第10師団創立52周年記念行事

2014.09.21


       第10師団創立52周年記念行事が行われた愛知県守山駐屯地に行ってまいりました。第10師団は東は
      山県
から西は三重県までの北陸東海6県の防衛警備を担任し、第10師団司令部が置かれた守山駐屯地には
      令部付隊
第35普通科連隊第10通信大隊第10特殊武器防護隊通信電子整備隊第3普通科直接支
      援中隊
第10音楽隊駐屯地業務隊第208会計隊第306基地通信中隊第130地区警務隊が所在
      しています。
       なんだかとてもやるせない終わり方だった中盤戦から1ヶ月以上のインターバルをおいて、私の2014シ
      ーズン終盤戦
もいよいよ今日からスタート。守山駐屯地は初参加なので、期待に胸を躍らせながらまだ暗いう
      ちに自宅を出発です。東向きなので真正面から容赦なく攻撃してくる朝日(嘘つき売国新聞の方に非ず)に逆
      らいながら、8時前に守山駐屯地前に到着。予定よりも早く到着してしまいましたが、この時間から正門前に
      は120人近い開門待ちが出来ていました。
       予定していたコインパーキングが満車だったので、少し離れた小幡駅近くの駐車場に車を乗り入れ、名鉄守
      山自衛隊前駅
へ移動します。先程よりも人は増えて、200番手ぐらいかな?まあ守山は一般用に雛壇席を用
      意してくれているので、最前列に拘る必要はありません。開門40分前でこの番手なら十分でしょう。

       すぐに私の後方にも長い列が出来始め、狭い歩道の安全管理が難しくなったのか、0840に時間を前倒し
      して開門。守山は初めてなので勝手がわからず、とりあえず前の人に続いて駐屯地内に入ります。
       まずは手荷物チェック金属探知機。守山はちゃんと一人ずつ漏れのない様に実施していて、ズルできない
      
のがいいですね。こういう所は他の駐屯地もきっちりやってほしいなあ。

       式典会場の南北に2つずつ大きな観閲壇が並んでいて、一般見学者用は北側。既に沢山の人が駐屯地に入っ
      ていますが、席数のキャパが十分あるのではまだ1割も埋まっていません。これなら余裕だなあ。
       隊員さんに訓練展示の流れを質問して見学場所を確保した後は、例によってさっそく屋台へGO!当然朝食
      抜いてきました(笑)。守山はどんな屋台があるのか楽しみです。
       パンフレットの地図を見ながら屋台広場に向かうと、まず目に入ったのが『非常炊飯 無料試食』のコーナ
      ー。え?野外炊具で作った糧食が振る舞われるの?と思いましたが、よく見ると災害時用にペットボトルで湯
      煎炊飯
したご飯の試食でした。空き缶チャック付きビニール袋でも問題なくご飯が炊けるとの事で、これは
      面白いなあ。

       「味は保証しませんよ(笑)」
       と笑う隊員さんに一口貰って食べてみましたが、やや柔らかめながらもきちんと炊かれた美味しいご飯にな
      っていて驚き。普段部隊でこんな炊飯をする事はないそうですが、面白いなあ。
       さて屋台です。どのテントも既に戦闘準備が完了している様ですが、とりあえず一通り偵察。揚げタコ焼き、
      
焼きそばくじ引きスーパーボールすくい射的フランクフルト唐揚げタコ焼き焼き鳥ガラポン
      くじ
フランクフルト。師団規模の行事だけあって量的にはかなり充実していますが、タコ焼きとフランクフ
      ルトがそれぞれ重なっている
上に、地元らしいローカルグルメが見当たりませんね。愛知と言えば手羽先
      噌カツきしめんなどと色々出来る気がするのですが。

