気分になっていると、
「今年は食べれますかね、焼きそば(笑)」
とSAA水兵さん。ちょ、勝手に人の心を読むなあああ!この人は基本無口な人なのですが、時々こういう
技を使うので油断できません(笑)。
という訳で拠点に戻ります。今日は金沢や青野原でも記念行事が行われ、岡山県の玉野では訓練支援艦くろ
べの一般公開が行われている所為か、昨年に比べると若干空いているなあ。関西の自衛隊ファンがいい塩梅に
分散してしまった模様です。
そして部隊が入場開始。施設団単位の創隊記念行事に相応しい壮大な陣容です。これだけ員数が揃うと、や
っぱり絵になりますね。
続いて式典参加部隊の紹介が行われます。会場向かって左より中部方面音楽隊(伊丹)、第6施設群(豊川
・鯖江・岐阜)、第7施設群(大久保・富山・和歌山)、第304施設隊(出雲)、第305施設隊(三軒屋)、
第102施設器材隊(大久保)、第307ダンプ車両中隊(大久保)、第3施設大隊(大久保)、第3後方支
援連隊第一整備大隊施設整備隊(大久保)、中部方面後方支援隊第104施設直接支援大隊(大久保)。
その後は観閲部隊指揮官を務める第6施設群長大足一等陸佐が入場し、部隊は指揮官に敬礼。
駐屯地からの感謝状受賞者の紹介が行われた後は、本式典の観閲官である第4施設団長兼ねて大久保駐屯地
司令である田祐一陸将補が、黒塗りの業務車で入場。部隊は観閲官に対して栄誉礼。
続いて国旗も入場し、部隊は着け剣による捧げ銃(ささげつつ)を執り行います。式典参加者も起立して、
中部方面音楽隊は国歌君が代を厳かに吹奏。
その後部隊観閲が行われ、観閲官による式辞が披露されました。田団長は鷹揚で落ち着いた印象の、訥々
とした話し方。カツカツ歩いてぴゃぴゃぴゃぴゃっと式辞を披露し、スパッと切り上げていた前任の団長とは
随分雰囲気が違いますね。
続いて大規模な記念行事ならではの長々とした来賓祝辞、来賓紹介、祝電披露が行われ、式典は以上で終了。
部隊はこの後の観閲行進の準備のために、ここで一旦退場です。
式典会場には水タンク車とタイヤローラがやってきて、グラウンドに散水開始。この頃にはかなり気温が上
がってきたので、一服の涼が有難いなあ。それにしてもあのタイヤローラ、いつの間にやら新しいのに更新さ
れていますね。前はもっと味わいのあるダサさというか鈍重さがあったのに、やけに垢抜けたカッコいいデザ
インになって、車高もかなり下がっています。うーん、私的には前の方が好みだったな・・・。
そして観閲行進の始まりです。先頭を切るのは中部方面音楽隊。行進曲『大空』を演奏しながら、指揮者は
観閲壇前で切れる様な敬礼を見せています。
音楽隊が位置についたところで、京都府と奈良県の旗がパジェロに乗って登場。その後演奏が『抜刀隊』に
切り替わり、観閲部隊指揮官である第6施設群長と幕僚達がパジェロに分乗してやってきます。
それに続くは第7施設群教育隊による徒歩行進。自衛官候補生としての教育期間を修了し、晴れて部隊に配
属されたばかりの施設科のタマゴ達です。災害派遣の現場は当然として、普通科や機甲科といった戦闘職種も
施設科の支援なしでは成り立たないのですから、くれぐれも誇りと自信を持って頑張ってほしいものです(何
を偉そうに)。
次は第6施設群から、パジェロと作業機(クレーン)つきの7dトラックが続きます。
第7施設群からは救急車と水タンクを牽引した7dトラック、中型セミトレーラに乗せられた掩体掘削機、
