米子駐屯地創設63周年記念行事

2013.10.06



        鳥取県の米子駐屯地で行われた、創設記念行事に参加して来ました。米子駐屯地は中国地方の日本海
       側唯一の駐屯地
であり、第8普通科連隊を中核として第1普通科直接支援小隊、第356会計隊、第312基
       地通信中隊米子派遣隊、第132地区警務隊米子派遣隊、米子駐屯地業務隊
の各隊が駐屯しています。
        米子は意外と関西圏からのアクセスが容易で、以前から一度遠征してみたいと狙っていたのですが、なか
       なか実現に至らず今年になってようやく参加の運びとなりました。いやー、ここまで長かった(笑)。
        前夜は途中の高速道路のSAにて車中泊。翌朝は辺り一面に立ち込める霧にもめげず、意気揚々と出発
       です。
        米子自動車道の米子JCTで一般道に降り、一度も曲がる事なくずんずん進むと、左手に米子駐屯地が見
       えて来ました!臨時駐車場に車を入れたのは0800。ちょっと早く来すぎたかな?駐車場にいた隊員さんから
       パンフレットを頂き、準備を整えて駐屯地正門へ。
        開門待ちの列に並んで時間をつぶしていると、黒塗りの業務車が正門前に差しかかり、車内からは一等
       陸佐の階級章をつけた、長身痩躯の幹部自衛官
が出てきました。駐屯地司令かな?それにしても、車に乗
       るのは正門までで、あとは徒歩で入るのか。普通は車に乗ったまま駐屯地内に入るのですが、これは司令
       の流儀
なのでしょうか。


        それにしても米子駐屯地、意外と人が少ないなあ。開門40分前の時点で、行列は30人いるかどうか。
       回の鯖江はこの時間で既に140人を超えていましたが、今日はお隣の島根県出雲駐屯地でも創立記念行
       事が開催されているので、見学者は分散してしまったのでしょうか。まあ、のんびり見学できるならそれに越
       した事はありません。
        正門前には会議用のテーブルが持ち込まれ、どうやらここで手荷物検査が行われる模様。ちなみにこの
       テーブルを設置する時、WACの方はキャニスターのストッパーを屈みこんで指先で固定していました。おお、
       普通はつま先で踏み込むものですが・・・。こういった何気ない所作に、その人の人柄とか躾とか、美意識
       たいなものが表れるんだろうなあ。私はつま先で雑に踏み込んでいましたが(笑)。
        そして0900、定刻通りに開門。簡単な手荷物検査をパスして駐屯地内に足を踏み入れます。この頃には
       開門待ちは200人位になっていたのですが、入口での手荷物検査のお陰か土地柄なのか、開門ダッシュす
       る人もおらず、のんびりゆったりと式典会場へ
        お、途中に屋台通りを発見!何があるのかな。例によって朝を抜いてきたので、お腹も順調に減っており
       ます。

        広い広い米子駐屯地内を延々と歩き、ようやく見えてきました式典会場。見えてからがさらに遠かったので
       すが、うはあ、ここも滅茶苦茶広いなあ。


        訓練展示は式典会場向かって左→右に展開するそうなので、空いている椅子席ではなく会場右側のロー
       プ際に拠点を確保。ここなら観閲行進も正面に近い角度から見学する事が出来そう。米子は初参加なので、
       まずは手堅いポジショニングですね。
        一息ついて周囲を見渡すと、いつの間にやら結構な人出になっていましたが、なにぶん敷地面積がべらぼ
       うに広い
ので、人口密度が低くのんびりした雰囲気。前回の鯖江とは正反対だなあ。
        秋の米子の空はとにかく広く高く、実にいい気分。ぼんやりと眺めていたいところですが、部隊の入場まで
       あと30分ほどしかありません。まずは屋台行ってみましょう!
        普通科連隊が中核となる駐屯地だけあり、広場には大量の軽装甲機動車が並んでいます。見た目はゴツ
       イのですが、見ようによってはネコが箱座りしているみたいで妙にかわいいなあ。


