2014.04.27
兵庫県の阪神基地隊で行われた、MSC684掃海艇なおしまの一般公開に参加してきました。なおしまはす
がしま型掃海艇の4番艇で、横須賀から転籍となった掃海艇つのしまとともにここ阪神基地隊で第42掃海隊を
編成しています。近畿各地における水中爆発物の除去・処分を行い、安全な航路の維持の為に日々汗を流してい
るフネであります。
ちなみにこのなおしまですが、それまで阪神基地隊を住処としていたMSC677掃海艇まきしまの退役に伴
い今月の7日に下関基地から転籍してきたばかり。平成23年度には佐世保地方隊優秀年度艇の表彰を受けた実
績もあり、まさに大きな箔をつけて威風堂々やってきた阪神基地隊の期待の新顔であります。
当日は近隣の大阪湾で護衛艦あたごの一般公開が行われていたにも関わらず、午前2回目の公開前には沢山の
人達が見学受付に集まっていました。
阪神基地隊の南側岸壁にぽつんと佇むMSC684
掃海艇なおしま。
ここ阪神基地隊は、平成7年の阪神大震災に伴う液
状化現象により、岸壁が浸水する等の壊滅的な打撃を
受けましたが、その後は大規模な改修工事が行われ、
現在は大型艦艇も入港できる関西の重要拠点として生
まれ変わりました。
おおすみ型輸送艦も楽々入港できる広い岸壁に小さ
な掃海艇がいると、なんだか空自の基地にでもいる様
な錯覚を覚えます。
ちなみにこのなおしま、昨年6月に関門海峡にて戦
時中のMK26水中機雷(米国製)が発見された際に
は、現場に駆け付けてEOD(水中処分員)による爆
破処理を行ったという実績を誇っています。
戦後復興時には海路の安全を確保するため、多数の
殉職者を出しながら各地の港の掃海作業を行って来た
のが掃海部隊です。
そして現在も、輸出入の殆どを海上輸送に頼ってい
る日本の経済を守るべく、掃海部隊の人達が見えない
所で頑張っています。
という訳で、なおしまに初乗艦。総勢50人余りの
見学者は3班に分かれ、それぞれ違う出発点から同じ
艦内見学コースを回ります。
お陰で撮影したいのに目の前は人で一杯・・・とい
う事もなく、見学者からの質問にも親しみやすく丁寧
に答えていましたし、なおしま乗組員の仕切りはお見
事でしたね。
前日の護衛艦あたご一般公開では途方もない数の見
学者が押し寄せていましたが、海自の人達もそれに出
来る限り対応しようと工夫しています。
当直員の敬礼を受けつつ乗艦。まずは前甲板にある
20o機関砲へ向かいます。海中の機雷を切り離して
浮上させたあと、この機関砲で爆破処理を行います。
機関砲自体は砲架にしっかり固定され、射撃時の射
手にかかる負担はそれほどきつくは無いそうですが、
説明係の隊員さんの両足の踏ん張り具合にご注目下さ
い。見事な四股立ちであります。
また、浮上させた機雷に正確に当てるには練習より
も個人の射撃センスが重要らしく、上手い人は最初か
ら簡単に命中させるとの事。
ちなみにこの機関砲の周囲にはドーナッツ状の足場
があり、360度への射撃が可能です。ここで見学者
の一人から、後ろ向きに打つと船に当たってしまいま
せんか?と質問が。すると隊員さんは、
「いいところに気がつきましたね!艦橋に当たる手
前でストッパーがかかって、それ以上は回らない仕組
みになっています。砲身を真上に向ける事は出来ます
が、まあ上空に向けて撃つ事はありませんね。撃つ事
は撃てますけど・・・(笑)」
との事でした。
艦首の旗竿には国旗と、満艦飾に使用する国際信号
旗が掲げられていました。ちなみに満艦飾とは、艦首
から艦尾にかけて色とりどりの国際信号旗を掲げてお
祝いの意思を表す習慣で、特定の祝祭日や観艦式、自
衛隊記念日等で行われます。
なおしまの阪神基地隊への引っ越しを祝う意味があ
るのかな?と思いましたが、説明係の隊員さん曰く、
「あ、これは来月3日の憲法記念日での満艦飾の準
備ですよ。引越祝いではありません(笑)」
との事でした。
なおしま艦橋。すがしま型からは、艇長席が他の自
衛艦同に右側になっています。前のまきしまは一世代
前のうわじま型だったので、機器の配置の関係上艇長
席が左側にあり、変な感じだったんですよね。
またすがしま型からは、艦橋の窓ガラスにあった丸
い旋回窓が廃止になり、より護衛艦に近いシャープな
印象を与えています。