そして地雷原処理車。物々しいキャタピラ音と地響きに、一般見学者からは大きなどよめきが。
第304施設隊からは75式ドーザとパジェロ。75式ドーザは個人的に大好きな車両だなあ。砂塵を巻き
上げながら重厚かつ軽快に走っている所は、惚れ惚れするぐらいカッコイイです。
第305施設隊からは中型セミトレーラに乗せられた中型ドーザ。豪雪災害では道路の除雪でも大活躍する
装備品です。
第102施設器材隊からはパジェロ、7dトラック、92式浮橋、動力ボート、そして中型セミトレーラに
乗せられたクラッシャー2型。災害復旧現場で発生した自然石やコンクリート塊を様々なサイズの砂利に破砕
して、路盤材や埋戻材に変えるというスグレモノです。巨大な上に妙な機能美もあるので、工場萌えの人達も
グッとくるのでは。
続いては第307ダンプ車両中隊から、31/2dダンプが6両編成で登場。観閲壇前にて荷台部分を動かし
て滑らかなウェーブを披露していますが、なんだかコブラが鎌首を持ち上げて威嚇しているみたい。
第3施設大隊からはパジェロ、バケットローダ、81式自走架柱橋。あと、あの中型セミトレーラに乗せら
れている装備品は何だろう。バケットローダと中型ドーザを合わせたみたいな車両ですが。
その後にはトラッククレーンが続きます。うーん、これも適度にゴテゴテしていてカッコイイ。
第3後方支援連隊第一整備大隊施設整備隊からはパジェロとシェルター付きのトラック。
第104施設直接支援大隊からはパジェロ、7dトラック、重レッカ。
そしてここからは施設科以外の車両が登場です。第10偵察隊からは87式偵察警戒車、第7普通科連隊か
らはパジェロ、第3戦車大隊からは96式装輪装甲車。
再び第7普連からの120mm迫撃砲RTを牽引した高機動車が続いた後は、おお、第3特殊武器防護隊か
らのNBC偵察車が!初めて見ました!この後の訓練展示にも出て来るのかな?
第8高射特科群からは03式中距離地対空誘導弾。第14特科隊からは155mmFH−70榴弾砲を牽引
した7dトラック・・・って、14特?松山駐屯地から来たの?トラックのバンパー右には確かに14特と書
いてありましたが・・・。わざわざ愛媛県から大変だなあ。
第3戦車大隊からの74式戦車が地響きを立てながらやってきたのと同時に、第3飛行隊のUH−1J多用
途ヘリとAH−1S対戦車ヘリコブラが堂々の編隊飛行を披露して、大迫力の観閲行進を締め括ります。いや
あ、やっぱり施設科の観閲行進は見ごたえがありますね。
会場には観閲部隊指揮官がやってきて、観閲行進の終了を報告。壇上の観閲官と敬礼を交わします。その後
は観閲官と国旗が退場して、記念式典は以上で終了。この後はアトラクションと、訓練展示の準備が始まりま
す。
まずは中部方面音楽隊が、『上を向いて歩こう』と『Let it go』を披露・・・とここで右手を見
ると、うわああああああ、資材運搬車がやってきたああああ!
いや、特別大騒ぎする様な車両でもないのですが、私個人的に大好きな装備品なんですよね、資材運搬車。
この後の訓練展示で使用する大道具を持ってきてくれた模様ですが、動いている資材運搬車を見るのは久しぶ
りだなあ。たまに観閲行進に参加しても、トラックの荷台にちょこんと乗せられている事が殆どですし。
小さな体をゴトゴトガタガタ震わせながら位置についた後は、荷台にとりついた隊員さん達が鉄条網やライ
ナープレートを次々と運び出しています。いやー、資材運搬車好きとしては眼福としか言い様がありません!