        その隣にある、錆びたトタン屋根が付いているこれは塹壕でしょうか。内部はコンクリブロックで固められ、
       おまけに屋根には雨どいまであります。豪華なのかみすぼらしいのかよく分かりません


        歩いて歩いて、ようやく屋台通りに到着。あちこちからいい香りが漂っていて、既に戦闘準備は整っている
       模様。まずは全体を一回りして、陣容の把握に努めます。
        鳥取カレーパン、たいやき、たこ焼き、焼きイカ、コロッケ、鶏唐揚げ、ソーセージ、炊き込みご飯、お好み
       焼き
。ここまでは外部の業者さんによる出店ですね。
        米子のご当地部隊からの出店は、1中隊がうどん、2中隊がフライドポテト、3中隊が焼き鳥。かなり豊富な
       ラインナップです。折角ですから、隊員さんの出している屋台へ行ってみましょう。


        まずは一番やかまし・・・いや、賑やかだった3中隊の焼き鳥へ。テントの前には段ボールとガムテープで作
       った巨大な焼き鳥のオブジェが飾られ、変なかぶり物をした売り子が座る受付の奥では、大勢の隊員さん達
       が炭火と格闘しています。ああ、こタレが炭火で焦げる香り・・・小池一夫風に言えばたまンないな。
        焼き鳥はタレが選べるらしく、細かいニーズへの対応も素晴らしい。とりあえず、正肉を1本、ネギマを
       2本、タレでお願いします。

        出てきた焼き鳥がこれまた絶品で、表面は炭火でカリッと香ばしく焼かれているのに中はジューシー。甘味
       よりも醤油っ気をきかせた辛口タレも、朝から飲みたくなって困ります(笑)。これで3本150円は破格だなあ。
       すごいぞ3中隊!伊達にうるさ・・・いや賑やかな訳ではありません


        続いては1中隊のうどんに行きたいところですが、あいにくまだ準備中の模様。先に厚生センターのPX(売
       店)
へ行く事にします。
        中のPXは駐屯地に規模に相応しい大きさで、既に沢山の人が入っていました。えーと、まずは自転車用の
       グローブ
を物色して、あと糧食ネタになりそうなものは・・・おおお、こんなのがあったのか、防人の誉ハヤシ!
       これは買いですね!試食レポート用に、予備を含めて2箱購入。
        ちなみにカップめんのコーナーは、大盛りサイズを中心に広大な売り場面積を誇っていました。普通科駐屯
       地でこういった食品類が豊富なのは、見ていて頼もしいなあ。食堂で出る食事だけでは物足りない位、ガンガ
       ン訓練しているんでしょう。
もちろん職種にもよりますが、小食な隊員さんというのはちょっと不安ですし。


        予想外の戦果にホクホクしつつ再び屋台通りに戻りますが、うどんは10時からとの事。うーん、式典と完
       全に被りますね。仕方ありません。それにしても、ボリューム的にもう一品食べておきたいなあ・・・よし、この
       鳥取カレーパン
にするか・・・と思ったら、何故かカレーパンの屋台に大きな鉄板があり、焦げたソースの香
       り
が漂っています。あれ?金属製の大きなボウルに入っているあれは、焼きそばでは・・・?
        しかし屋台の看板には、焼きそばのやの字もありません。店員さんの賄い?それともシークレット?
        思わす店員さんに、その焼きそばは売り物ですかと尋ねると、そうですよとの事。なんかいい歳したおっさ
       んががっついているみたいで(そうなんですけど)恥ずかしかった
のですが、これは思わぬ拾いもの、米子駐
       屯地の焼きそば
を入手する事が出来ました(笑)。隊員さんの屋台じゃないけど、いやー、よかったよかった。