とは言え、あの漁船みたいな丸い旋回窓も、木製品
を多用した掃海艇らしい柔らかな造形で好きだったん
ですけどねえ。
なおしま艇長席。掃海艇は金属が帯びた磁気に反応
する機雷に引っかからない様、船体や船内の調度品に
に出来る限り木製品を使用しています。
木造船は構造材のしなりで爆発の衝撃を逃がし易く
鋼鉄製の船体より安全性が高い反面、船体寿命が短く
維持コストが高くつくのがデメリット。
また、船体に使用される良質なアメリカ松の安定供
給が難しく、職人である船大工の技術の継承も先行き
が不透明なので、ひらしま型掃海艇4番艇のえのしま
以降は船体は強化プラスチック製となりました。
艦橋にあったミッキーマウスの卓上カレンダー。護
衛艦の艦橋内だと違和感が凄いですが、愛嬌のある木
造の掃海艇内では妙に似合っています。
4月1日のところには『エイプリルフール』と書か
れていましたが、お茶目な隊員さんがいて、乗組員全
員で警戒しているのかな(笑)。そんな家族的なまと
まりが生まれやすいのも、小所帯な掃海部隊の魅力。
ちなみに乗組員は前のまきしまからまるごと入れ替
わり。住む家が変わっただけで、艇内生活は殆ど同じ
だそうです。ほんと引っ越しなんですね。
なおしま艦橋後部の旗甲板から見た、神戸港の風景。
佐世保や舞鶴の自然あふれる景色も素敵ですが、阪神
基地隊には港町神戸らしい洗練された雰囲気が漂って
います。
ちなみに阪神基地隊の隊舎は6階建てですが、隊員
食堂は最上階にあるそうです。基地司令の執務室より
も高い場所なんですね(笑)。夕食時はさぞかし綺麗
な港町の夕焼けが楽しめるんだろうなあ。なかなか心
憎い配慮だと思いました。どうせなら屋上にビアガー
デンとかもどうでしょうか(笑)。
後甲板にあったのは、自走式機雷処分具PAP104
Mk5。有線誘導で水中機雷に接近し、ワイヤーカッ
ターで係維機雷を浮上させたり、抱え込んだ時限爆弾
を投下して機雷を水中処分してくれる、巨大なリモコ
ン無人潜水機です。
後部には五枚の舵状の板がついていますが、これは
あくまで姿勢安定のための固定スタビライザーで、水
中での方向転換や姿勢維持は4基のスラスター(小型
スクリュー)によって制御されます。レモンイエロー
の可愛いデザインなので、私も一つ欲しいなあ(笑)。
なおしま後部甲板。沢山の掃海装置やクレーン、ケ
ーブル類の巻揚げ機が並んでいて、足の踏み場もない
程。
文字通りのワークスペースといった感じで、船の上
というよりも台風で屋根を飛ばされた町工場の中みた
いな雰囲気でした。
以上でなおしまの一般公開は終了。公開されたのは
上甲板と艦橋だけで、艇内の食堂を見る事が出来なか
ったのは少し残念でしたが、これからは阪神基地隊の
新たな顔として何度も見学する機会があるでしょうか
ら、またのお楽しみにとっておきましょう。
ちなみにこのすがしま型掃海艇ですが、先代のうわじま型掃海艇に比べて掃海関連の装備品を強化させた為、
基準排水量で20トンの増量となっています。にもかかわらず全長は僅かに短くなっていて、より一層小回り
の効く使いやすい掃海艇になっているとの事。
また、風や潮流の影響を受けながらも掃海艇を海上の1点にとどめる事が出来る自動操艦装置が導入され、
従来よりもさらに安全かつ確実に機雷の処分を行える様になりました。
これまで人と技術は一流、しかし装備品は二流・・・と言われ続けてきた日本の掃海部隊が、ようやく世界
の一流の水準と肩を並べる事が出来た記念すべきすがしま型掃海艇。なにぶん下関基地と阪神基地隊では人の
ノリも環境も変わって大変だと思いますが、新たな相棒としてコンビを組む掃海艇つのしまとともに、なおし
まにはこれからも頑張って貰いたいですね。
帰りは淀川河川敷に寄り道して、途中のKFCで購入したチキンで昼食です。スカッと晴れた空の下、河川
敷で行われている草野球を眺めながら食べるフライドチキンは、万年ダイエット中の私にとってこの上ない美
味でありました。
よく考えたら、戦闘糧食を持ってきて試食してもよかったんだなあ。阪神基地隊までの自転車往復で程良く
体を使った後ですし、試食には絶好のコンディションだったのになあ・・・。勿体ない事をしてしまいました。
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