まるでリング上のジャイアント馬場を眺める昔の全日ファンの様な気分であります。
施設科以外の部隊にも沢山配備されている働き者なのに、あまりに地味過ぎて観閲行進にも装備品展示にも
殆ど姿を見せない資材運搬車ですが、こうして元気に頑張っているのは何よりです。しかし、一度ぐらい資材
運搬車達が大暴れする訓練展示とか見てみたいなあ・・・。
訓練展示用の敵陣地の構築を見守った資材運搬車は、小さな背中を満足そうに聳やかして堂々の退場。カッ
コイイなあ。
そして中部方面音楽隊の演奏も終了。ああ、申し訳ない。資材運搬車に視線釘づけで、演奏殆ど聴いていま
せんでした。とても後ろめたい気分で拍手を送ります。
続いて中型セミトレーラが2両、荷台部分に太鼓演奏部隊を乗せてやってきました。第3施設大隊の3施太
鼓と宇治駐屯地の鳳凰太鼓による合同演奏です。ドコドコドコドコと勇壮な曲が披露される中、会場の奥の方
から防弾ベストと小銃で身を固めた物々しい一団がやってきました。大久保、豊川、和歌山、三軒屋各駐屯地
から集合した、22名の格闘指導官達による格闘展示部隊です。
大きな拍手を浴びながら退場した太鼓演奏部隊と入れ替わる様にして、周囲を警戒する隊列を組みつつ会場
正面に整列した格闘展示部隊は、着剣した89式小銃を使っての基本動作を披露。以前伊丹でやっていた大人
数によるド迫力の格闘展示もいいですが、少数精鋭のプロ中のプロによる格闘展示も緊迫感があって凄いなあ。
突く、蹴る、受ける、撃つの一つ一つを披露した後は、様々な状況に応じた対処要領を見せています。最後
は会場中央に整列して、格闘展示部隊は大きな拍手を浴びながら退場。
さて、いよいよ訓練展示です。それに先立って展示内容と状況の説明が行われますが、上空に飛来したヘリ
の爆音とスピーカーの音量不足で、言っている事が全然聞こえないのが残念だなあ。
まずはAH−1S対戦車ヘリコブラがやってきて、低空をぐるぐると旋回。会場右側一帯を占拠した対抗勢
力の注意を引きつけている間に、後方から進入して来たUH−1J多用途ヘリから4名のレンジャー隊員がロ
ープ降下。着地後周囲の安全を確保した4名のレンジャー隊員は、すぐに敵陣地の側面に回り込んで身をひそ
めます。
後方に展開した特科部隊の155oFH−70榴弾砲が砲撃準備を整える中、会場中央まで進入して来た普通
科情報小隊の偵察オートが敵陣地に対して威力偵察を実施。敵陣深くまで一気に斬り込んだ後は倒した偵察オ
ートを盾に小銃射撃を浴びせ、返ってきた反撃の様子から敵陣地の内容や戦力規模に関する情報を収集します。
偵察行動を終えた情報小隊は、すぐにオートを引き起こして脱兎の如く前線から撤退。87式偵察警戒車が
派手に動き回って注意を引きつけ、偵察オートの撤退を支援します。
そして本隊に持ち帰られた情報を元に、中隊長は陣地奪還作戦を下命。まずは部隊の前進を支援すべく、後
方に展開した特科の155mmFH−70榴弾砲2門が砲撃開始。ズバン、という空包音が鳴り響き、敵陣地
周辺に仕掛けられた火薬が派手に爆発して着弾煙を噴き上げます。
敵の反撃が怯んだ一瞬の隙をついて74式戦車が前進し、急停車の後は敵陣地に向けて砲撃。ズドン、とい
う腹に響く音が久しぶりだなあ。大久保の会場は横に細長い形状なので、見学場所によってはかなり近い所で
空包発射音を体感する事が出来ます。
そして上空からは、AH−1S対戦車ヘリコブラがたたみかけるように攻撃開始。地上部隊と航空部隊が巧