        さっそく頂いてみると、これが実によく出来た美味しい屋台焼きそばでした。とろみの強いソースたっぷりの
       ウェット系
ですが、酸味を抑えてフルーツの甘味を強調しつつもスパイシー。ああ、これはビールよりもご飯
       で食べたい
なあ。豚肉は結構な量がありますし、キャベツも脂とソースを浴びてシャキシャキ。青ノリが無い
       のは、女性客への配慮かな?思わぬお宝を掘り当てたような、大満足の屋台焼きそばでありました。
        おっと、時刻はもう0930。部隊の入場が始まる頃です。とりあえず胃袋は満たしたので、拠点に戻るとしま
       しょう。古い隊舎の横を通りかかると、中に立てかけてある大量のスキー板が目に入りました。なるほど、こ
       こならそういう訓練に不自由しないと言うか、むしろ必要なんでしょう


        弾薬庫と思われる巨大な土塁の横を通り、式典会場に戻ります。開門直後に比べると随分人が増えてい
       ますが、それでも最前列から2〜3重程度の人混み。のんびりしていていいなあ、米子。
        しばらくして、部隊の入場が始まりました。音楽隊を先頭に、赤スカーフの第8普通科連隊各中隊が続々と
       入場。続いて連隊幕僚連隊旗とともに入場し、本記念式典の観閲部隊指揮官を務める第8普通科連隊副
       連隊長
が、パジェロでやってきました。部隊は観閲部隊指揮官に対し、敬礼。


        ここで部隊の紹介が行われ、向かって左から中部方面音楽隊第8普通科連隊本部管理中隊第1中隊
       第2中隊第3中隊。ああ、第13音楽隊じゃなくて中方音楽隊が来てるんですね。わざわざ伊丹から大変だ
       なあ。地元の第13音楽隊は、今頃出雲の方に行っているのでしょう。
        それにしても、なんだか妙に部隊が少ないなあと思ったら、会計隊や警務隊、駐屯地業務隊などがいませ
       んね。恐らく式典の運営や警備などの裏方仕事に回っているんでしょう。駐屯地がこれだけ広いと、警備す
       るだけでも大変
なんだろうなあ。


        そして本式典の観閲官である、第8普通科連隊長兼ねて米子駐屯地司令池田博司一等陸佐が、黒の業
       務車で入場。観閲官は登壇し、部隊は敬礼。さらに国旗入場に備えて、つけ剣を執り行います。
        そして国旗入場。起立と注目を求めるアナウンスが流れ、式典参加者はほぼ全員が起立。パジェロに乗っ
       た国旗が目の前を通った時、観客の一部からは拍手が沸き起こりました。


        うーん、ここで拍手か。これって正式なマナーなのかな?まあ気持ちの表れですから、細かい事はどうでも
       いい気もしますが、折角見に来た人たちが国旗に対して敬意を表すために起立しているのです。どうせなら
       もう一歩進んで、、その敬意が一番スマートに見える作法というか、美しい型に則りたいなあ。
        とは言え、私もちゃんとしたマナーについてはかなり勉強不足な方です(笑)。こういうのは自衛隊の方でパ
       ンフレットを作るなりして、周知させてほしい
気がしますが、それはそれで色々わめき立てる人達がいるんだ
       ろうなあ。
        部隊は国旗に対して敬礼。捧げ銃を行います。


        その後は観閲官による部隊観閲式辞、来賓祝辞が粛々と進行。ちなみに来賓の祝辞ですが、米子に来
       ていた議員の皆さんは
結構熱い祝辞を披露していて、どうせ通り一遍の同じ様な内容なんでしょと思ってい
       た私はちょっと驚いてしまいました。
        割と若手の議員さんが多かった気がするので尚更かもしれませんが、どの議員さんも米子の隊員さん達を
       心強く感じ、長く信頼関係を築いていきたい
という意思が感じられ、思わず聞き入ってしまいました。


