2014.04.26
大阪港の天保山岸壁にて行われた、DDG177護衛艦あたごの一般公開に参加してきました。あたごはこ
んごう型イージス艦をさらに発展させた形で2007年より就役し、艦体のステルス設計、バージョンアップ
したイージスシステムの採用、目標補足能力を強化したSPY−1レーダーの導入、大幅に能力を向上させた
各種戦闘システムを組み込んでおり、姉妹艦のDDG178あしがらとともに日本の新たな防空の盾として日
夜周辺海域に睨みを利かせている、最新鋭のイージスシステム搭載艦であります。
当日は午前中の仕事をなんとか切り上げ、市内の仕事場を出発。あたごは先月の舞鶴遠征で見る事が出来ま
したが、乗艦するのは2年前の舞鶴地方隊サマーフェスタ以来。天保山岸壁は交通アクセスがよく、当日はG
W初日とあって相当な混雑を覚悟しなければなりませんが、自転車をこいで1330に大阪港に到着です。
大阪港天保山岸壁に到着です。神戸港と並んで練
習艦隊の入港が多い場所ですが、大型の護衛艦が来
てくれたのは本当に久しぶりの様な気がします。3
年前の呉地方隊展示訓練以来かな?
それにしても、さすが海自の顔とも言うべきイー
ジス艦あたご。もの凄い行列です。さてそれでは私
も列の最後尾に・・・と思ったのですが、これが全
然最後尾ではありませんでした。
乗艦待ちは艦首はるか前方で折り返し、そこから
艦尾を越えた所までずーっと続いています。混雑は
覚悟の上でしたがこれはちょっと想像以上。
あたごの全長は165mですが、その2倍強の長
さの行列という事は、1mあたり3人並んでいると
しても、乗艦待ちは軽く1000人位・・・。
と、ここで艦内放送が入り、あまりの混雑の為以
降は上甲板のみの公開になるとの事。あたご乗艦は
今回で2回目なのですが、またしても艦橋には上が
れずか・・・(泣)。
45分を過ぎた頃、ようやく行列の半分まで来ま
した。この混雑なら仕方ありませんが、せめて子供
のいる家族連れや、中高生のみに限定してでも艦内
を見せてあげて欲しかった気がしますね。
ここ数年で自衛隊のイベントに来る人が激増しま
したが、どうしても迎える側のキャパが追いつかな
い部分(特に艦艇広報は)があります。
素人考えではありますが、例えば午前は中高生と
子供連れの家族を優先的に、午後からは通常通りの
一般公開に、という具合にしては如何でしょう。
艦橋後部にある樽型の救命筏。艦が一定以上傾斜
したり水中に沈むと自動的にレールから外れ、内蔵
されたボンベから噴き出した炭酸ガスが、特殊ゴム
製の筏を展張させる仕組みになっています。
内部には飲料水や食料の他、医療キットや通信機
材、釣り道具や酔い止め、さらにはエチケット袋ま
で完備され、25人が3日間の漂流に耐える事が出
来るそうです。
通常290名が乗り込むあたごの場合は合わせて
16基、合計400名を収容する事が出来ます。
ステルス性を考慮した平面構成マストに掲げられ
ているのは国際信号旗。一枚毎に固有のメッセージ
とアルファベットが割り振られ、この場合は『WE
LCOME ATAGO』。あたごと乗組員の人達
からの歓迎の気持ちを表現しています。
また『WE LOVE ○○○(寄港地名)』とい
うパターンもあり、こんな所にも各艦ごとの個性や
気風が出ているのが面白いですね。
舷梯脇のベビーカー預かり所。小さなお子様連れ
のご家族も安心して見学に訪れて下さい。
ただ艦内は急な階段が多いので、ヒールの高い靴
は避けて歩きやすい靴が必須。夏場は甲板からの照
り返しも強くなるので必ず帽子を着用し、風通しの
よい服装で来るのも重要です。出来れば日焼け止め
もあった方がいいですね。
また、不必要に大きな荷物や日傘等も避けたいと
ころ。艦内は狭いですし、海上に出ると予想以上に
風が強かった・・・という事も珍しくありません。
あたごの舷門です。古い艦では人力でラッタルを
上げ下げしていますが、最近の護衛艦は扉の開閉か
らラッタルの展開まで、自動で行っています。