       さて、とりあえず何から行くか・・・と迷うまでも無く、駐屯地業務隊が出している焼きそばに突入です。
      ご当地部隊がやってるのもポイント高いですね。テントの中ではドラム缶を縦真っ二つに割った炭火コンロ
      上に巨大な鉄板を乗せて、豪快に大量の焼きそばが作られています。おお、これこれ、これは美味そうですよ。
       200円払って守山駐屯地業務隊焼きそばを受領します。終盤戦一発目の駐屯地焼きそば、まずは一口。お
      おお、これはイケますよ!豚肉もキャベツもたっぷりで、サラサラとしたドライ系の味付けがスパイシーで軽
      やかな印象。豚肉は表面が香ばしく焼けながらも中心部はふっくらという絶妙の炒め加減で、これはやはり
      火による大火力のなせる技
でしょうか。
       独特の香りを生かせないので焼きそばに炭火は意味なさそうと思いましたが、やはりこれはハイカロリー
      遠赤外線効果
が期待できるな炭火ならでは。

       豚の脂肪を浴びた野菜はツヤツヤのしゃきしゃきで、紅ショウガが細切りなのもいい感じ。それにしても、
      この量とこの味で200円は破格すぎです。いくら儲けを考えなくていいとは言え、このコストパフォーマン
      スで守山駐屯地はやっていけるのか
心配になる程。300円でも安い位だよなあ。
       大当りの一発目に大いに気をよくしつつ、第35普通科連隊3中隊の焼き鳥へ突入。塩とタレを選べる上に
      一本50円。しかも五本なら200円なので、それタレで貰いましょう。出てきた焼き鳥は炭火の香りもかぐ
      わしく、タレたっぷり
。外側はカリッと焼けながらも中はしっとり火が通っていて、この人達は普段から訓練
      せず焼き鳥焼いてるんじゃ・・・
と疑いたくなる出来栄えです。
       いやあ、400円でこの満足感!屋台の品揃え的には少し弱いかなと思いましたが、大したもんです守山駐
      屯地。

       その後は装備品展示を見て回ります。あ、非常用糧食が展示してありました。他にも隠密行動セットと称さ
      れる地味な装備品がずらりと並んでいて、興味深いなあ。説明してくれた隊員さんによると、これら普段の行
      軍で背負う背嚢は12〜3sぐらいになるそうで、さらに小銃弾薬水筒等も身につけると、
       「毎回この仕事辞めたくなりますよ(笑)」
       との事。叩き上げの幹部の方に冗談半分とは言えここまで言わせるんだから、凄いんだろうなあ。
       時刻は0920、そろそろ部隊の整列ですね。売店は後回しにして拠点に戻る途中、あちこちで式典に参加
      する部隊
が集合してきびきびした動作で移動中。小さな子供が目を輝かせて
       「おおおおー、かっけー!」
       そうです!頑張ってる人達はカッコイイんです!もっと聞こえるように言ってやれ!

       確保した席に戻りますが、0930になっても部隊の入場は始まらず、しばらく待って0950に入場開始
      へー、どこも30分前の入場なのかと思っていましたが、守山は違うのか。
       師団規模の行事だけあって、ずらりと並んだ隊員さん達の胸元を彩るマフラーは色とりどり。各部隊の指揮
      官もやって来ました。

       式典参加部隊は、観閲壇から見て左手から第10音楽隊(守山)、第10師団司令部付隊(守山)、第10
      通信大隊
(守山)、第10施設大隊(春日井)、第10高射特科大隊(豊川)、第10戦車大隊(今津)、
      14普通科連隊
(金沢)、第33普通科連隊(久居)、第35普通科連隊(守山)、第10特科連隊(豊川)、
      第10後方支援連隊
(春日井)、第10偵察隊(春日井)、第10飛行隊(明野)、第10特殊武器防護隊
      
(守山)。
       それら14もの部隊からなる観閲部隊の指揮をとるのは、第10副師団長兼ねて守山駐屯地司令である大庭
      陸将補。観閲部隊は、観閲部隊指揮官に対して敬礼

       ここで第10師団から感謝状を贈られた各協力団体の紹介が行われますが、一人ずつ名前を呼ばれる事もな
      く、その場で起立だけして拍手が贈られました。へー、結構簡略化されてるんだなあ。その後は歴代師団長の
      紹介を経て、第10師団の防衛警備区である北陸東海6県の県旗が披露されました。
       そして本式典の観閲官である第10師団長保松秀次郎陸将が入場。部隊は観閲官に栄誉礼、捧げ銃(ささげ
      つつ)を執り行います。続いて式典参加者は全員起立。国歌君が代が厳かに流れる中、国旗が登壇しました。