みな連携をとって敵陣地に攻撃を浴びせている間に、後方の陸自本隊からは普通科小銃小隊を乗せた軽装甲機
動車が突入開始。敵陣地との間で激しい銃撃戦が交わされます。
そんな中、軽装甲機動車のルーフ上で機関銃を担当していた射手が被弾。報告を受けた本隊からは救急車が
駆け付け、すかさず負傷者の救助に当たります。
ここで先程から潜んでいたレンジャー隊員が現れ、敵の側方陣地にあるトーチカに対して奇襲攻撃を開始。
構えた火炎放射器からは炎が20mぐらい噴き出して、針金と新聞紙で作られたトーチカ(笑)はあっという
間に炎に包まれます。いやあ、やる事は分かっていましたが、何度見てもインパクトあるなあ。
優に100mは離れているであろうこちらまで火炎放射器の熱風が押し寄せてきて、見学者からはさらに大
きなどよめきが。おおお、凄いなあ。
真っ黒な煙が立ち込める中、敵陣地手前に敷設された地雷原を無力化すべく地雷原処理車が登場。巨大な車
体に似合わない猛スピードで突っ込んできた地雷原処理車は、発射機をぐいんと持ち上げます。
そしてここからが大久保の目玉、飛翔体発射のギミックです。クレーン先端を支点に張られたロープに沿っ
て、爆薬を牽引した飛翔体がするすると上昇開始。ちゃんとお尻から小さな炎を吹き上げているのが、大昔の
特撮みたいで面白いなあ。
地雷原を飛び越えた所で飛翔体は落下し、導索に引き出された爆薬が一斉に爆発。埋まっている地雷もろと
も地面を一直線に吹き飛ばし、突撃通路の啓開に成功です。
爆薬が掘り起こした突撃経路の整地を行うべく、今度は75式ドーザが轟音を上げながら突っ込んできまし
た。突撃経路の凸凹を一気に均した75式ドーザはすかさず離脱。そして訓練展示はいよいよクライマックス
に差しかかります。
74式戦車が先頭を切り、普通科小銃小隊を乗せた96式装輪装甲車と軽装甲機動車群が敵陣地に向けて一
気に突入開始。
各車両から飛び出してきた普通科隊員が敵陣地に向けて突っ込み、周辺一帯の奪還に見事成功。以上で訓練
展示は終了です。
いやあ、実に大久保らしい施設科の魅力たっぷりの訓練展示でしたね。ただ、一つだけ贅沢を言わせてもら
えるなら、75式ドーザの整地作業をもう少しこだわって見せてほしかった気もします。伊丹の訓練展示では、
75式ドーザが微妙にいやらしい小刻みな前後運動を繰り返して、掘り起こされた不整地を平らに均している
様子をうまく見せていたので、あれを取り入れるのも面白い気がします。
急に静かになった式典会場では、隊員さん達による後片付けが始まりました。未だにぶすぶすと燃え続ける
トーチカに対しては、隊員さんが青バケツの水による消火作業を実施。ド派手な演出効果の割に後始末がやけ
に地味で原始的だったのが、ちょっと面白いなあ(笑)。
さてこの後は、屋台広場に向けて移動開始。昨年に比べてやや少ない気はするものの、それでも凄い人混み
ですね。こりゃもう焼きそばは残ってないだろうなあ。さて大久保カレーからいくか、ぶっかけうどんから行
くか・・・あれ?岐阜焼きそばの屋台の前には、まだ行列が伸びています。昨年は訓練展示終了後まっ先に駆
けつけたにもかかわらず完売御礼だったのに、今年はまだ残ってるのか!
という訳で鼻息荒く最後尾に並びます。鉄板の上では大量の焼きそばが豪快に作られ、行列の消化速度も順
調。おおお、ようやく食べる事が出来るのか、大久保の岐阜焼きそば(ややこしいな)!