        その中で、先の東日本大震災での福島県いわき市における第8普通科連隊の献身的な活動について触
       れられましたが、その後いわき市の小中学生との親善野球大会が催され、8普連チームが再会した小中学
       生相手にムキになって勝ってしまった事への微妙な苦言(笑)
もありました。まあ、“ぼくたちのたのもしいたい
       いんさん”
が、子供相手に負ける訳にはいきませんから(笑)。
        もっとも、いわき市の子供たちにとって8普連の隊員さんは、本当に困った時にその身を顧みず助けてくれ
       た数少ない頼れる大人な大人
だったでしょうし、今後追いつきそして追い越したい存在でもあったでしょう。そ
       ういう意味では、手加減抜きで全力で勝つ事こそが、隊員さん達からの何よりの激励のメッセージだと言える
       でしょう。
        来賓の議員さんには、なかなかいい話を聞かせて貰いました。米子の隊員さん達に負けない位、国の為に
       しっかりと働いて頂きたいですね
(何を偉そうに)。
        来賓紹介、感謝状贈呈者紹介、祝電披露を経た後は、いよいよ観閲行進です。
        「観閲行進のー、体制を取れー!」
        の号令一下、部隊は整然と退場して行きました。


        そして中部方面音楽隊が先頭を切り、地元鳥取県の県旗が続きます。さらに観閲部隊指揮官幕僚が座
       乗した指揮通信車パジェロがやってきて、壇上の観閲官に敬礼。今日は天気晴朗ナレドモ風強シなので、
       連隊旗が綺麗にはためいています。


        続いては徒歩部隊。ブッシュハットにフェイスペイント姿の一団は、レンジャー有資格者で構成されたレンジ
       ャー小隊
。その後は、第8普通科連隊の第1〜3中隊が、隊列を組んでやってきました。


        続いては、本部管理中隊による車両行進。中隊長を乗せたパジェロを先頭に、偵察オート、軽装甲機動車
       重迫撃砲小隊高機動車と120o迫撃砲RT、81o迫撃砲L16、救急車、シェルター搭載トラック、資材運搬
       小型ドーザを搭載したトラック。


        第13特科隊からは、155oFH−70榴弾砲第13施設中隊からは81式自走架柱橋304施設隊からは
       地雷原処理車
。いやー、いつ見ても地雷原処理車はカッコイイ。目の前を通ると、誇張抜きで地面がぐらぐら
       揺れる
のがすごい迫力です。


        そして第13戦車中隊からやってきた74式戦車が2輌、堂々の行進です。ゴゴゴゴゴというかガラガラガラ
       ガラ
というか、これもすごい存在感。孫にあたる10式がつい最近華々しいデビューを飾りましたが、いかに
       も戦車らしい見た目の74式
は何度見てもカッコいいですね。


        さらに航空部隊がやってきました。第13飛行隊OH−6D観測ヘリUH−1J多用途ヘリが通過した後
       は、航空自衛隊三保基地から参加のT−400練習機C−1中型輸送機が。おおお、最近は空の方はすっ
       かりご無沙汰
なので、前回の鯖江に続いて空自の航空機を見る事が出来たのはラッキーです。


        以上で観閲行進は終了。国旗が退場し、記念式典も終了です。
        引き続き式典会場では、中部方面音楽隊による演奏が行われました。曲目は『国民の象徴』『夢をかなえ
       てドラえもん』『凱旋』
の3曲。硬軟織り交ぜた見事な演奏に、大きな拍手が贈られました。
        続いては第8普通科連隊選抜ラッパ隊による、ラッパ演奏展示。駐屯地の一日の中で吹奏される様々な
       ラッパを、統制のとれた動きとともに披露しています。キビキビとしたアクションが、実に自衛隊らしい


        その後はいよいよ戦闘訓練展示です。式典会場には鉄条網が運び込まれ、敵対抗部隊役の車両
       擬装網をかぶせたゴールポストの陰に配置されます。
        さらに陸自部隊役地雷原処理車軽装甲機動車、74式戦車が目の前を通過。74式は観閲壇の前で一
       旦停車し、油圧サスペンションを駆動して様々な砲撃姿勢を披露しています。複雑な山間部が多い日本の国
       土に合わせた機構ですが、鋼鉄の塊である74式がその場でウネウネと動く様は、なんだか軟体動物みたい
       で変な感じ。この後の訓練展示に備えて、柔軟体操しているようにも見えます。