       さらに流れる様に観閲官による部隊観閲式辞が行われ、やけに声がでかい愛知県知事が来賓祝辞の先頭を
      切る・・・と思ったら来賓による祝辞は県知事だけで、他の方は名前の紹介で済ませていました。
       へー、これまで師団旅団の創立記念行事をいくつか見てきましたが、来賓祝辞が一人で終わるのは初めて。
      
普通は長々とした祝辞が何人も何人も続くのに。まあ正直なところ、見てる私もこっちの方が有難いですし、
      招待される人も楽でいい
んでしょうねえ(笑)。
       部隊整列は式典10分前、感謝状受賞者の名前も読み上げる事はせず。愛知県民というか名古屋の人は、
      かく格式好きな県民性
だと言われますが、守山のこういうところは真逆なんだなあ。
       来賓紹介祝電披露もさくさくと進められ、式典はあっという間に終了。部隊は整然と退場し始め、この後
      の観閲行進の準備に入ります。

       ここで上空東側から、水色ロービジ仕様陸上迷彩仕様C−130輸送機が2機、編隊飛行でやってきま
      した。おお、面白いタイミングで航空部隊が入るんだなあ。そう言えば、すぐ近くに空自小牧基地があったん
      でしたっけ。

       そして観閲行進が開始。先頭を切るのは第10音楽隊です。背景に入る真っ白く古い建物は、駐屯地資料館
      かな?なかなか風格があっていい雰囲気です。あとで見に行ってみなきゃ。

       音楽隊が観閲壇正面に移動した後は、曲目を『抜刀隊』に切り替えます。観閲部隊指揮官と幕僚を乗せた
      揮通信車
がやってきて、観閲壇前で師団長と切れる様な敬礼を交わしています。
       続いては普通科部隊。第14普連第33普連各連隊長が座乗した指揮通信車の後に、それぞれの徒歩部
      隊
がやってきました。

       それにしても、守山の場内アナウンスを務めるWACの仕事が素晴らしいですね。はきはき滑舌もよろし
      く、実に聞き取りやすい発音。放送環境も良好で、スピーカーの音が割れる事もなく音量も十分。この辺りは
      福知山も見習ってほしいですね。あそこは式典会場が巨大なのもありますが、とにかくアナウンスが聞きづら
      いんですよね。それ以外が完璧なだけに、甚だ勿体ない
       ここでさらに航空部隊がやってきました。今度は上空西側から回転翼機の大編隊が。航空観閲部隊指揮官が
      乗り込むUH−1J多用途ヘリを先頭に、OH−6D観測ヘリ×2、OH−1観測ヘリAH−1S対戦車へ
      リ
AH−64D攻撃ヘリUH−60JA多用途ヘリCH−47J輸送ヘリという豪華な布陣です。
       さらに名古屋市消防局海上保安庁からも応援のヘリが続き、航空観閲に華を添えていました。

       そして再び車両部隊の観閲行進。ご当地35普連からは指揮通信車パジェロ軽装甲機動車高機動車
      第10偵察隊からは偵察オート高機動車87式偵察警戒車

       第10特科連隊からはトラックに牽引された155mmFH−70榴弾砲。第10高射特科大隊からは93
      式近距離地対空誘導弾
81式短距離地対空誘導弾
       第10施設大隊からは道路障害作業車07式機動支援橋。おお、徳島と旭川だけでなく、春日井にも配備
      されたんですね07式機動支援橋。第10通信大隊からは指揮統制システム改良型(?)。第10特殊武器防
      護隊からは化学防護車生物偵察車除染車3型。第10師団司令部付隊からはパジェロ高機動車

       第10後方支援連隊からは整備車重レッカ燃料タンク車浄水セット特大型トラック。衛生隊からは
      手術車
。そしてトリを務めるのは、第10戦車大隊から参加の74式戦車96式装輪装甲車。キャタピラを
      軋ませて砂塵を巻き上げながら前進する74は迫力満点で、子供達から歓声が上がります。