舷門脇では当直の隊員さんが応対しますが、炎天
下に晒される古い艦(一応テントは張られますが)
に比べると、日陰があるし風通しも良く、随分快適
だそうです。
出港時はラッタルは艦内に収容され、跳ね上げ式
の扉も閉じられますが、周囲には隙間があって完全
密閉される訳ではありません。
なんだかんだで1時間が過ぎ、ようやく舷門手前
に到着です。会場整理の隊員さんも、
「いやー、今日はまた凄いですねぇ(笑)」
と驚いていました。
私は行列が進むたびに刻一刻と角度を変えていく
あたごに見惚れていたので、待ち時間も平気でした
が、待たされて不機嫌になっている子供がいたのが
少し気になりました。折角のあたごの一般公開で、
さんざん待たされた嫌な思い出が残るのはちょっと
切ないなあ。子供は我慢できませんからねえ(笑)。
飛行甲板でまず迎えてくれたのが、ヘリの発着艦
を管制するLSO(Landing Signal Officer)。
半地下状の、水槽みたいな一室です。
空調はあるものの夏場は凄まじい暑さになるらし
く、どの艦も扇風機や団扇を持ち込んでいますが、
新造艦のあたごはまだ空調の効きがいいのか、それ
らしいものは見当たりませんでした。
古くさいはつゆき型サイコー!とか言ってる私で
すが、こういうところだけはやっぱり新しい艦がい
いと思ってしまいます(笑)。
艦尾にはためく自衛艦旗。やはりいつ見ても絵に
なる光景なせいか、沢山の人達が入れ替わり立ち替
わり撮影しています。私としてはむしろ、そういう
人達の後ろ姿を込みで撮影したくなりますね。
厳しい逆光&逆風のお陰で、私の腕では全然綺麗
に撮影できませんが、まあこれはこれで(笑)。
飛行甲板からみた格納庫。ロープ結索体験の受付
にいた隊員さん達は、うららかな春の陽差しを浴び
てすごく眠そう(笑)。昼食後の座れる仕事とあっ
ては尚更ですね(笑)。
ちなみに格納庫上に見える分度器みたいなのは、
天保山マーケットプレイスの観覧車。停泊中の艦艇
を俯瞰で撮影出来る絶好の撮影ポジションですが、
GWにおっさん一人で観覧車に乗るという悲しい暴
挙に出る勇気もなく、今回も上空からの撮影は見送
りとなりました・・・。
格納庫内。あちこちの壁面が傾斜しているのが、
あたごのステルス性の高さの証です。かなり狭苦し
く強引な構造に、設計者の苦労が偲ばれます。
壁面が真っ白なのは、内部でヘリコプターの整備
作業を行う際に少しでも手元を明るくする為。
格納庫の奥上方にはミサイルの垂直発射装置があ
りますし、オイルや航空燃料、魚雷等の等の爆発物
も取り扱うので、とりわけ安全面に気を使う場所で
あります。
棚の上にあったライトウォーター(泡消火薬剤)
のポリタンク。油脂火災の際に使用します。
『愛宕格納庫』と書いてありますが、やっぱり漢
字表記は強そうでカッコいいなあ。護衛艦こんごう
も金剛って書く方が断然強そうですし。
ひゅうが型護衛艦からは晴れて旧国名による艦名
が復活しましたし、そろそろ護衛艦の艦名も漢字表
記にしてもいい様な気がしますが、やっぱり子供で
も読めるように平仮名のままの方がいいのかも。
左舷に展示されていたボースンチェア。並走する
艦と艦の間にロープを張り渡し、座った人間をゴン
ドラ風に移動させる際に使用します。一応シートベ
ルトはありますが感覚的にはブランコに近く、結構
怖いとか(笑)。一度体験してみたいような、勘弁
してほしいような・・・。
ちなみにボースンとは、船舶用語で甲板長の事。
渋いベテラン船乗り的なイメージがあり、海上自衛
隊では先任海曹クラスがこれに当たります。
イージス艦の前甲板に上がると、巨大な艦橋構造
物に静かに怒られている気分になるのは何故なんで
しょう(笑)。特に今日は完全逆光なので、あたご
が私に対してぶちギレる寸前になっている気がして
仕方ありません。うーん、思い当たる節がある様な
ない様な・・・(笑)。
はつゆき型やあさぎり型なら少々の事は笑って許
してくれそうですが、こんごう型やあたご型はあま