        各部隊が配置についたところで、戦闘訓練展示の概要と注意事項が説明され、状況開始のラッパが鳴り
       響きました。
        まずは第13飛行隊OH−6D観測ヘリが、連隊長から空中偵察の命を受けて出撃。上空を旋回して敵
       の陣地を発見します。すぐに敵陣地からは対空射撃が浴びせられますが、OH−6Dは軽快に身を翻してか
       わしつつ、上空から把握した敵陣地の情報を後方の本隊に報告。


        さらにその情報を確かなものにすべく、本隊からは偵察オートが2輌展開。一気に敵陣地手前まで切り込
       んだ後は、小銃射撃を浴びせて敵陣地を挑発。かえってきた反撃の様子から、敵の人数や車両の種類、数
       といった戦力を把握。
派手なスピンターンで立ちあがった後は、脱兎のごとく後方の本隊に帰還します。


        航空部隊と偵察隊からの情報をもとに、連隊長は敵陣地の奪還作戦を承認。火力戦闘部隊の先頭を切っ
       てやってきたのは、特科隊の155oFH−70榴弾砲です。牽引してきたトラックから切り離された後は、マシー
       ンの様な動きを誇る特科隊員達
により、着々と砲撃準備が整えられます。
        さらに上空にはUH−1J多用途ヘリが進入してきて、左右のカーゴドアからは4名のレンジャー隊員が降下
       開始。
すぐに周囲の安全を確認したレンジャーは敵の後方に回り込み、情報収集及び撹乱、奇襲を担当しま
       す。


        続いて進入してきた120o迫撃砲RT81o迫撃砲L1687式対戦車誘導弾が、後方にて射撃陣地を構
       築。普通科小銃小隊の前進を支援すべく、砲撃準備が進められます。
        さらに本隊からは、狙撃班が投入されました。ギリースーツに身を包んだ狙撃手観測手が、観閲壇前に
       展開。
        「こちらスナイパー!陣地占領、完了!これより狙撃する!」


        すると、敵陣地の装甲車上にいた機関銃手が倒れ込みました。見事な一撃必殺ですね。そして後方に展
       開した火力戦闘部隊からは、次々と砲撃準備完了の報告が入ってきました。
        「こちら本部、攻撃、開始!」
        「こちら特科!初弾、発射!」

        脇にいた隊員さんが赤旗を振り下ろすと、FH−70榴弾砲は轟音とともに空包を発射。砲口からは巨大な
       火の玉が噴き上がり、観客席からはどよめきがあがります。


        「だんちゃーく、いま!」
        着弾した敵陣地には白煙が噴き上がり、他の迫撃砲や対戦車誘導弾も次々と攻撃開始。敵対抗部隊が
       怯んだ隙をついて、小銃小隊の軽装甲機動車が前進を開始します。


        同時に展開した74式戦車も、火力戦闘部隊と連携しながら砲撃開始。おおお、すごい事になってきました。
        軽装甲機動車からは小銃小隊が飛び出して来て、すぐに地面に伏せて敵陣地に対して射撃開始。


        「こちら小銃小隊、突撃準備射撃、頼む!」
        「本部、了解!特科、突撃準備射撃!」
        「こちら特科!突撃準備射撃、了解!」
        「だんちゃーく、いま!」

        敵陣地に対して畳みかけるような攻撃が続けられる中、施設科の火炎放射器組がひっそりと会場側面に
       回り込みます。
        「こちら火炎放射器組!これより、敵の側方陣地を処理する!」
        「本部、了解!」


        すると小銃型の火炎放射器から20m程もある炎が一気に噴き上がり、敵の側方陣地一瞬にして丸焦
       げに
。観客席からはさらに大きなどよめきが上がります。いやー、普通科の駐屯地でこれを見る事が出来る
       とは。ある意味、戦車や榴弾砲の空包射撃よりもインパクトがあるなあ。遠く離れたこちらまで、の熱が伝
       わって来る様。