       最後は観閲部隊指揮官が観閲行進の終了を報告し、国旗が退場。一般見学者も起立で見送ります。
       その後は第10音楽隊による音楽演奏が披露されました。曲目は妖怪ウォッチOP『ゲラゲラポー』、進撃
      の巨人OP『紅蓮の弓矢』、J.P.スーザ『美中の美』。同時に会場東側ではこのあとの訓練展示の準備
      進められ、隊員さん達が木箱鉄条網擬装網等で対抗部隊の陣地を作っています。指揮官のハンドサインひ
      とつでぱっと移動して次の作業に取り掛かる様子が、実に様になってるなあ。

       第10特殊武器防護隊の除染車3型も出て来て、乾燥した式典会場に散水を行いますが、散水装置の作動音
      やエンジン音
が鳴り響くせいで折角の見事な演奏がかき消されがちに。うーん、これはちょっと勿体ないな。
       式典やその進行を効率よくまとめて、一般見学者の期待度が高い観閲行進や訓練展示に時間を使おという
      守山駐屯地の取り組みなのかもしれませんが、音楽隊はじっくり聴ける環境下で演奏してほしいと思ったので、
      ひとことアンケートに記入しておきました。

       大きな拍手を浴びて退場する第10音楽隊と入れ替わる様にして、物々しい戦闘服姿の一団が登場。
       「エイヤッ!エイヤッ!」
       と気合を入れながらやってきたのは、第35普連から選抜された55名の格闘展示部隊。観閲壇前で位置に
      ついた後は、和太鼓に合わせながら突きや蹴りといった徒手による単独動作の展示を開始です。

       続いて二人ひと組になり、銃剣を持った敵に対する対処要領を次々と披露しますが、一斉に投げ飛ばされて
      手首を決められた隊員さん達が、
       「ギャー!」
       と声を合わせて叫びながら手足をばたばたさせている様子は、緊迫感があるのかコミカルなんだかよくわか
      らない味があります(笑)。それでも、ひと動作終わるたびに一般見学席のあちこちから
       「わー、すごーい!」
       と小さな子供若い女性の声が上がるのが印象的。自衛隊イベントに来るのは初めてという層がほんとに増
      えてますね。どんどん見に来てほしいものです

       その後は鉄帽に防弾ベスト姿の隊員さん達による、1対4のより実戦的な対処要領を披露。ナイフや拳銃、
      小銃への対応
も盛り込まれていて、一般見学席からは少し遠かったものの、実に迫力のある展示に大きな拍手
      が贈られました。
       会場東側には敵部隊の装甲車旧型迷彩の隊員さん達が配置され、訓練展示に先立って状況説明と注意事項
      が告げられます。会場東側の通称“右の台”を占領した某国の上陸部隊に対して陸自が西側から攻撃を仕掛け、
      右の台一帯の奪還を図る
、というシナリオ。

       ちなみにこの訓練展示を担当する守山の第35普連ですが、今年の5月に北富士演習場にて行われた陣地防
      御訓練
において、敵戦車10両中8両を撃破するという大戦果をあげたとの事。これまでの最高記録が5両撃
      破
だったので、まさに桁外れと言ってもいい快挙だったそうです。
       「状況、開始!」
       の号令とともに、訓練展示が始まりました。まずは本隊から飛び立ったOH−6D観測ヘリが飛来し、上空
      にて偵察行動を開始。

       「右の台に、装甲車2、敵数名を発見!」
       すぐに敵陣地から対空射撃が始まりますが、観測ヘリは小型軽量な機体を生かして軽快に銃撃をかわしつつ
      本隊へ帰還。上空からの情報を元に、第10偵察隊の偵察オートが2両出撃します。
       「こちらエコー!只今より偵察を開始する!」
       敵陣地手前まで一気に斬り込んだ偵察隊員は、オートを倒して小銃射撃を浴びせます。
       「こちらエコー!右の台の敵は、装甲車含む約一個小隊!」

