2014.10.18
大阪府堺泉北港にて行われた、DDG171護衛艦はたかぜの一般公開に参加して来ました。はたかぜは言
わずと知れたはたかぜ型護衛艦の一番艦。横須賀を定係港とし、DDH182護衛艦いせ、DD106護衛艦
さみだれ、DD133護衛艦さざなみとともに第4護衛隊群第4護衛隊を構成しています。
海上自衛隊のDDG(ミサイル護衛艦艦)では初となるガスタービン艦として1984年に進水。その後は
海上防衛の第一線で、長く存在感を発揮して来た艦であります。
一般公開が行われた当日土曜日、午前の仕事をすぱっと切り上げた私は自転車で職場を出発。すぐに堺泉北
港に到着しましたが、駐輪場を用意していないので一旦南海電鉄堺駅まで戻り、そこからシャトルバスにて出
直して下さいとの事。うーん、昨年は駐輪場は無いから自転車で来ないでねと書いてあったので電車で来たの
ですが、今年のイベント告知にはその一文がなかったんですけど・・・。
まあこういったイベントは、本来見せられないものを例外的に見せてもらえるものなんだと私は解釈してい
ますし、最近ダイエットも緩みがちなのでいい運動になったと思いましたが、ここ数年で自衛隊に興味を持っ
てイベント会場に訪れる人が激増しているだけに、こういった所はきちんと告知して頂きたいものですね。
もっとも、これだけ人が増えると、受け入れる現場は毎回毎回大変なんだろうなあ・・・。
DDG171護衛艦はたかぜの雄姿です。ナック
ルライン、ブルワーク、すっきりと伸びた艦首。ま
るで日本刀の如き美意識に惚れ惚れしてしまいます。
古い艦って、ほんといいですね。
ちなみにナックルラインとは、艦の側面に上甲板
と平行に走っている一直線のライン。ブルワークと
は、前甲板の中央付近から一段高くなった部分です。
どちらも艦首にぶつかって巻き上がる波しぶきを
外側に跳ね飛ばす為に設計され、艦首に設置された
ターターランチャーを守っています。
艦橋上部にある2つのパラボラアンテナが射撃指
揮装置。標的の追尾とミサイルの誘導を行います。
ただこの方式では同時に2発のミサイルしか管制
出来ず、現在はこんごう型やあたご型のイージス護
衛艦、あきづき型護衛艦が艦隊防空の主力。
とは言えDDG172護衛艦しまかぜとともに艦
齢延伸措置の予算が承認され、はたかぜ型はまだま
だ海上自衛隊にとっては必要な戦力。たかなみ型や
あきづき型といった若い奴らに、怒濤のオッサンパ
ワーを見せつけてやってほしいものです(笑)。
艦首に設置されたターターミサイルランチャー。
画像に写っているのは発射機のみで、甲板下の弾庫
から対空ミサイルがシュカッ!と装填され、白煙と
炎を吹き上げながら発射します。
現在は運用性に優れたVLS(垂直発射装置)が
主流となり、この発射方式もはたかぜ型とともに姿
を消す運命ですが、カッコよくミサイルを撃つ事に
こだわった様なギミックといい、すぐに油圧異常や
エラーを発生させてしまう繊細さといい、極めて人
間くさく母性本能をくすぐる性格でもあるようです。
ターターランチャー後方にある、54口径5イン
チ単装速射砲。今時珍しい有人砲塔で、内部には4
名の隊員さんが入って操作しています。
ちなみに展示訓練や観艦式で派手に祝砲を発射し
ているのが、この5インチ単装速射砲。他の火砲の
空包は「スパン」と小さく鳴るだけで、これほどの
迫力はないそうです。
現在この砲を運用しているのははたかぜとしまか
ぜ、しらね、くらまのみ。迫力ある空砲発射を見る
事ができるのも、そう長くないのかもしれません。
艦橋真下のアスロック発射機。探知した潜水艦が
潜んでいる海域上空まで、ロケットを使って誘導魚
雷を飛ばします。
ちなみにこのアスロック発射機、よく見ると発射
機下部に小さな排水管が突き出ています。まさか内
部に雨水が入り込むとも思えませんが・・・。傍に
いた隊員さんに質問してみると、
「ああ、気象条件によっては発射機内部に結露が
発生しますので、その対策なんですよ(笑)」
との事でした。なるほど。
右舷通路を通って後甲板へ。基準排水量4600
dと、後発のむらさめ型やたかなみ型の汎用DDに
体格で並ばれてしまったはたかぜ型DDGですが、
適度にごちゃごちゃしつつも通路はすっきりしてい
るのが魅力です。
通路を跨ぐ形で頭上に配置されているのは非常用
の救命筏。叩こうが蹴ろうがびくともしませんが、