        さらに地雷原処理車が投入され、敵陣地手前に敷設された地雷原及び鉄条網を一気に爆破。小銃小隊
       はじりじりと前進し、最後の突撃準備を整えます。
        「こちら特科!最終弾、発射!」
        放たれた最終弾の敵陣地への着弾と同時に、小銃小隊は突撃開始。無力化された地雷原と鉄条網を突
       破して、見事敵の陣地の制圧に成功しました。


        いやあ、押さえるべきところをきっちりと押さえた感のある、よく出来た訓練展示でした。施設科好きとして
       は、火炎放射器が出てきたのが嬉しいサプライズでした。


        さてこの後は、レンジャー訓練展示が行われる訓練塔前まで移動します。まずはバスで移動して来た来賓
       用に5分ほどのミニ展示が行われた後、本番が行われました。最初は向か
       って右側の低所訓練塔(約11m)から左側の高所訓練塔(約15m)までのロープ上を移動する、セーラー。ち
       なみに高所訓練塔の15mは、人間が感覚的に一番恐怖を憶える高さだそうです。下から見ると何でもなさ
       そうですが、いざ上がると足が竦みそう。
        隊員さんは片足首をロープにひっかけ、ロープのテンションと反動を利用して、体が浮いた一瞬の間に前
       進していきます。


        続いては、地上から高所訓練塔までのモンキー登り。これもロープの反動を巧みに利用していますが、
       力
だけでなくリズム感体幹の強さがないと、とても出来そうにありません。
        さらに、ロープ上からのフォール。高さ11mに張られたロープ上から、レンジャーが後方に向けてダイブ
       観客席からは短い悲鳴子供の泣き声(笑)が上がりますが、宙ぶらりんになったレンジャーは巧みに体を
       捻り込んでロープ上に復帰。


        ちなみにこのフォール、胆力を鍛えるだけでなく、ロープそのものに対する信頼感を体に叩き込む意味も
       あるそうです。ロープの結び方を憶えた後は、まず最初にこれを行うとの事。想像しただけでも足の裏がざ
       わざわ
してきますが、姫路レンジャーはこれをやりながら如何に笑いを取るかまで考えないといけないので
       すから、まったくもって大変であります。


        次は低所訓練塔の懸垂板を使っての担架搬送。二人のレンジャーが担架を確保しながら、片手のみでロ
       ープを操って降りてきました。
上でロープを支える隊員さんと合わせて、3人の息をピッタリ合わせてバランス
       を取らないと、大変な事になりますね。

        担架は無事地上に下ろされましたが、これ、一番怖かったのは負傷者役の隊員さんだと思います(笑)。


        さらに負傷者搬送をもう一つ。今度は高所訓練塔の登攀壁を使用した、負傷者の背負い搬送。こちらは
       先程よりも軽度の負傷者に対して行われ、負傷者を背負ったレンジャーがいとも簡単に懸垂降下で降りて
       きました。すごいなあ。負傷者役の隊員さん、控えめに見ても60sはありそうですが。 
        今度は低所訓練塔から、体を下に向けた状態での戦闘懸垂。これは着地点の安全を確保する為、降下
       の最中も射撃を行える降下方法
だそうです。うーん、地上11mの恐怖感と闘いながら体のバランスをとり、
       なおかつ降下地点周辺を警戒しながら射撃まで行うとは・・・。なんかもう頭の中がごちゃごちゃになりそう
       です。


        最後はエキストラクションロープを使用して、高所訓練塔から一気に滑り降りる展示。地上15mの高さか
       ら、隊員さん達が水道の蛇口をひねったみたいに次々と降りてきます。