       さらに敵陣地の詳細な情報を入手した偵察隊員は、派手に走り回る87式偵察警戒車の支援を受けながら一
      気に離脱。
       後方からは93式近距離地対空誘導弾155mmFH−70榴弾砲120mm迫撃砲RTが進入して
      撃陣地を構築
していきます。右の台奪還作戦の指揮を執る中隊長は、地上部隊の攻撃開始に先立って上空から
      の航空攻撃を指示。AH−1S対戦車ヘリコブラがやって来ました。

       「こちらコブラ!敵装甲車を発見!攻撃する!」

       敵装甲車にロケット弾が命中し、発煙筒の煙がもうもうと噴き上がります。そして93式近距離地対空誘導
      弾
砲迫陣地の対空防御を行う中、砲迫部隊からは射撃準備完了の報告が次々と本隊に入ります。
       「こちら重迫、只今より射撃を開始する!」

       そして敵陣地に向けての砲撃が始まりました。155mmFH−70榴弾砲が轟音を上げながら空包を発射
      し、前進した87式対戦車誘導弾も射撃開始。発射後はすぐに車両に乗り込んで、すかさず別の射撃地点へ移
      動
して反撃をかわします。
       「戦車、前へ!」
       次々と着弾する砲弾に敵の反撃が途切れた隙を突き、後方からは74式戦車が2両突入して来ました。そし
      て砲迫部隊の射撃が止まったタイミングに合わせ、敵陣地に向けて空包を発射。一般見学席にかなり近いとこ
      ろだったので、あちこちから大きなどよめきが上がります。いやー、空包音よりもこの反応の方が個人的に嬉
      しくなるのが不思議です(笑)。

       「だんちゃーく、いま!」
       さらに砲迫部隊による火力制圧が続けられる中、74式戦車を中心とした地上部隊は前進開始。敵装甲車は
      じりじりと後退を始めます。
       ここで本隊から、普通科小銃小隊を乗せた軽装甲機動車が一気に突入開始。戦車と砲迫部隊による突撃支援
      射撃
を貰いながら、車両から飛び出してきた小銃小隊は敵陣地に迫って行きます。

       そして敵陣地手前の遮蔽物に飛び込む様にして取りつき、そこから低い姿勢で飛び出した隊員が、敵陣地手
      前の鉄条網の爆破準備
を開始。鉄条網の下に爆薬を仕込んだ鉄パイプを差し込み、発火装置を作動させてその
      場を離脱。内蔵爆薬が鉄条網を吹き飛ばし、いよいよ小銃小隊の突撃準備が整いました。

       そして号令とともに、小銃小隊は敵陣地になだれ込みます。激しい銃撃戦徒手格闘が展開される中、敵部
      隊は右の台の陣地を放棄して後方の市街地へ逃げ込んで行きました。

       訓練展示はまだまだ続きます。市街地に後退した対抗部隊を制圧すべくレンジャー隊員を乗せたUH−1J
      多用途ヘリ
が上空にやって来て、敵が立てこもったビル屋上に降下開始・・・という設定で話が進みます。

       7階建てのビル屋上に現れたレンジャーのうち、まずは一人が偵察行動を開始。ロープを窓の外に垂らさな
      い様に手繰りながら、するすると降りてきました。敵が立てこもった4階の窓の上でくるりと姿勢を入れ替え、
      
まっさかさまの状態で室内をのぞき込みます。実に簡単そうにやっていますが、想像しただけで体中がざわざ
      わざわざわ
してくるなあ。

       「こちらレンジャー、突入準備、完了!」
       すぐに3名のレンジャーが音もなく降下してきて、4階の窓に次々と飛び込んで奇襲をかけます。バックア
      ップを受け持っていた偵察要員も、後を追って室内に突入。

       さらに地上からは小銃小隊が次々と突入を開始し、ビル内に立てこもっていた敵の制圧に見事成功

       同時に戦車装甲車も土煙を上げながら市街地に突入したところで、大迫力の訓練展示は終了。会場からは
      大きな拍手が贈られました。
       駐屯地独自ではなく師団の構成をシンプルに紹介するシナリオだったので、特に何かに特化した内容ではあ
      りませんでしたが、そのぶん分かりやすくていい訓練展示でしたね。駐屯地イベント初参加の人達にとっても
      満足度は高かったのでは
と思います。