り怒らせたくないなあ・・・。
艦内に収容されていたジャコップ、いわゆる縄梯
子ですね。旧約聖書に出てくる天から降ろされた縄
梯子Jacob´s ladderが語源です。
隊員さんより、むしろ寄港先で乗り込んでくる水
先案内人や税関職員が使用する事が多いそうです。
小さくコンパクトなぶん普通の梯子に比べて安定
性に欠け、波のある日は傍から見ている以上に揺れ
るので、大型艦艇の高い乾舷を素早くスムーズに登
るにはかなりの慣れが必要だとか。
以上であたごの見学は終了。隣接する天保山マー
ケットプレイスの外周テラスに出て、愛宕の全景を
撮影します。当日の天保山はGW初日らしく多くの
人出で賑わい、沢山の人達が珍しげにあたごの雄姿
を携帯で撮影していました。
昼過ぎに比べると行列は短くなったものの、まだ
沢山の人達が乗艦待ちで並んでいます。乗組員の人
達の夕ご飯は、かなりずれこんでしまったのではな
いでしょうか。
岸壁では航海科員によるラッパ吹奏と手旗信号の
実演展示が行われ、あたごの右ウイングに出た航海
科の海曹との手旗信号通信が披露されました。
担当する海曹さんはテレ笑いで顔が真っ赤でした
し、周囲の幹部や海曹士も容赦なく和やかな冷やか
し笑いを浴びせています。これは後で絶対弄られる
な・・・(笑)。
あたご艦内のチームワークというか、雰囲気の明
るさがなんとなく感じられたひとコマでした。
こちらは艦橋からの通信を受ける岸壁の隊員さん
達。
「えー、艦橋からの通信が入りました。本日は5
人のイケメンに会いに来てくれて有難うご・・・」
「そんなこと言ってないやろ!本日はご来艦頂き
有難うございました、だそうです!」
と、まるで寄港先の空気を読んだかの様なコント
を繰り広げ、会場の笑いを誘っていました(笑)。
以上で、護衛艦あたごの一般公開は終了です。いやー、分かっていた事とは言え、凄い人出でしたね。艦
橋に上がれなかったのは残念でしたが、これだけ沢山の人達が自衛隊のイベントに足を運ぶのは、とてもい
い事なんでしょう。
土曜日の朝に入港し、二日間の慌ただしい一般公開を終えて日曜の午後にはもう出港・・・というハード
スケジュールだった護衛艦あたご。乗組員の人達にはもっと大阪で羽を伸ばして貰いたかった気がしますが、
多くの人達の期待と信頼を背負っている事を実感して貰えれば幸いですね。
あと乗艦待ちをしている間にふと思ったのですが、せっかく防空能力に特化したイージス艦の一般公開な
んですから、接近する対空目標を探知してから迎撃に成功するまでの一連の流れを、訓練展示風に再現ドラ
マで見せると言うのは如何でしょうか?
もちろん実際に127o速射砲やシースパローを発射する訳にはいきませんが、目標捜索中から探知、識
別に至るまでのCICでの会話をラジオドラマ風に構成したり、警報ベルを鳴らしながら速射砲を目標方角
に動かしたり、VLSの扉を実際に開けて見せ、最後は「対空目標アルファの撃墜を確認!」で締めるとか。
言わば、陸自の駐屯地記念行事でやっている訓練展示の音声だけ版、みたいな感じですね。
システムのスペックにかかわる具体的な数値は適当にごまかして、防衛秘密に抵触しない程度のリアルっ
ぽさを醸し出して一連の様子を流せば、退屈な待ち時間に耐えかねている子供も楽しめるんじゃないでしょ
うか。
我ながら素人的な発想だとは思いますが、折角親御さんたちが連れて来てくれた子供のハートを、がっし
りと掴むチャンスは逃したくないものです。自衛隊イベントに押し寄せる人はこの先も増えると思いますし、
次は子供の方から「また自衛隊の船を見に行きたい!」と言わせる様な、そんな工夫もあってもいいと思い
ました。
さて、明日は阪神基地隊にて行われる掃海艇なおしまの一般公開に参加です。今月の6日に下関基地から
転籍して来たばかりのなおしまの、阪神基地隊における初のお披露目。明日も好天が続く様ですし、期待に
胸を膨らませつつ大阪港天保山岸壁を後にしました。
トップページに戻る
イベントレポート目次に戻る
|