        最後は参加したレンジャーが全員集合し、小銃を構えながら前進して終了。大きな拍手がレンジャーに贈
       られました。
        さて、あとは装備品を見て回りましょう。お、81式自走架柱橋が、橋梁を展開した状態で展示してあります。
       隣には説明パネルが置いていあり、渡河訓練時の写真が貼ってありました。幅の広い川に合計4両分の橋
       が架けられていますが、これ、用意ドンからどれぐらいで完成するんでしょうか。ちょっと質問してみましょう。
        「そうですねえ、だいたい半日・・・4時間ぐらいです。ただ、隊員の錬度によってかなり左右されますよ。ベ
       テランが多いとあっという間ですが、新米が混ざっているとやっぱりもたつきます(笑)」


        ちなみにこの81式自走架柱橋、車両があればあるだけいくらでも延長して架ける事が出来るそうです。
        「まあ、保有数にもよりますが。うちにあるのは6両ですから、よそから引っ張ってこない限りは最大6基ま
       でになりますねえ」

        他にも赤外線暗視装置体験テントや、小銃携帯対戦車誘導弾等が展示されたスペースがありました。
        その隣の広場では、建築資材の足場や丸太、ロープ、ネット等で作った子供用アスレチックコーナーが。
       どれも隊員さん達がありものの資材を組み合わせて作ったとの事ですが、子供達には大人気。頑張って作
       った甲斐がありましたね。


        おお、陸自車両の中でも特に可愛らしい、資材運搬車も展示されています!個人的にかなりお気に入り
       の車輌なので嬉しいなあ。操縦席も覗く事が出来ましたが、フロアからにゅっと突き出ているT字型のレバ
       ーが三輪車みたいで、もう可愛さ大爆発(笑)。
これを前に押したり後ろ引いたり、右に捻ったり左に捻った
       りして動かすんですね。


        ギヤはハイとローの二種類。操作盤もごくシンプルで、パッと見ただけですぐに動かせそう。これ、一台欲
       しいなあ・・・。
        ちなみにこの資材運搬車、実は東日本大震災の復興支援でも大活躍した装備品です。トラックが通れな
       い細い道にまでガンガン入って行き、厖大な瓦礫を運び出したとの事。小さい体でよく頑張ったぞと、あるの
       かないのかよく分からない肩
を叩いてあげました。
        また、人命救助システムのエアジャッキがキャタピラの下に挟まっていて、微妙に傾いているのも可愛さに
       拍車をかけていますね。普通科を始めとして、各部隊に沢山配備されているのに、あまりに地味過ぎて施設
       科駐屯地ですらあまり公開されない資材運搬車
。これをじっくり見る事が出来ただけでも米子まで来た甲斐
       がありました。この画像は是非PCの壁紙にしよう・・・。


        資材運搬車に見とれている間に、航空自衛隊高尾山分屯基地のアクロバットチーム、レッドクラブの飛行
       展示を見逃してしまいました(涙)。
うーん、残念・・・。まあこれは、今度高尾山まで足を延ばして見に来てね!
       と言う事でしょう。がっくりしていた私を見かねてか、たまたま残っていた1機がくるくるとデモフライトを披露し
       てくれました。ありがたやありがたや・・・。


        その後はもう一度屋台を冷やかして、米子駐屯地を後にしました。
        いやあ、実に満足度の高い駐屯地創設記念行事でしたね。行きの高速のSAでは舞鶴肉じゃがカレー
       レトルトも発見しましたし、天候には恵まれるわ防人の誉ハヤシは入手できるわ訓練展示は大迫力だわ
       材運搬車
は見れるわ、大当たりの米子遠征でありました。
        さて来週はいよいよ伊丹駐屯地です。中部方面隊の総本山、式典参加部隊の豪華さも大したものですが、
       東は富山駐屯地、西は山口駐屯地から結集したご当地名物屋台群も楽しみです。伊丹名物36普連のトウ
       モロコシ部隊
も、出店しているのでしょうか?今日の様な快晴に恵まれる事を祈りつつ、中国自動車道神戸
       JCT手前の大渋滞
に突入する私でありました。




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