       その後は人の流れに乗って式典会場から移動。厚生センター2階の売店に向かいますが、狭い通路はもう人
      でいっぱい。壁面には沢山の掲示物がありましたが、立ち止まって見れる状態ではありませんね。あとでもう
      少し落ち着いてから、改めて見に来よう。

       売店には外部食堂が2つ入っていましたが、ここも満席状態。ちなみに置いてある雑誌は週刊漫画TIMES
      週刊実話アサヒ芸能と、素晴らしくおっさんくさ・・・もといシブめのラインナップ。
       隊員食堂の前には糧食班からの掲示物があり、献立に関するアンケートの中に手羽先はオカズになるかどう
      か
という項目が。うーん、ご当地メニューですね。確かにおかずというよりも酒の肴っぽいですし、見た目の
      割に可食部分が少ないのでもっと食べ応えのあるおかずにして!という気持ちも分かります。
       ちなみに半分以上の隊員さんが「おかずになる」と回答していました。

       屋台広場は大繁盛で、どの店も忙しそう。とは言え屋台群を程良く分散させた配置になっているので、大混
      雑という感じはありません。この辺りは、狭い通りに大量の屋台をぎちぎちに詰め込んでいる伊丹駐屯地にも
      参考にしてもらいたいですが、あれはあれで伊丹らしい混沌とした味があって面白いんですよね。行った事は
      ありませんが、まるでガンジス川のほとりのバザーにいる様な気分になります。
       屋台広場の喧騒に押し出される様にして、駐屯地資料館に向かいます。明治30年に建築された非常に雰囲
      気のある建物
ですが、なんとここにまで行列が出来ていました。ちなみにこの建物は外来宿舎も兼ねているそ
      うで、一度泊ってみたいなあ。古びた白壁、チャコールの腰板、ベージュのカーテン越しの木漏れ日・・・
      い洋館独特の空気
が堪りません。

       式典会場に戻ると、装備品展示の準備が行われていました。始まってしまうと車両の周囲は人だらけになる
      ので、むしろ開始時間前に柵の外から撮影する方が絵的にはキレイです。小銃類も展示されていますが、手に
      とって触れないようになっているのが残念だなあ。
       その後は別の隊舎を見て回りつつ、人出が落ち着いた頃合いを見て先程の厚生センター廊下の掲示物を見に
      行きます。クラブ活動の報告が主な内容でしたが、へー、駐屯地内に野球部が6つもあるのか。それだけで
      分リーグ戦が出来そう
ですね。確かにチーム数が多い方が出場機会も増えるので、部員みんなが楽しめます。
       それよりこの、チーム名『撃鉄』ってのが打撃一辺倒っぽくてカッコいいなあ。あと『丸迫実業』ってのは
      何なんでしょう。実業団野球部みたいな名前ですが、重迫撃砲中隊で構成されてるのかなあ。
       別の隊舎には今月の献立表が掲示されていました。季節柄か、昼食には冷たい麺類がよく出ていますが、
      キン南蛮
唐揚げ丼焼肉等のパワー系も充実しているのが頼もしい。その一方で握り寿司が出る日もありま
      すし、プリンやゼリー類はなんと手作り。外部の業者が入っているのかな。

       あと興味深かったのが、隊員の声を吸い上げる意見箱への回答集掃除用の雑巾を新調してほしい、という
      要望に対する回答が、
       「掃除用雑巾は使用したら洗濯して常に綺麗に使用する事。なお、破れたらさらに用途を変えて最後まで使
      いきる事。これが日本の雑巾の使い方である」
       
うーん、なんというかこの、真正面から言い返している感じが凄いなあ。投書した隊員さんも、これでは何
      を言っても無駄だと諦めてしまいそう。あ、それが狙いなのか?私なら
       「もっともですね。ただ、雑巾一つとっても予算がかかります。出来るだけやりくりして新しい雑巾を入れ
      る方向で考えますので、今ある雑巾を大事に使う事も合わせて心掛けて下さいね」