その岐阜焼きそばですが、これがなかなか不思議な焼きそば。ラー油をベースに
キムチで味を整えている様で、ふわりとしたゴマ油の香りに唐辛子の辛味とキムチの酸味が加わって、ソース
味の焼きそばとはまた一風変わった、隠し球的な美味しさがあります。
続いては大久保カレーの屋台へ突入。危うく売り切れ寸前でしたが、無事入手する事が出来ました。いやー、
今年はツイてるな。そしてこのカレーが昨年同様かなりのてんこ盛りで、いくら儲けを考えなくてもいい部隊
の出店とは言え、300円でこの量は驚きです。またこの特盛り具合が実に飯場チックというか、施設科なら
ではの豪快さだなあ。
昨年は部内の炊事競技会で優勝した事から、チャンピオンカレーと銘打っていた第7施設群本部管理中隊の
このカレーですが、今年は大久保カレーになっている所を見ると、残念ながら連覇はならなかった模様。来年
は是非ともリベンジを果たし、『帰ってきたチャンピオンカレー』を復活して頂きたいものですね。
焼きそばとドカ盛りカレーでお腹いっぱいになりました。その後は腹ごなしがてら、装備品展示を見て回り
ます。会場では野外訓練の一日に沿った形で展示が行われていて、訓練→食事→入浴→就寝の順番で関連する
装備品を見る事が出来るのは面白い工夫だなあ。野外入浴セットは足湯ならぬ足水になっていて、沢山の人達
が気持ちよさそうに冷たい水に足を突っ込んでいました。
また、擬装用のドーランを使ったペイントコーナーも大賑わいで、大勢の子供達が手の甲にキャラクターの
ペイントをしてもらっています。成程、こういう使い方もあったのか、擬装用のドーランって。いいアイデア
だなあ。
おおお、観閲行進に参加していたNBC偵察車が!汚染地域に乗り込んで放射線強度(Nuclear)や生物兵
器(Biological)、有毒化学剤(Chemical)の検知や採集、解析、さらには気象観測を元にした被害規模の拡
散予測まで単独で行う事の出来る、特殊武器防護隊の最新装備です。巨大で腰高な8輪装甲車ですが、前4輪
の操舵により日本の狭隘な道路事情でも機敏に移動する事が出来るとの事。
ちなみに化学防護車に装備されていた試料採集用のロボットアームですが、故障のリスクや教育時間の長さ、
メンテナンスコストの観点から、NBC偵察車では採用されませんでした。その代わり車体と一体化したゴム
グローブに内部から手を突っ込んで、地面から直接試料をつまみあげて車内に取り込むプレートに乗せる方法
になったとの事。アナログがハイテクに勝利した一例ですね。
アメリカとソ連が宇宙開発でしのぎを削りあっていた頃、莫大な予算をかけて無重力空間でも使えるボール
ペンを開発したアメリカに対し、ソ連は最初から鉛筆を宇宙船内に持ち込んだ・・・というエピソードを彷彿
とさせる話です。
その後は駐屯地内を散策。ふと見ると小さな物置きがあり、『戦力回復資材庫』との看板がかかっていまし
た。中にはでかい段ボール箱が一杯に詰まっていますが、戦力回復資材って・・・何なんだろう。というか、
そんな大事そうなものをこんなイナバの物置きみたいなのに入れるのか。うーん、謎過ぎる・・・。
正門までの道すがら、見逃していた文化展のテントに立ち寄りますが、何故か入れ歯が堂々と展示してあっ
たのには驚きました。書画や陶芸、写真、模型などは分かりますが、文化なのかこれは(笑)。
なんでも入隊前に歯科技工士をやっていた女性自衛官が過去の作品を提出した様ですが、作品名『入れ歯』
って・・・。そのまんまですね(笑)。
恐らくなんでもいいから作品募集!という部隊からの要請に対して、自慢の一品を出したのだと思いますが、
涼しい顔で入れ歯を持ってくる女性自衛官といい、それをそのまんま展示してしまう文化展係の隊員さんとい
い、大久保駐屯地のセンスは色々と凄すぎます。
最後は正門脇にある資料館を見学。駐屯地の歴史や各地の災害派遣に参加した大久保の部隊の記録がこぢん
まりとまとめられていますが、中でも燦然と輝いているのがカンボジアをはじめとした世界各地での自衛隊P
KO派遣における、第4施設団各部隊の奮闘の記録です。
何をおいても現地での宿営地作りのために、真っ先に施設科が乗り込むのが常なんですね。自衛隊の海外派
遣の歴史が、そのまま施設科の汗と努力の近代史と言っても過言ではないのでしょう。
文字通り中部方面隊の強固な土台として頑張り続ける第4施設団。これからのさらなる活躍に期待しつつ、
大久保駐屯地を後にしました。
トップページに戻る
イベントレポート目次に戻る
|