艦が一定以上傾斜したり樽自体が水没した場合は、
ガイドレールから樽が自動的に放たれて内蔵した炭
酸ガスボンベが救命筏を展開します。
救命筏の奥にあるハープーン発射装置。円筒状の
キャニスター内に艦対艦誘導弾が収納されています。
発射時のロケットブースターの噴射が強烈なので、
キャニスターの後端は海側に向けられています。
基準排水量4600dのはたかぜはまだ余裕です
が、ほぼ同スペックの90式艦対艦誘導弾を搭載す
るはやぶさ型ミサイル艇は200dしかないので、
発射時の衝撃は強烈だとか。
ちなみにハープーンとは、『捕鯨用の銛』という
意味です。
左舷舷側通路に配置された三連装魚雷発射管。前
甲板のアスロック発射機よりも近距離の目標に対し
て使うそうです。
発射管後部に充填された圧縮空気ですぽんと射出
され、「あらよっと」と言わんばかりに波間へ飛び
込んでいく魚雷の様子は、流氷の上から海面に飛び
込むアザラシに似ていて、なんとも長閑で癒しを感
じさせる兵器だとか。
うーん、一発で潜水艦を撃沈する性能なんですけ
ど・・・(笑)。
後部構造物の左右に配置された高性能20mm機
関砲。対空ミサイルをかいくぐって接近して来た航
空機や誘導弾を最終的に撃墜する、艦の最後の守り
であります。
R2D2やオバケのQ太郎にそっくりな見た目が
なんとも脱力感満点な奴ですが、全自動設定にする
と目の前で動いている物は敵味方見境なしに攻撃す
るというかなり危険な性格なので、通常はマニュア
ル設定で首輪をつけた状態。元祖天才バカボンに出
てくる本官さんみたいな奴です。
はたかぜ後部飛行甲板。画像では逆光が強烈で分
かりづらいですが、中央部に鎮座しているのは54
口径5インチ単装速射砲。前甲板の砲塔と同じもの
です。
それにしても、砲塔が後ろ向きについている艦は
珍しいですね。この辺りからもはたかぜが持ってい
る“戦艦の時代の残り香”の様なものが感じられます。
ちなみにこの砲塔、ヘリの着艦時には砲身が邪魔
になるので、その時は右舷に向けて「プイ」とスネ
た様に横を向くそうです。カワイイな(笑)。
「ぬいぐるみ甲板にあげるから」という隊員さん
の通信連絡を小耳に挟みました。しばらく舷門手前
で見張っていると、おお、大阪地本の誇るマスコッ
トキャラまもる君が、3人の隊員さん達に支えられ
ながらラッタルをヨタヨタと登って来ました(笑)。
まるでエベレストをのぼる登山家の様ですが、そ
れでも彼はタコ焼きだけは決して離そうとはしませ
ん。木口小平もびっくりの、見上げた大阪根性です。
彼は阪神が勝ったら真っ先に道頓堀に飛び込むタ
イプと思われます。
ラッタルの中央部まで来たところで、もう倒れそ
うなまもる君。タコ焼き離せばいいのに(笑)。隣
の介護士・・・もとい隊員さんも半笑いです(笑)。
ちなみに大阪でのまもる君人気はかなりのもので、
週末はイベント会場を2つも3つも掛け持ちして走
り回っているそうです。
一体何があったのか知りませんが、目の焦点の合
わなさが最近かなりヤバイとこまで来ている防衛省
のマスコットキャラ“ピクルス王子”の寝首をかく様
な今後の大活躍を期待します。
ちなみにこのはたかぜ、先月までオーストラリア周辺海域にて行われていた多国間海上共同訓練に参加して
いた為、つい先日約2ヶ月ぶりに長期航海から帰ってきたばかりだったそうです。が、母港の横須賀基地に戻
ってホッとしたのもつかの間、日本に接近してきた台風18号を避けるために、ろくな休息をとる間もなく再
び出港せざるを得なかったとか・・・。
艦と乗組員の皆さんは長旅の疲れを引きずったまま大阪まで来て、スケジュール通りに一般公開をやってく
れたんですね。その間留守を守ったご家族の事を考えると、本当に頭が下がる思いです。
多くの人が自衛隊イベントに足を運ぶようになった今だからこそ、こういった艦艇広報をやる価値はより一
層高まったと言えますが、自衛隊本来の任務である国防、そしてその訓練にしわ寄せが行かない様な体制作り、
そして予算や時間にもう少し余裕の持てる環境作りを、このイベントに参加した一人一人が考えるきっかけに
したいものですね。
柄にもなくそんな真面目な事を考えさせられた、毎年秋恒例の艦艇一般公開でありました。
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