       といったような、のらりくらりの誤魔化し先送りでかわしてしまうでしょう。どちらが良いかは、言う方言
      われる方それぞれの立ち場や考え方次第なので一概には言えませんが、ある意味普段から良くも悪くも嘘のつ
      けない人達
なんだろうなあ。
       こういう空気に馴染んでしまうと退職後の再就職で戸惑う事が多そうですが、嘘や誤魔化し、建前が当たり
      前になっている社会に出た時、元隊員さんにとっての前の職場である自衛隊は、いったいどういう風に映るの
      でしょうか・・・。

       また、休み時間にタバコが吸いたいという意見に対しては、
       「課業中の休憩時間は次の課目の準備時間と意識せよ」
       ・・・そうか、休憩時間にタバコが吸えないのか。私は非喫煙者ですが、それはちょっと気の毒な気がしま
      すね。もしかしたら回答した隊員さんも、本当は吸いたくて吸いたくて堪らないのかも。己を律し続けるとい
      うのは、
本当に大変な事です。
       とは言え、こういうところを常に緩みなく引き締めているが故に、北富士演習場にて戦車10両中8両を撃
      破という大偉業を成し遂げる事が出来た
のかもしれません。意見を言う人、答える人。どちらもお互いの立ち
      場に配慮しつつ頑張ってほしいものです(また誤魔化してしまいました)。

       式典会場では装備品展示が始まっていました。74式戦車や81式短距離地対空誘導弾、87式偵察警戒車
      が油圧サスや砲塔をぐるんぐるんと動かしています。中でも施設科好きの私が真っ先に向かったのは、07式
      機動支援橋
。昨年の徳島駐屯地では地上に展開した橋節の上を歩いて渡りましたが、車両に搭載した状態で見
      るのは初めて。
       全長60mもの仮設橋をかける事ができるので、従来の81式自走架柱橋なら6両必要なところをこれなら
      ワンセットで対応する事が可能です。橋脚部分がない構造なので、川底の状態や水深、水流の強さの影響も受
      けないというメリット
があるとの事。説明係の隊員さんによると、用意ドンから18時間ほどで90式戦車も
      楽々通れる橋が完成
するそうです。大規模災害でも威力を発揮しそうなので、一日も早い全国配備が待たれま
      すね。

       会場の西端では、74式戦車の体験搭乗が行われています。前後に動くだけなのが少し寂しいですが、出来
      るだけ多くの人に戦車に乗ってもらうには、一回当たりの時間を短くするしかありません
からね。
       それでも巨大な動く鉄の塊に乗れるだけでも強烈なインパクトがあるのか、試乗を終えた子供たちはテンシ
      ョン上がりまくり
。明日は学校でみんなに自慢して、来年は沢山友達を連れて来てくれよな!

       屋台広場の一角ではふれあいコンサートが行われていて、地元のバンドの人達が場を盛り上げています。全
      員お揃いの黄色いシャツを着ていますが、その中に1人だけ『ド変態』と書かれた黒いシャツを着ている凄く
      うれしそうなチリチリパーマの人
が・・・。紅白のおめでたい鯨幕をバックに演奏している楽器がドラム缶
      いうのも、尋常ならざる雰囲気がプンプンです。
       そうか、あんたド変態なのか・・・。彼となら美味い酒が飲めそうな気がします(私は違いますが)。

       最後は殉職者追悼祈念碑に手を合わせて、守山駐屯地を後にします。正門を出たところで他の駐屯地へ戻る
      トラック
が追い抜いて行きましたが、私のそばにいた小さな子供が「ばいばーい!」と手を振ると、助手席や
      荷台にいた隊員さん達が
満面の笑顔で手を振り返していました。
       いやー、最後はド変態に締め括られるのか、俺の初めての守山駐屯地は・・・と危惧してしまいましたが、
      ギリギリで心温まる風景を見せてもらえました。偉いぞお子様!

       終盤戦一発目となった初参加の守山駐屯地、いいスタートを切る事が出来ましたね。来週は富山県の富山駐
      屯地
に遠征する予定ですが、この秋はちょっと頑張って、遠くの駐屯地にも積極的に出掛けてみたいなあ。
       帰りに例によって、守山区内の地元スーパーに寄り道です。赤味噌風味のモツ煮込みで飲むのが楽しみー!
      と浮かれつつ、大阪に向けて車を走らせました。




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